牙狼~ゲイムギョウカイに吹き荒れる金色の嵐~ 作:狼の騎神ガロ
まずは稜牙たちがリーンボックスに来た直後の話で、戦闘はありません。
そしてワンゼットさん考案の魔導具も登場します!考案してくださったワンゼットさんありがとうございます!
それではどうぞ!
「リーンボックスか…こないだ来た時は全然余裕なかったからな…」
「でもさ…あの時はどうやってリーンボックスに行ったの?船乗ってたら絶対間に合わないと思うけど…」
「それは…まぁ企業秘密ということで」
「稜牙、俺たち企業じゃないだろ…」
稜牙たち一行は、今船の上にいる。というのも、プラネテューヌとリーンボックスが合同でイベントを行い、ネプテューヌたちもそれに参加するためだ。稜牙たちも、一応護衛ということで同行している。
「てか、ネプテューヌはあっちに行って何やるんだ?」
「ふっふ〜ん、それはもちろん、ベールとガチでゲーム対決するためだよ!」
ドヤ顔で言うネプテューヌに稜牙は呆れていた。今度は逆にネプテューヌから質問される。
「ところで、あの零士の言っていたお菓子、本当に買わないの?」
ネプテューヌの言うお菓子とは…
―――――
話は数時間前にさかのぼる。
「なぁ稜牙、リーンボックスのイベントに行くんだろ?なら、お願いがあるんだが…」
稜牙は零士に呼び止められる。
「ん?なんだ?あいつに挨拶すればいいのか?」
稜牙の言葉に首を横に振る零士。そして彼から放たれた言葉は、彼らしいといえば彼らしいものだった。
「いや、実はそのイベントで、あるデザートが限定発売されるんだ。その名も…『ずんだカステラ』。緑茶にも紅茶にも合うように味付けがされていて、豆の食感もまたいいっていう謳い文句…気にならないか?」
「若干気になるが………つまりそれを買ってきて来いと?」
恐る恐る尋ねてみると、零士はニカッと笑う。
「まぁそういうことだな!なにせ俺はお前と違って国を行き来できないからな」
「はぁ……」
稜牙はため息をつく…
―――――
というやりとりがあったのだ。
「その場の雰囲気で引き受けたようになったけど…」
船のバルコニーから遠くを飛ぶ海鳥たちを見ながら稜牙は言う。
「でも確かに美味しそうですよね、それ」
「アハハ…」
近くにやってきたネプギアの言葉に、稜牙は苦笑いするしかなかった…
すると、
「あれ?ネプギアに……
稜牙?」
「「ファルコムさん!?」」
ふと誰かから声をかけられた。振り向くと、赤いショートカットの髪の女性がいた。こんな場所で会うとは思わなかったのか、驚いた稜牙とネプギアの声が被る。
彼女の名はファルコム。かつてゲイムギョウカイに“犯罪神”と呼ばれる存在が現れた時、ネプギアたちと共に犯罪神を倒したこともある。また、冒険家でもあり、彼女がペンネームを用いて書いた冒険譚『クリスティン漂流記』は、結構な知名度を誇っている。
「ネプギアもファルコムさんと知り合いだったんだな」
「はい、以前、犯罪神と呼ばれる存在と戦った時に…って稜牙さんも知り合いだったんですね…」
「あぁ。ニブルシティにいる時に相談に乗ってもらって…ファルコムさんは、また冒険ですか?」
「うん、久しぶりに、ニブルシティにも寄ろうと思ってるんだ」
「そういえば、稜牙さんとかの話で、よくニブルシティって聞くんですけど、ニブルシティで何があったんですか?」
ネプギアの問いかけに、ファルコムは首を横に振る。
「実はアタシも、ニブルシティに関することをあんまり覚えてなくて…稜牙は覚えてる?」
続いて稜牙に尋ねると、稜牙の顔が、少し暗くなる。
「半年前まで、ニブルシティは『ニブルヘイム・コーポレーション』っていう会社が実質的に支配していたんだ。表向きには、『ゲイムギョウカイで最も平和な都市』なんて言われてたけど、その実態は…人をモンスターに変える巨大な実験施設だったんだ…」
稜牙の言うモンスターとはもちろんホラーであるが、魔戒騎士との関連がないファルコムがいるため、この表現をしている。
「そ、そんなことが…」
ネプギアはそれ以上の言葉がでなかった。ファルコムが続けて尋ねようとすると、
「おーい!稜牙ー!ぎあっちー!」
うずめが遠くから自分のほうに手招きする声が聞こえてくる。
「じゃあファルコムさん、俺はこれで」
「うん、それじゃ」
軽く会釈し、稜牙たちはファルコムと別れる。
「あの頃と変わったな…稜牙。なんか、少し悩みが晴れたというか…そのおかげで今日は嵐がこないのかも」
うずめの元へと向かう稜牙の背中を見て、ファルコムはこんなことを呟いていた。
―――――
「おぉー!すげぇ!」
リーンボックスについて間もなく、街はイベント一色であった。
『ネプテューヌ様とベール様のガチンコゲーム対決!』と書かれたポスター、
そしていたるところでリーンボックスで有名なアイドル、5pb.の曲が流れていた。
リーンボックスの広大さ、そして人々の盛り上がり様にうずめは終始驚いていた。
「さて、どうするんだ?ネプテューヌ」
「もちろん、教会にいくよ!さぁ行こうか私のパーティー!」
教会を指さしながらネプテューヌは一人で進んでいく。
「もしそうだとして…大丈夫か?このパーティー」
不安を抱きながらも、稜牙たちはそれについて行く。
―――
稜牙たちがリーンボックスの教会に入ろうとした時、
「ん?……おぉ!プラネテューヌの女神に……黄金騎士の兄貴か!久しぶりだな!」
他方から1人の青年が歩いてくる。
稜牙と同じような黒のロングコートは獣の毛皮のような装飾があり、黒い短髪。そして首からは髪の長い女性の横顔を模したペンダントをぶら下げている。
「あんたは?…てか、俺らどっかで会ったっけ?」
向こうは稜牙のことを覚えてるらしいが、稜牙は向こうの青年を知らないため、尋ねる。
「あぁ、そういやあん時は自己紹介してなかったもんな。俺は倉橋 響也。ズーネ地区に、異世界から誰かが来た時に一緒に戦ってたの、覚えてないか?」
響也と名乗る青年はそう言うが…
「……うずめ、覚えてるか?」
試しに稜牙はうずめに問う。うずめはただ首を横に振る。続いてマイナの方をみるが、反応は同じだった。しかも
「というより、あのズーネの戦いの時って、私たち以外に、誰かいましたっけ?」
こう言い出す始末である。
「……え?全く覚えてないと?」
三人が無言で頷くと、響也は大袈裟にうなだれる。
「まぁそうだよな…あの時リュケイオンに序盤呆気なくやられちまったし黄金騎士の兄貴が来たらバッタがどうのこうのとしか言ってないし…」
「まあいいではありませんこと?リュケイオンのダメージが残ってて活躍出来なかったと思えば、まだまだ望みはありますわよ!」
ベールにも似た口調の女性の声が聞こえる。
「お?そうか?そういうもんなのか?…よし、なんだかやる気出てきた!ゼドムもどんなホラーもかかってきやがれ!」
女性の言葉を聞いたとたん、響也はやる気に満ちた声で叫ぶ。
「それを俗にフラグと言いますわ、響也」
優しく声の主はたしなめる。
「ていうか、さっきからベールっぽい言葉でしゃべる人の声聞こえるけど誰?」
ネプテューヌが尋ねると、響也は自身のペンダントをネプテューヌたちに見せる。するとそのペンダントの顔の口がカチカチと動き始める。
「わたくしは響也に仕える魔導具、イルヴァと申します。以後お見知りおきくださいな…それより、外で話すのもあれですし、教会の中に入りませんこと?」
イルヴァの提案を、稜牙たちは了承し、教会の中に入っていく。
―――――
「うぉぉお!教会の中も広ぇー!」
リーンボックスに来るなり、子供のように見る物全てに驚くうずめ。それもそのはず、うずめはルウィーとプラネテューヌにしか来たことがないのだ。
「そうやってはしゃいでるうずめ、かっこいいというより、可愛いぞ」
「か、可愛いっていうな!」
悪戯に笑いながら稜牙が言うと、うずめはムスッと頬を膨らませる。ネプテューヌたちがベールの部屋に入ると、ベールは二人の少女と紅茶を飲んでいた。
一人は青い髪が特徴のヘッドホンをしているリーンボックスの歌姫 5pb.
もうひとりは左にまとめた茶髪のサイドテールの少女、増嶋 愛
「あら、ネプテューヌ。あれ?稜牙さんたちもいらしたんですね」
「お邪魔します」
稜牙が会釈する。5pb.は突然来た稜牙たちに驚き、ビクビクとしているが、突然…
「あ!響也さん!来てくれたんですね!」
愛が響也の元へ駆け寄る。
「あぁ、何せ俺の縄張りでこんなすげぇことが起きるんだからな」
「縄張り?」
響也以外の全員が首をかしげる。響也は笑いながら言う。
「あぁ、縄張りってのは俺が担当してる管轄のことだ。そして、今日行われる5pb.たちのライブの警護を頼まれてさ、愛にも、番犬所にも」
稜牙たちは頭に疑問符を浮かべる。すると愛が立ち上がり、「私が説明します」と言い続ける。
「実はちょっと前に化け物に襲われそうになって…それを、響也さんに助けてもらったんです。その時にお願いしたんです。でもあの時は考えておくってだけでまさか本当に来てくれるなんて…」
「そりゃ、お前らが化け物に狙われそうになってるからな…」
響也は赤い封筒を取り出す。
「これには『亡霊の叫びを伝える物 ハプルムを討滅せよ』と書いてある」
「ハプルムは美声な人間の悲鳴を追い求めるモンスターとも言われていますわ。だから、5pb.や愛が狙われるのも必然ですわね」
ベールに似た口調だからか、5pb.と愛はベールの方を見る。
「い、いえ、私は喋ってませんわよ?」
「こちらですわよ、二人共…わたくしは響也の相棒のイルヴァと申しますわ」
イルヴァがカチカチと音を立てながら言うが、5pb.たちは全く気づいてない様子だった。
「あの、響也のペンダントなのですが…」
イルヴァは言い続けるが、彼女たちはまったくとして反応しない。
「………響也、忘れられるって辛いですね」
「そうだよな…辛いよな…」
響也はベールたちから離れたところで体育座りでいじけていた。
「あの…響也さん?」
「なんだあれ…」
愛たちは疑問に思うが、響也たちには届いていなかった。
「あ、あの…よろしいですか?今回のライブのことなのですが…」
ベールが話を変える。今回のライブはリーンボックスの5pb.、増嶋 愛
そしてプラネテューヌで人気の歌手、ツネミ
による合同ライブとなっている。
「もしそのハプルムというホラーが5pb.たちを狙ってるのだとしたら、稜牙さんたちにも協力していただきたいのですが…」
稜牙たちにしか聞こえない声でベールが言う。ホラーを知らない5pb.たちへの配慮だろうか…
――――
「はい、もしもし…」
ライブ会場の近くで、白いロングドレスを着た女性が電話を受けていた。
『ハプルム、ちゃんとやれるんだろうな…』
相手は男性の声だった。ハプルムと呼ばれた女性はフフッと笑う。
「なんだ、そういうこと?あのライブ会場で人間の悲鳴を集める、そしてその場で人間を喰ってはいけない…でしょ?まったく、魔戒騎士なのにホラーの力を借りるだなんてね…」
『お前は人間の悲鳴が好物、その悲鳴はベルシファ復活のエネルギーになる…利害は一致してるだろ?』
「なるほどね…戻ったらちゃんと一人は喰わせてくれるんでしょうね?」
疑念を感じながらハプルムは尋ねる。相手はただ『もちろんだ』とだけ言う。確認するとハプルムは電話を切る。
「楽しみね…5pb.とかの悲鳴…フフフフフフ…」
――――
ある神殿で一人の男性が魔導具をただジーっと見ていた。
「おいおい、こんなところで油を売ってていのか?」
1人の小さな妖精が男性の近くに現れる。
全体的に黒を基調としていて、髪は黄色がかった白色で、その姿はイストワールにそっくりだった。
「まぁまて、もうすぐ始まる。お前の言う『おもしれーこと』が」
男性が言うと、妖精はニシシというオノマトペが合いそうな笑い方をする。
「まさか人間の敵であるホラーの力で人間を救うとはな…統牙」
統牙は妖精の言葉に耳を貸さず、魔導具から黒い結晶を取り出す。
「それじゃあ頼むぞ、クロワール」
さて、次回いよいよ戦闘です!稜牙たちはハプルムを止められるのか、そして響也は活躍できるのか!
次回、決して目をそらすな!