牙狼~ゲイムギョウカイに吹き荒れる金色の嵐~ 作:狼の騎神ガロ
それではどうぞ!
(どうして…)
窓から外を見れば、サッカーで盛り上がっいる。
(どうして……)
辺りを見渡せば、熱心にノートを取る者、寝る者、隠れてゲームをしている者など、同じ制服を着た者達。
(どうして………)
正面を見れば、若い、先生らしき女性が黒板に向かって数式を書いている。そう、今稜牙がいる場所は…
(どうしてこうなったんだ!)
私立ゲイム学園という学校だった。
―――――――
話をこの前日の夜に遡る。
「え?神隠し?」
「そ。最近、ある学校でたくさんの人間が行方不明になっている…っていう知らせが来たのよ」
アイエフが椅子に座って談笑している稜牙とうずめに、自分の所にきた事案について説明している。
「にしても神隠しか…でも、なんでそれを俺達に?」
普段はこんなことはないため、うずめは疑問を持った。しかしこれにはある理由があった。行方不明になった者達のある特徴が関係しているのだ。
「それが、行方不明になった人たちは暗い時間にある人に呼び出されているらしいの。あんたたちの倒してるホラー……だったかしら、それも夜に活動してるって聞いたから、もしかしたら…って思って」
「ホラーねぇ…」
稜牙は顎に手を当て考える。もしホラーなら討伐の指令が来ているはずだ、と。
「うずめ、ホラー討滅の指令きたか?」
「いや?俺のとこには来てねぇけど…」
試しにうずめに尋ねても、首を横に振るだけであった。稜牙がホラーではないと言おうとしかけたその時、
『お疲れ様。叢雲稜牙、天王星うずめ』
「うわぁ!?」
アイエフの肩に、紫の管轄の神官、イリアの使い魔の白い鳥が止まる。稜牙とうずめももちろんだが、一番驚いたのはアイエフだった。
「す、すごいわね…いきなりでてくるなんて…」
「ほんとだよ…まったくうちの神官は行動的だよな…」
呆れながら稜牙は言う。このせいで何度指令を受けたことかと思いながら。
『まぁ褒め言葉として受け取っておくわ。それにしても黄金騎士は大変ね…次元を超えたりもして』
「まぁいい経験になったからいいよ。あの伝説の冴島鋼牙にも会えたし」
『は?冴島鋼牙にあった!?』
使い魔を通しても、耳がキンとなるほどイリアが叫んでいるのがわかる。
『待ちなさい稜牙、嘘はいけないわよ。だって冴島鋼牙よ?使徒ホラーを全て封印、さらにメシア、レギュレイス、ギャノンをも討滅したあの伝説の魔戒騎士よ?』
若干早口になりながらイリアが言う。少々メタいが、使徒ホラーの数々、メシア、レギュレイス、ギャノンは、それぞれラスボスとなりうるほどの強力なホラーたちだ。
「あぁ、その冴島鋼牙だけど…すごく強かったな…鋼牙さん。それに宗谷とイストワール…そういやあの二人どうなったんだろうな…ってそんなことはいいんだ、イリア、また指令か?」
異なる次元で会った騎士と勇者に思いを馳せながら、稜牙はイリアに尋ねる。
『まぁそんなとこね。ホラー アロンが顕界したとの情報があるわ。厄介なホラーだけど、お願いできるかしら』
「アロン…厄介なホラーか…どの辺が?」
うずめが尋ねると、イリアではなくザルバが答えだす。
『アロンか…対象を喰らうために、まず対象の周辺の人間を喰らっていくという面倒な習性を持ってるやつだ…しかも今のうずめくらいの若い人間ばかりを狙う、たちの悪いやつだ』
「俺くらい…か…なぁアイエフっち、その学校って高校か?」
「えぇ、私立ゲイム学園ってところよ」
「そうなると…」
アイエフとザルバの情報から、稜牙はある結論をだした。そう、行方不明事件の首謀者はホラーで、なおかつ学園の関係者じゃないか…と。
「よしわかったアイエフ、明日その学園にいって確認してみるよ」
稜牙がそういうが、アイエフはまったく反応を示さない。さらに、何かを考えている様子だった。
「そうだ…いいことを思いついた!」
「……アイエフ?」
稜牙が問いかける前に、アイエフが何かに合点がついた。
「あんたたちの服装じゃ疑われるから、体験入学ってことで学園に潜入しなさい!」
「………え?」
――――――――
その後、諜報部の者達が素早く根回しをして、現在にいたる。うずめはほとんど変わらない服装だが、稜牙は白いYシャツの上に黒色のブレザー、そして紺色のズボンという、学園の制服に身を包んでいた。学園に入る直前、うずめがやたらハキハキしていたのは、また別の話であるが。
時間が過ぎていき昼休み。稜牙は校舎内を歩きながら情報を探していた。見れば、数々の生徒が他愛もない話で談笑していた。
(しかし…本当にホラーとは無縁って感じだな…)
行き交う人たちをみて稜牙はそんなことを思っていた。当たり前のことなのだが、魔戒騎士である彼にとってはそれが羨ましく思えるのだ。
自分も魔戒騎士にならなければこんな人生を歩んでいたのだろうか、そんなことを思っていると、
「なぁ、そこの人!」
「ちょ、ちょっとアオト待ってよ…」
「ん?お前達は…」
突然、後ろから声をかけられる。振り返ると、一組の男女がいた。
灰色がかった黒くぼさっとした髪で、茶色の瞳の男は、こちらに手招きしている。
そして青色の髪を黄色のリボンでポニーテールのように纏めた少女は、男の少し後ろで息を切らしていた。
「俺は堂林アオト。でこっちは…」
「ハァ、せ、瀬賀初美…です…」
快活に答えるアオトに対し、初美はまだ息を切らしていた。
「俺は叢雲稜牙だ。この学校が気になって、今日一日だけ、体験入学だかいうのをさせてもらってるんだ」
稜牙がそう言いながら軽く会釈をすると、アオトたちは少々浮かない表情を浮かべた。
「ついさっきも、今日だけ体験入学、ってやつがいたんだけどさ…よりによって今か…災難だな」
「うん、今はいろいろ妙なことが起きてるからね…」
稜牙は『妙なこと』という言葉に疑問を持ち、そのことについて聞いてみた。返ってきたのは、恐ろしい事件についてだった。
「実は最近、生徒が行方不明になってるんだ…しかも夜に」
「校舎を見回ってた人から聞いた話だと、『先生に呼ばれた』って言ってたらしいの」
「なるほどな…」
稜牙は顎に手を当て考える。人が行方不明、夜…先生に呼ばれる…おおよその条件はそろった。稜牙はさらに質問を続ける。
「その先生…っていうのは誰かわかるか?」
しかし返ってきたのは、首を横に振るという否定だった。
「そっか…じゃあまず一回うずめと情報を合わせてみるか…ありがとな、二人とも!」
アオトの肩をたたきながらそう言い、稜牙は走り去っていく。初美はその様子を唖然としてみていた。しかしアオトは、稜牙の左手を凝視していた。ザルバのある左手を…
(あれは…魔導輪?)
「アオト?」
微動だにしないアオトに疑問を持った初美が呼びかけると、ビクッとして振り返る。
「ど、どうした?」
「あの人、どうかしたの?」
「な、なんでもないよ…あ、俺次の授業の問題やってないから、先行くな?」
はぐらかして走り去るアオトに疑問を思う初美だった。
(まさか…これは“あいつら”の仕業…なのか?)
走りながら、アオトはそんなことを思っていた。
謎の新キャラ、堂林アオト。魔導輪のことを知っている彼は一体何者なのか…
そして学校の行方不明事件とホラー アロンの関係とは?
それは次回の後編にて!