幌筵の小さな警備府   作:蛍火おぼろ

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艦隊これくしょんの二次創作であり、実際のプレイ日誌となります。

場合によっては一部の艦娘が轟沈する場合もありますので、耐えられない方は閲覧しない事を強くお薦め致します。


提督が警備府に訪れました。

 肌寒い気候の中、緊張で身を強張らせて待つのは暁型四番艦、駆逐艦の(いなづま)だ。小さな黒い手帳を開いて、必要な事をメモした頁を見る。

 ここは幌筵(ぱらむしる)泊地に存在する警備府の一つで、その中でも特に小さい場所だ。建設の際に鎮守府になる事が検討されており、その予定で建築が始まったが、とある事情で急遽警備府となる。それにより、施設は充実しているが実際は警備府というごちゃ混ぜな状態だ。そこに新しく着任する司令官が来ることが決定した。彼は夜戦と記録を執るのが好きで、それ以外の事は最低限の情報があるのみ。何度か目を走らせ、手帳を閉じて電は深い息を吐く。私がしっかりしなければいけない、と。遠くに司令官を乗せてあるであろう船が港に到着した。

 

 船から単身降りた男は電よりも大きく、祭りにあるような御面を装着している。軍の人間らしくない変な格好に、普通ならば不信感を覚えるだろう。見上げる電は、電流が全身を駆け巡ったかのように全身を小刻みに震わせた。そんな彼女の様子に彼は御面を外すことなく、敬礼をする。

 

「本日より着任した秋窓(あきまど)だ。北の地は慣れていないが、よろしく頼む」

「電です。どうか、よろしくお願いいたします」

「いい名前だ。ところで、艦娘というのは記録も執れるのか?」

「も、問題ないです」

 

 電と名乗った艦娘の言葉に機嫌をよくした秋窓は、一本の筆ペンを差し出した。それと秋窓の顔を交互に見る電は戸惑いを隠せず、変な声をあげる。

 

「はわわ!? あ、あのっ……」

「最初に任務だ。これから起きるであろう事を、必要な事だけでいい。これで記録してくれ」

「わ、わかりましたのです!」

「うむ、いい返事だ。早速だが案内を頼む」

 

 大きく頷いた電の肩を叩いた秋窓は警備府へと歩みを進める。先行する彼を慌てて追いかけた電は、慣れない案内に四苦八苦するも、記憶している情報を駆使して彼の前を歩いた。小さいとはいえ本来は鎮守府として建設された場所な為、それなりの大きさを持つ。数時間かけて丁寧に案内する電は、執務室の前で足を止めた。

 

「ここが、司令官さんの執務室です。資材さえあれば改装も出来るのです」

「このままでも充分だがな……ご苦労だった。しばらくは資材搬送で忙しくなるだろう。近いうちに何隻かがこっちに来るらしいしな。休めるうちに休め」

「了解なのです。あ、あの……司令官さん!」

 

 本来ならばこれで彼の指示通りに休暇を取ればいいのだが、電は彼を呼んだ。テーブルに置かれている大量の書類に肩を落としていた秋窓は、ゆっくりと振り返って小首を傾げた。御面さえなければは、人によっては可愛らしい動作なのだが。

 

「どうして御面を付けているのです?」

「そういうことか。単純な理由だ」

「単純、ですか?」

 

 彼女の問いに秋窓は一度言葉を区切り、息を吸い込んだ。生唾を飲み込む電は、期待と緊張が入り混じったような表情で、彼の言葉を待つ。

 

「ああ、単純だ。俺は顔が悪くてな? 初対面だと必ずといいほど、相手を怖がらせてしまうからだ。これから長い付き合いになるのだから、そんな事で関係を悪化させないように……な」

「……変な司令官さんなのです」

「言うじゃないか。気を配った結果がこの御面なんだが?」

「司令官さんは司令官さんです。相手の事を考えられる司令官さんに、悪い人はいないのです!」

 

 にっこりと微笑む電に秋窓は顔を逸らして頭を掻く。わかったから、わかったから休んでくれと、懇願するように呟いて電を追い出した。扉に張り付いて、電が立ち去る足音が聞こえなくなるまで秋窓は微動だにしない。そっと扉を開いて廊下を見回し、入念に確認するが妖精すらいない。ほっと息を漏らした彼は扉を閉め、ゆっくりと御面の紐を緩めて外した。

 

「あの女といい、艦娘はああいう奴しかいないのか? 困ったもんだ」

 

 御面をテーブルに置き、代わりに資料を手に取る。そこには後続配備される予定の艦娘の情報が書かれていた。

 

「軽巡一隻に、駆逐が二隻......。あとは功績を上げろ、か」

 

 ないよりは百倍マシだと呟いて、執務室に備え付けられた窓から景色を眺める。日は傾き始めており、夕焼けが眩しい。春にしては寒すぎる中でも、一緒に運ばれてきた資材や備品を元気に運ぶ妖精達の姿があった。そこには先程までいた電の姿も見える。

 

「休めと言ったんだがな。やれやれ、行くか」

 

 御面を手に取って外れないよう、しっかりと御面の紐を縛る。秋窓は執務室に掛けられた黒い外套を手にして飛び出した。

 

 電は防寒用の黒い外套を羽織り、妖精たちの手伝いを進んでこなす。その甲斐あってか、一日目の積み荷降ろしが予定より早く終わった。

 

「とりあえず終わったのです……」

 

 陽が沈む水平線は美しく、戦時であることを忘れさせるほどだ。その景色を眺める彼女の背後から彼が現れる。

 

「意外に防寒耐性があるもんだな。機能性をあげて武装として実装するのもありか?」

 

 そう言う彼は黒い外套を評価しながら、電の頭を撫で回す。予想外の人物に変な声をあげてしまう電だが、彼は意に介さない。

 

「明日には軽巡と駆逐が来る。仲良くするように」

「は、はい!」

 

 彼はひたすら頭を撫で続け、電は徐々に恥ずかしさがこみ上げてくる。幌筵の港はいつもの寒さだが、電は何故か普段よりは暖かい気がした。

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