新・東方心暗伝~Coexistence of light and the darkness~ 作:あいすのお兄さん
今回は明るい話にしてみました。前回が暗かったので、ふわっとした感じにしたいなって思った先がこれだよ(泣
それでは本編どうぞ
気絶した少年の傍に、一人の男が立っていた。闇を纏った、男。
姿は人間だった。漆黒の黒い髪に、見ていると吸い込まれそうになるような、純粋極まりない黒い瞳。服装も黒をベースとしている。好きな色なのだろうか。
ここで、彼が裂けんとばかりの笑みを浮かべて口を開く。
「ク……クク。お上手にここまで戻って来れたなァ。さて、俺はもうちょっと準備が必要だし、消えるか。感謝するよ、赤髪の少年」
そう告げて、ヒュンと闇の中へ消えていった。
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空を見上げるような形で目が覚めた。
どれくらい寝ていたのだろうか、視界がぱっとしない。全てがぼやけて見える。
おぼついた視界でなんとなく見た感じでは、辺りは自然に囲まれた森林地帯。他は鳥がパサパサと音を立てて飛んで行くのが見えるくらいで、特にこれといったものはなかった。
ちょっと体を動かしてみよう。
手をグー、パー……動く。そのまま腕の関節を曲げ、手を顔に……動く。足の指も同じく、動く。
他にも色々試したが結果として、特に体に変化はないようだ。ちょっと気怠いだけ、という感じか。
とりあえず上半身だけを起こし、これまでの経緯について考察を始める。
そもそも何故こんなところで寝ていたのだろうか。
「……アイツらに、金属バットで殴られて、それで……」
バットで殴られて、普通森の中にいるだろうか?答えはノーだろう。なら何故こんなところにいる? アイツらに、証拠隠滅の為にでも捨てられたのだろうか。親とかいないから捜索願いとかも出されないだろうし。
様々な考察が交差する中、不意に「あーん」という声が後ろから聞こえた。因みに擬音ではない。
気配も音もしなかったのにいきなり音が聞こえ、驚いて振り返ってみるとそこには。
口を大きく開け、いただきますという状態の頭に赤いリボンをつけた金髪幼女がいた。
いきなり過ぎる事に全く反応する事が出来ず、少年と金髪幼女は頭と口内でスキンシップを行った。刹那、少年の頭に鋭い激痛が走り、森の中へ雷鳴のような悲鳴が轟いた。
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噛みつかれた少年は頭に歯形を残し、幼女に問い詰めていた。
「……なあ、なんでいきなり噛みついてきたんだ?」
げんなりと脱力感に満ちた声だった。それを聞くと、噛みつきが相当なものだったのだろうと容易に察する事が出来た。
一方幼女の方は、たいして罪悪感を感じていないようで、
「だってお兄さん、美味しそうだったし。お腹空いてたし」
サラリと答えた。
そのサラリとした発言に少年は違和感を覚えた。美味しそうだった?
「美味しそうだったって……おいおい。そんな人食いみたいな事して遊んじゃダメだろ。危ないぞ?」
ちょっと馬鹿にしたように少年は幼女に注意する。
しかし肝心の幼女は大真面目に、
「人食いだよ?」
と言い張った。ちょっとドヤ顔が混じっているところがポイントだ。
その発言にはさすがの少年も抑えきれず、盛大に吹き出してしまった。そして次に腹を抱えて笑い始める。
その反応を見た金髪幼女は、可愛らしい小顔を赤く染め、むっと顔を膨らまし、
「うっ……嘘じゃないよ! 本当だよーッ!!!」
ポカポカと少年を叩いた。が、所詮子供は子供。16であり、いくつもの戦いに勝利してきた少年にはただの可愛らしい仕草にしか見えていない。叩いている当の本人は意外と笑われた事が悔しかったのか、涙を目に溜めていた。それを見て、少年は思う。
(可愛いな……うん)
思いつつも笑う事は止めなかった。
この状態が続いて一分ぐらい経った頃だろうか、幼女は叩く事すら止め、手を目の辺りに充てて本気で泣き始めてしまった。これはマズい、やり過ぎた。と少年は幼女をあやす事を試みようとした。しかし、そんな幼女との触れ合いイベントなんて起こった事など一度もない。あやし方が全く分からない。ただ、このまま泣いている子供を放っておくのは酷だろう。
そこで、頭を撫でてみた。それは不器用な手つきで、グシャグシャと髪を崩させるような撫で方だった。
次に少年は、幼女の背中に優しく手をかける。その後にギュッっと抱いてあげた。外からすれば少々おかしい事かもしれないが、少年はそれでいいと思った。現に幼女はさっきよりも泣き止んでいるからだ。
そして二回ほど背中を軽く叩き、
「よしよし、ごめんな? ちょっと笑いすぎたよ。ごめん」
その言葉を聞き、グシャグシャな顔と声で、
「うぅ……お兄さんの、ばかぁ……」
と言った。その時の幼女は安心感に満ち溢れていた。
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しばらくして幼女が落ち着いた。少し会話をしていると流れで軽く自己紹介をしようということになった。
先手は金髪幼女の方で、
「私はルーミア。結構前から森に棲んでるの」
「森に棲んでる? 家とかはないのか?」
「ないよ。いつもふよふよその辺を飛んでるだけ」
「と、飛んでる……?」
さて、出た先から訳が分からなくなってきた。家なし親なし(会話の流れから恐らくそう)の幼女ルーミアは、その辺をふよふよして生活をしているというのだ。食事はどうしているのだろう。
ここでさっきの人食い発言が脳裏を横切ったが、それはないと頭からその考えを押し出す。嘘であってほしいものだ。
「ところで、お兄さんの名前は?」
「ん、俺か? 俺はな……」
修造だっけ?
違う、これ確か熱い人。
友藏?
これも違う、毛がない人だろこれ。
光秀?
いや別に本能寺に敵はいない。
…………………………あれ?
待って、ちょっと待って。
名前が出てこねぇのですが。
「どうしたの?」
「い、いや何でも……名前だろ、名前。名前……」
どうしてか、いくら考えても名前が出てこない。
それだけではなく、昔の記憶が少し飛んでいる気がした。どの辺がどうやってかは不明だが、とにかく出てこない。
「……ごめん、なんか名前が出てこない」
「え、それってもしかして記憶喪失?」
「妥当な考えかな、って思う俺とはいったい……い」
これでこの子にも何度謝ったかな、とかどうでもいい事を頭の隅に置いておくとして、今は記憶がないことの方で頭がいっぱいだった。
「じゃあ、今自分で名前つけちゃえば?」
突然言い放った爆弾。ルーミアは少年の表情や思考などを特に気にすることなく、あくまで軽い口でそう言ったのだ。
すかさずそれに突っ込みを入れようとした少年だが、それ以外に策が思いつくはずがなかったので仕方なくその考えを受け入れることにした。
少し考える。すると、命名の神はすぐに落ちてきた。
「……シンヤ」
「しんや? それが名前?」
「パッと思いついたんだ。なんというか、直感的な」
「じゃあ漢字は心に夜で『心夜』なんてどう?」
いいネーミングセンスだな、という事で
「じゃあ、今日から俺の名前は心夜だ。よろしくな、ルーミアちゃん」
「うん、よろしくね。心夜。あ、ところでこれからどうするの? ずっとここにいたら餓死するかも……」
「え……それやだな。何か情報ないか?」
幼い子に情報を求める高校生。そして、その幼い子が出した答えが
「博麗神社、行ってみたら?」
というものだった。それを聞いた心夜はサッパリといった感じで、
「どこそこ。知らないんだけど」
「知らないの? 場所は結構有名なんだけど……ん、そうだ。途中までなら私が一緒に行くけどどうする?」
「お、マジで? じゃあちょっとお願いしちゃおうかな」
「うん、任せて!」
ルーミアは嬉しそうな笑顔を心夜に向けた。
そして二人は、『博麗神社』に向かって歩き始めるのであった。
さて、お疲れ様でした。
今回はまだ幻想入りした事などを主人公である『心夜』が知らない状態で書いてます。主人公の雰囲気を掴んでいただけたらなぁと。また、ルーミアと出会った事で色々…
さてさて、次回は幻想入りについて触れるか、それとも……って感じです。また、小説への批評をあいすは心待ちにしております(
とりあえず今日はここまで
それではっ!