問題児たちが異世界から来るそうですよ?~『終の夜』の軌跡~ 作:ブレイアッ
白夜叉にアンダーウッドまで連れてこられ本当にぽいっと言う他に例えようがないやり方で落とされたクロ。現在上空4000メートルの高さから自由落下中だ
真下に見えるのは巨大な大樹。このままでは地面より先に大樹にぶつかってしまう
「あー、うん。そうだ」
後で白夜叉に文句を言ってやろうと心に誓ってから胸元に手を当てる
何も五日間何もせずに眠っていた訳ではない。己の魂の扱い方を学び、箱庭に影響が出ないようにあの空間の中で特訓していたのだ
「『
クロの顔に青みがかった黒色の紋様が入る。その後、背中側の服を突き破って黒い光が双翼となって顕現した
「落ち着いて、翼を、動かす!」
バサッ、バサッ、バサッ、バサッ
黒い光の翼を羽ばたかせるたびに、落下速度が落ちて行く。この調子でいけば真下の大樹に着地できそうだ
「よし、っとぉ!?」
突然クロの真横から鹿の角と鳥の翼が生えたような獣が突進してきた
「あっぶない」
ひらりとその突進を避けるクロ。その動きが気に入らなかったのか獣は翼をさらに早く動かして方向転換、再びクロに突進してきた
「仕方がない。拘束するか」
クロが突進してくる獣に向かって右手をかざすと、手のひらから放たれた黒い光が鎖に形を変え、獣の胴体を縛り上げた。翼を失い、飛ぶことが出来なくなった獣をそのまま大樹とは反対方向にハンマー投げのように投擲した。獣は鳴き声を上げらながら飛んでいった
「うし、ナイスショットおおぉっ!?」
投げた先を見ながらゆっくりと落下していたせいか、下の大樹に思いっきり突っ込んだ
「ぷはっ、なんなんだよ!」
クロはいつぞやの台詞を言いながら突っ込んだ大樹から顔を出す。幸い怪我は無く、口のなかに葉っぱが入った程度ですんだ。すでに顔に現れた紋様は消え、翼は消滅している
「お………おおぉっ!」
大樹の真上から見下ろす街はひどい有り様だった。建物は倒れ、木々はなぎ倒され、ぐちゃぐちゃになっていた。しかし、それを復興しようと働く人々が見える。すでに骨組みが完成しているのもいくつかあった。
「そういえば白夜叉が東と同じくらいにこの辺りも魔王の襲撃を受けたって言ってたな。これはその名残か………よし、降りよう」
スルスルと枝や幹を使って降りる。途中で大樹に建てられた建物らしきものを見つけた
「なんだ?ここ」
窓を開けて中に入る。そこは執務室のような部屋だった
「私の執務室に何か用か?」
後ろから声をかけられた、振り返るとそこには赤く長い髪をもち、頭に痛々しい包帯を巻いた女性がいた
「えっと、人探しをしてます?」
「何故疑問系………まあいい。君の所属コミュニティと名前は?」
「“『ジン=ラッセルの』ノーネーム”所属。クロ」
「私は“一本角”の頭首を務めるサラ=ドルトレイクだ。もしかして君が探している人は“箱庭の貴族”が所属する“ノーネーム”の同士か?」
「ああ」
サラはふむ、と顎に手を当てて何か考える仕草をする。初対面の人物を相手にこうも無防備な姿をさらすのはクロが巨龍からこのアンダーウッドを守った“ノーネーム”の同士だからだろう
「今、君の同士たちは復興の手伝いをしてくれている。どうだ?帰ってきた彼らを驚かせるのは」
「ほう?」
キラリと目を光らせるクロ。どうやらこのドッキリにノリ気のようだ
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コソコソ、コソコソ
コソコソ、コソコソ
大樹にある貴賓室、そこは現在“ノーネーム”のメンバーが一時的に自室として使っている部屋である。その中のとある一室でクロが隠れて驚かす場所を探していた
コソコソ、コソコソ
「ここか?いや、隠れるには狭いか」
コソコソ、コソコソ、ピクッ
ドアの外から声が聞こえた。予想よりも早く、部屋の主が到着してしまったようだ
「やっぱ同じ箱庭でも場所が違うとここまで変わるんだな」
「そうね、片腕が無くなったとはいえディーンがここの人たちの役に立ってるのがわかると私も嬉しいわ」
「私も、南側に来てからたくさんの幻獣のお友達ができた」
声の主はクロより先に“アンダーウッド”まで来ていた十六夜、飛鳥、耀の三人だ
「なんだ、三人とも此処にいたのか。探したぞ」
「あら、どうしたの?」
続けて聞こえた声はサラ。事前に打ち合わせていたサラの「探したぞ」というキーワードにクロが動き出す。最も簡単で初歩的なドッキリの方法
「わん!」
それは突然現れて驚かす。普通は「ばぁ!」とか「わー!」とか言うのだろうがクロにそんな知識はない。咄嗟に思い付いた言葉が「わん!」しかなかったのはクロのボキャブラリーが戦闘用語に偏っているからだろう。決まったぜと心の中で思うクロ。しかし、彼は元が兵器だったためか戦闘以外では結構ポンコツなのだ。
それを証明するかのように問題児たちはちっとも驚いていない
「ケツを出して藁に頭を突っ込んでたのは隠れてたつもりだったのか」
「頭隠して尻隠さずを実行する人なんて初めて見たわ」
十六夜と飛鳥の言葉が刺さる。咄嗟に隠れたせいで藁に頭だけを突っ込み、下半身は丸見え、まさに頭隠して尻隠さずを体現していたのだった
「「…………ところで、誰?」」
続けて十六夜と飛鳥の言葉が刺さる。クロは身体が縮んでいたことを完全に忘れていた
そんな中で耀はクロの元に近付き
「お座り、お手」
「わん!」
命令した。それをタイムラグ無しで実行する
「なんだ、クロ公か」
「ただのクロくんね」
それを見た十六夜と飛鳥は目の前の少年をクロと認識した。それを見たサラが信じられないような目でクロと十六夜たちを見たのは当然だろう
:::
その日の夜、クロは自分にあてがわれた部屋から抜け出して夜空を見上げていた
「星は綺麗………か、これも人間の感性ってヤツなんだな」
ふと、自分の手を見る。この手にはその綺麗なものを破壊するだけの力がある。多くの命を、宇宙を破壊した功績によって自分に与えられた力。今更ながらに自分がしてきたことを『後悔』した
「にゃー」
聞き慣れた猫の声がした。声のした方を見ると耀と一緒に箱庭に来た三毛猫がいた
「『終の夜』解放。レベル1………どうした?三毛猫」
“終の夜”を使うことでシュウヤのときに使えた能力の一部を使うことができる。今回は人間以外のものとの会話能力だ
『どうしたもないわ。バカ修也』
「………驚いた。まさか白夜叉以外にも“源修也”のことを知ってるやつがいたなんて」
おどろくクロをよそに三毛猫は続ける
『まったく、勝手に消えたと思ったらいきなり戻ってきて、一体何のつもりや?答えによってはその喉元をこの爪と牙で引っ裂くで』
静かに言い放つ三毛猫。ふざけているような口調ではなく真剣そのものだ
「………俺にもよく分からない。けど、シュウとして消える直前に、耀の顔が思い浮かんだんだ。消えることを覚悟しておきながら、耀と離れたくない。そんなことを散り際に考えてたんだよ。俺は」
『そうか………』
暗い、口調で話すクロ。いや、“源修也”
「なぁ、三毛猫。俺はどうしたらいい?」
『いきなり何を言いよるんや、このアホは。消えたとかよう分からんけど、これだけは言える。アンタのやりたいことを、できることをすればいい』
「俺がやりたいこと、俺にできること………」
「俺がやりたいことは、“家族”を、耀を守りたい。俺には、戦うことしかできない」
『それでええんや。アホはアホらしく、だ自分にできることをやり抜けばいい。それがアンタの場合は家族のために戦うってだけや』
「家族のために戦うこと………そうか」
暗かった顔に笑みが浮かぶ
『なんや、ええ顔で笑うやないか』
人間らしくなったクロを見て、三毛猫は箱庭に来て初めて出来た友が死んだのだと理解した
それと同時に、目の前の少年がその生まれ変わりであること、“源修也”とも“シュウ”とも違う“クロ”という一人の人間であると理解した
『なぁ、“クロ”』
「ん?」
『ワイはこれから此処で余生を過ごすつもりや』
「うん」
『これからはワイの代わりにクロがお嬢のそばに居てやってくれ』
これは、最初で最後の三毛猫からクロへの頼み事。クロは右手の平に『終の夜』の黒い光を球体にして浮かばせて応えた
「ああ、任せろ。この俺の
ずいぶんと大げさだと三毛猫は笑ってやろうかと思ったが、やめた
クロにとって耀は自分の存在を天秤にかけるに足るのだと、それほどまでに耀の存在はクロに必要なのだと思ったからだ
『ありがとうな……』
自然と、呟いていた
『さ、怪我人はとっとと寝よか。クロも風邪引く前に寝よ』
「ん」
この後、しばらく夜空を眺めていたクロは寝ぼけて自分の部屋ではなく耀の部屋に間違えて入って耀の隣で寝たことを余談として書き足しておく
クロ「修也が死んだ!もういない!(以下略」