唸れ! サイヤ人・パプリ   作:リマース

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2話

「コイツは新人のパプリ、サイヤ人の生き残りだ」

「……ども」

 

そうベジータが言うと、二人はガタリと勢い良く立ち上がった。

その表情には驚いている事が分かる程焦っている。

……これが正常な反応だよな。

俺は一言言い、二人に頭を下げた。

 

「な、な、コイツがサイヤ人の生き残りぃ!?」

「冗談はいけねーぜベジータよぉ、生き残りは俺たちとカカロットだけだぜ?」

「証拠があれば納得するだろう」

 

驚き目を見開く二人に俺はゆらゆらと揺れる尻尾を見せた。

二人は更に驚いたような顔をしている、なんかオモシロいなぁこの二人。

というかこの驚いた反応にも慣れたな。

 

「尻尾……!!」

「マジかよ、生き残りがいたとは……」

 

納得してくれた様で何よりだ。

俺は分厚く積み重ねられた惑星イメッガの資料をドサリとテーブルに置く。

 

「パプリです、よろしく」

「あぁ……」

「では早速任務だ、惑星イメッガに行くぞ」

「ん? 何だそりゃあ聞いたことのねぇ星だ」

 

だからその資料を持ってきたのだバカ者、そう言ってベジータはナッパを小突いた。

普通の人がやれば「もー止めろよ」位で済むがさすがサイヤ人、すっけぇ痛がってるよナッパ。

手加減と言う言葉を知らないというかなんと言うか、やっぱベジータは面倒クセェ。

 

というか俺にもやっぱりアタックボールくれるのかな。

さすがにサイヤ人も宇宙空間では生きられねぇしな。

 

「惑星イメッガ……国王の名前はドン・キアー、国民と星のすべてをレンタル契約にするという政策が施行され、なにもかもに高額なレンタル料を課せられている星。ドン・キアーの政策により、ホテルなどにはあちらこちらに料金メーターが取り付けられている。砂漠の中に町があるアラビア風な雰囲気で科学が発達しており、ホテルの中にはロボットも見られる」

 

なげぇなーやっぱり。

俺は取り敢えず脳に叩き込むためにボソボソと読みながら見ていった。

これが何枚も、覚えられねぇよ。

つか俺って人……じゃねえ宇宙人殺せる程のメンタルないんだけど。

 

一人殺しただけでも罪悪感で潰れそうだってのに、何百人をも殺すとなると俺の精神が崩壊してしまう。

しかもそんなに罪の無い奴らを殺してしまったら俺は地獄行き決定。

 

セルとフリーザ、それにあのギニュー特戦隊と同じ地獄行きになってしまう!

それだけはやだよ、絶対にいやだ。

俺はベジータについて行くべきか、それともフリーザについて行くべきなのか。

どっちについて行っても役立たずになったら殺されるんだろうな。

 

ベジータは最終的には自分の手でナッパ殺しちゃうしさ。

あーどっちに行っても地獄とはこの事だ。

俺は内心ヒヤヒヤしながら資料を頭に叩き込んでいった。

 

「じゃあそろそろ出発するか、パプリ、お前のアタックボールは用意してある」

「どーも」

 

あれから一時間程経ち、黙々と資料に目を通す四人。

ベジータからの提案で少し早いが出発する事になったのだ。

このフリーザ軍の基地・惑星フリーザから惑星イメッガまで約5日らしい。

 

結構長いなぁ、俺5日も眠り通した事なんてねぇよ。

暇だよ何してればいいわけ?

つか他の奴らとは俺違うし、精神は普通の一般人ですので。

 

「よし、では出発だ!」

 

四人が一斉にアタックボールに乗り込む。

ひぃーこれどうやって操作するんだよ聞いてねぇぞ!

あ、アイツら行っちゃったぞ。

なんだあの薄情者たちは……。

 

結局見送りに来ていた軍の宇宙人さんに操縦法を教えてもらい、約10分後にベジータたちの後を追って俺も出発をしてたのだった。

さーてこれから何をしよう、5日間も何もしないで過ごすなんて地獄だろう?

俺は思い出したのだ、ケータイを持ってきていた事を!

 

ふふふ、これでかなーり時間は潰せるぞ。

俺はニヤニヤしながらケータイの電源を起動させる。

そしてまさかなーと思いながら連絡先を見る。

 

「おーのー」

 

やっぱ全員消えてんじゃーん!

一応嫁さんの番号も家の番号も覚えてるよ、かけてみたけど繋がらないよ。

うん、当たり前だね世界が違うからねぇぇ!!

……グスン。

 

そしてドラゴンボールと検索すると、漫画の事は一切出ずに七つ集めると願いが叶うと言う噂があるとかなんとか、そう言う記事がたくさんあった。

……普通にネットにも掲載されてるんだな。

これで何で世の中の人たちはこの記事を見つけないんだろう。

でも見つけてもただの噂だって思って信じないんだろうけどね。

 

俺はこの世界の人気アニメを調べ、睡眠を挟みながら5日間をケータイ生活で過ごした。

こんなにダラダラした生活は初めてだった、危うくニートに目覚めそうなってしまった。

 

 

「はー着いたぁ!」

「よし、全員揃ったな」

 

お、ベジータたち。5日ぶりだなぁ。

俺は着地とともに身体に走る衝撃に耐えながら外に出て、新鮮な空気を吸った。

ここは……何にもない砂漠地帯だな。

あっちに複数の反応があるし、あの方向に町でもあるのだろう。

 

「パプリ、クマが凄いぞ」

「あー徹夜でちょっとな……」

 

アニメ見てたなんて、言えないよなぁ。

俺は心の中で乾いた声であははーと笑った。

と言うかラディッツに名前呼び、おおぉ! ファンとしては至福でしかないよな。

ドラゴンボールキャラであれば悪役であっても名前呼ばれたいし。

 

でもまぁやっぱり悟空に呼ばれたいよなぁ。

そんな事を思いながら俺はベジータたちの後を追った。

 

「栄えてるなー」

「ふん、目障りな奴らだ」

「うまそうだな、地上げする前になんか食っていかないか?」

「ちょうど腹も減ったし何か食うか」

「あぁ」

 

と言うことで武空術でひとっ飛びで僅か3分程で着いた商店街などで栄えた町並み。

元々パプリが武空術を使えたのだろう、俺もすんなりと出来た。

パプリの身体が覚えているのだ。そう思うと立場を奪ってしまったのは罪悪感を感じた。

でも好きでなったんじゃないしなぁ。

 

何処で食べようかと飯屋を探して回る四人。

色んな人が見てくる、なんだ?

俺たちの服か? 服が変なのか?

でもこの戦闘服って変態っぽいよなぁ。

俺だって本当は着たくないし、ダサいもんな。

 

「君たちいぃぃぃ!!」

「は?」

「え、え」

「なんだこいつら」

 

……商人に囲まれた。

何だこれは物凄い押し売り根性だな。

あ、ベジータが化粧塗りたくられて女装をさせられている。

これはこれはこいつら死にたい自殺願望者らしい。

 

ご愁傷様、俺は知らない。

だってこいつら俺にもやって来たしさ……。

目障りだよはっきり言って煩いし。

だがこれもあのドン・キラー? だっけ、そんな名前のやつが決めた制度だもんなぁ。

 

お気の毒に、エネルギー波でドンドン倒れていくイメッガ星人を見ながらひゃーと呟いた。

……死んでんのかな、スカウターで確かめて見ると周りの奴らの数値は0。

死んだのか、なんかすっげーやだ。

 

宇宙人とは言え死人を見るのは誰でも辛いと思う。

俺も数時間前までは普通の一般人だったしな。

いきなりフリーザ軍に入隊だもんな、殺してェよ。

死んでも無理だけどさぁ。

俺たちの周りには巨大なクレーターが出来、多分はんけい30mは消し飛んだ。

 

「あんま壊すなよ、高く売れねぇから。それにしてもお前らのその格好傑作だな!!」

「二人とも女装似合っ……ぶふぅっ」

「死ねぇ!!」

 

俺たち、主にベジータの事を嘲笑った二人にはベジータの怒りの咆哮がお見舞いされた。

まぁ死んでないけどさ、俺あんなのやられたらひとたまりもなさそうなんですか。

俺は内心ヒヤヒヤした状態でどっくんどっくん鳴り止まない胸をコッソリと押さえつけた。

 

あれから僅か1日で俺たちはこの惑星イメッガを滅ぼした。

もちろんあのドン・キラーとか言う奴も殺した。

俺はなるべく悪人だけに攻撃し、始末はナッパやラディッツたちにさりげなくやらせた。

後は建物を破壊するだけ、人に対しての直接攻撃は俺にとっては無理があった。

 

……フリーザ軍に入るんだ。

甘さは捨てないとなぁ。

俺はお母さん! お父さん! と泣き叫ぶ小さな子供を俺は躊躇なくエネルギー波で貫く。

 

バタリと悲鳴をあげる暇もなく倒れこむ少女。

腹部と口からどくどくと出続ける血を見ながら、俺はとんでもない罪悪感に襲われた。

 

生まれて初めて、人を殺してしまった。

 

生まれて初めて、罪のない希望ある少女を殺してしまった。

 

生まれて初めて、最悪な気持ちになった。

 

「っくそ」

 

俺らしくない、やっぱり甘さは捨てないと。

非情になるんだ、甘さは命取りになる。

どうせもう俺には守るべき人はこの世界には存在しない。

俺は吹っ切れた様に前を向いた。

 

少女の死体を見つめる俺の目は笑っていない。

やっぱり吹っ切れるのは無理だなぁ。

少しずつ、慣らしていかなきゃ。

 

ナメック星に行けば、フリーザからは解放されるんだからな。

俺はそれだけの希望を背負い、皆の後を追いアタックボールで惑星フリーザに帰還した。

5日間、俺はただただ無心でいたんだ。

いや、無心でいたかった。無心じゃなきゃどうにかなってしまいそうだった。

 

人を、子供を殺した。

それは平和な世界で生きていた俺にはもっとも辛い現実であった。

 

 

「お帰りなさいませ」

「ただいま」

「あー寝た寝たぁ!」

「ふぅー」

 

各々がアタックボールから出る。

俺は、無言でベジータたちについて行く。

フリーザに報告しに行くのだ、僅か1日で滅ぼした事を褒めてくれるだろうか。

……期待出来そうにないがな。

 

「お帰りなさい、サイヤ人の皆さん」

「早いお帰りだなぁ」

「惑星イメッガを滅ぼして来ました、土地自体はあまり傷つけて居ないので高く売れるかと」

 

スラスラとフリーザに言っていくベジータ。

 

「そうですか、ご苦労様です」

「……」

 

「それだけですか?」

「ええ、他に何か?」

「い、いいえ……」

 

やっぱり、期待しなかった方が良かったなぁ。

フリーザがドドリアにどのくらいで破壊出来るかと聞き、ドドリアは30分あれば楽勝と悠々とした態度で言ってのける。

うぜぇ、ザーボンより弱いくせに。

まぁその俺はそのドドリアより弱いんだが。

 

というかこのサイヤ人四人の中で一番弱いの俺じゃね?

実質戦闘体験なんて惑星イメッガでの戦闘が初めてだし。

俺はポリポリと頬を爪で掻いた。

 

「っち、行くぞ」

「おい止めろ舌打ちをするな!」

「ラディッツ行こうぜ」

「生意気な口を叩きやがって……くそ」

 

そう言うとラディッツは大人しく引き下がり、フリーザたちの部屋から速やかに出る。

……フリーザは改心しないんだよな。

俺は何故かふとそう思った。

 

ピッコロは改心した。

ベジータも改心した。

魔人ブウさえも改心した。

フリーザとセルは改心しないのか、悪の心が強いんだよな。

 

どっちも性根が腐ってんだよ、根っからの悪だし。

何と言っても良心が無いのだろう。

どう考えても悟空の仲間にしぶしぶなると言うのはあり得ないと俺でも思った。

 

「……ち」

 

無言の舌打ち、俺たちの中で。

また静寂が訪れた。

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