ツキトside
私は今ひっっっじょおおおおおおおおおおに、不愉快な気分だ。
「改めまして、昨日付でツキト・アールストレイム卿の秘書とさせていただくクレア・マインドと言います」
「クレア・マインドか………よろしく」
昨日はあのあとナナリーにこいつの説明で時間を食うし、こいつが帰ったあと色々と怒られるし、なぜか決闘の申し込みなんてものが来てるし、まったく何もかもこの阿婆擦れのせいだ!
秘書ダァ?冗談じゃない、そんなものあのくそったれゴミ屑の純血派どもの言ったことだろうが!!
バキィッ!!
「ひっ!?」
「む?ああすまん、どうやら疲れてしまっているようだ、今日はもう帰ってくれ」
大方、私が番外のラウンズで本来あるべき補助役がいない(親衛隊など)ことをいいことに、ここぞとばかりに息の掛かった粗大ゴミをぶち込んできやがった。
しかもご丁寧にすでに日本エリアへ送ってしまったなどどフザケタことをぬかしやがってエエエエエエエエエエエエエエ!!!!
おかげでボールペンを折ってしまった、安物だが高いんだぞ!!血税だぞくそったれが!!
「い、いえ、まだ午前の9時です、勤務中なのでそれは……」
チッ
「そうだったな、では君にはこの書類を頼む」
「わかりました」
適当な書類を押し付けて、私は日本エリア防衛軍設立の発表のための原稿を考えなくては。
広報部と連携するために、彼らにも伝えた上で資料作成を手伝ってもらうことにした。
ある程度終わったところで資料を封筒に入れて広報部に向かおうとし。
「お待ちくださいアールストレイム卿」
阿婆擦れに止められた。
「なんだ?」
「資料の搬送なら私が………」
「いやいい、個人的なことだ、気にするな」
「しかしアールストレイム卿、雑用であるなら私に」
「だから良いと言っている、そもそもお前にはあの仕事を頼んだはずだ」
「………出過ぎたことを言ってしまい、申し訳ありません」
「理解力があるようで助かる」
それだけ言い残して広報部へと足を運んだ。
広報部に入るとビシッとした敬礼をされる、答礼しつつ資料を渡した。
「これは………」
「いずれ訪れる強大な敵に対する抑止力…………平たく言えば、猟犬部隊の拡大版だな」
「私たちは何をすればよろしいのでしょうか?」
「まだ企画の段階ではあるが実行へ移すつもりだ、諸君らには広報部としての能力を全力で活用してもらいたい」
「了解しました、納得のいくものを仕上げてみせます」
広報部担当の兵士は資料に目を通し、私にとって満足のいく返答をして敬礼をした。
「頼んだぞ、日本エリアのこれからは諸君らにかかっているのだから」
「はっ!………あ、その、アールストレイム卿」
「ん?」
帰ろうとしたところを呼び止められた。
「実は、アールストレイム卿に関する記事がいくつもあがっています」
「それくらいいつものことだろう」
「その、内容が………とりあえずご覧ください」
「?」
手渡されたのは新聞紙や雑誌等もろもろ、いずれも見出しは私の名前か。
パラパラと捲る。
【アールストレイム兄妹の関係に迫る!!】
【アールストレイム兄妹禁断の愛!?】
【女誑しラウンズ、ツキト・アールストレイムについて】
ふむ、私とアーニャの関係についての記事か、近親相姦だの一方的な愛だの、言いたい放題だな。
まあこうなってしまうのは予想はできていた、ただまあ、どの雑誌の出版社も本国にあるものだ、私に対する牽制、だろうな。
「ふむ、面白いことをやってくれているようじゃないか」
「あの、このような記事が国民に浸透しますとアールストレイム卿の信用に差し障ります」
「では、私にどうしろと?」
「差し出がましいようですが、会見を開くことを提案します」
この言葉は私の身を案じているようで、その実さきほど与えた資料にある日本エリア防衛軍の設立を強く思っているからだろうな。
あの阿婆擦れよりも秘書向きだな。
「なるほど、だが、このような情報が出回り始めてすぐに会見を開き、情報を否定しては、まるで知られたくなかった出来事なのだと思われてしまうのではないか?」
「そうではありますが………現在ネット掲示板においてアールストレイム卿の妹様に関しての誹謗中傷が書き込まれており、妹様のブログにも被害が出ています、事態を静めるためにも、緊急会見を開くことを再度提案します」
アーニャ………お前絶対ブログに私のこと書いただろ………。
「そういう言い方をされるとな………わかった、早いうちにやっておこう、というわけで午後に会見を開く、時間は広報部の諸君が決めてくれ」
「はっ!各所に連絡が取れ次第行います」
「準備ができたら私か、もしくは秘書の阿婆擦r………女に伝えておいてくれ」
「わかりました」
大まかに決めて広報部の部屋から出て行く、ふむ、私を前にして冷静な判断力………あの阿婆擦れよりよほど秘書向けだ、名前を聞いておけばよかったか。
まあ、広報部担当のままでいるようなら無理に引き抜く必要もないか、枠に収まらないほどの器なら迷わず引っ張ってくるんだが。
いかんせん、私の物差しでは世の中のあらゆる名器も、雑貨屋の食器コーナーに積まれた数多の量産品のひとつにしか見えない。
特筆して代わり映えしないのだ、だから、本当に欲する物こそ真に手に入らない。
………愚痴ったところで始まらん、さっさと部屋に戻ってスーツに着替えて、話す内容でも考えておくか。
と言っても、広報部あたりが原稿を用意してそうだが。
クレアside
初めて会った時は、非常に警戒されている印象、翌日の今日はうっとおしがられている印象。
完全に失敗したとしか言えないわね、ハァ。
私は転生者、性別は女で、車に轢かれて転生………なーんて良くあるテンプレ系の転生者よ。
名前はクレア・マインド、前世では本条流子、コードギアスの世界に転生してルルーシュと結婚して玉の輿、のつもりだったんだけど………。
まさかもう1人、ヤバそうな見た目にヤバそうな特典もらってそうな転生者がいるなんて、ついてないわ。
ナイトオブラウンズのアウトナンバー、13の番号と自由に行動できる権利を与えられた、例外中の例外のラウンズ、アールストレイム家次期当主筆頭、ツキト・アールストレイム。
旧イレブン、現在の日本エリアにおいて圧倒的な支持率を誇り、エリア総督のコーネリア様以上の求心力を持つ謎多き男。
優秀な人材を確保できる能力、他人種にも寛容であり、日本人のみで構成される私設部隊の猟犬部隊を設立、ゲットー周辺の整備など、日本エリアの復興に向け尽力する姿から愛されている。
性格は極端で短気、気に入らないものは放っておくか即座に殲滅するかの2択、沸点が非常に低いという報告も上がっている、親しい者には過保護になる傾向にある。
恋人がいるため人質も有効か。
剣の実力はかなりのもので、不意打ちでもない限り手傷を負わせることは難しい。
テンプレだったら、この男はfateの無限の剣製とか、アクセラレータのベクトル操作能力とか、めだかボックスのキャラの能力を持ってるとか、そんな感じだろうけど。
特に目立ったことは聞かないし、そもそも生身で戦うこと少ないからまったくわからないわ。
もしかすると専用のKMFを持ってるとかかもしれないわね、そうなると厄介極まりないわ。
でも………それなら私のほうに分があるわ。
私の特典、それは【未来予知】!
ナイトオブワンのギアスと似てるけどちょっと違うのよ、あれは極近未来を予知する能力だけど、私のはもっっと遠い未来を見ることができる!
具体的には凡そ1年後の私とその周囲の状況、そして大きなイベントの起こる時、この2つよ。
この能力を使って色々やってきたから異例の早さで昇進も出来た、怪我もすること少なかったわ、大きなイベントの予知はとても助かったわ、1年以内の出来事は予知できないのよね、1年とちょっとくらいの範囲なのよ。
3、4年くらい前から急にアールストレイムの行動が予知されて、近づくための方法、秘書になるための方法も大きなイベントとして予知できた。
今までやってきた実績もあってとりあえずそこそこの権力者の秘書にはすぐになれた、そこからコツコツやって、今やっと辿り着いた。
と思ったらこの警戒のされ具合、予知である程度はわかってたけど、まさかこれほどなんて………一応任務って形で来てるから、何かしら純血派に情報上げとかないと、秘書でいられなくなってしまう。
せっかく色々とやってルルーシュと繋がりのある人物と知り合え、その人物の監視の任務というていで日本まで来たっていうのに超絶警戒されてるし………最悪よ、もう。
愚痴ったとこで始まらないわ、アールストレイムは回りくどいこと嫌いそうだし、いっそもう転生者だってことを正直に言ったほうがいいかもしれないわね。
そう決めたところでアールストレイムが帰って来た。
「お帰りなさいませ」
「あぁ、作業を続けてくれ」
相変わらず素っ気ない。
まずは現状を変えないといけないわ、勇気を出すのよクレア!
「アールストレイム卿、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「構わない、何の用かね?」
私は自分が転生者であること、秘書になったのはルルーシュと恋仲、強いては結婚するために日本に来る必要があり、かつルルーシュと親しい人物と知り合いになる必要があったからだと説明した。
そのために神様特典の未来予知を使ってここに来たと言った。
アールストレイムは真剣な表情で話しを聞いていた、転生者とか未来予知とかの話しを笑うこともなかった。
話を終えた直後、アールストレイムが口を開いた。
「話は理解した、理解したうえで私も言おう、私も君と同様転生者だ、特典はコード保持者を問答無用で殺せる能力、それから前世の身体能力と技術の引き継ぎだ」
「随分優遇されてますね……」
神様ですら扱いに差をつける……こんな世の中じゃー。
「私の特典が通用するのは実質2人しかおらんしな、それに前世では純日本人で剣術を学んでいたから、感覚を無駄にしないためにも引き継ぎだ、あとタメ口でいいぞ」
「そう?じゃあタメ口で、敬語って結構疲れるのよね、気を使ったりしなきゃだし」
「その通りだ、私も幼少の頃から絶え間無く陛下や陛下の血族と接したせいで敬語でしか話せんようになってしまった、今はまだマシになったがな」
気がつけばアールストレイムが淹れてくれた紅茶(美味しい)を飲みながら世間話をしていた。
同族に会え、敵対することもなかったアールストレイムへの安心感か、今までの私を知っているブリタニア人が見たらビックリするくらい怠けている。
「そういえば、年は幾つなの?私は前世含めて39よ」
「私は前世含め115だ」
「おじいちゃんじゃないの………」
「長生きしたからな、ひ孫の顔まで覚えているぞ」
「どんだけ生命力あんのよ」
「2人の妻と毎日ハッスルする程度には」
「重婚してたの!?あんた日本人よね!?」
「無論、純日本人だ、元がつくがな………愛する女性が2人いて、互いの同意の元で結ばれたのだ、だから何の問題あるまい?」
情報や噂通り、というかそれ以上の人間だったことが図らずしてわかってしまった。
「とんでもない女誑しねあんた……」
「そう言うな、これでも前世は存在自体が誠実で愛の深い人間だったんだぞ?」
「いやいや想像できないってそんなの、ってか誠実なんだったらどっちか1人に絞りなさいよ」
「どっちか1人を取ったとして、もう1人が何処の馬の骨とも知らん男にやりたくなかったからしょうがない」
「せじゃなくて独占欲の塊じゃないの、私なら、もし、2人の異性を同時に好きになって、2人の異性から告白されたなら……悩んで悩んで、悩み切って、どちらか1人を選ぶわ」
「確かにそれも正しいのだろう………だが私は、どちらかを選び、どちらかを選ばなかった時、選ばれなかった彼女の悲しい顔を見たくなかった…………ふふっ、私は弱い、友人や家族に強い強いと言われているが、私ほどに弱い奴などおるまい…………女性の悲しい顔を見たくなかったがために、選べなかったのだから」
な、なんだか一気に重くなったわ、ど、どうしましょう?さっきは自分の中にある恋愛像っていうか希望っていうかそんな感じのを言っただけで、私自身に恋愛経験はないのよお!?
こういう時って慰めるのがいいの?それとも『甘ったれんじゃないわよ!』とか言って説教?うぅ〜〜、わからないわ。
「ま、それも前世のことだ、今はブリタニア人でしかも重婚にもある程度寛容だ、重婚しても別に悪くはないだろう」
「チッタァ反省しろい!!!」ブンッ
「危ないではないか」パシッ
思わずタウ◯ページの角で殴りかかってしまったのは仕方ない、でもなんでもないように表情を変えずに片手で止められたのは納得いかないわ。
「ハァ、まあいいわ」
「………ふむ、時にクレア、何か特技はないか?」
「は?特技?」
「あぁ、この際だから言うが、私はルルーシュとナナリーに近い場所にいる、物理的にも精神的にもな、そうなると従僕である私は2人を時には楽しませることも仕事のうちある」
「…………あ、なるほど」
「ん?」
「あぁいや、私の未来予知で見えたことなんだけど、誰かに私の特技を伝授するーみたいなことが予知できてさ、多分これかなって」
「ふーん」
もうちょっと興味ありそうな反応してくれないかしら!?
「それじゃあ私の特技なんだけど、前世で小さい頃からやってた、というかやらされてた糸繰り人形の操作よ」
「糸繰り人形?」
「フランス語でマリオネット、て言えばわかるかしら?」
「それならわかる」
「私はマリオネットを自在に動かせるわ、どれくらいかっていうと、剣を持たせた人形同士で斬り合いができるくらいかしら」
「おぉ!それは面白そうだ」
お、食いついたわ、このハーレムスケベジジイ。
「………なあ、今とても失礼なことを考えなかったか?」
「気のせいよ………さっき言った剣を持たせた人形同士で斬り合いができるのは、せいぜい片手で操れる小さいやつだけ、大きいやつだと両手で、かつ息のあった相手がいないと無理ね」
「それでも動かせるのだろう?今度私に教えてくれないか?」
「え?仕事あるんじゃないの?」
「番外のラウンズに仕事なんて言えるものはほぼ無い、こうやって、地方のエリアの政治に口出しして、そのお目溢しをいただいているに過ぎん」
「つまり?」
「ここ(総督府)にいるだけの給料泥棒だ」
「そう言うとただの屑よねあんた」
本当にハリボテのラウンズね。
「まあ、ルルーシュ様とナナリー様の生活の為ならば、後ろ指さされようが構わないが………というかクレア、ルルーシュ様とナナリー様のことは何があっても秘密だぞ?今はまだ存在を秘匿していて、時が来るまで準備中なのだから」
あー、なるほど、こいつが頑張ってるのはルルーシュとナナリーのためだったのね。
今考えるとこいつの出した政策って、日本エリアの治安回復に繋がってる、それに黒の騎士団との共存で支持率も高くしている。
これはルルーシュとナナリーが皇族復帰後も日本エリアでの定住を望んだ場合を考えて、現地の日本人の感情を良い方向に持って行っているのね。
確かに犯罪の発生率は数年前と比べれば雲泥の差、ゲットーの瓦礫撤去と病院設置後は出生率も高くなってきている。
市場ができてモノとお金が流通しているし、格安のアパートの建築によって新しい家庭を築きやすくなった。
これだけ手厚くやっていれば、アールストレイムの支持率だけじゃなく、その主のルルーシュやナナリーが皇族に復帰したとき、ルルーシュとナナリーの支持率もアールストレイムの支持率に便乗して高くなる。
将来をしっかり見据えてよく考えてある………そしていよいよルルーシュを皇帝に、ナナリーを日本エリア総督に推薦する。
原作ではシュナイゼルすら凌ぐルルーシュなら問題なく皇帝になれる。
ナナリーはアールストレイムの便乗効果で支持率がもともと高いんだから、反発者はほぼ無いと言えるわ、抑圧ではなく、共存の政策を行ってきた日本エリアで再び抑圧の政策を取れば黒の騎士団が黙ってないだろうし。
そもそも黒の騎士団はルルーシュの軍隊だしなおのことね。
改めて考えてみると、アールストレイムマジやばいわね。
「わかってるわよ、今ルルーシュとナナリーのことがバレると面倒だってことくらい………でもいいの?原作から剥離しているとはいえ、シュナイゼルあたりが2人に勘付いてそうだけど」
「あいつはルルーシュ様が殺すから問題はない、だが確かに、シュナイゼルから他の人間に情報が流れたら厄介だな」
「ま、面倒なことにならないように、適当に報告書を書いといてやるわよ」
「あぁ、そういやクレアはスパイだったか」
「そうよ、あ、見返りは私のことをルルーシュに売り込んでくれればいいわ」
「それだけでいいのか?人形の操作と情報操作に見合わないと思うのだが」
いやむしろこっちのセリフ、人形の操作と嘘の情報を流す見返りが次期皇帝とお近づきになれる権利とか………やばいわ。
「私が転生した目的はルルーシュと結婚して平和に暮らすことなのよ、それにいずれは皇帝になるんだから、玉の輿も狙えるわ」
「強かだな………だが、ルルーシュ様の妃はそれくらい強かでなくてはならん、わかった、ルルーシュ様にはそれとなくクレアをアピールしておこう、デートのセッティングは任せろ」
おぉ?アールストレイムには意外と好印象みたいね。
「任せたわよ、それじゃ………書類整理に戻るわね」
「あぁ、その書類が終わったら、この連絡先にメールしてくれ、私は少し出て来る」
そう言ってメールアドレスの書かれた紙を渡される、いやこれって赤外線で交換した方が早くない?
変なとこアナログよね……。
「わかったわ、行ってきなさいな」
「うむ、ではな」
部屋から出て行くアールストレイム、先ほどまで止まることなく会話していたの静寂が久しい。
時計を見ると1時間が経っていた、書類の山を見る。
…………まあ、今日中には、いけるかしら?
クレア・マインド
性別:女性
年齢:19歳
身長:167cm
体重:秘密よ
スリーサイズ:捻り潰すわよ
仕事:ツキト・アールストレイム卿の秘書
特記事項:転生者
ルルーシュと結婚してキャッキャウフフしたくて転生した、前世では人形劇をやりながらサーカスで生計を立てる一家の娘として人形について教育させられた、おかげで幼くしてプロ顔負けの技術を会得した。
しかし近所の幼稚園で人形劇を行なった後、帰り道で車に轢かれて死亡。
テンプレよろしく転生、転生後は特典の未来予知能力で上手く生きてきた。
ツキトを転生者と見て自分は転生者であると打ち明け、ツキトの邪険にするような態度が一転、気の許せる友のように接するようになった。
ツキトに対してはお姉さんのように偉ぶって見たりするかわいい(?)一面も。
前世では経験無し、なので39歳の独身処女ということになる