牙狼~ゲイムギョウカイに吹き荒れる金色の嵐~ 作:狼の騎神ガロ
稜牙は、ネプテューヌ近郊の魔戒騎士を束ねる紫の管轄の神官、イリアに呼ばれていた。神官のいる番犬所に入る。ほとんどの装飾品が紫で統一されており、その部屋の中央で座っている白い服を着た銀髪の少女の存在感をより際立たせている。
「やほー稜牙、それにザルバ」
その少女が稜牙に話しかける。この少女こそ、神官イリアである。
「どうしたんですか?」
稜牙が尋ねると、なぜかイリアはムスッとした表情を見せる。
「もう、敬語禁止って言ったでしょ?」
そう、なぜかイリアは他人に敬語で話しかけられることを嫌がっているのだ。
「まぁいいや、あなたに指令を出すわ」
真面目な表情になり少し間を置き、イリアが稜牙に告げる。
「黄金騎士牙狼、叢雲稜牙に告ぐ。あなたにプラネテューヌの女神、ネプテューヌの警護をしてもらうわ」
少し静寂が流れ、稜牙が再び喋り出す。
「……え?女神の警護?そんなことして大丈夫なのか?というかネプテューヌってどっかで聞いたことあるような…」
「そりゃこの国の女神だからね…ところでこのころ女神のシェアが落ちているのはあなたも薄々感じてるでしょ?」
女神たちは自分が治める国家の人達の信仰心“シェア”と呼ばれるものを力として戦っている。だがそのシェアが徐々に低下しているというのだ。話を聞くと、ネプテューヌたち女神が職務を怠慢している…との噂が流れ、人々の信仰心が薄れていっているようだ。
「果てには反女神のデモも起きるし、そのデモに参加してる人間がホラーに憑依されるわで大変なのよ…」
「けど、そんな人間たちのいざこざに俺たちは関係ないんじゃないか?」
イリアの言葉に稜牙が疑問を抱く。元々魔戒騎士たちはホラーを封印するだけであり、人間たちの事情には首を突っ込まないのがルールのはずだと。
「それなんだけど…一応あれでもゲイムギョウカイの均衡を守ってる女神の一人だし、欠けたら困るのよ…一応、その女神の側近のイストワールって人には話つけておいたから…頼んだよ、黄金騎士牙狼」
イリアはそう言うが、稜牙は内心こんなことを思っていた。
(これでいいのか番犬所…)
―――――
「……ということで、ネプテューヌの警護を担当された、叢雲稜牙です」
ところ変わってプラネテューヌの協会。こちらも、紫を基調としている。そんな協会で稜牙は本に腰掛けた妖精くらいの背の少女と話していた。イストワール、歴史を記す史書の役割を担っているというネプテューヌの秘書のような存在である。
「はい、イリアと言う人から話は聞いています。ネプテューヌさんたちを強力なモンスターから守ってくださるんですよね?」
「まぁそんなとこです」
その後軽くお互いに自己紹介をしあいネプテューヌのところに向かおうとした矢先である。
「あ、そういえば、ついさっきこれを稜牙さんに渡してくれと言われていたので」
イストワールが赤い封筒を稜牙に手渡す。その封筒を見た途端稜牙の目つきが変わる。指令書、この赤い封筒の中には、ホラーに関する情報が書かれている。イストワールから封筒を受け取ると、稜牙は懐からライターを取り出すと、そのライターからでる緑の炎で指令書を燃やす。すると文字が空中に現れる。
「怠惰にまみれたホラー、ルクストを討滅せよ…か」
小さく稜牙は呟く。その様子をイストワールはじっと見ていた。
「どうかしたのですか?」
「あ、いえなんでも、それよりネプテューヌさんのところに行きましょう」
「わかりました…あ、たぶんゴローンとしながらゲームをしてると思いますが、それが常ですので、気にしないのが身のためですよ」
―――――
―――
イストワールに警告されながら協会の一室に入る。そこは先程までいたところとは違い、とても明るかった。その部屋でゲームをしている少女が2人、短髪でガーリッシュパーカーを着ているネプテューヌ、長髪でセーラー服のような服を着たネプテューヌの妹、ネプギア。対戦型ゲームで遊んでおり、たった今決着が着いたようだ。
「やっほーい!私の勝ちだね!」
「うぅ、やっぱお姉ちゃんには勝てないか…」
「はぁ…二人共、お客さんですよ」
ネプテューヌたちをイストワールは叱責する。その声に気づいてネプテューヌたちはイストワールの方を向く。稜牙は呆れた様子で話す。
「どっかで聞いたことあると思えば、またあんたか…ネプテューヌ」
「ねぷっ!?私たちどっかで会ったことあるっけ?」
こんな二人を見てネプギアはイストワールに聞く。
「あの、いーすんさん、この人は?」
「この人は叢雲稜牙さん、強力なモンスターからお二人を守るために、来てもらったんです」
イストワールからの簡単な紹介が終わり、稜牙はネプギアにも会釈する。
「稜牙だ。一応、お二人の秘書官と思ってくれればいいよ」
「はい、よろしくお願いしますね、稜牙さん」
「ねぇねぇ!秘書官ってことは、仕事も手伝ったりするの?」
ネプテューヌが明るい口調で聞く。
「俺は強力なモンスターを狩るだけだ…あんたらはシェアの確保に力を入れてくれ。じゃあな、俺はモンスターを狩ってくるよ」
そしてその場を去る稜牙。稜牙が消えたことを確認するとネプテューヌが喋り出す。
「ねぇねぇ、あの稜牙って人が狩るって言ってたモンスター気にならない?」
「うん、確かにそうだけど…私たち行ったら迷惑になるかもよ?」
「でも、ここに来る前、稜牙さんに封筒を渡したのですが、あの人はライターで燃やして内容を確認してましたね…確かに気になりますし、行ってみますか」
「おお!珍しい、いーすんも話に乗ってくるなんて!」
「ネプテューヌさんたちでも倒せないモンスターがプラネテューヌにいるなら、確認しないといけませんしね」
そして議論の末彼女たちは稜牙を探すことにした。
―――――
――
夜、近代的なビルが並ぶ街の中を稜牙が1人歩いていた。この周辺にルクストが潜んでいるとの情報があるのだ。
「ザルバ、邪気は?」
「ここから北の方角だ」
ザルバの案内通りに稜牙は進んでいく。そんな稜牙の様子を電信柱から覗く影が3つ…そう、ネプテューヌたちだ。
「なんか稜牙さんさっきから左手の指輪に話しかけてない?」
ネプギアがおそるおそる二人に聞いてみる。
「うーん、ノワールみたいにぼっちなんじゃない?だから指輪に話しかけて…こりゃノワールより重症かも?」
「ほらみなさん、稜牙さんを見失ってしまいますよ、行きましょう」
三人は稜牙に気づかれないように再び電信柱から電信柱に移動する…
――――
人気のない広場、その中央で肥満体型の男性が座り込んでいた。
「あー人間来ないかな…自分から人間食べに行くの面倒だな…」
その男性が呟くと、一人の青年が男性に近づいた。稜牙である。稜牙が男性に近づくと直ぐにその男性の瞳に緑の炎を向けた。すると男性の瞳の中に謎の模様が浮かび上がる。その様子を、ネプテューヌたちは電灯から眺めていた。
「あの人なんでこんなとこにいるんだろ…」
ちらっと稜牙が電灯のほうを見てから数秒後、男性がその体型からはかったるそうに立ち上がり喋る。
「魔戒騎士〜?悪いけど面倒だからとっととどっかに行ってくんない?」
それに対し鞘から剣を引き抜きながら稜牙も話す。
「そりゃ俺だって同じだよ、ホラーを狩るの面倒だし…だからさっさと封印されろ!」
真っ直ぐに男性に向けて剣を振り下ろす稜牙。ネプテューヌたちはそんな稜牙を見て驚きを隠せなかった。
「ねぷっ!?なんでいきなり!?」
「稜牙さん…どうして?」
その男性…いや、ルクストは再び身軽な身のこなしでかわすが、かわしたところに稜牙の蹴りを受け、吹き飛ぶ。間髪入れずにルクストに向けて剣を振るう。すぐさま起き上がりやはり回避するルクスト。
「あー面倒だな…もう一気に殺してお前を食うよ」
そして男性の姿からまるまると太った虫のような姿になる。
「ひいぃ!お姉ちゃん、人が…人が化け物に!?しかも結構グロテスクだし!」
ネプギアが恐怖で震える。それを姉らしくネプテューヌが諭す。
「だ、大丈夫だよ…お、お、お姉ちゃんがいるから…」
多少心配だが…
稜牙がルクストに剣を突き刺すが、厚い脂肪によって、致命傷を与えることができない。
「ザルバ、どうすればいい!」
左手の指輪に問いかける稜牙。ザルバは的確にアドバイスを与える。
「烈火炎装で燃やしきれ!」
「了解!」
そして稜牙は剣を天に向け剣先で円を描き、牙狼・翔の鎧を纏う。
「あれは…」
「綺麗な光…」
「あれ?あの狼…どっかで見たような…」
その眩い姿にネプギアとイストワールは驚愕するが、ネプテューヌだけは既視感を覚えていた。そんな三人の様子を見ることなく、牙狼は真っ直ぐにルクストを見つめ、剣を横に構え、左手でライターに緑の炎を灯し、剣の柄から剣先に向けて剣に炎を灯らせる。すると牙狼の全身をその緑の炎が包む。
烈火炎装、魔獣を焼き尽くす炎を纏った姿である。そして牙狼が炎を纏った剣をルクストに突き立てる。するとルクストの脂肪はどんどんと溶けだし、その炎はルクストを包んでいく。
「ハァァァァァ!」
牙狼は叫びながら真一文字にルクストを切り裂く。
「――――――!」
燃え盛る炎に包まれ声にならない断末魔の叫びを叫びながらルクストは消滅した。それを確認した後、牙狼はネプテューヌたちがいる方に歩き出す。
「ネプテューヌ、なんでついてきた…」
声がくぐもっているが、その声が稜牙のものであることは理解できた。
「稜牙さん、いつから気づいてたんですか?」
「広場についた頃だ、もう一度聞く、どうしてついてきた?」
ネプギアに答える稜牙。声からして、怒っているのがわかる。
「稜牙さん、どうしてこの事実を女神様たちに隠していたのですか!」
イストワールが咎める。牙狼の召喚を解き、静かに、わずかに憤りを感じた表情で稜牙は話す。
「もしホラーのことを公表したとして、人々はどうなる?もしかして隣にいる人は人を喰らってるかもしれない、次は自分の番なのではと恐怖を感じながら暮らすかもしれない…それこそあいつらの思うつぼだ!」
カッとなったのに気づき稜牙が深呼吸してから再び話始める。
「近いうちに他の女神にもホラーのことは話す。ただし、世間に公表しないことを条件にな……もう今日は遅い。帰って寝るんだな」
ネプテューヌたちとは反対方向に歩いていく稜牙。その背中は、どこか悲しげな雰囲気だった。
戦闘描写が上手くいかない…アドバイス、感想、誤字修整ありましたらぜひ!