我輩は逃亡者である   作:バンビーノ

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番外編 メリークリスマス

 目が覚めると高度2000メートル、ジングルベルな歌をメカメカしい兎耳をつけたさんたが陽気に歌いながらやけにメカメカしいトナカイが引くソリに乗り飛んでいた。

 

「良い子はいねぇがー! プレゼントを配っちゃうぞ! 知り合い限定だけどね!」

 

 なんかナマハゲ混ざってますし、知り合い限定とか束先輩だと片手で足りるじゃんとかいうツッコミを置いておいて――寒い寒い寒い!

 

「寝てらしたかーくんさんが尋常じゃなく震えてらっしゃるのですが……」

「ガクブルだね! ほらこのサンタコス……もといジャンバーを着るんだ!」

「ダッフルコートとかないですか? 束先輩とペアルックとか恥ずかしいじゃないですか。ほら、世間体的に」

「にべもない……! というか今さら世間とか気にしない気にしない」

「今さらですね。いえ、そんなことよりかーくんさん唇が青くなってきてるのでふざけてる余裕は無さそうなのですが」

 

 癖って怖いよね。しかしジャージで雪の降る空を飛んでるとか風邪引きそう。腕時計を見れば時計の針は深夜0時を指す手前、完全に眠ったあとに勝手に連れてこられたようだ。せめて起こしてほしかった。まぁ垂れてきた鼻水がつららになりそうだし仕方なくサンタコスなジャンバーを着る。サンタのコスプレになることは気にしない、本当に世間とか今さらだった。

 

「我慢の限界だし仕方ない。これどこ向かってるんですか?」

「かーくんいい質問、箒ちゃんとちーちゃんにいっくんとまどっちのところだね」

「狙いはIS学園か……なんかこのサンタジャンバー、見た目に反して温かいですけど」

「どうだ、それこそ束さん印の技術力! 着てる人にとって最適な温度になるようになってるのだ!」

 

 またいらないところで無駄な技術力を。いえ、南半球でサーフィンしてるサンタも大助かりな服だよって言われても知らないですから。

 まあ、飛び抜けた技術力をよくわからないとこに使うのも今に始まったことじゃないですしいいんですけど。

 

「だけどこのトナカイが飛んでる理由って……」

「天才束さんがISコアをちょちょいとしてね、クリスマス仕様無人機verトナカイだよ」

「世の中のお偉いさんたちが聞いたら卒倒しそうです」

「すごく怒られそうな予感、特に織斑千冬さんが聞けば頭痛そうに眉間を押さえそうですね。そして束先輩に拳骨あたりが」

「が、ガクブル再来だね! むしろちーちゃんの場合は怒るより拳骨が先だけどさ!」

 

 ノリ良さげに軽々言っている束先輩だけど……膝が震えてるんですけど? そんな怖いならやらなきゃいいと思うのだがやりたくなったことはやるのが束先輩。

 後ろの荷台で気持ち悪いくらいに蠢いてるプレゼント袋は無視する方向でいきたい。

 

「さっきから動いてる後ろのプレゼントなんだけど……」

「どれのことでしょう、触れない方向でいくことに決めたんで放置しません? しましょう」

「ううん、断る! ソレいっくんを模した人形作ったんだけど箒ちゃん喜ぶかな? すごい動くんだけど」

「どうやっても嫌いのゲージが溜まる気しかしない」

「いやー、そうだよねぇ。箒ちゃんって何欲しがるのか全然わかんなくてさぁ、うーん……人に物あげるって難しいなー」

 

 ポチッとな、束先輩が謎のボタンを押すと後ろの一夏(仮)の動きが止まった。南無三、たぶん慈悲なく束先輩が解体するからそれまで大人しくしといておくれ。

 けどプレゼントか、たしかに人に物を送るのはセンスとかいるかもしれないけど普通にそんなことは考えなくていいと思う。

 

「何をそんなに悩むのか、簡単に考えましょうよ。束先輩は頭良すぎて頭悪くなりますよね。欲しがりそうなものじゃなくてあげたいものあげたらいいじゃないですか」

「簡単に考える……さらっと罵倒されてる気がするのは置いといてあげたいものかぁ、うん、うん。そうだね! そうするよ!」

 

 そういうとソリの上でガチャンガチャンなにかを作り始める束先輩。高度2000メートルで何をやってるのか火花が散る。たまに俺やくーちゃんに火花が飛んできてるんだけど微塵も熱くないのはこのサンタコスってばIS技術を応用してるな。もうポケットに拡張領域ついてても驚くことはない。

 

 

▽▽▽▽

 

 

 IS学園に到着。ソリは外で待機させておき、くーちゃんの生体同期ISのワールド・パージを展開させつつ学園内への侵入に成功した。

 

「よっぽどのことがない限り見つからないから便利だよね、くーちゃんのワールド・パージは」

「はい。というよりも普通は誰にも見つからないはずなのですが……織斑千冬だけはどうしてか」

「勘かもしれないねぇ。身体能力なら束さんとトントンなのにちーちゃんってば第六感とかニュータイプ越えてるナニかだし」

 

 束先輩と身体能力が並んでる時点でおかしいのに勘が異常に鋭いってなんなんだろう。束先輩が頭が賢い分、千冬さんは第六感に割り振られてる……? いやいやいや、そうだとしたら勘の鋭さとかもう未来視に近いものな気がする。

 でも、そう考えるとしっくり来るんだよね……ナニソレ怖い。

 ――っと、箒さんの部屋の前に着いたらしい。

 

「しー、静かにね」

「寝ている妹の部屋に忍び込む姉。うーん、犯罪的だ」

「大丈夫ですよかーくんさん、学園内への侵入で既にアウトですし」

「静かにって……!」

 

 鍵はどうしたのか、問うまでもなくピッキングしたんだろうなぁ。コソコソっと扉を開け部屋の中へ入っていく。どうでもいいんだけど束先輩がコソコソしてるって珍しい図だと思う。

 そしての枕元へ立った束先輩はプレゼントを置こうとし――箒さんと目が合った、目が合った。目と目が合う瞬間にってやつだろうか。

 箒さんは目を擦り何度か現実を受け入れるためにインターバルをつくるがやはり束先輩が視界から消えないようだ。だってそこにいるからね。

 束先輩もこっちはこっちでフリーズしてるし。たぶん頭のなかでは試行錯誤ならぬ思考錯誤してるんだろうけど身体が追いついてないや。

 

「天井の代わりに姉さんの顔が見える…………うん、気のせいではないな。おかしくなったのか、私の目」

「……め、メリークリスマス箒ちゃん。た、束サンタがプレゼントを持ってきたよー……?」

「よくわからないのだがここは学園の私の部屋だよな? なら姉さんはどうしてここに……あ、いや侵入したのか。帰ってください、織斑先生を呼びます」

「すごい冷たいよ箒ちゃん……しかもちーちゃん呼ぶことは確定!? ストップストップ! 今日は変なことしに来た訳じゃないからさ!」

「サンタの格好をした実の姉が学園内へ無断で入ってきている時点で私にとっては十分変なことなんですが……」

 

 ゲンナリした顔をしてる箒さんの言うことはもっともだった。しかもISコアを使ったトナカイが引くソリに乗って来たと伝えたらもっと呆れられそうだ。

 

「学園内への侵入は目をつむって欲しいかなー、なんて……」

「抵抗せず織斑先生に差し出されるならいいですけど」

「どう考えても見逃してくれてないよね!? 箒ちゃんお願い、ちーちゃんには何卒……!」

「存分に怒られてください、と言いたいですけど冗談です、今のところは。それでプレゼントと言ってましたけど用件はなんでしょう……?」

 

 不安げというより疑わしげというか心配そうな箒さんの声が聞こえる。

 ちなみに俺とくーちゃんは部屋の隅で、正式名称不明な互いの指の数を増やしていって五になると負けのゲームをしていた。楽しいかと問われると正直なんとも言いがたい。

 余談ながら、さすがに同年代の女の子の部屋への不法侵入という不名誉な前科は世間体とか関係なくいらないので、現在箒さんからはくーちゃんのワールド・パージのおかげで見えない状態だ。早く話し終わらないかな。

 

「うん、言葉のままプレゼントだよ。誕生日には紅椿みたいな女の子らしくないものしかあげれなかったから……これ、はい!」

 

 そう言って束先輩が渡したのはロケット型のペンダント、中に写真を入れれるタイプのやつだ。これも女の子のらしいかと言われると微妙なんだけどそこは触れないことにしといた。だってアレはたぶん束先輩が夢を暗喩してるんだろうしね。

 それにしてもソリの上で何か作り始めたときは『箒ちゃんの身辺を守るんダ一号』とかいった無人機作るんじゃないかと、くーちゃんとヒヤヒヤしてたことは秘密である。

 

「いっくんとの写真とか中に入れれるようにしてあるペンダントだから! つ、使いたくなったら使ってもらえると嬉しいかな! またじゃあね!」

「ね、姉さん!? ……行ってしまったか」

 

 ……身ぶり手振りわたわたしながら言いたいことを言いきった束先輩は、韋駄天も真っ青な速さで廊下を駆け抜けて去っていった。たぶん妹との真面目な空気で恥ずかしさとかに耐えれなかったんだろうけど、もう少し頑張るべきじゃないかと。

 

「帰ろうか俺たちも。たぶん束先輩も他の面々にプレゼント渡すだけの気力とかなさそうだし」

「暫くぶりにあれだけテンパってる束様を見ましたね。あ、ファンタを一本だけですがマドカさんに持ってきたのでそれだけ部屋の前にでも置いていってよろしいでしょうか?」

「歓喜するまどっちが目に浮かぶ……うん、それ置いたら帰ろっか」

 

 複雑そうな、けど嫌そうな表情でもない箒さんを横目に部屋をあとにする。そして前に聞いたマドッチの部屋番号を見つけ扉の前にファンタを置く。

 お供えものみたいとか全然思ってないし、翌日部屋の前にあるファンタの気配を察知したマドッチが如何にしてファンタを倒さずドアを開けるか試行錯誤したなんて事実もない、ないったらない。

 

「帰りましょうか……あれ、外に束様が」

 

 走ってる、それはもう積もった雪を巻き上げて何かから逃げるかのように失踪してる。そして後ろから追うものが、というか束先輩が全力で逃亡する相手は一人しかいない。織斑千冬さんだ。

 

『ガッデム! ちーちゃんが見回りをしてるだなんて! クリスマスなんだからサンタを待って寝といてよ!』

『よく言う……! 貴様みたいな不審者がいるからおちおち眠れんのだ! 大人しくお縄につけ束!』

 

 外で繰り広げられる人の枠を越えてる逃亡と追走劇。なんで生身で三次元的な動きをしてるんだろうか。

 

「眠くなってきたし見当たらない束先輩は置いて帰ろう」

「後ろの窓から束様が見えますよ?」

「世の中知らない振りをした方がいいこともあるんだよ……特にアレは俺たちが巻き込まれたところで何もできないから」

 

 束先輩は犠牲になったのだ。いやさ、むしろ束先輩って千冬さんといるときは、なんだかんだで楽しそうだしきっと今も楽しんでる。だから見捨てるんじゃなくて親友同士二人でいる時間に邪魔するのも忍びないから、知らない振りをするだけだって。

 

「来年のクリスマスはもうちょっとゆっくり過ごしたいね」

「寝つつサンタを待ってみるのもいいかもしれません」

 

 ――メリークリスマス。




ここまで読んでくださった方に感謝を。
メリークリスマス、プレゼンツ・フォーユー。
今回の会話が全て『シリトリ』になってると気付かれた方はどれだけおられたでしょうか?以前に『あいうえお作文』の会話もしましたが、こういうのはやっぱ楽しいです。

ではメリクリメリクリ、残り少ないですがよいお年を。

あと関係のないこととなりますが短編にて
『クロエの出会い』
というものを投稿させていただいてます。かなーり珍しくギャグゼロの作品で、束とクロエの出会いを書いてみたものとなってますのでよかったらご一読のほどを。
この作品の二人とはきっと恐らくたぶん関係ないです。
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