問題児たちが異世界から来るそうですよ?~『終の夜』の軌跡~ 作:ブレイアッ
すぅ……すぅ……すぅ……」
「………………………………………」
春日部耀は朝から混乱していた
理由は目の前で寝ている少年、クロだ
寝ぼけて部屋を間違えたのだろう。いや、そんなことはどうでといい。この少年の行動が見た目より幼いのはみんな知ってることだ。だから抱き枕よろしく抱きつかれてることも男とか許せる
今はそれよりも
(顔………近い!)
元々同年代の異性との交流が少なかった耀にとってこの目の前の15センチにも満たない距離に異性の、それも見た目は同年代の寝顔があるのは今までの人生で初めての体験だ
別にかわいい顔してるなーとか犬みたいな扱いしちゃったけどけっこう男の子の体してるんだなーとかそんなことを考えてはない。絶対に。
抱きつかれてるせいで起き上がることができない
「クロ………起きて」
体を揺すってみる。起きる気配はない
強めに揺すってみる。起きる気配はない
頬を軽くつねってみる。意外とやわらかい
鼻をつまんでみる。口で行をしだした
口も塞いでみる。起きた
「………耀?」
「おはよう」
「んー?……………おやすみぃ」
寝た。完全に寝ぼけてる。こうなったら奥の手だ
「……………おやすみ」
二度寝しよう。目を閉じればクロの顔も見れなくなるし。耀は目を閉じた
「すぅ………すぅ………すぅ………」
目を閉じると視覚以外の感覚が冴え、クロの吐息とか匂いとかそんなものがさっきよりはっきりと感じられて
(ね、寝れない)
「春日部さん起きなさーい!!」
バタンッ!と大きな大をたてて開かれるドア。声の主は久遠飛鳥だ
「もう、何時だと思ってるの!今日は一緒にガロロさんのところに行くって約束し…………!」
ズカズカと部屋の中に入り込んで絶句する。その後、顔を真っ赤に染めた
「な、何をやってるの貴方達はぁぁぁああ!!!」
昭和女子代表・久遠飛鳥。年頃の女が(見た目)同い年くらいの男性が一緒に寝るのは信じられないのだろう。飛鳥はクロの首根っこを掴んで耀からひっぺがした
「わんっ!?」
犬っぽい声を上げるクロ。空中で一回転して見事に着地した
犬のくせして猫のようなことをするやつである
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「う~~~痛い~~」
「自業自得よ。寝惚けてたとはいえあんなことをするなんて………油断ならないわね」
生まれて初めてのビンタに右の頬に赤い紅葉マークをつけたクロが頬をさすりながら言う
クロの子供のような仕草に耀はクスクスと笑った
「よう、お嬢さまに春日部と……綺麗な紅葉をつけてるのはクロ公か。朝っぱらからどうしたんだ?」
「別に、しつけの悪い犬に説教してきただけよ」
「犬じゃないし」
ふんっとお怒りオーラを出す飛鳥。犬じゃない発言をするクロに耀が手を出し
「お手」
「わん!」
「…………犬じゃない」
ノータイムで耀の手の平の上に右手を置くクロに「はあ」、とため息をつく飛鳥。それを見た十六夜はヤハハと笑う
「そういや今日はお嬢さまと春日部は“六本傷”の元参謀のとこに行くんだったよな」
「うん。この前の戦いで身につけた新しい力を使いこなすための特訓」
「私も特訓よ。実力不足で泣くのはごめんだわ」
二人の目にはやる気に満ちている。どちらもこの前の魔王のギフトゲームで実力不足を実感した。ゲーム自体に負けてはいないものの二人とも思うところがあったのだろう
十六夜はまだ頬をさすっているクロの方を向く
「そういや、クロ公はどうするんだ?俺と来るか?」
「や、耀と行く」
「そうかい。じゃあ俺は一人で気ままにぶらりとその辺見てくるよ」
「ごめんね、十六夜」
「別に気にすんな、同士が強くなるってんならそれに越したことはねぇしな。俺も楽できるし」
申し訳なさそうに言う耀に手をヒラヒラと振って何でもないように答える十六夜。
「あら、そんなことを言ってて良いのかしら?その内に私たちが貴方より強くなっていくわよ?」
その態度がお嬢さまには気に食わなかったらしい。少し高圧的な態度で皮肉を言う
「ヤハハハハ、そいつは楽しみだ。楽しみにしてるぜ?お嬢さま」
バチバチと火花を散らす二人。それを見ていた耀は「朝から仲いいなー」と微笑み、クロはその後ろに隠れていた。こういうやりとりには馴れてないらしい
その後は一緒に朝食をとり、飛鳥、耀、クロの二人と一匹……じゃなくて三人は“六本傷”のキャロロの案内でガロロの元に行き、十六夜は一人でぶらぶらとあちこちを見て回るために三人とは反対方向に歩いていった
:::
ガロロの指導のもと、“
「きゃあ!?」
そうとして失敗した。光の風が周囲に勢いよく拡散して辺りに突風が吹き、木々が揺れ、葉を散らす。それを起こした犯人である耀は風を制御できずに地面に落下して尻餅をつく
「ふむ、犬や鷹の恩恵を同時に使うことができても幻獣の類いとなると難しいか」
お尻をさする耀を見てガロロは冷静に分析する
一人で二人を同時に見るのは老人には限界がある。とのことでガロロは飛鳥と耀の二人を交互に見ることにしていた。さっきまでは飛鳥。今は耀だ
一方、クロは少し離れたところで一人でエペタムの使い方を特訓していた。クロのもつ恩恵である“
そこでリリの願いに応え、今では呼び声一つで何処からでもあっと言う間に飛んでくるクロ専用の武器となったエペタムを自在に扱うことが出来るようになればリスクの高い“終の夜”を使わずに済む
そのためには
「あっ、そっち行っちゃダメだって!」
刃渡り30センチ程の短剣に振り回されていた
元々エペタムには
「真夜中にひとりでに空を飛んで村を襲うので底無し沼に沈められ、上から岩で封印される」
「願いを受けてひとりでに敵の元に飛んで敵を追い払う(または斬り殺す)」
と様々な伝承があり、現代ではエペタムは複数存在すると考えられている
クロのもつエペタムもその内の一つ、クロのはエペタムの中でも相当なじゃじゃ馬らしく、あっちへ引っ張りこっちに引っ張りと中々特訓をさせてくれない。これも意思をもち、自由に飛び回ることができる武器であるためか
「はあ…全く振ってないのに何か疲れた……少しガロロさんのとこで休憩しよ」
クロがそう言うとエペタムがするりと手から抜け出し、クロの前で浮遊する
「(*´∀`)♪」
「何?キミも行くの?」
「(ゝω・´★)」
「もちろんだッ!って?わかった、わかった。一緒に行こうか」
「♪ヽ(´▽`)/」
「そんなに嬉しそうにしなくていいじゃないか。特訓、そんなにイヤなの?」
「(*^3^)~♪」
「いや、カタカタ音を鳴らされても……もしかして口笛のつもり?そのカタカタ音って集団の敵を混乱させるヤツだよね?」
クロ、本日の特訓の成果
エペタムと会話できるようになった(顔文字)
「え?そっち近道なの?道、無いよ?」
「ヘ(゜ο°;)ノ」
「え!迷った!?」
エペタムの動きをどう表現するかに悩んだ結果、顔文字をつかうことになりました。そしたらなんかエペタムが可愛く思えてきた。人食い剣なのに……