やはり赤羽業(カルマ)の悪戯はまちがっている。 作:sewashi
奉仕部室にノックの音がした。
「し、失礼まーす」
入って来たのはお団子頭のギャルっぽい茶髪の娘だった。えっと、たしか同じクラスで……
「な、なんでヒッキーがここに!?」
……ヒッキー? 誰の事?
「……いや、俺ここの部員だし」
比企谷君の事のようだった。知り合いなのかな?
「って、カルルンまでいる!?」
あ、思い出した。由比ヶ浜結衣さんだ。初対面でいきなり『カルルン』とか『カルマン』とか変な呼び名で 呼んできたから、にせゴキブリを机に仕込んでやった娘だ。
あのときのリアクションは面白かったな~。
「まぁ、とにかく座って」
「あ、ありがと……」
由比ヶ浜さんは椅子に座る。
「由比ヶ浜結衣さん、ね」
「あ、あたしのこと知ってるんだ」
「全校生徒おぼえてんじゃねぇの?」
「そんなこと無いわ。あなたのことなんて知らなかったもの」
「へぇ、俺のことは知ってたのに」
「あなたは知られていない生徒の方が少ないわよ」
そうかな? まあ、悪戯やり過ぎたかな?
「なんか……楽しそうな部活だね」
「でしょ?」
「どこがだよ。赤羽も同意するなよ」
「え~、最近は二人がどんな下らないことで言い合いをするのかが悪戯の次の楽しみになりつつあるんだけど? 悪戯よりも二人の下らないことでの言い合いが面白くなれば俺は悪戯をやめられるしいいことだらけじゃん」
「そんなことで更正されるのは非常に不愉快だわ、由比ヶ浜さんも私達の会話が面白そうとか思ったのなら余計に」
雪ノ下さんが俺に冷たい視線を送る。そして由比ヶ浜さんは……
「あ、いや、そうじゃなくてヒッキーがごく自然に喋ってるから。教室じゃぜんぜんしゃべんないし」
「あっはは、だよねー。俺が話しかけてもぜんぜん反応しないし、悪戯のしても反応がないから面白くないし」
「ちょっとまて、お前俺に何かしたの?」
「一昨日、背中に『わたしはバカです』シールはったよ?」
「まさかヒッキー気づいてなかったの……今も張られっぱなしだし……」
「なにやってんだよ!?」
比企谷君が上着を脱いでシールをはがす。
そして雪ノ下さんが言う。
「そういえばあなたたち三人ともF組だったわね」
「え? そうなの?」
比企谷君。知らなかったんだ? そういえば俺の時も知らなかったような……
「そんなんだからヒッキー、クラスに友達いないんじゃないのキョドり方とかキモいし」
比企谷君は由比ヶ浜さんに言う。
「このビッチめ」
「ビッチ言うなし、あたしはまだ処――なんでもない!?」
「そうだよ、比企谷君。この程度の人をビッチ呼ばわりしたらビッチに失礼だよ」
「そうだよホントに失礼――って待ってカルルン!? ビッチに失礼なの!? あたしに失礼じゃないの!?」
「ん~、俺、中学の時に世界一のビッチ見てるから」
「世界一のビッチってなに!? その嬉しくない称号!?」
「本当に赤羽はどんな中学生活してたんだよ……」
うん、想像も出来ないような中学生活してたよ。
「参考までにその世界一のビッチとはどんな人かしら?」
「えっとね、男をオトす千のテクニックをもって、十か国語を話せて、そのわりに同僚の体育教師にコロッと惚れた巨乳金髪」
「わからないわね……聞くかぎりじゃただの英語教師だわ」
だよねー。あの先生の凄さは実際に見ないとわからない。ただのかは別として……
「それに別に由比ヶ浜さんも気にすることではないわ。この年でヴァージ――」
「わーわーわー、なに言おうとしてんの!? 高二でまだとか恥ずかしいよ、雪ノ下さん女子力足りてないんじゃないの?」
「女子力ってのがビッチっぽいよな」
「だね~、由比ヶ浜さんも女子力足りてない証拠だ~」
するとさすがに怒ったのか由比ヶ浜さんは……
「こっの……っ! ホントウザい! つーか、マジキモい! 死ねば!」
死ねば。ねー……
「きやすく死ねとかいってんじゃねえよ、ぶっ殺すぞ」
「――あ、ご、ゴメンって、ヒッキーも言ってるし!?」
俺も言ってやるか。渚君直伝の台詞を……
「お前ら、本気で殺そうとしたことなんて、無いくせに」
由比ヶ浜さんと比企谷君は少し怯んだ。そして雪ノ下さんは話を変えるように言う。
「それで由比ヶ浜さんは依頼かしら? 話が随分脱線したけど」
「へ? あ、うん。えっと……」
由比ヶ浜さんは何やら俺と比企谷君を見ながらもじもじしながら言う
「……ちょっと、スポルトップ買ってくるわ」
比企谷君が部室を出ようとする。
「比企谷君。私は野菜生活100いちごヨーグルトミックスでいいわ」
雪ノ下さんがパシった。
「じゃあ俺は――」
「赤羽も来るんだよ」
俺はそう言われて比企谷君に腕を捕まれて教室を出たのだった。
次回は木炭クッキー編。