存在しない16日
?side
誰もが寝静まる深夜のトンネルの深い暗闇の中に、アーマースーツの光が、オレンジ色に光っていた。
「こいつも違うのか………糞❗時間もねぇってのに❗」
「さっさと見つけないとな…あの人を殺した糞野郎を……」
?sideout
シンタローside
緑川ライトニングパーク。
最近出来上がった遊園地で、夏休みでもあるから客が多すぎる。この中で長時間遊ぶぐらいなら、道頓堀川を平泳ぎで泳ぐ方が健康的だ
「すいません遅れちゃって」
「いや、俺達も今来たところだ」
「モモ……はぁ……手…はぁ…放しぇ…」
「本当に体力無いね❗お兄ちゃんは❗セトさんを見習ってよ」
モモと同じペースで走ったせいで、俺の体力はレッドゾーンに達していた。しかも、カイザギアを持ってきたおかげで、かなり走りにくかった。
息を吸うだけで、嘔吐中枢を刺激されて吐き気がする…と言うか、いっそぶちかましたい。無理に起こされたのも一つの理由だな………
「大丈夫すか?シンタローさん」
「カイザギアもちゃんと持ってくるとは良い心がけだ」
「……はぁ…はぁ…大丈夫じゃない」
「はぁはぁ言って変態ですか?御主人」
「しゃあねぇだろ❗無理矢理走らされたんぞ❗画面の中のお前とは違うんだよ❗」
スマホ相手に怒鳴り付けている、目付きの悪い男の絵面……考えただけでもおぞましい。
きっと周りは「何こいつ?」って思いながら白い目で俺を見るだろう。だけど、この怒りをどうしても抑え込むことができない。
自分は走って息を切らしているのに、画面の中で余裕ぶった笑みを浮かべるこいつの表情がどうしても許せない
「変態…くくっ………お兄ちゃん………ふふ」
「やめてください❗カノさん❗お兄ちゃんがこれ以上気持ち悪くなるのは嫌です❗」
「モモ……てめぇ」
「まあまあ、気にしたら負けですよ 御主人」
「お前ら……ころ「早く行くよ❗お兄ちゃん」だから引っ張るなよ❗モモ❗」
カイザギアを開けようとした俺を、モモは引きずるかのように、腕を無理矢理引っ張り走る。それにカイザギアが膝に当たって糞痛ぇ。
ゲートを通って、俺達が最初に向かったその先では、見るのもおぞましい悪魔が待ち構えていた。
……ジェットコースター…………それは人間の三半規管を破壊する悪魔の兵器
「いきなりこんなでかいの…………」
「今なら空いてるし早く行こうか」
「マリーは嫌だよな?な?」
「早く乗りたい❗」
マリーの輝いている目は、ジェットコースター一点にしか向いておらず、嫌がっている素振りを全く見せない。
どう見たって、こう言うの苦手なタイプだろ?マリーは。何で目輝かせてるの?何で楽しそうなの?マリーが嫌と言えば、俺も便乗して逃げようと思ったのに……お願いだから嫌だと言ってくれよ。飴玉あげるから
「行くっすよ❗マリー」
「うん❗早く乗ろう❗」
「ほら、お兄ちゃんと団長も」
「俺は………残る…ってキサラギ❗引っ張るな❗」
「やめろモモぉ❗」
「二人とも……くくっ」
俺とキドは暴れん坊将軍(モモ)の暴虐によって、ジェットコースターに乗るはめになった。
嫌がる人間を無理に連れていくのはどうかと思う。そして、キドも苦手だったのか、釣られた魚のように全力抵抗している。その姿は、団長としての威厳を破壊するのに十分なくらい酷いものだった。
「待って❗下ろして❗話せばわかるから❗」
「シンタローうるさい」
「仕方ないじゃん❗今から処刑されるんだから❗」
「大袈裟っスよ」
「キド……ふふ……お経はないよ…ふふ」
あいつ、とうとうお経唱え始めるまで壊れたか~……処刑前だし無理もないよな。
コースターは徐々に処刑台へと上って行き、俺のメンタルゲージを根こそぎ削っていく。
これが俺の18年の人生の最後になるとは…………せめて童貞は卒業したかった。
コースターが最高地点に到達し、いよいよ惨たらしい処刑が始まる。
「きゃあああああああ」
「わああああああああ」
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ヒィィィィィギャァァァァァァァァァァァ❗❗❗」