牙狼~ゲイムギョウカイに吹き荒れる金色の嵐~ 作:狼の騎神ガロ
決して目をそらさずに刮目せよ…【『0』の名を持つ銀の牙】を!
紫の管轄の番犬所、そこに黒髪の、少々パーマの入った青年がやってきた。
「初めまして、紫のお嬢さん」
青年は神官のいる部屋に入るなり、軽い口調で挨拶をする。イリアは真っ直ぐに青年を見る。
「わざわざ緑の管轄からやってきてもらって、申し訳ないわね、白石 零士」
白石 零士(しらいし れいじ)…彼はリーンボックスの“緑の管轄”の魔戒騎士だが、先日、この紫の管轄の魔戒騎士となった。
「とはいえ、なんでいきなり紫の管轄に呼ばれたんだ?」
「まぁ気まぐれよ、まぁちゃんとした理由が欲しいって言うんだったらあれね、あなた、稜牙と一緒にニブルシティで戦ってたんでしょ?だったら稜牙とも連携が取れそうだし」
イリアの言葉に呆れた様子で対応する零士。続けて零士は問う。
「でもなんで俺なんだ?蓮華とかクロウだって稜牙とニブルシティで戦ってたろ?」
稜牙、蓮華、零士、クロウ…この四人が、ニブルシティで、強大なホラーと戦っていたのだ。もちろんイリアもそれを知っている。イリアはため息混じりに言う。
「一応、クロウたちの管轄の神官にも聞いたわ。でも、完全復活してないとはいえ、仮にもあの“ゼドム”を倒したのよ?そんな強い騎士と法師を簡単に他の管轄には渡したくはないでしょう。強大なホラーが現れた時のために。でもリーンボックスはゼドムを倒したから安心してるのか…簡単に了承してくれたわ」
なるほどね…零士は呟きイリアに背を向ける。
「あぁところで、ここらへんの美味しい菓子屋知らない?」
「知ってるわけないでしょ!」
イリアのツッコミを聞いたところで、零士は教会を出た。
「さてと、プリンでも買ってきますかね」
――――――
ゲートの封印を終え、教会に戻った稜牙。教会で彼が見たのはどこか異様な光景だった。ネプテューヌたちと一人の青年が、プリンを片手に談笑していたのだ。しかもその青年は稜牙の見覚えのある人間だった。黒髪で少々パーマの入った青年、零士だ。
「……なんでお前がいるんだ…零士…」
稜牙は呆れたように聞く。それに零士はプリンの入ったカップを掲げ応える。
「よう、稜牙、半年ぶりだな!にしても変わりないな…お前」
「お前もな。その甘党なとこも、軽い口調も……ってだからなんでお前がいるんだ、リーンボックスの魔戒騎士だろ?」
「ねぷっ?稜牙、この人知ってるの?」
ネプテューヌはスプーンを口に加えながら尋ねる。
「あぁそういやちゃんとした自己紹介がまだだったな。俺は白石 零士、半年前くらいに、稜牙と一緒に戦ってた魔戒騎士だ。元々は稜牙の言う通り、リーンボックスの魔戒騎士だったんだけど、プラネテューヌの神官に呼ばれてな。てことで、俺も紫の管轄の魔戒騎士になったから、よろしくな?」
稜牙はあんぐりとしていた。そして零士は稜牙に黒いプリンの入ったカップを渡す。
「ん?なんだこれ?」
「チョコプリンらしいぜ?ほら、どうだ?」
少し疑っていたが、稜牙はカップとスプーンを受け取り、一口食べる。普通の甘いプリンだと思って食べていた稜牙だが、そのプリンはとても苦かった。
「お前、なんだよこれ!」
少々咳き込む稜牙、それを見て、してやったりという表情で零士は笑う。
「悪い稜牙、チョコプリンはチョコプリンでも、ビター×4プリンって名前のすんごく苦いやつだった」
「お、お前なぁ…」
睨むように零士を見る。すると稜牙の傍らにメメが現れる。
「おぉ、メメ、食うか?」
メメはただ首を振り稜牙に指令書を渡す。稜牙は一旦プリンを置き、内容を確認する。そこにはこう書かれていた。
『大地を蹂躙する戦車、チャロトを、銀牙騎士と共に撃破せよ』
稜牙は夢でも見てると思ったのか、目をこすってもう一度確認する。だが内容は変わらなかった。銀牙騎士とは零士のことである。稜牙はこの指令書と零士を交互に何度も見る。
「はぁぁぁぁ!?」
途端、稜牙は絶叫し、頭を抱える。
「どうしてこうなった…どうして…」
落胆してる稜牙を見て、ネプテューヌたちはコソコソと話し始める。
「なんか、稜牙と零士って仲悪そうだね…」
「でも同属嫌悪みたいなところもありません?あれ」
「確かに、少し稜牙さんと零士さんって似てるとこありますよね…」
三人はそんな話をしながら稜牙たちを見る。そんな彼女たちをよそに、うずめは稜牙に近づき、稜牙の肩に手を置き、自身の持ってるプリンを差し出す。
「まぁまぁ、元気だせって稜牙。甘いプリンでもどうだ?」
稜牙は受け取り、一口食べるとうずめに渡す。その様子を見て、今までよりも大きく零士が笑う。
「うずめちゃんもしかして策士か?それうずめちゃんの食べてたやつだろ?てことは間接キスになんじゃないの?」
稜牙とうずめはハッとしてお互いを見る。うずめの顔がとても赤くなり、稜牙を直視できなくなったのか、明後日の方向を向いた。稜牙も少々困惑しているようだった。
「あれ?これって…」
ネプギアはこのシチュエーションに既視感のようなものを覚えていた。
―――――
話は零士が教会にやってくる数十分前に遡る。ネプギアとうずめはコーヒーを飲みながら談笑していた。そんな折、
「好きな人が、どんな甘さでコーヒー飲むのかって気になりませんか?」
「そうだよね!気になって、その人のコーヒー飲んで、気がついたら間接キス……ちょっと憧れるかも!」
ちなみに、この時のうずめは、妄想全開の状態である。
「あ、でもでも、こういうのもいいかも…好きな人がちょっと落ち込んでて、そんな時に、自分の食べてるプリンをちょっとわけてあげるの。『あーん』って!それで、相手も自分も気づかずに…あぁ、自分で言ってて恥ずかしい!」
まさか今の状態になるとは思わずに…
――――――
(うずめさん、ちょっと違うけど、夢が叶ってよかったですね)
ネプギアがうずめに対し笑いかけていることなど、今のうずめにはわからないだろう。突然、零士が稜牙の服の襟をつかんで引きずり始める。
「悪い、ちょっとこのリア充借りてくよ」
「は!?いきなり何するんだ零士!おい!てかリア充ってなんだ!」
稜牙の意見など無視して、零士はそのまま稜牙を引きずってどこかへ行ってしまった。
――――
プラネテューヌの教会から少し離れたところで、零士は足を止めた。先程まで晴れていたのだが、今は小さな雲が太陽を遮っていた。
「まったく何すんだよいきなり…」
稜牙は立ち上がり服についた汚れを払う。零士は稜牙に背を向けたまま問う。
「どうだ?あれから半年たつが、まさか
、まだ仁さんのこと根にもってるわけじゃないよな?」
稜牙は俯く。
「どうだろうな…たぶん引きずってるのかもな…『1も10も助ける』…そう仁さんに教わったのに、そう教えてくれた人すら守れなかった…ホラーになる前に…」
零士は鼻で笑いながら稜牙のほうを向いて稜牙の肩に手を置く。
「悔いるのではなく繰り返さないために戦え、それもあの人の言葉だろ?」
零士の言葉に、稜牙は少し笑みを浮かべる。
「そうだったな…それにしても羨ましいよ、あんなことがあったのに、お前はそうやって笑ってる…」
「そりゃもちろん、明るく生きることの良さを教えてくれたやつがいるからな…」
零士はある少女を思い出していた。零士の心の支えとなっている少女のことを…稜牙もその少女のことを知っているのか、いきなり笑い出す。
「そういやそうだったな…あいつには言ったのか?プラネテューヌに行くこと」
「もちろん、出発するときは、見送りまでしてもらってな…」
思い出しながら零士は空を見上げていた。見ると雲が過ぎ去って、再び太陽が顔を見せていた。
「羨ましいことですな」
皮肉混じりに稜牙は言う。それに零士は『お前もな』と言いながら稜牙の肩をたたき、どこかへと歩いて行った。
―――――
稜牙たちのいなくなった教会では、うずめが質問攻めを受けていた。それはまるで転校生のように…
「うずめ〜、あれ本当にわざとじゃない?」
「だだだ、だから違うっての!」
「でも、叶ってよかったですね、うずめさんの理想のシチュエーション」
「ちょ!?それ言わないでくれよぎあっち!」
大げさに手を振るうずめ。その顔は、先程より赤くなっていた。なんのことかわからないネプテューヌとマイナはネプギアに聞く。聞いた二人はニヤリと笑い再びうずめを見る。
「うずめさん、そういうとこがあったんですね…でも、そういう乙女チックなとこ、可愛くていいと思いますよ」
「か……可愛いって言うなぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁ!」
これまでにないほど赤面したうずめの絶叫が教会に響き渡った。
――――
夜、番犬所が調べ上げたポイントに稜牙にうずめ、マイナ、そして零士がいた。ネプテューヌはというと、教会でゲームに熱中していたため、そのままにしておいた。
「……ったくあいつは…」
「そうだよな…なぁ稜牙」
うずめは問いかけ、稜牙の顔を見る。稜牙も反応してうずめを見る。すると偶然、稜牙とうずめの目が合う。昼のことを思い出してかなのか、うずめはすぐに目をそらす。
「あぁいや、なんでも…ないんだ」
「そうか…ところでザルバ、そのチャロトっていうのはどんなホラーなんだ?」
うずめの行動に疑問が残りながらも、稜牙はザルバに話しかける。
「チャロトは乗り物ごと人間に憑依するホラーだ。兵器として扱われるものに憑依されたら、厄介だぞ」
「へぇ、じゃああれとかに憑依したらまずいってことか」
零士が指さした方を一同はみる。すると、追跡も撲滅もマッハしたり、番人で死神をやってるものが使いそうな戦車が稜牙たちに迫っていた。だがキャタピラではなく、無数の人骨のようなものが地面を這うことで走行していた。
「明らかにまずいですよね…あれ」
「ああ、残念だが、この邪気はホラーだ」
稜牙たちの存在を確認したのか、その戦車は砲身を稜牙たちに向け、そこから砲弾を放つ。
砲弾は真っ直ぐに稜牙たちの元へと飛んでいく。しかしマイナの放った矢と、うずめの法術により、それは相殺された。
すると今度は、戦車から無数の触手のようなものが現れ、稜牙たちを襲う。稜牙は片手剣を、零士は二本の短剣を逆手に持ち、マイナは弓についている刃で、まるで舞うかのように、触手を切り裂いていく。
触手で攻撃しながら、戦車はうずめへと向かっていた。稜牙は止めようとするが、戦車から出る触手に阻まれる。うずめに戦車が向かう。うずめが魔導筆で術を放つが戦車にはまったくとして通用してなかった。もう戦車はうずめの目の前まで近づこうとしていた。
しかし…
突如、戦車目掛けて雷が落ち、まともに浴びた戦車は動きを止め、触手も消えていた。
「大丈夫か?」
声の方を見ると、左手を前に突き出していて、安堵の表情を浮かべる零士がいた。稜牙たちもホッとした様子だった。
「悪ぃ、助かったぜ」
うずめは頷き応じる。
「さて、今のうちに叩いたほうがいいよな?」
零士が戦車に近づく。すると、突如音を立て戦車が震え始め、その姿を変えていく。
足は馬車のような巨大な車輪、胴体は人間、手は長く、斧を持っていて、顔はワニの姿…
ホラー チャロトである。
「こりゃまたすごいのが来たな…」
「軽口を叩いてる暇があるか、やるぞ」
チャロトの姿に圧倒される零士とツッコミを入れる稜牙。そして稜牙が魔戒剣を構え鎧を召喚しようとすると、零士がそれを制止する。
「せっかくプラネテューヌでの初仕事なんだ、俺にやらせてくれよ」
笑いながら零士は剣を振り回し持ち替える。そして剣を天に掲げ両手の剣を合わせ、空に二つの円を描く。その円は一つとなり、零士の纏う鎧を召喚する。
零士の剣は姿を変え、剣先に角度の付いた剣【銀狼剣】となる。
そして現れたのは、蒼く白く輝き、暗闇に映える銀の牙…
銀牙騎士 絶狼《ZERO》
チャロトが斧を横に振るう。絶狼はそれを待っていたかのように飛び上がり、一度、チャロトの振るう斧に着地してから再び飛び上がる。飛んだ絶狼目掛け、チャロトが触手を伸ばしていく。
絶狼は一つ一つを身を翻して切り裂いていく。触手を斬ってはその残骸を足場にして飛び上がり、また別の触手を斬る。そして高く飛び上がると、絶狼は左手の剣についているプラグを、右手の剣の窪みに入れ、一つの剣【銀牙銀狼剣】とする。
「ハァァァア!」
絶狼は銀牙銀狼剣を構え、回転しながらチャロトへと向かっていく。回転するたびに、銀牙銀狼剣は電気を帯びていく。そして絶狼はチャロトを真っ二つに斬る。
絶狼が着地すると、その軌跡通りに、チ
ャロトは二つになり、消滅する。
「これで終わり、かな……どうだい?俺だってここまでやれるんだぜ」
絶狼の鎧を解き、零士は稜牙たちを向く。そしてロングコートの裏から、一口サイズのチョコを取り出し口にする。
「へぇ、零士もなかなかやるじゃねぇか!」
「変わりないな…あいつ」
「雷を使う魔戒騎士ですか…」
稜牙たちはそれぞれ三者三様の反応を見せていた。
―――――
教会に戻る道すがら、うずめの脳内に、ある光景がフラッシュバックされていた。
荒廃していくプラネテューヌ、教会では、オレンジハートと、1人の青年が、その光景を見ていた。しかし青年の顔は暗くなっていて、顔は判別できない。オレンジハートは、青年の横で泣きじゃくっていた。ただ、
『うずめはこんなこと願ってないのに…どうして…』
と言いながら…
ザルバ「どうもあいつらは真実を求めたがるようだな、たとえそれが自身を殺すこととなっても
次回『記者』一歩踏み出してしまえばそこは地獄!」
ということで零士の称号はかつて牙狼のライバルとして、盟友として活躍した【銀牙騎士 絶狼】です!そして遂に揃ったニブルシティで戦ったメンバー…稜牙の過去も、直に明らかになっていきます…
感想お待ちしてます!