カゲロウデイズ もう一つの夏の日々   作:劉騎913

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呼び出された17日

 

 

シンタローside

 

倒れた女の子の付き添いとして、俺達は救急車に乗ることになった。それが災いとして、モモが通っている神無月高校近くの如月総合病院に着いた途端に、俺は近くの階段でマーライオンと化した。

何を隠そう俺の嘔吐中枢は、凄まじく敏感なのだ。救急車の運転はいたって普通だったが、少しの揺れだけでも、俺の三半規管を襲撃するには十分すぎる物だった。

きっと三日分の胃の内容物を吐いたかもしれないぐらい、嘔吐の勢いは凄まじい物であった。

それだけ吐いている奴を見て、心配しない奴はいないであろう。居たとしたら、それはよほどの薄情者かモモしかいない。

つまり、何が言いたいかと言うと…………

 

 

 

俺も診察される羽目になった

 

 

 

女の子の方は、ただ、ショックでぶっ倒れただけで、命に別状はなく、入院の必要もなかった。

俺もただの乗り物酔いだったため、酔い止めの薬を貰うだけで済んだ…………そのついでに口の洗浄剤まで渡された。

 

「あの医者…………完全に汚い物を見る目だった………」

 

「まぁ気にしちゃ駄目だよ」

 

「いっそ…カイザギアを使ってこの病院を………」

 

「それは駄目だ❗絶対に❗」

 

「冗談だから体を揺さぶるな……また出る……うっ」

 

「ご…ごめん」

 

酔い止めが効いているとしても、未だに脳がアイスシェイクのようにかき混ぜられた気分が残っているから、頭が揺れるだけで吐きそうだ。

 

「そう言えば、何故菅山のことを知っている?」

 

「君こそ何で…………それよりも、菅山君は何処に行ったんだ?」

 

俺は菅山と初めて出会った時と、菅山の最後について、洗いざらいキラに話した。話を聞いたキラは菅山の死よりも、オルフェノクを惨たらしく殺したことに顔を歪ませていた

 

「彼……結局…復讐したんだね」

 

「復讐?」

 

そういえば、あいつ選べなかったって言っていたな。それについて、キラにも仄めかしていたのか。菅山は関わっても、ろくな奴じゃなかったみたいだな

 

「……僕はこの世界……いや、この時間の人間じゃない」

 

「は?いや、ふざけるところじゃないぞ?ここ」

 

「ふざけてない。これが証拠さ」

 

キラはジャケットの胸ポケットから学生証らしき手帳を取り出す。見た瞬間に俺は、自分の中の固定観念と常識と戦わなくてはいけなかった。

 

 

……キラ ヤマト…………

 

……C.E.55年 5月18日

 

「なぁ……C.E.って…………」

 

「コズミック イラ。僕の時間の紀元のことだよ」

 

「………と…とりあえず、信用することは後にする。だから、何があったんだ?」

 

「僕は信用されてないのか……まぁ良いよ。気がつけば、この時間の世界の公園にいたんだ」

 

俺の時間の世界とやらは、よほど、公園に縁があるみたいだな。俺も一度死んでオルフェノクになったし、初めてカイザに変身して戦ったのもあの公園だった。そしてキラと会ったのも彼処だ。

実は、誰かが仕組んだ物で、今まで起きたことはその誰かのシナリオ通りなのかもしれないのか?

 

「何もわからなかった僕の前に現れたのが、カイザに変身していた菅山君と絢瀬さんだった」

 

「ちょっと待て、もう一人居たのか?それに女か?」

 

「うん。両方とも綺麗だったよ。自然な金髪で、絢瀬さんは綺麗な蒼い眼をしてた。しかも、良い人達だったよ」

 

確かに菅山を初めて見た時、見惚れるほどの美形だったな。まるで戦闘アニメの主人公が、画面から出てきたように思えるほどの物だ。だから、その絢瀬って言う奴もさぞや綺麗なんだろう。

 

「そんなに綺麗なら会ってみたかったな。その娘に」

 

「ちなみに菅山君の彼女だよ。手を出そうものなら、菅山君に殺されちゃうよ…………」

 

その事を話すキラの笑顔は、トラウマを思い出したような引きつったものだった。他にも免罪で死刑執行されかけた哀れな容疑者のようにも見える

あいつ…………ヤンデレ属性あったのかよ。しかも、カイザの資格者なら尚更怖い。と言うか、男のヤンデレほど背筋を凍らせる物は無い

 

「なんておっかない奴だ…………」

 

「それにもう無理だよ…………殺されちゃったから」

 

「それは……何となく理解してる…………それは誰にだ?」

 

「君が言った、菅山君に殺されたオルフェノクにだよ。心臓を一突きにされて灰に変えられた」

 

「……オルフェノクってのはクズしか居ないのか…」

 

俺自身を含めて、オルフェノクってのはろくな奴が居ないな。間接的にも直接的にも、人に迷惑をかけている。

 

「…それから……菅山君はおかしくなって、オルフェノクを無差別に殺し始めた。何の罪も無いオルフェノクまでね」

 

「待て、何の罪も無いオルフェノクなんて居るのか?あんな社会に不必要な化け物共」

 

「言葉ぐらい選んだらどうだ⁉なりたくてなった訳じゃないオルフェノクだっているんだ❗彼は人間でいようとする人達まで殺したんだ…………」

 

確かに言葉ぐらい選ぶべきだった……オルフェノクとは言え、元々は人間だ。オルフェノクになっても人間を辞めるつもりが無い奴がいるかもしれない。だが、あの蟷螂と蛙野郎のような、人間捨てた奴もいる。いつ人間を捨てるかもわからない化け物を野放しにしないのは正しいのかもしれない。殺しに対しては肯定できないが、キラの意見を全部肯定することもできない。

 

「菅山のやったことは最悪だ。だが、あの蟷螂野郎みたいな奴はこれからも増える。それに好きな女の子を殺されたのなら仕方ないだろう」

 

「……き…君は殺しを肯定するのか?……菅山君のように」

 

「肯定はしない。無意味な殺しはクズのやることだ。だけど、好きな女の子を殺されたり、目の前でクズが愚行を働く中で銃口を向けられない奴は「偽善者」だ」

 

「………くっ」

 

「えっ⁉すっすす…すまん❗泣かしぇる……泣かせるつもりはなかち❗……無かったんだ❗」

 

「菅山君にも言われたよ。そして考えを今まで改めなかった。僕は偽善者なのか……」

 

キラの目には涙が溢れ出していて、自己嫌悪の渦に飲まれていた。コミュ障だからか、喋ることができる相手に対しては何の配慮もできない。その点キラは良い奴すぎる、普通ここまで考え込まない…殺しに対して嫌悪感を抱くのは普通の感情だ。俺達は軍人じゃない。だからこそ、キラをクズ呼ばわりした自分が嫌味ったらしく見えてくる。

 

「……悪かった❗調子に乗って❗」

 

「いや、良いんだ……全員を救うことはできないってことがようやくわかった…………」

 

「でも…お前の優しさは必要だ…だから失うな(小声)」

 

「…凄く下からだね。」

 

「す…すまん」

 

「別に良いよ。それと、言いたいことがまだあるんだ」

 

「………おう。手短に頼む」

 

 

 

 

 

 

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