純白の翼 -Wings of white-   作:秘書艦N

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~前回までのおさらい~

突然の出撃命令を下された長門と艦娘たち。
長門はこの作戦を無事に乗り切れるか不安であった。
提督は長門を旗艦にし、「この作戦は長門にかかっている」と。
そして、時刻は出撃前日の昼になっていた。


長門の想い

もう時間は昼になっていた。

食堂で簡単に昼食を済ませると、出撃予定の艦娘を会議室に全員集めた。

私は皆の前に立ち、

 

「皆に提督より伝言だ。絶対に犠牲者を出すな。危なくなったら逃げろ。逃げることは決して負けではない。作戦より命が大事だ。」

「犠牲者を出さない、一見簡単そうなことだが、これは難しいことだ。そこで、今から私が言うことを守ってほしい。一、大破したら即座に撤退する事、一、単独行動は禁止だ。くれぐれも艦隊からはぐれない事。一、被弾し、動くのが難しい場合は誰かが即時曳航し、安全な場所へ退避すること。以上だ」

 

ここまで言い終わると、加賀が

「それで、艦隊の編成見直しの件はどうなったのかしら?」

 

と聞いてきた。私は提督に敢えてこのことを言わなかった。提督だって加賀と瑞鶴は犬猿の仲ということは知っているはずだ。知らないはずがない。それを知りながらそれでも同じ艦隊にしたのには、絶対に何か意味がある。そう考えたのだ。

 

「加賀、編成の見直しは行わない。これは私が決めた」

 

こう言うと、今度は瑞鶴が、

「ちょっと待ちなさいよ。つまりこの件は提督に報告してないってこと?ちゃんと言って欲しいわ!」

 

加賀も

「頭にきました。今から提督に言ってきます」

 

と言う。私は笑って。

「なんだ、二人とも同じ意見か。仲が良いな」

と言ってやった。

 

二人は顔を真っ赤にして、加賀と瑞鶴は違うドアからそれぞれ出ていった。この後、提督室でばったり会うことになるだろう。面白そうだ。

 

「さて、今回の作戦だが、索敵がこの作戦のカギとなると言っても過言ではない。航空母艦及び水上機を装備できる艦は必ず偵察機を装備すること」

「と言うのも、今回はまだ敵の本拠地が特定されていない。つまり、どこから敵が来てもおかしくないということだ」

「さらにだ…あくまでも一つの情報だが、敵本拠地と思われる周辺には、常に巨大な雲があり、周りが見えない状況に置かれる可能性もある…」

 

すると霧島が、

「つまり、敵が攻撃できる範囲内に居ても、気づけないかもしれない、と?」

 

「そういうことだ。実際にある貨物船はどこからともなく攻撃され、沈没している」

 

「それであれば、探照灯を装備すればどうでしょう?」

 

「なるほど…では、霧島、探照灯を装備していってくれ。それから利根と時雨にも探照灯を装備させる」

 

霧島は頭が切れる艦娘だ。非常に良いアイデアを出してくれる。同じ第一艦隊にいるのはなんとも心強い。

 

「よし…では、以上の24名、必ずここへ戻ってくる。いいな?」

こう言い終わると全員がはいと答えた。

 

会議が終わり、日も暮れてきた。作戦会議も終わり、珍しく書類も片付いていたので、私は鎮守府近くの岬へ行った。

 

―思えば、この鎮守府に着任してどれくらいたったのだろうか。

提督はまだ新米で、私が建造されたときの嬉しそうな顔は忘れられない。

私が来た後、ほかの戦艦や空母が着任した後も、常に秘書艦として私を置いてくれた。

そして、提督と契りを交わした唯一の艦娘である。

だから、私には責任がある。

―勝つ。そして、皆でまた戻るのだ。

 

しかし、日常とは一見当たり前のように与えられているが、この日常を当たり前のものと思ってはダメだ。

―これは提督の言葉だ。

その通りだ。明日が平穏な一日になるとは限らない。

―特に、出撃する明日は。

 

私はそんなことを考えながら、沈みゆく夕陽を眺めていた。

すると、後ろから足音が聞こえたから、振り返ると、そこには陸奥が立っていた。

 

「あら。長門、やっぱりここにいたのね。」

 

「陸奥…ああ。久々に暇になったのでな…。」

 

「ふふふ。大体わかっていたわ…時間があると、いつもここにいるものね」

 

「そ、そうだったか?不思議だな…」

そう言うと、陸奥は私に抱き付いてきた。

 

「む、陸奥…」

 

「なにかしら~?」

 

「そのだな…明日から出撃だが…」

 

「だが?」

 

「ぜ、絶対に共に無事で帰ってこような…!」

 

「何言ってるの~?私は大丈夫だけど、長門はいつも無理するから、長門こそ気をつけたほうが良いわよ~?」

 

「うっ…もちろんだ…!」

 

しばらくそのまま静かに抱き合っていた。

そのあと、陸奥は私の横に座った。

 

「こうして夕陽を眺めれるのも、平和があってこそね…」

 

「ああ…平穏な日々は当たり前にようにあるわけではないんだ…」

私は提督の言葉を思い出しながら、そう答えた。

 

「ちょっと聞きたいことがあるの…。長門は私と提督、どっちが大事なの?」

 

「えっ…」

 

「どっちかにしなさいよ…。どちらもって答えはダメよ」

 

「そう言われてもな…うーん…」

これほど返答に困る質問は後にも先にもないだろう。

陸奥も提督も大事だ。同じくらい。どちらかなんて…できない…!

私がすごく深く考えていると、陸奥が

 

「ふふふ、冗談よ。長門と提督は深い絆で結ばれていますものね~?」

からかうように言う。

 

「い、いや、陸奥、ちょっと待ってくれ。待て。陸奥も大切な…」

 

「あらあら。嬉しいわね。」

 

そう言うと陸奥は立ち上がり、

 

「さあ、帰りましょう?そろそろ夕食よ?」

 

私も立ち上がり、鎮守府の食堂へ行った。

晩御飯の献立は間宮と伊良湖が考えることになっている。今日はどんな晩飯なのだろうか。

 

食堂に全員が集まると、間宮が、

「さあ!今日は明日出撃する艦娘のために、豪勢なディナーにしました!」

 

ほうほう。確かに今日の晩御飯は豪華だ。ゲン担ぎのカツ丼、フライドチキン、麻婆茄子、尾頭付きタイの船盛り、ホワイトケーキだ。

これは豪華だ。いやはや、間宮と伊良湖には頭が下がる思いだ。

 

すると、隣に座っている電が何かブツブツと言っているので、どうしたのかと尋ねると、机を叩き、

 

「茄子は嫌いなのです」

と言う。貴様はぷらずまか?

すると雷が、

 

「ちゃんと食べないと大きくなれないわよ!食べなさいよ!」

 

さらに暁が、

「レディーな私を見習いなさい!一人前のレディーは茄子なんて…茄子なんて…」

 

すると響きが

「みんな茄子が嫌いなのは知ってる。ハラショー」

 

暁と雷がドキッとした顔になる。

 

「そ、そんなことないわよ!食べれるわよ!」

 

「一人前のレディーは好き嫌いがないのよ!」

 

「無理をする必要はないよ。私が食べるから。」

 

「じゃ、じゃあ今日は響にあげるわ!特別よ!」

 

…ははは。なるほどな…第六駆逐隊の面々は愉快だな…。

私はおいしい食事を堪能し、部屋に戻った。

 

今日は明日に備えて早く寝よう。明日朝、出撃だからな…。

私は部屋の電気を消した。

真っ暗であたりは静寂に包まれている。遠くから時々船の汽笛が聞こえる。

―明日の出撃、どうか無事に終わりますように。どうか、我々に勝利を。

 

祈るように思いながら、夜は静かに更けていった。




~執筆後記~

お読みいただきありがとうございました!
なんと、3日で3話まで書き終えました!
しかも、第三話はなんと、これまでで一番長く、2700字ほどです。
今回は長陸奥が見どころです。はい。
次回はいよいよ出撃となります。果たして長門と艦娘の運命はいかに!?
次回、「約束の日」お楽しみに!

…というわけで、今回はここで筆を置かせていただきます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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