道中
「うらぁ!」
「ガァ!」
骨を砕く鈍い音が響き、返り血を浴びるガスコイン。
霧の湖辺りで二人の少女が獣に襲われた所を目撃し、獣狩りを始めていた
相手は3人、全員ヤーナム市街に居た獣憑きになった元人間。だが、獣に対して容赦や慈悲などガスコインには微塵も存在しない
一人は何故か氷漬けになっていたのでそのまま砕き、後の二人は斧で叩き潰した
(八雲紫からは何も報告が無かったが、獣どもが現れているなら今後の行動を考えておくべきか・・・)
彼らもまた獣の夜に獣どもを狩るために集まったヤーナム市街の群集達だ。だが、彼らは既に獣の病に侵されていた、それさえも知らず彼らは狩る獲物を求めて彷徨っていたのだ
斧を背中に戻し、二人の少女の下に向かう
「大丈夫か?怪我は無かったか?」
「もちろん!あたいはさいきょうだから!」
最初に返事をしたのは氷の様な羽を背中に持つ水色髪の少女だった
「チルノちゃん、まずはちゃんとお礼を言わないとだよ。えっと、助けて下さってありがとうございます」
次に隣に居た内気そうな少女がお礼を言ってきた。こちらにも羽の様な物が背中にあった
「礼には及ばん。奴らを狩るのが当たり前みたいなものだからな」
「そう言えば・・・貴方はもしかしてガスコインさんですか?」
「俺を知っているのか?君たちと会った事は無い筈だが?」
助けてからまだ名は名乗っていない筈だが、なぜ俺の事を?
「え?大ちゃんの知り合い?」
「ほら、ルーミアちゃんがいつも言ってた大きなおじさんの事だよ」
「そうだっけ?」
「もう、チルノちゃんも一緒に聞いてたよ」
チルノの性格に少し呆れている様に見える大ちゃんと言う少女。名からして本名では無くあだ名のようだ
「まあいい。とりあえず、チルノとやら勇敢なのは構わないが、戦い方を考えるんだな。下手をしたら死ぬぞ」
「大丈夫だよ、なんたらコイン!あたいはさいきょうだから!」
「ガスコインさんだよ。でも、あたしたち妖精は死ぬことはありません、数ヶ月消えたりしますけどまた戻れますから」
「例え消えなくても、死んだ事には変わりはない。ルーミアとの知り合いなら簡単に消えて、あいつに寂しい思いをさせてやるな」
「は、はい。気をつけます・・・」
「よ、よく分かんないけどルーミアはあたいの友だちだから泣かせるなんてぜったいしないよ!」
「そうか。では、俺は急ぎの用があるのでな」
俺は二人の下を後にし、紅魔館へと歩みを進めた
「ルーミアちゃんの言った通り、優しい人だったね」
「それに強そうだから、こんどあたいのケライにしてやるか!」
「・・・止めた方がいいと思うよ」
紅魔館 門前
「・・・赤いな」
門の前までやって来たガスコイン、全体が赤色に染まったどう見ても目に悪い館を見上げていた
「住人の趣味か?良いとは言えないな・・・さて」
視線を館から門に戻すとそこには誰かが居た。色はともかくこれほど大きな館なら門番の一人や二人は居てはおかしくは無いが・・・
「Zzz・・・Zzz・・・」
門の前で寝ている女が一人、たぶん門番なんだろうが居眠りをしていた。勝手に中に入るのはやはりまずいだろう、どちらにしてもこの女が邪魔で門も開けられない
起こすしかなさそうだ。まぁ、こいつに招待状を渡せば館の主に渡すだろう
「おい、起き」
サクッ!
「ずっ!」
「ッ!?」
突然だった。目の前にいた女の後頭部に一本のナイフが突き刺さったのだ
「また居眠りとはいい度胸ね、美鈴」
「あいたたたっ、ナイフだけは勘弁してくださいよ〜」
「だったら居眠りせずにしっかり門番の仕事をする事ね」
門の前にいきなり現れた銀髪の女、その手には美鈴と言っていた門番の頭に刺したナイフと同じ物を持っている
銀髪の女は俺の方に向き直り、頭を下げてきた
「ようこそ紅魔館へガスコインさま。私は紅魔館のメイド長を務めています、十六夜咲夜と申します」
また名乗っていない筈なのに名を言った。射命丸の取材とやらにはまだ受けていないはずだ・・・・もう宴会を開く必要が無い気が徐々にしてくるのだが
「ガスコインさまのご用事は承知しております。ですがその前に、我が紅魔館の主、レミリア・スカーレットさまが貴方さまと直接お話をしたいと申しておりまして、そちらでよろしければお受けして頂けないでしょうか?」
どうやら俺が此処に来た理由を知っているようだ。だが、用事を済ませる前に紅魔館の主が俺と話がしたいらしい
この後は特に何も無い、少し遅れて心配をかけてしまいそうだが・・・そのレミリアとやらの話、少し聞いてみるとしよう
「いいだろう。だが、あまり長くは居座るつもりは無い」
「承知致しました。では、こちらへ」
咲夜の後に続き、紅魔館の中へと足を踏み入れた
中も外と同じようにほとんど赤に染まっている。しかも窓が少ない性で陽の光が入らず通常より薄暗く感じた
ついて行く事、数分。一つの部屋の前に止まり咲夜がドアにノックする
「お嬢様、ガスコインさまをお連れしました」
「入りなさい」
中から声が聞こえ、了解を得てドアを開ける咲夜。先に入った後、どうぞっと言いながら中に入るように促され俺も部屋の中に入る
「ようこそガスコイン神父。我が紅魔館へ」
部屋の中にはルーミアより少し背が高い位の貴族に近い様な服を来た少女が椅子に座っていた。しかしその背中には人外であると示す様な羽を生やしていた
「立ち話もなんでしょう?席について構わないわ。紅茶は飲める?」
「問題ない」
「そう。咲夜、紅茶の用意を」
「かしこまりました」
ヒュン
後にいたはずの咲夜が突然消えた。能力だろうか?
とりあえず席についた
「失礼致します。ご用意が出来ました」
また突然現れ、俺とレミリアの前に紅茶が入ったティーカップを出す。俺はとりあえず丁度いい熱さの紅茶を口に運ぶ
紅茶じたいあまり飲んではいなかったがなかなか美味い。飲み物で美味いと感じたのは幻想郷では二度目だ
ちなみに最初は緑茶だ
「さて、まずは私の自己紹介ね。私はレミリア・スカーレット、この紅魔館の主にして吸血鬼よ。よろしくねガスコイン」
「お前は俺の事を知っているのか?」
「えぇ、知っているわ。人間でありながら人里に現れた妖怪紛いの獣たちを全滅させたほどの人物だとね」
「・・・レミリアと言ったな。何故お前がそれを知っている?いや、それよりも俺はお前を知らない。なのに何故、お前とお前の後に控えている女は俺の名を知っていた?」
「その質問の答えは簡単よ。まず私は「運命を操る程度の能力」と言う力を持っているわ。この力で私は様々な人物の運命を見ることが出来、そしてその運命を操る事が出来るの。私はある日に一人の人間が幻想郷にやって来る運命を見たの、それが貴方の事よガスコイン。名前に関しては咲夜に人里で調べてもらったわ」
運命を操る程度の能力
他者の運命を見、その運命を良い方にも悪い方にも変えられるとは恐ろしいものだ。つまり、俺が紅魔館に来ることも運命とやらで知ったか、それとも操って此処に来させたのか
「そうか・・・では本題に入る。一体俺になんの話がある?話しなら三日後に博麗神社で宴会が行われる、そこで話せばいいんじゃないか?」
「そうね。ただの話ならいいかも知れないわ、でも私が貴方に話したいのは貴方の本心を聞きたいからよ」
本心?一体何を言っている?
レミリアは持っていたティーカップを置き、俺に問いかけて来た
「貴方にとって“化け物”とは何かしら?」