問題児たちが異世界から来るそうですよ?~『終の夜』の軌跡~   作:ブレイアッ

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タジャドル・隼さんの究極コラボ、『ロストボックス~問題児の集結~』に『召喚士の奇跡』から源修也ことシュウヤが参加しています
ぜひ見てください
というわけで(?)『終の夜』の奇跡、始まります


2話『第二の人生』

「よかった、気がついたんだ」

 

「あ………………」

 

俺は魔王との戦いで全ての(魔力)を使いきって俺に関する記憶ごと消滅した………はずだった

気がついたら俺は消えているどころかしっかりとした肉体をもって生きていた

そう、生きているのだ。死ぬ直前に作った魔力の肉体もどきではなく血の通った生者の肉体で

 

「あの……………?」

 

耀が心配そうな表情でこちらを見ている。どうやら考えすぎていたみたいだ

 

「はじめまして。私の名前は春日部耀、あなたは?」

 

俺のことを知らない?そうか、記憶操作は効いてるのか。なら良かった

 

「俺は………」

 

その時、俺の腹がくぎゅうううと鳴いた

 

「………………お腹、空いてるの?」

 

おかしい、俺の腹は鳴らないはずなのに。俺の体は食事を必要としないのに。心なしか空腹を感じる

 

耀はちょっと待っててとだけ言って何処かへと行った。たぶん何か食べられるものを持って来てくれるのだろう

 

:::

 

耀が戻ってくるまでの間、俺は自分の身体について調べてみた

すると、どういうわけか全て無くなっていた。兵器としての能力も全てだ

服の中にはどういうわけか俺がよく使っていた二本の召喚器、『鋼の竜人』と『雷の黒狼』があった。白夜叉に渡し忘れたのか?それはともかく、どうやら俺は兵器ではなく耀と同じ人間として生まれ変わったらしい

 

気がついたら涙が流れていた

 

「そうか、嬉しいのか、俺は………」

 

耀やイクスと同じ、命を持った人間に()れたことに

俺は、知らぬうちに人間に憧れを抱いていたのかも知れない

 

「お待たせ」

 

耀は両手でお盆を持ってきた

お盆の上にはパンと湯気が上るスープが載っている

 

「どうぞ、少ないけど遠慮しないで食べて」

 

「あぁ」

 

パンを片手に一口かじる

 

美味い

 

そうか、人間になったら味も感じられるのか。前みたいに舌で成分分析をして味覚を再現してたが、もうその必要も無いみたいだ

 

また、涙が流れてきた

 

「美味い……」

 

「良かった。これも食べる?」

 

耀が木製のスプーンで掬ったスープに息を吹き掛けてすこし冷ましてから俺の口の近くにもってくる

 

「口、開けて」

 

「いや、自分で」

「あーん」

「いや、だから」

「あーん」

「……あーん」

 

これも美味い

 

「美味しい?」

 

二口めを掬いながら耀が訊く

 

「あぁ、美味い」

 

:::

 

耀が持ってきた食事を食べ終え、少しすると“ノーネーム”のリーダーであるジン、かつて俺を召喚した黒ウサギ、俺や耀と同じくして召喚された十六夜と飛鳥、吸血鬼のレティシアが部屋に入ってきた一気に人が増えたせいで部屋が狭く感じる

大して広くない部屋に俺を含め七人だ

 

「目も覚ましたようですし、単刀直入に訊きます。あなたは誰ですか?どうやって僕たちのコミュニティに来たんですか?」

 

ジンが俺に問う

さて、どう答えればいいのか………

はっきり言ってどうして此処にいるのかは俺が知りたいし、『源修也』の名前も言いにくい。兵器としての名である『シュウ』も兵器ではなくなった今の身ではそう名乗る必要も意味もない

 

「名前は………無い。どうして此処にいるのかも、解らない」

 

そう、俺はもう何者でもない

 

「記憶喪失………ってやつか?」

 

記憶喪失か、厳密には違うが十六夜の言うのとは似てるかもしれない

 

「最後に覚えていることは何か無いの?」

 

飛鳥が俺に訊く

俺の最後の記憶か………

 

「魔王と…戦った」

 

魔王!?

 

俺以外の全員が口を揃えて言う

ヤバい、耳がキーンてした。これが音響攻撃か

 

耳を押さえている俺をよそに“ノーネーム”のメンバーが一ヶ所に集まって円陣を組んで話し合いを開始した

部屋が狭いせいで声を潜めても所々聞こえてくる

 

「魔王と戦ったということは彼は魔王の被害者です、反魔王を掲げる“ノーネーム”のリーダーとしてはここで保護すべきだと」

 

「御チビの意見には賛成だ。だが、もしアイツが魔王の手先だとしたらどうする?」

 

「黒ウサギの見たところ普通の人間で間違いありません。特に強力なギフトを持ち合わせている訳でもありませんし、魔王の手先だという可能性はゼロに近いかと」

 

「そうね、私もジンくんの意見に賛成よ」

 

「ああ、今さら一人増えたところで問題ない。幸い先の魔王討伐の報酬と匿名の者からの寄付のおかげで当分金に困ることはない」

 

「大丈夫、ちゃんと私が面倒見るから問題ない」

 

「耀さん?彼は拾ってきた犬とかそういうのではないのですよ」

 

「大丈夫だわん。拾い主を裏切ることはしないわん」

 

「ってなにいきなり話に入って来てお犬発言かましてるのですか!」

 

スパーンとハリセン一閃

ふむ、前より速くなってる。流石ツッコミを鍛えているだけはある

これがハリセンではなく剣だったらかわすのは無理だな、防ぐので精一杯だ

 

「別にいいじゃないか、一人だけ仲間はずれで寂しかったんだわん」

 

犬ってこんなだっけ?

ダメだ、俺の中での犬のイメージが白髪の筋骨隆々の男しか思い浮かばない。ておやー

 

「クロ、お手」

 

「わん」

 

はっ!つい耀の手の上に右手を置いてしまった!

恐るべし、我が主

 

「いきなり何やってるんですか!このお馬鹿様たちっ!」

 

ズパーン!

 

すごい、今一瞬ハリセンが分身して俺の耀の頭を同時に叩いたぞ!流石は箱庭の貴族と呼ばれるだけはある。こんなツッコミスキルを持ってるなんて

 

「クロってその人の名前?」

 

「うん、今決めた」

 

「流石にそれはどうかと思うわ」

 

そう?と飛鳥の意見に首を傾げる耀

 

「どうも、春日部耀の飼い犬のクロです。名前は今決まりました、これからよろしく。わん」

 

「本人が良いのならいいけど……」

 

「おう、これからよろしくなクロ公」

 

「はいっようこそ。僕たちのコミュニティへ、リーダーとして歓迎します」

 

「部屋はここを使ってもらって構わない。改めて、ここのメイドのレティシアだ。わからないことは私に聞くといい」

 

勢いではあるが俺の名はクロに決まった。コミュニティはまた、ここの“ノーネーム”だ

兵器ではなく、人間として生まれ変わった第二の人生は、第一の人生の最期を共にしたヤツらとのスタートになりそうだ。

 

「うぅ……最初のミステリアスな雰囲気は一体何処に………」

 

……なんか黒ウサギだけ泣いてるけど

 

 

:::

 

次の日

 

十六夜と耀は朝早くからギフトゲームに参加するために本拠を留守にしており、飛鳥も居住区格に出ている

本拠の中でお留守番をするはめになった修也ことクロは暇を友人にして本拠の中をぶらついていた

 

「…………………暇だ」

 

そんなことを言っても何かが変わるわけでもなく、パタパタと年少組の子どもたちが廊下の雑巾がけレースをやっているのを眺める

暇を潰したくて掃除を手伝おうとしたら子どもたちに「これは僕たちの仕事だから」と言われ、子どもたちの仕事を手伝うことも出来ずにいる

修也のころは武器の手入れや周囲の警戒等、後は耀の元で何かしらをしていたから暇を感じることはなかった。しかし人間となり、すべての恩恵を失ったクロには周囲の警戒をするだけの索敵能力もなければ召喚する武具もない。何もやることがないのだ。暇はすでに彼の親友になりつつある。

 

「武器の手入れ………そうだ!」

 

:::

 

「あの……危ないですから私たちがやります」

 

「いや、刃物の扱いは俺が一番わかってるから」

 

場所は厨房

クロは厨房にある包丁を含む料理刀をすべて一ヶ所に集め、それを片っ端から研いでいた

厨房を担当しているリリを代表とした年長組は自分たちがやると言い張るがクロは断固拒否の態度だ。実際、彼は剣や槍といった刃物の扱いに長けている。年長組とはいえまだ幼い少年少女に刃物研ぎはさせられない

クロが手にした包丁はよく使い込まれており大切に扱われていたのがわかる。だが使い込まれ過ぎて刃の部分が少し欠けている。少し前までこのコミュニティには子どもたちと黒ウサギしかいなかったことを考えれば包丁の手入れをするほど余裕はなかったのだろう。集めた料理刀の中には使われることなく錆がついているものもあった

砥石に包丁の刃をあて、丁寧に研いでいく

子どもたちが扱うことを前提にあまり鋭すぎず、かつ滑らかに食材を切れるよう加減する

20分かけてようやく一つ完成した

 

「よし、次」

 

また別の包丁を手に取りる。数々の武具を収集し、使ってきたクロの目からしても業物と呼ばれるようなものも多数あった

 

研ぎはじめてから約1時間たった

 

「ほう………これはすごいな」

 

「ん?」

 

クロが顔を上げるとそこには研ぎ終わった包丁を眺めるレティシアの姿があった

 

「ここまで繊細に刃物を研ぐ者は久しぶりに見た。もしかしてお前は料理人………いや、剣士なのか?」

 

「………いや、剣士だった。って感じだな。今は俺の剣もない」

 

クロは自身の手首を見た。今までそこにあった愛剣はいない

目が覚めた時にはすでに無かった

 

「ふむ……クロ、剣を握る気はないか?」

 

「え?」

 

「幸い、ここの武器庫にはたくさんの武具がある。使われずに腐っていくよりは腕のいい剣士に使われた方がいいだろう」

 

「はい?」

 

「そうだ、それがいい。そうと決まれば早速武器庫に行こう」

 

ぐいっとクロの腕をつかみ引っ張っていくレティシア

ここは研いだ刃物を見て実力を把握したレティシアの人を見る目に感嘆するべきなのかレティシアの強引さに困惑すればいいのか、そんなことを考えながらクロはずるずると幼い見た目のメイドに引きずられていった

 

:::

 

“ノーネーム”本拠 

武器庫内

 

「どうだ、お前が気に入りそうな武具はあるか?」

 

「いや、気に入りそうなって言われても………」

 

武器庫の中は綺麗に整理整頓されているが何年も使われずに放置されているせいか埃が舞い、少しカビ臭いにおいがする

 

「ん?この短刀………」

 

武器庫の奥の方にぶら下がっていた御簾草で編んだむしろの中に収められている一つの短刀に目がいった

どこか自分と似た気配を感じ、近づく

 

「ダメだクロ!それに触るな!喰われるぞ!」

 

「えっ!?」

 

後方に跳躍、すぐさまレティシアの方を振り返る

 

「危ないところだったな。この武器庫の中には危険な武具もたくさんある。気を付けた方がいい」

 

「わ、わかった」

 

結局、クロは刀を一振りと槍を一つ、ダガーを6本貰い、武器庫を出た

 

「それで良いのか?特に恩恵は無いただの武具だぞ」

 

「いや、これがいい。長さ、重さ共に良い。試し斬りをしたいんだが、どこか良い場所は無いか?」

 

「ならちょうど良い場所がある。ついてこい」

 

レティシアに案内され、ついた場所は居住区だったところに着いた。生命の気配がなく、風化した建物が建ち並んでいる

 

「ここの建物の柱とかなら斬っても構わない。始末の手間が省けて一石二鳥だ」

 

「わかった」

 

柱を前に刀を構えるクロ

 

(ほう………)

 

その様は歴戦の騎士(プレイヤー)のそれと同じように見えた

 

「はっ!」

 

気合一閃

一瞬にも満たない速さで斬られた柱は建物ごと土煙を巻き上げ崩れていった

 

「えっ?」

 

これに驚いたのがクロだ。振り抜いた体勢で目を丸くしている

土煙の中から赤い一つ目が光った

敵襲かと急いで刀を構え直すクロ

かつてのフォレス・ガロの残党が報復に来たのかと気を引き閉める

 

(何処の誰かは知らないが、こんな派手なことが出来るヤツが相手だ、今の俺でどこまで行けるか………)

 

クロの中で緊張が最高潮荷まで達した時

 

「DEEEEeeeEEEEEN!」

 

犯人が自白した

 

「ちょっとディーン!戦闘以外で声を出すのは禁止と言ったでしょう!?」

 

土煙が晴れ、そこから姿を見せた紅い鉄巨人の足元でその鉄巨人を主人である久遠飛鳥が怒る

 

「DEN」

 

主人の怒られて申し訳なさそうに返事をする鉄巨人。その巨体も小さく見えた

 

「レティシア………あれ、何?」

 

「あれはディーン、私たちの仲間で飛鳥の……そうだな、犬と言った方がお前には伝わりやすいか?」

 

「なるほど」

 

いつの間に仲間になったのかはわからないがあの巨大な鉄人形がいれば身体面に問題のある飛鳥でも前線で戦うことが出来そうだ

 

「ちょうど良い、そろそろ昼時だ。ディーンに運んでもらって本拠まで戻ろう。試し斬りは昼食を済ませてからでも問題ないだろう?」

 

「………わかった」

 

「飛鳥、ディーンの上に乗らせてもらうぞ」

 

「あら、いいわよ」

 

レティシアに首根っこを掴まれ、一気に跳躍。ディーンの上に飛び乗った

 

 

 

 

兵器としての人生を歩み、最期は兵器として人生を終えた源修也

召喚士の軌跡は完結した

しかし、なんの因果か人間として第二の人生を歩み始めたクロの物語が新たに始まる。過去の業をその身に背負い、『終の夜』の奇跡が始まる




申し訳程度のイチャイチャ
自分は兵器だとかもうすぐ死ぬとかそういうのが無くなったので心の壁的なものが無くなりました!これからのイチャイチャにご期待しないでください。
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