キラは涙をハンカチで拭くと、またノートパソコンを鞄から取り出し、開いた画面をこちらに見せる。その画面には、カイザギアのような異形な形をしたベルトが写っていた。ベルトの画質は悪いけど、明確にカイザギアとの相違点が確認できる。
ベルトは左右でデザインが別の物で、ツールも右側に拳銃のような物がついているだけで、お世辞にも使いやすそうとは言えない。
それにバックル部分は、携帯型のトランスジェネレーターが付属しておらず、バックル自体がその役割を果たしているように見える。
「これは……?」
「菅山君の調査記録の断片さ。これには何か……精神に作用するものがあるらしい」
「精神に作用するもの?」
「そこまではわからない。ただ、君なら扱えるかもしれない」
「はっ?」
扱えるも何も……オルフェノクの俺なら扱えるかもしれない。だけど、わけのわからない精神に作用するものがあるベルトを「はい、そうですか。変身❗」って具合に使えるはず無いだろう。
「カイザに適合できたのなら、これも使いこなせるんじゃ…………と思っただけさ」
「でも適合できたってことは……君もオルフェノクなのか?」
流石に隠しきれないか。目の前でカイザに変身したんだ、それに体は何の異常もない。菅山と居たなら、ベルトがオルフェノクにしか使えないことぐらいは知っている。いや、現に止めに入った時点で知っているだろう。
「あぁ…鉄骨の下敷きになってな…………」
「………ごめん」
「謝るくらいなら最初から聞くなよ。それに俺も菅山と同じで人を襲うつもりは無い」
「……それはわかるよ。君からは殺意や狂気は感じない。それに、彼らのようにベルトを悪用する気は無いようだしね」
パソコンを閉じたキラは、嫌な過去を思い出しているのか、虚ろな表情で、向かいの窓に写る景色を見つめていた。
「彼ら?」
「菅山君とは別の時間……いや、菅山君達は別の世界から来たと言った方が良いな」
「世界自体が違うわけか。お前は遥か未来の俺達の世界から来たわけだな」
「ほぼ正解だ。菅山君と絢瀬さん以外にも二人いたんだ。彼らは体にオルフェノクの記号があった。二人は好戦的な性格でね。菅山君とは喧嘩が絶えなかった。挙げ句の果てには、カイザギアを盗んで変身したんだ」
先程の虚ろな表情から一変して、苦渋に満ちた表情でその二人について話していた。よほどうんざりするようなことをしでかしたんだな。
「何て奴らだ……記号ってのは、ベルトにオルフェノクって誤認させる物なのか?」
「そうらしい。向こうの世界で実験台にされたと言っていたよ。でも、彼らの記号は微弱だった。変身してオルフェノク狩りを口実に、人を殺し始めたけど、5分で体が灰になった。もう一人は変身する前にオルフェノクになった菅山君に首を飛ばされた。」
「そんなことが……」
「だから、ベルトはちゃんと管理して「あっすまん」」ジリリリーン❗
キラの話の腰を折ったのは、一本の着信だった。カイザフォンの着メロはメロディーというよりは目覚まし時計だった。どうやら電話の主はキドらしい。あいつの電話番号がカイザフォンに表示されている
「もしもし」
シンタローか?今何処に?
「如月総合病院だ」
病院?精神科か?
「お前…………」
悪い…………で?何故病院に
「はぁ…………オルフェノクに襲われたガキを病院に連れていってたんだよ」