涼宮ハルヒの未来陥落〜止まる時間に何を望む〜 作:カオミラージュ
episode 7〜未来を守る暖かい手〜
俺は目覚めた。
今日になった途端昨日までのことは「夢」になって全て片付いては無いだろうか、少し期待した。
「そんなわけない」
「だよな…」
長門に諭される。
6時40分。部室にて。
8.00時にホームルームだ。なんて早い時間に来ているのだろうか、俺は。
それより先に来てる長門もどうかとは思うがな。
長門に聞いたところ、朝比奈さんのTPDDを破壊する以外に解決策はもうないそうだ。
一応、それは最終的決行ということで情報統合思念体さんはなんとか穏便に朝倉に話をつけてくれたそうだ。
朝比奈さんが消え、俺という存在はあの「改変世界」に閉じ込められこの世界では居なかったことになり、ハルヒたちの隣には別の適当な男が選ばれるそうだ。
そんなことにはなって欲しくないもんだな。
俺は長門オススメの本を読む。
普段なら長門はここで隣に来るが今回はそれどころでは無いのだろうな。
あの長門が本を読まずずっと目を閉じている。
親玉と会話でもしているのだろうかー。
そして授業が始まる。
終わるまで俺は寝たり起きたりダラダラと過ごした。
勿論授業なんて聞いちゃいないぜ。
ってかこのまま消えるなら勉強なんかしなくていいんじゃないのか?とすらも思えてくる。
「なあ、ハルヒ」
「…なによ」
俺はあまりに暇すぎたタメ、後ろを向きハルヒに話しかける。
「いや、特にこれといってこれなことはないんだ」
「これこれうるさいわね。前向いてなさいよ」
「それじゃダメなんだ。なぜなら、俺は今ベロの先で逆立ちができるほど暇レベルが最高値に達している」
「バカじゃないの?バカキョン。」
バカバカいいやがって。
自分でも何言ってるのか分からないが、暇なんだよ。
「あ、そうだ。今日の団活は無いからね」
「?なんでだ?」
「その代わり集まりはあるわ。
部室じゃないところで、団活じゃない集まりが、ね」
何のことかサッパリ分からん。
「どういうことだ、ハルヒ」
「?なによキョン。聞いてないわけ??
みくるちゃんよ。みくるちゃん。
みくるちゃんの病室に行くのよ」
え?
「お、おいハルヒ、なんで朝比奈さんが…病室ってことは、病院だろ!?」
「?そうよ?」
おいそこ、うるさいぞ 前向けキョン!!
「お、岡部…先生、すみません」
「ははー!キョン、涼宮のこと好きなのは分かるが今は授業に集中しやがれ!」
「うるせえ谷口!!」
自分だって今の岡部の声で起きたくせによ…
ハルヒの方を再び振り向くと顔が紅潮していたが、俺には良く分からなかった。
〜放課後 近くの病院〜
「あ、朝比奈さん」
ピッ ピッ ピッ
「まだ目覚めないんですか?」
「ええ、見込みは浅いそうです…
でも、諦めないでくださいね!」
「はい…。」
古泉がナースさんと話している。
「おい、どういうことだ説明しやがれ」
俺は少し声を荒げ、古泉をハルヒの聞こえない位置に連れ出す。
「引っ張らないでください、落ち着いて。
ちゃんと説明しますから」
「ああ、早くしろ」
「昨日何したかは覚えていますよね?」
「?ハルヒと共に朝倉の学校案内をしたことか?」
「ええ、それで正解です。
朝比奈さんはどうされてましたか?」
「用事があると、喜緑さんが居なくなり少しして先に帰った…それにお前が門まで送っていった…んで、お前もその後帰ってこなかったな。ハルヒが不機嫌になってたのは覚えている。
朝比奈さんが少し早く帰ったこと、それはハルヒの前での方便で、本当は未来に連絡を取って解決策を練ったりするため、だろ?」
「はい、記憶の齟齬はありませんね?
ではお話しします、その帰り道です」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
…なんてこった。
その帰り道に、黒塗りのバンに轢かれたらしい。
古泉たちの調べで、恐らく別組織による計画的犯行。
目的は、朝比奈さんを殺し、脳波とTPDDを止めること…
そう、長門たちのようなTEFI端末は情報統合思念体や天蓋領域以外にも多数存在する。
そしてそれらも正体がわからないだけで地球に他何体か居るのだ。
もちろん、ハルヒの力の観測が目的だ。
つまり
長門たちじゃない「TEFI端末」と
古泉たちじゃない「別機関」が
手を組んで、長門たちじゃない端末がこの未来停止を観測、そして止める方法が朝比奈さんのTPDDの破壊しかないと気付いて。
朝倉が気づいた、つまり他のTEFI端末にも気付かれる恐れは十二分にあるというわけだ。
そしてそれを知った別機関が有無を言わさず朝比奈さんを狙った、というわけだ。
閉鎖空間で鍛えた身体能力で古泉が咄嗟に朝比奈さんを突き飛ばした。
おかげで朝比奈さんは即死せずこの…いつ目覚めるかも分からない状態で命を救われたというわけだ。
「…長門でも治せないのか?」
「真っ先に試みてくれました。
涼宮さんの力がかかってない物なら長門さんなら何でもできるでしょう。
しかし、傷の完治が不可能でした。
恐らく別組織に加担した他のTEFI端末がなんらかのプロテクトを接触直前にでも仕込んだと思われます、バンの表面塗装にそういったプログラムが塗られていて、朝比奈さんは車との接触と同時に長門さんの力を拒むプログラムが…体に…」
そこまで話すと古泉はフラフラと座り込む
「お、おい!大丈夫か!?」
「え、ええ…
これで…4日目で更にこの状況ですからね…
弱音を言わせてもらえば、体力的にもう限界を超えてまして…」
4日目寝ず休まず。
更に心身的疲労は増え続けている。
ハルヒもずっと朝比奈さんの手を握っていた。
部屋を出て古泉を連れ出した時横目で見えていたからな。
長門は本を読むフリをしてなんとかそのプログラムを壊すために頑張ってるのだろう。
そんな長門にも疲労が見えた。
今日の朝長門と話したとき感じた違和感は疲労だったのか。
ハルヒは動揺し、長門は連続的な問題が積み重なり疲労が見えているレベル。
古泉に至っては今にも死んでしまいそうだ。
疲弊しきっている。
朝比奈さんは殺されかけた。目を覚ますことが絶望的だなんて医者から言われたらしい。
体力的には一番元気だが何もできない俺が唯一無事だ。
…くそ…
無力だ…よくわからない陰に…
よくわからない陰謀にSOS団が壊されていく。
なあ、世界。
このまま止まっちまうのか?
俺は、何もできないのか?
その次の日、未来停止まで凡そ6日。
古泉がついに疲労で倒れてしまった。。
放課後 部室
「…」
「…」
部屋には俺、ハルヒ。
ハルヒはただ黙ってネットをいじっている。
さっきちらっと見たとき、疲労回復のなんたるかの様な物を調べていた。
古泉のためだろう。
一番聞くおまもり、とかも探していたな。
朝比奈さんの意識が戻ることを祈るのだろう。
古泉は機関の力により、朝比奈さんと同じ部屋に入院している。
個室だ。長門の希望でもある。
長門は朝比奈さんに付きっ切りで1秒も休む事なく朝比奈さんの手を取りプログラムへの介入を続けてくれている。
不可視遮音フィールドを張ってるらしいからナースさんの夜の見回りにもみつからないそうだ。
俺は部室で詰将棋。
古泉が居ないと暇だ。
朝比奈さんが居ないと自分で淹れた茶など不味いだけだ。
長門が居ないと誰が団活を締めてくれるんだ。
そして5人揃ってないとハルヒがしおらしくて不気味なんだよ。
だから戻ってきてくれよ。
そんなことを思ってるとき、ハルヒが口を開く。
それは、世界を…
変えることになる運命の一言だ。
「ねぇ、キョン」
「…?なんだ、どうしたんだ?」
また…
また、5人で遊べるわよね…?
…なあ世界。
このまま止まっちまうのか?
…なんてな、疑問系なんて俺そのものだな。
頭の中くらい俺は男らしくあってみよう。
「「世界、止まることはゆるさねぇぞ」」
そうだ、このくらいじゃないとこの肩書きは名乗れん。
「大丈夫だハルヒ。何たって俺はお前の団員ナンバーその1だからな。
俺に任せとけ、なんとかしてみる」
「…アンタに何ができるってのよ、ふんっ」
やれやれ。待ってろよハルヒ。
世界を救ってやるぜ。
いや、訂正しよう。
世界を救うのは、そのお前の暖かい手、だ、ハルヒ。