牙狼~ゲイムギョウカイに吹き荒れる金色の嵐~ 作:狼の騎神ガロ
しかしジンガ……煽りすぎ…
それでは9話、どうぞ!
「いつまで遊ぶつもり?早く帰らないと夕飯なくなるよー!」
夜、真っ暗な公園の中を、一人の男の子が駆け回っていた。髪がぼさぼさとして青い服を着ている少年は、一日中、この公園で遊んでいた。それでもまだ遊び足りないらしく、日が暮れた今でもこうして走り回っている。見かねた母親らしき人物が彼に声をかけるが、少年は一切聞く耳を持っていない。彼は草むらの前で転ぶ。すると、その近くには、鋭利な刃物が落ちていた。そこから声が聞こえる。
『そんなに遊びたいか?なら俺が遊ばせてやるよ……ただ、お前の命は貰い受ける』
その破片から魔物が現れ、少年に憑依する。そのまま少年は倒れ込むが、すぐに起き上がり、母親らしき人物に襲いかかる。
「ちょっと!やめ…」
そして少年の口が肉食虫のように開き、女性を喰らった……
―――――
――
その数十分後、プラネテューヌのとある路地裏にて…
「いやぁ、しかし契約がうまくいきましたね!」
「よし!んじゃこのまま飲みに行くか!」
いいことがあったのだろうか、男性たちは歓喜の渦の中だった。そんな彼らのもとにボールが転がってくる。疑問に思ってると、持ち主であろう少年が駆け寄ってくる。
「お兄さんたち、僕と遊ぼ!」
ボールを拾うと満面の笑みで問う。
「でもね坊ちゃん、もう夜遅いだろ?それに今の時間出回ってるとお母さんだって心配するだろ?」
優しい口調で諭す。すると、少年は彼らを睨みつける。
「ちぇ、なーんだ遊んでくれないの?だったら死んでよ」
そして口が開き男性たちは喰われていった。
「うわぁぁぁぁ!来るな!来るな化け物!」
一人の男性が後ずさりしながら叫ぶ。
「遊んでくれないお兄さんが悪いんだよ?……あ、そうだ!お兄さんは違う方法で食べてあげる!」
おもむろに少年が男性にボールをパスする。男性がボールを拾った瞬間…
「バァン!」
叫ぶと、ボールと共に男性も破裂し、少年に吸い込まれる。
―――――
―――
「ホラーが出現したわ、しかも厄介なやつよ」
プラネテューヌに戻ってくるなり、稜牙とうずめは、イリアに呼ばれ番犬所に来ていた。
「プラネテューヌに戻ってすぐに指令か…」
「厄介ってどういうことだ?」
「ホラー フォルネウス、子供にばかり憑依して、人を喰らうホラー…ただちに見つけて討滅しなさい」
稜牙たちは頷き、イリアに背を向ける。歩きだそうとした時、何かを思い出し、イリアに問う。
「ところでイリア、ベルシファは今どこにいるんだ?」
「わかってたらすぐにあなたに連絡するわ、そういう約束でしょ?」
淡々とというイリアに、「そうだったな」とだけ答え番犬所を後にする。
――――――
「いやー、しかしプラネテューヌに来るのは久々だな…ここで女神になって以来かな?」
番犬所から協会に戻る道中、うずめはそんなことを話していた。
「ここで女神になったのか?」
うずめに尋ねる。うずめは頷き、空を見上げながら話す。
「2年くらいまえのことなんだけどさ、こっちでエレメントを浄化してるときに、うずまきの……ちょうど俺のこのネクタイについてるマークに似てるマークのついたゲーム機を見つけたんだ。んで、それに触れた瞬間、俺の頭の中にいろんなことが走馬灯のように巡ってきて、気がついたら女神の姿になってた……って感じかな」
「いろんなこと?」
「あぁ、俺に瓜二つなやつがでてきたり、そいつに話しかけてる男がいたり…でも、一瞬のことだからあんまり覚えてないんだ」
うずめが落ち込んだ表情を見せる。
「悪ぃ、これの正体がわかれば、他のこともわかりそうなんだけど…」
「いいっていいって、さて、協会についたぞ……ん?」
その日の協会は少し違っていた。ネプテューヌが協会の前で、子供たちに囲まれているのだ。
「ど、どういうことだ?ネプテューヌ」
稜牙に気づいたネプテューヌが手を振る。
「あ、やほー、稜牙!どう?だいたい6話ぶりのプラネテューヌは!」
「どういうことだよ6話って…てかだからなんだこれは」
メタ発言に呆れながら改めて聞く。ネプテューヌの代わりに近くにいたネプギアが答える。
「実はお姉ちゃん、こうしてたまに子どもたちと遊んでるんです。一応これでもシェアは上がるので、いーすんさんも認めてるというか…そんな感じです」
苦笑いしながらネプギアは答える。そんな稜牙たちの会話をよそに、ネプテューヌと子供たちは鬼ごっこをして遊んでいた。
「しかし無邪気なものだな…あ、そういやネプギア、イストワールどこにいるかわかるか?」
「いーすんさんなら協会のなかだと思います」
――――
――
所変わってルウィーの協会に隣接している図書館。そこで堅人はある本を探していた。
「ん?これか……」
一冊の本を手に取る。表紙には『二人の女神と金色の光』と書かれていた。本をめくっていくと、牙狼にも似た騎士が魔獣をなぎ倒していく姿が描かれていた。堅人は最後の方を注意深く見る。そこには二人の女神らしき人間と、騎士が力をあわせて魔獣に挑む姿があった……
―――――――
「イストワール、頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと…ですか?」
稜牙はイストワールを呼び止め、ぶら下げてる勾玉を渡す。
「これは……なんですか?」
イストワールは首を傾げる。稜牙は構わず続ける。
「子供の頃、母さんからもらったものなんだ。実はこの間、これが光ったんだ…頼む、調べてくれ」
イストワールは頷き、勾玉を受け取る。小さな体では勾玉は重いのか、一瞬本ごと落ちそうになっていたが、すぐに体勢を立て直す。
「……ですが、調べるのに三日はかかりますがそれでもいいですか?」
イストワールは史書…つまり歴史を記した書物であり、イストワールの中には様々な情報がある。しかし、あまりに情報が膨大すぎて、ひとつのことを調べるのに三日を有するという。
「構わないけど……なるべく早く頼むぜ」
苦笑いしながら稜牙は答える。そしてふと窓から外の景色を見ると、子どもたちと元気に駆け回るネプテューヌたちがいた。
「こういうときは元気だな…あいつ」
「そうですね、その元気を、他の仕事のときにも発揮して欲しいものですが…」
ため息混じりにイストワールは言う。苦労してるんだなと稜牙は笑いながら外を見続けてると、一人だけ変わった少年がいることに気づく。青い服を着ているのだが、その服はところどころ赤く染まっている。
「ザルバ、フォルネウスは子供に憑依するって言ってたよな?」
「あぁ、もしかすると、あのネプテューヌたちと遊んでるやつの中に潜んでいるかもしれないな」
「かもな」
そして稜牙は協会を出る。一人になったイストワールは、うずめを見ていた。
(あの人は……うずめさん?でもうずめさんは2年前に…ならあの人は誰でしょうか…)
―――――――
―――
「お、稜牙、用事は終わったのか?」
ネプテューヌの所にくるなり、うずめが話しかける。今は昼を食べているところだったらしい。
「あぁ。しかし驚いたよ、ネプテューヌがちゃんと仕事をしてるだなんて」
「お姉ちゃんもやるときはやるんです。あ、稜牙さんもこれどうぞ」
ネプギアがペットボトルのお茶を稜牙に渡す。
「にしても、ねぷっちは子供に結構好かれてるんだな…」
「まぁネプテューヌ自体子供っぽいとこあるしな」
笑いながら話していると、ネプギアが懐かしむように話し出す。
「それもあるかもしれないですけど、お姉ちゃんは、もしかして別次元の仲間のことを思い出してるのかもしれません」
「別次元!?」
いきなりの壮大な話で二人は驚きを隠せなかった。
「はい、こことは違う別のゲイムギョウカイ、私たちは神次元と呼んでいるんですが、そこに今お姉ちゃんが相手してるくらいちっちゃい女神がいるんです。それもロムちゃんたちより小さい」
ただ頷きながらその話を聞く。
「にしても別次元か…うずめはどう思う?」
話を聞き終え稜牙はうずめに聞いてみる。
「うーん、もしかしたらホラーのいない世界かもな…」
そしてうずめは両手を合わせ女神化したときのような口調で話し始める。
「そこではねぷっちたちとうずめたちが家族同然で暮らしてるの。べるっちがお母さん的な感じで、ねぷっちたちが姉弟。ぎあっちたちはさらにその妹で、稜牙とうずめは、そこで居候してる兄妹!……とかだったらいいなぁ」
その様子にネプギアは唖然とするしかなかったが、稜牙はクスクスと笑っていた。
「だといいけど、うずめ、口調」
「え?口調……?ハッ!」
あきらかに違うことに気づきうずめはわざとらしくせき払いをする。
「ゴ、ゴホン!やっぱ、ホラーのいない世界だったらいいよな…なぁ、稜牙」
「ハハ、そうだな」
恥ずかしがるうずめと、それを見て笑う稜牙。
「えっと…これどういう状況ですか?」
訳がわからず、ネプギアは稜牙に尋ねる。
「うずめには、ちょっと妄想癖があって…んで、うずめの妄想が始まると…こうなる」
「うずめさん、可愛いところあるんですね」
「可愛いだけは言われたくない!」
ネプギアの可愛いという言葉を真っ向から否定するうずめ。そのうずめの様子に、稜牙は頭の上に疑問符を浮かべていた。
――――――
―――
夕刻が迫り、子供たちは親とともに帰っていく。だが一人だけ物足りなさそうにボールを持ちながら佇んでいる少年がいた。赤い何かのついた青い服を着ている少年だ。
「あれ?君のお父さんやお母さんは?」
子供と同じ目線になるようにしゃがみこんで、ネプテューヌはその少年に聞く。
「なんか、仕事があるんだって…ここで待っててもいい?」
「うん!いいよ!」
子供に向けて屈託の無い笑顔を浮かべるネプテューヌ。だが稜牙は少年を睨みつけていた。
「ネプテューヌ、ちょっとどいてくれ」
ネプテューヌをどかし、少年の顔を手で覆い、ライターをつけて魔導火を少年の瞳に向ける。すると瞳に模様が浮かび上がる。ホラーである証拠だ。
「さぁ、お迎えが来てるぞ?魔界からな」
魔戒剣を取り出し少年の首元に向けようとするが、少年は向けようとする手を払い下がる。
「そんな…」
「まさか、子供にホラーが憑依するなんて…」
ネプテューヌたちは震えていた。さっきまで共に遊んでいた子供がホラーだったのだ。
「ねぷっち、ぎあっち…あいつはもう…だからせめて安らかにいかせてやるのも、一つの救いじゃねぇか?」
そう言ってうずめは魔導筆を構える。
「そうだよね……いくよネプギア!」
「うん、お姉ちゃん!」
続けてネプテューヌたちも構える。
「へぇ、魔戒騎士に女神と遊べるなんてね…そうだ!こんなのどう?」
少年が野球ボールほどの紅白で中央に白い小さなスイッチのような物がある小さいボールを3つ空に放り投げる。
「バァン!」
少年の声とともにボールは破裂し、そのボールからは少年と全く同じ姿の何かが現れた。
「やっほー!」
「こんばんはー!」
「おいかけっこだおいかけっこだー!」
稜牙は頬を引きつらせていた。ネプテューヌに至っては
「なんじゃそのポシェモン!」
ルウィーで話題となっているポシェットモンスターと呼ばれるゲームに似ている光景にツッコミを入れていた。
「さぁ、追いかけっこだよ!僕が逃げるのが早いか、お姉ちゃん立ちが捕まえるのが早いか、本物を捕まえてね!それじゃ、スタート!」
四人の少年は一気に走り出す。
「絶対逃がすもんか!みんな!」
「うん!」
稜牙たちも同時に走り出す…
――――
「はぁ…はぁ…」
ネプギアは疲れた表情を見せる。
「お姉ちゃん疲れるの早いね…つまーんなーいの」
少年は立ち止まりネプギアを見つめる。だが…
「と見せかけて!」
ネプギアが突然少年の近くまで走り出し少年の肩を掴む。
「ちょっと反則かもしれないけど…ごめんね?」
ネプギアに掴まれるが、少年は不敵な笑みを浮かべる。
「びっくりしたけど…残念でした!」
風船が破裂するかのごとく、少年は消えた。偽者である。
「え?………はずれ?」
ネプギアはきょとんとしていた…
――――――
「よし、捕まえ…ってうぉわ!?」
うずめは少年を捕まえようとするが、すぐにすり抜けられてしまう。
「落ち着け…俺…相手はホラー…人の皮を被った化け物だ…なら!」
うずめは魔導筆を振るい法術で少年を攻撃する。すると少年は破裂して消える。
「チッ、偽者か!」
うずめは本物を見つけるためにまた走り出した。
――――――
稜牙は少年に追いつくと剣を振るうが、しゃがんだり飛んだりと、アグレッシブに動かれ、斬ることができない。
「くそっ…ちょこまかちょこまか…ハァ!」
稜牙は剣を放り投げる。剣が少年の体に触れた途端、少年は剣の重さによってその場に倒れ込む。魔戒剣はソウルメタルと呼ばれる特殊な金属で作られており、意志の持ちようでその重さを変える。その性質を活かした戦法である。だが、うずめたちの時と同じように破裂して消える。
「稜牙!」
うずめが駆け寄ってくる。
「うずめ、そっちは?」
稜牙が聞くとうずめは首を横に振るだけだった。
「こっちも偽者でした…」
ネプギアもやってくるなりこう言う。
「となると本物は…」
―――――
「へっへー!捕まえたよ!」
ネプテューヌは少年を捕まえた。稜牙たちの時とは違い、破裂はしなかった。つまり本物である。
「ねぇ、ひとつ聞いていい?なんで君はホラーなんかになったの?」
少年の目をしっかりと見つめてネプテューヌは聞く。
「なんでだっけ?でも、元の人間が、大人と同じくらい陰我にまみれてるってことじゃないかな?それよりいいの?お姉ちゃん、ホラーの近くにいて」
少年の口が、食肉虫のように開く。驚き後ろに引き下がるネプテューヌ。
「まぁいいや、どうせこのままじゃ逃げられないみたいだし…」
少年がボールを真上に投げると、少年の姿が変化する。両肩には球体があり、顔は骸骨で全体的に鱗のようなもので覆われ、そして身長は成人男性と同じくらいの大きさとなった。ホラー フォルネウスである。
「ネプテューヌ!」
稜牙たちがネプテューヌのもとに駆け寄り、稜牙は魔戒剣を構える。
「待って稜牙…このホラーは…私が倒す!」
確固たる覚悟を持ってネプテューヌは言う。そしてネクストフォームを発動し、真っ直ぐにフォルネウスを見つめ剣を構える。
「あなたの陰我…私が断ち切る!」
ネクストパープルとなったネプテューヌがフォルネウスに向かって走り出す。
「ハッ!ヤッ!」
太刀を縦に、斜めに何回も振るう。そして剣を振り上げ、フォルネウスを斬り飛ばす。フォルネウスは倒れる。それを視認するとネクストパープルは居合の構えを取る。太刀にエネルギーが溜まり、背中の花弁のように並んだ羽根も展開される。
「次元……一閃!」
フォルネウスが立ち上がると同時にネクストパープルは踏み込み、一瞬でフォルネウスに近づく。すれ違いさまにフォルネウスを斬る。だが致命傷とはならず、フォルネウスは倒れ込むがすぐに立ち上がり、ネクストパープルの首をつかみ稜牙たちのほうに投げ飛ばした。
「お姉ちゃん!」
ネプギアが駆け寄る。女神化は解けたらしい。
「稜牙」
うずめが稜牙のもとで何かをつぶやく。頷いた稜牙はネプテューヌの肩に一瞬手を置くと、ゆっくりとフォルネウスに向かい歩き出す。
「お疲れさんネプテューヌ…あとは俺がやる」
魔戒剣を抜き自身の前方に剣で円を描く。
「へぇ、次は魔戒騎士とか!」
「悪いが…遊びは終わりだ」
鎧を召喚すると、牙狼は一気に走り出し飛び上がる。それを合図にうずめは三枚の六角形の札を投げる。その札は徐々に細かくなっていき、牙狼とフォルネウスを包むように円柱状に配置される。
「ハァァァ!」
うずめがメガホンで叫ぶと、メガホンから球体が牙狼に放たれる。その方を向き牙狼が剣をその球体に向ける。球体が剣先に触れると、それは波紋のように広がり、牙狼が身を翻すと、札から緑色の炎がふき上がり、一つの結界のように牙狼とフォルネウスを包む。
「ハァ!」
牙狼は剣を構えフォルネウスを斬り裂く。炎はフォルネウスを燃やしていき、フォルネウスは消滅する。着地した牙狼の足元にはボールが転がる。フォルネウスに憑依された少年が持っていたものだ。
「まさか子供もホラーになるなんて…」
鎧を解きボールを拾いネプテューヌに渡す。
「誰だって陰我を持ってる…子供だろうと関係ない…」
「そう……だよね…」
ネプテューヌは稜牙の言葉にただ頷くばかりであった…
欲望、業…それらは陰我となりてホラーを引き寄せる。そして顕界したホラーは人に憑依し、人を喰らう。だが古よりホラーを狩る者たちがいた。“守りしもの”…魔戒騎士たちが…
ザルバ「稜牙、お前にもこの時が来た。さぁ己と戦いその力を勝ち取れ!次回『駿馬』大地を駆けろ、轟天!!!!!」
次回、とうとう稜牙があの力を!?お楽しみに!