問題児たちが異世界から来るそうですよ?~『終の夜』の軌跡~ 作:ブレイアッ
現在小説を書いているスマホが何故か充電できないというトラブルが発生しています
明日から修理に出す予定なのでしばらくの間投稿はありません
「はぁ!」
正面から飛びかかり、両手で持った刀を振り下ろす
巨漢の魔王はそれを片手で持った刀で受け止める
(くっ、俺の両手分の力とヤツの片手分の力が互角ってわけか!)
「ふん!」
「ッ!」
巨漢の魔王を中心に吹く風の勢いが強まり、あっという間にクロはその場から5メートルほど飛ばされる
(技術ならこちらが上、だけどこの魔王はそれを凌駕するほどの怪力と防御力がある。ヤツを中心に吹く風も厄介だ。投擲武器も通じないし、こちらの動きを阻害させられる)
既に戦いが再開されてから10分が経過した。魔王の一撃は重く、下手に食らえば即死は確実。対するクロは全ての攻撃が魔王にダメージを通すほどの威力がなく、このまま戦い続ければクロの敗北は目に見えている
「ハァッ、ハァッ、ハァッ………流石だな、竜巻の魔神」
「ほう、どうやらさっきのはデタラメと言うわけでは無さそうだな。死ぬ前に言ってみよ」
巨漢の魔王は刀を鞘に収め、近くにあったレンガの塊に腰を下ろす
「何のつもりだ?」
「なに、小僧の考察を聞いてやろうと思っただけだ。お前は中々腕のいいプレイヤーのようだからな」
「そうかい、なら一時休戦ってわけだ」
クロもまた、近くにあったレンガの塊に腰を下ろし、ギアスロールを取り出した
「まずはこの、何も書かれていないギアスロールからだ。最初はギアスロールに書かれている文字を見えなくすることができる恩恵でも持ってるのかと思ったが………答えは否だ。隠されていたのではなく、書けなかったからというのが正しい。何故ならば
魔王のゲームをクリアする為の一つ目のヒント
①この事からホストは文字が存在しないほどの昔か文字が存在しない文化圏にいたものだと推測される
「次に風だ。アンタを中心に吹いている風には2つの役目がある。一つは戦いの際に身を守るためこと、二つ目はプレイヤーにギフトゲームの内容を歌として伝えることだ。これを②とする」
魔王のゲームをクリアする為の二つ目のヒント
「ほう、それがどうワシのゲームをクリアするためのヒントになる?」
「そう焦るなって、①と②を合わせるとホストは文字が無く、歌で口伝する民族であると推測される」
クロは持っているギアスロールをヒラヒラとゆらす
「アンタに蹴られた時、アンタの靴からこの何も書かれていないギアスロールと同じ鮭のにおいがした。アンタのその靴、チェプケリってやつだろ?」
「鼻がきくな、小僧。まるでセタのようだ」
「誰が犬だ!………っと、今ので確信を得た」
チェプケリ、セタ、どれもとある民族が使っていた言葉だ。
「ほう、なら結論を述べるがよい」
「ああ、そうさせてもらうさ。アンタの正体は………アイヌ民族の口伝叙事詩、ユカラに登場する竜巻の魔神、ニタイパカイェ。そうだろ?」
アイヌ民族について知っている人は多いだろう。日本の北海道やロシアの樺太周辺の地域に住む先住民で長い間狩猟と耕作による昔ながらの生活を送ってきた民族だ
「正解だ。如何にも、このワシの名はニタイパカイェだ。ここまで分かったのならこのゲームをクリアする方法もわかっているのだろう?」
アイヌには文字がない。しかし、アイヌには歌にのせて語り継がれてきた口伝叙事詩、ユカラというものがある。これに登場する英雄、ポイヤウンペが幼児であった時に誘拐し、育て、最後には戦の神、トゥムンチカムイから授かった鎧を身に纏ったポイヤウンペとポイヤウンペを探しに来た兄弟に討たれたのがこの魔王、ニタイパカイェだ
詳しいことはYouTubeで「ニタイパカイェ」と検索してください
「勝利条件の『天に昇る龍の名を明かし、これの魂を西に送れ』この天に昇る龍ってのは竜巻の魔神と呼ばれるアンタのことを指していると考えて間違いはない。さらにユカラでは死んだ者の魂は肉体から離れ、西か東に飛ぶ。東に飛べば甦ることができ、西に飛べば甦ることは無い。魂を西に送るには甦ることが出来ないくらい完璧に殺す必要がある。つまり、このゲームをクリアするにはアンタを殺す。そういうことだ」
魔王の正体さえ解れば自然とクリア条件にたどり着く。しかし、アイヌに文字がないことを逆手にとった、文字の書かれていないギアスロール、その内容を知るにはニタイパカイェと接触するほど近くに寄らなければならない。そこにたどり着くまでが難しいのがこのニタイパカイェのゲームだ。彼が身を潜めていれば絶対にクリアすることができない
「しかし、解らないな。ユカラに登場する
『北海道旧土人保護法』
アイヌの土地の没収やアイヌの生活の一部であった漁業と狩猟の禁止、アイヌの習慣や風習の禁止、さらに日本語の使用を義務づけ、日本風の氏名屁の改名などアイヌ民族の人権を無視した法律によりアイヌ民族の文化と共にユカラのカムイ達の霊格も衰退していった
神霊にとって神格=信仰だ。ユカラの神群が精霊で留まったのはその当時のアイヌの人々が心の中で彼らを守っていたからだろう
「確かに、ワシらは一度精霊の位にまで落とされた。だが小僧、お前の知識は少し古いようだな」
「何?」
「1997年に
「…………」
「頭が切れるわりに勉強不足だな、その年に『北海道旧土人保護法』が廃止され『アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』が制定され、我らユカラの神群は力を盛り返したのだ」
『アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律』
『アイヌ文化振興法』や『アイヌ新法』と呼ばれるこの法律はその名の通りアイヌ文化の振興、知識の普及とその啓発を主な内容としている。今まで否定的に捉えられていたアイヌ文化が国から肯定的に捉えられるようになり、アイヌの文化と共にユカラの神群は絶頂期までとは行かずとも再びその勢いを取り戻したのだ
「………なるほど、ね」
クロは立ち上がり、刀を構えた
「ほう、今から続けるのか」
「ああ、戦闘再開だ」
「いいだろう。小僧、かかって来い」
というわけで魔王の正体はニタイパカイェでした。解った人はいるのだろうか………?
『北海道旧土人保護法』、もう二度とこんな人権を無視するような法律ができないようにしたいですね