VS
ブリタニア・ユーロブリタニア混成軍総兵力約231万8000
兵力差、144倍!?
(ユーロピアの敗北が)見える見える
絶望が………深い!
ツキトside
「壮観だな」
見渡す限り、文字通り地平を埋め尽くさん限りのKMF、戦車、装甲車、兵員輸送車。
空を見上げれば鳥の群れの如く大量の戦闘ヘリコプター、ここには見えないが後方から戦闘爆撃機が離陸している。
さらにその後方には超超遠距離砲撃用の巨大列車砲が線路を敷きながら目標を照準中だ。
地上と空を征服したかのような圧倒される光景、その中心のトレーラーにて、私はマルドゥック中佐、改め、マルドゥック大佐と共に戦地へと向かっていた。
最終決戦の地、かの要塞、いや、要塞化された古城、『ヴァイスボルフ城』へと包囲網を狭めつつ進軍していた。
「はい、ユーロブリタニア軍の総力を結集したユーロピアとの最終決戦、自然と気合も入るものです」
「満願成就の夢が叶うのだものなぁ………だからと言って、あんな骨董品を持ちだすか?」
そう言って見上げた空には巨大な影。
「どう見ても250m程度には見えん…………300mクラスではないのか?」
「資料には、340mとあります」
「なんともまあ………好き者もいたものだ、時代錯誤感が否めんよ、本当に……」
マルドゥック大佐が寄越してきた資料を読むと頭痛がしてきた。
「同感です、名前も狙っているとしか」
「『グラーフ・ツェッペリンⅢ世』…………かの巨大飛行船を上回るデカさとは、設計者の脳みそを疑う」
ドイツの軍用飛行船LZ127『グラーフ・ツェッペリン』、巨大飛行船産業を一代で築き上げたフェルディナント・フォン・ツェッペリンと同じ名を冠した巨大飛行船。
目の前のあれはそれのスケールアップ版と言ったところか。
「240mほどの全長が、一気に340mにまでなるとは、肥えたな伯爵」
「パレード用の巨大飛行船として、『グラーフ・ツェッペリンⅡ世』の改良とスケールアップを目指して開発されたそうです」
ボヤいているとマルドゥック大佐の解説が耳に入ってきた。
「全長340m、直径68m、ガスは不活性ガスであるヘリウムを使用し、乗員およそ130人、乗客およそ200人が搭乗でき、12基の大出力モーターを搭載、最高速度は140kmまで出せるそうです」
「馬鹿でかいだけの空中目標艦ではないか」
「しかし、現在のグラーフ・ツェッペリンⅢ世は全体に汎用性の高い軽金装甲を施し、重要区画には複合装甲を貼らせています、50口径クラスの対空砲火は高度によって無効化でき、40mmクラスの対空砲までなら複合装甲が重要区画を防ぎます」
「軽金装甲で防げるのは重機関銃程度か…………さすがに20mmクラスの対空砲は無理か」
「残念ながら脆弱なのはどうしようもありません、ですが今回の作戦では敵要塞から超遠距離空中で待機し、攻撃指示があれば40mm機関砲及び155mm榴弾砲による支援砲撃を行います」
「そうか、それなら……………おいまて、今なんと?」
聞き間違いだろう、そんなことあるはずが………。
「40mm機関砲及び155mm榴弾砲による支援砲撃を………」
「なぜ積んだ!?馬鹿か!?155mm榴弾砲だぞ!?砲兵連中が運用するクラスの巨砲などなぜ積んだ!?」
「それが…………接収された当時、飛行『船』であることでユーロブリタニア海軍所属になったのですが、ユーロブリタニア軍にはあの飛行船を維持できる費用がなく、ブリタニア海軍に譲渡したのです、その飛行船が今作戦に参加すると聞き資料を見たのは先ほどでして…………」
155mm砲を載っけて送り返すとか何のジョーダンだ!?ブリタニアジョークってか?阿呆か!
「しかも、この榴弾砲2門ありまして……弾薬も合わせ相当な重量です」
「2門ものっければ当然であろうに……」
改めて空に浮かぶデカブツを見上げる、あんなものに155mm榴弾砲が2門とその弾薬も積んでいるとなればそうもなろう。
それに、積んだだけでなく、射撃可能にしたのだ、ならば単純に考えて補強等で重量はかなり増えているはずだ。
「大型自走砲二両に匹敵する火力が、超遠距離、それも空中から投射されるなど敵からすれば考えたくもない悪夢だな」
「全くです、これについては、ドクター・アスプルンド伯爵に感謝です」
「は?アスプルンド?………よもや、日本エリアのロイドがやったのか!?」
「飛行船の軍事再利用案の中にあったアスプルンド伯爵のものを採用したと聞いております」
あいつがやったのなら納得もする。
「そうか、ロイドが…………暇みたいならまた仕事を押し付けておくか」
「!?(アスプルンド伯に命令できるのか!?とんでもないお方だ………)」
あんなバケモノの設計案を作ってるくらいだし、暇なことは確定だろう、帰ったらヘンゼルとグレーテルの集中メンテをさせてやる。
「グラーフ・ツェッペリンⅢ世は要塞からどれくらいの距離をおく?」
「弾種を榴弾と想定して、初期位置は要塞からおよそ16km、高度は9000ft〜12000ftとする予定です」
「よろしい、しっかり当てるように言っといてくれ」
「了解しました」
強力な空中火力支援が受けられるとは、嬉しい誤算だ。
定点射撃のできるガンシップと捉えても良い火力、いやそれ以上だな。
しかし…………155mm榴弾砲が据え置きとはいえ、6000tはあるものを2つも積むとはなぁ。
やはりロイドは天才(バカ)だな。
「ヘンゼル、グレーテル、KMFのチェックは終わったか?」
近くの無線機で2人のKMFに繋いでそう聞く。
『異常なしですよー』
『こっちも異常なし……』
「あと数時間で配置に着く、それまで休んでおけ」
『わかったけど…………ちゃんと約束守ってよね!』
『でないと働かないわよ』
「わかったわかった、今回の戦い、私は出撃しない、それでいいんだろう?」
パリから帰ってきたらものすごい剣幕でヘンゼルにそう約束をこぎつけられた。
いったいなんだと言うんだ?………まあ、接続元の私が死んでしまってはこれまでのデータがパァになってしまいかねないから言ってるのだろう。
「カーライル様、グラーフ・ツェッペリンⅢ世が回頭します」
「ほう」
飛行船の回頭、緩やかにカーブしていくさまは妙な安心感があるな。
「戦争が終わったら、武器を下ろして遊覧飛行でもしたいものだ」
「同感です」
さて、あと数時間はあるわけだし、周囲の地形でも頭に入れておくか。
noside
「長かった戦争も、これで終わるんだ………」
「やっと、やっとだ」
「あぁ…………そうさ、戦争は、終わる!」
「おぅ!………おい、お前どうしたんだ?具合悪いのか?」
「いや違う…………俺の、お祖父さんがよ………フランスの騎士の家の生まれでさ、それを思い出しただけだ」
「そいつは……………すまん、なんつったらいいかわからねえ」
「気にすんなよ、俺も、これについてどう思ってるのか、答えが出てねえからさ」
「そっか……………俺には弟がいてよ、それが良くできた弟でな、小さい頃からピアノが上手に弾けるってもんで、神童だなんだと言われてたんだよ」
「すげえじゃねえか」
「あぁ、すげえ奴さ、でも神様ってのはとことん天才とか神童とかが嫌いみたいでな………開戦から数日後に、ピアノのコンサート会場が爆破された」
「「「……………」」」
「はっ………どこに爆弾があったかわかるか?ピアノの中にあったんだと、犯人が捕まって裁判で犯行動機を聞いたら、弟にドイツ人の血が流れてるからだとよ…………くそっ」
「そんなくだらねえ理由で…………」
「戦争ってのはそんなもんだ、ってのをよく思い知らされたさ…………皮肉かねぇ、もう3年は前線で戦ってきたが、人殺しに躊躇したことがねえんだ」
「俺もお前と同じさ、人が死んでも悲しいなんて思えなくなっちまった、目の前に人の死体があっても、ネズミの死骸でも見てる気分になる………」
「そもそもよ、俺たちって本当に生きてんのかな?本当はもう死んでて、天国に行けずに戦場を彷徨ってる亡霊なんじゃ?」
「は、ははは!そいつは良い!傑作だ!俺たちは死んでも死にきれねえ幽霊!クソみてえな神様をぶん殴るために、最終決戦を戦ってやろうって展開か!」
「漫画かよ!…………だが悪くねえな、俺がもし戦いで死んだとして、そしたら美人のワルキューレに会えれば満足だぜ」
「天国に行っても地獄に行ってもナンパするきか?ちょっとは相手選べよな」
「あー?べっつにいいだろが!天国なら女神サマ、地獄なら閻魔サマ(♀)だ!」
「ちげえねえ!」
「へへ!」
「冴えてるぜまったくよお!」
『全軍に告ぐ、間も無く、敵射程圏内に入る、幸運を』
「おーい、そろそろだ!歩兵第1小隊、死ぬ準備はいいか!?」
「「「「「「YES.Sir!」」」」」」
とある兵員輸送車の会話より
ツキトside
フランス地方の戯曲家、ジャンル・ジロドゥは、四大精霊の中でも水を司る精霊オンディーヌと騎士ハンスの悲恋に満ちた作品を作った。
物語の中でオンディーヌとハンスは恋に落ち、水の精霊であったオンディーヌが魂を得て人間界へとやって来た、しかしハンスはオンディーヌの天衣無縫な行動に嫌気が指した。
お転婆なお姫様の子守でもやってる気分にでもさせられたのだろう。
ハンスはオンディーヌへの嫌気からかつて許嫁であったベルタに、その恋心を移していく……………。
だが、オンディーヌは人間界に来る前に、ハンスがオンディーヌを裏切った時は殺しても構わないと契約が交わされていた、そして、裏切り者のハンスは、怒れるオンディーヌによって遂にその命を………………といったところか。
ヨーロッパ全体に言えるが、水に関係する精霊が関わった人物は大抵大変な目にあっているな。
このオンディーヌの物語のハンスもそうであるが、有名なのはアーサー王伝説における湖の精霊(湖の乙女)たちとそれに関わってしまった者たちだろう。
湖の精霊たちが作った聖剣エクスカリバーを持つアーサー、同じくその姉妹剣ガラティンを持つガウェイン、あろう事か母親の元から拉致され湖の精霊に育てられたランスロット、母親を殺されたベイリン、宮廷魔術師マーリンを監禁する。
など、重要人物にことごとく関わり不幸を伝染させている。
なぜこんな話をするのか?それはな…………。
「緊急入電!!別動して先行中だったユーロブリタニアの騎士団が、進路状の『湖』の迂回中に敵軍の攻撃により損害大!2/3が損失、残る1/3についても補給の問題からこれ以上の前進は困難!」
こんなことになっているからだ。
「敵の攻撃手段は?」
「おそらく、巨大爆弾か何かによる空爆かと…………」
森の中を進むKMF隊をよく見つけ……………いや、騎士団のKMFといえば金とか赤とかだったか?目立つ色してればそうもなろう、残当。
「ふむ…………騎士団の総括のシャイング卿はなんと言っている?」
「はっ、『損害・士気損失大なれど前進可能』とのこと」
「難しいな………」
2/3が一瞬で消し飛んでなお前進を続けるのは補給や士気の問題から非常に難しい。
エリート集団のユーロブリタニア騎士団といえど、所詮は貴族のボンボンの集まり、不利と悟ったときに逃げ腰になるのはよく知っている。
メンタルブレイクした騎士団は、一般兵科のほうがまだマシなくらいに弱体化している、できれば後退させたいところだが………。
「後退しろ、と言ったところで反発は確定だろうな」
「騎士団も意地がありますから、説得は困難かと」
なら、残る選択肢は一つしかないか。
「よし、そのまま騎士団を前進させろ、接敵次第攻撃を開始させろ」
丁度いい機会だ、邪魔だったからここで潰そう。
「よろしいのですか?」
「やつらは『行ける』と言っていて、我々本隊よりも先行している…………ここは騎士団を先にぶつけ、敵要塞に風穴を開けてもらい本隊の到着まで粘ってもらおう」
「わかりました、文はどのように?」
「『貴君らの誉れ高き騎士道精神を陛下に見せるべく、敵要塞に強襲攻撃を敢行し、勢いそのままに撃滅せよ』と送れ」
「(この文では玉砕になるのでは…………いや、何かにお考えがあるのだろう)了解、通信手、騎士団にこれを頼む」
「はっ!」
「マルドゥック大佐、騎士団を除く本隊全部隊に通信を繋げてくれ」
「はい、通信手、本隊全部隊に繋げ」
「了解しました、調整中…………チェック………オーケー、繋がりました!」
「傾注!ツキト・カーライル様より御言葉!」
通信機を受け取り、ひとつ深呼吸をしてスイッチを入れる。
「皇帝陛下の元に集い、恒久平和と始祖の地の奪還を目指し闘う戦士諸君!我らに先行して出発した騎士団が、敵の爆撃によって壊滅の危機に瀕した!実に、2/3以上もの戦力が損なわれ、地形と距離によって補給も難しく、前進非常に困難であると思われた…………しかし!彼らは誉れ高き騎士としての意地を皇帝陛下に見せんと、前進を継続する意思を決定した!そして、誰よりも先に敵陣を突破せしめ、我ら本隊の到着まで持ち堪えてみせようと、いっそ我らが来る前に降伏させてやらんとばかりに私に進言し、彼らは進んで行った………その高潔な騎士道精神に、諸君は感じるものがあっただろうか?悲哀を感じたか?奮起したか?呆れたか?私は、震えた、これほど!これほどまでに気高き魂が!仲間の死を乗り越え、なおブリタニアの未来のため死線へ飛び込む彼らに、私は……私は!ぐっ…………涙を抑えられん!!遥か先を進む彼らの志を!私は今!魂で感じている!…………忠勇なるブリタニアの戦士たちよ!我ら如何なる邪神の神罰にも屈せぬ者であることを証明せよ!」
こんなもので良いだろうか?
「マルドゥック大佐、各隊の様子を…………マルドゥック大佐?」
「(カーライル様………あなたが、神であられるのですか)……………はっ!?か、カーライル様………い、今すぐに、つ、通信手!」
「も、モニター回します!(カーライル様のカリスマやべえ!)」
さっきまでの落ち着きようはどうしたんだ?決戦が近づいてくるのを感じてうろたえたのか?
おお、車内でスクリーンを出せるなんてすごいな、ブリタニア軍にもこういう車両が欲しいところだ。
…………モニターの向こう側で目の座った狂信者のような兵士が見えるんだが。
「おい、こいつら大じょ…………いや待て、まずこいつら生きてるのか?死体じゃあるまいな?」
「生きている………はずです、いえ生きてます、はい」
「戦争の終結を決める重要な一戦だというのに………まあ、気迫は伝わってくるからよしとしよう」
感極まっている…………と思っておくとしよう。
「さて…………ヘンゼル、グレーテル」
『はーい、こちらヘンゼルー』
『………んっ?……あー、はーいグレーテル』
あいも変わらず寝てやがったか、まあいい。
「テストだ、感応波を切断する」
さあ、ブリタニアの最高技術の結晶体、アンドロイドの最高峰………。
『へー………ついにやっちゃうわけだ?』
『データは十分だけど、時間は足りてるとは言えないわ』
「『私』であるのなら時間などどうとでもなろう?」
【私だけの軍隊】の力を。
「タイミングは知らせる、切断後は速やかに戦闘に参加するように、それまでは待機だ」
『ふふーん、面白くなってきたー!』
『やっと、私たちの本来の性能を見せられるわけね…………やってやろうじゃないの』
『珍しくアツイわねグレーテル、わかるわ、私もそう、武者震いっていうの?震えが止まらなくてヤバイの』
『ねえオリジナル、色々試したいんだけど、いいかしら?』
「好きにしろ、戦いの歓喜を感じて暴れるも良し、殺戮を楽しむもよし…………存分に発揮しろよ?私の大事な大事な………機械人形」
さあ、戦争を終わらせようか。
アンドロイド技術の最高峰、ヘンゼルとグレーテルの能力全開放なるか?
そして、シャドウバースをプレイする作者の元に、狂信の偶像は来るのか?