涼宮ハルヒの未来陥落〜止まる時間に何を望む〜 作:カオミラージュ
episode 3 〜宇宙は定理を愛する〜
7時間の睡眠を終えた俺は支度を済ませ真っ先に部室に向かった。
コンコン
「長門、居るよな?」
声を掛ける。
長門の事だ、授業中と短い休み時間以外は必ずここにいるはずだ。
「…居る」
小さな声で帰ってくる返事。
「入るぞ」
ガチャ
「長門、話がある」
「なに?」
「ハルヒの夢の話だ」
そして俺は昨日古泉にした話をそのまました。
ーーーーーーーー
「…ってな感じだ。 なあ長門、願望実現能力にはそんな感じの感知能力も備わってんのか?」
「…」
長門は黙る。そして俺を見つめ口を開いた
「これは兆し」
「兆し?」
「幾億と散りばむ不安因子に絡む記憶の抹消能力」
「…さっぱりわからん、分かりやすく頼む…」
「涼宮ハルヒは自分や自分の周囲を脅かす不安因子を察知出来る
元来涼宮ハルヒの力にそんな能力は無かった」
「ならどうしてだ?」
「涼宮ハルヒの力は願望実現能力。
そう言った力が付与する事を涼宮ハルヒは望んだ。
故にその力が現在涼宮ハルヒに備わっている。
その能力は極めて簡潔なもの。
自分と周囲に降りかかる不安因子が発生すれば感覚的に察せるという能力。」
「だから今世界を脅かしている謎の未来停止騒動が察知出来たんだな?」
「そう。でもこれは奇跡」
「そうか?あいつの能力ならその程度のことなら…」
「そうではない。」
「え?」
「涼宮ハルヒが未来停止の事象を知る事は出来ない。
彼女は不思議を求めながらもこの世界の端的な常識レベルを知っているから。
つまり涼宮ハルヒが私たちを周囲、有機生命体の言葉で「仲間」と思ってなければその能力は未来停止を感知していなかった」
「え、ええと…つまりハルヒが俺たちを特別な存在だと思ってくれてたから、未来停止を感知出来たってことでいいのか?」
「そう」
「そうか…。」
「涼宮ハルヒがわたし達をただの部活仲間程度との認識であれば感知は不可能。
涼宮ハルヒの「仲間」水準は相当高い物と思われる。
うわべだけの関係を涼宮ハルヒは根底から否定している」
「そっか、なんかそれはそれで嬉しい、でいいんだよな?」
「構わない」
「…でもよ長門。ハルヒがそれを感知してるってことを知れたからって解決になるのか?」
「直接的には不要」
「だよな」
「しかし情報統合思念体にアクセスすれば今までより遥かに前進した情報が産まれる。
だから貴方は世界にとってとても貢献した行動をした。
涼宮ハルヒからその情報を引き出せたのはあなただからこそ。
礼を言う」
「いや、長門。俺はそんな大層なことをしたつもりはないぞ…?
ただ電話しただけだ、しかも掛けてきたのもその話をし出したのもハルヒだ」
「情報統合思念体からのアクセス。
未来停止の犯人が発覚した」
「お前の親玉すげえな…
まさかその情報で犯人までわかるなんて、もう解決じゃないのか?
んで、誰なんだ?」
「朝比奈みくる拉致の実行犯」
「…まさか藤原か!?」
「該当する」
「待てよ、あいつはもう、この世界には来れないんじゃなかったのか!?」
「それまでは疑問。まだ解決していない。
しかしこの騒動の主はパーソナルネーム藤原で間違いはない。
情報統合思念体の捜索能力の程において場所も把握した。
情報操作にてパーソナルネーム喜緑江美里が向かった。
学校には喜緑江美里のバックアップ 黄緑江美里が代わりに滞在する」
黄緑さん…。
俺がパラレルワールドに飛ばされたあの時、俺たちのサポートをしてくれた人か…。
代わりに滞在ってことは、外見は喜緑さんそのままなのか…?
「もう一つ。 あなたは黄緑江美里との接触を制限する」
「?別に構わないがどうしてだ?」
「嫌だから」
お、おぉ…
長門、今のは反則だ。
「…心配しなくても長門以外のヒューマノイドなんかに浮気しねーよ」
頭を撫でながら言うと
「したら連結を解除する」
「あ、ああ」
殺されるってわけだな、すごいぜ長門。
「ところで長門、どうしてさっきの情報だけで藤原が犯人だと分かったんだ?」
「永遠の兆し」
「…?」
「情報統合思念体の捜索能力にて、永遠に近いレベルの時間原子を地球上に発見した。
その時間原子を作成出来るのは藤原某の未来人一派だけ。
未来人に使えるステルス能力が存在する。
それは時間平面を移動した際に生じた歪みを修正する際に使用するもの。
朝比奈みくるも脳内に所持しているが申請が受諾されないと使用は不可。
それらを踏まえ、未来人藤原某一派が使用するステルス能力の翳りを重点的に当たれば発見出来た」
「とにかく見つけたってことだな」
おいおい、今のを理解しろって?
かなり早口だったんだぞ、俺には無理だ。
「時間原子とは?」
「時間を停止、または再生、複製などを可能にする航時機TPDDの一種。
時間原子がフレアを起こすと時間が停止する。
有機生命体の言葉に変えるところのタイマーの様な機能が付属していて指定時刻に発動する仕組み。
それが2週間後。
正確には13日後。」
「ってことはこのまま何もしなかったら13日後に世界は止まっちまうんだな?」
「そう」
「どうすればいいんだ?
尚更このまま手をこまねいている訳にはいかないだろう?」
「喜緑江美里の情報を待つ。わたしの家で待機する。あなたも必要。
わたしの為に学業を一日放棄することを依頼する
いい?」
長門が俺に学校を休めと言ってるわけだ。
だが長門の役に立てるのだろうか?
あのパラレルワールド騒動の時も向こうの世界で、俺はなんたら空間に飛ぶ時の圧で気絶しちまってんだぜ。
だから今度こそ情けないところは見せたくない、長門よ、俺でいいならどこでも付いて行こう
「情報操作にてあなたは出席扱いとなる
涼宮ハルヒ、古泉一樹、朝比奈みくる以外の学生徒にはあなたが休んだことは認識されない。そのつもりで対応して。
涼宮ハルヒには後で連絡を入れて欲しい
部活動を二人で休むことを悟られないようにわたしはわたしで連絡を入れる」
「分かった、なら今から長門の家か?」
「こくっ」
「よし、行こう」
「まだ」
「ん?なんかあるのか?」
「帰る準備が出来ていない」
見た所長門は帰る準備万端のようだが…
「て」
「て? 手???
…ったく、ほらよ」
「…/」
俺はそっと差し出された長門の小さな手を掴みながら情報操作にて姿が見えなくなってるため堂々と門を乗り越えて外に出る。
すまんハルヒ。今日の団活は休ませてもらうぜ。
なに、不純な動機なんかじゃないさ
世界をちょっと救う手助けをしてくるだけだからよ、また土曜日の不思議探検には顔を出すよ。
不純な動機なんかじゃないのに手を握るのかって?
文句があるか? 無いだろう、この長門の無表情で寡黙な笑みを見てれば誰も何も言えやしないさ