狂気の原点(仮)   作:甘夏缶詰

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始まりと幻想郷での一幕。

「魔理沙、遊ぼ!」

 

フランは図書室で本を吟味している魔理沙の背後にこっそりと回り、後ろから呼びかける。

 

「うわっ!・・・なんだ、フランか。外に出てもいいのか?」

 

「うん!魔理沙が来てる間だけは良いんだって!」

 

にこにこと嬉しそうな笑みを浮かべるフラン。その屈託のない笑みを見て、魔理沙はか細い声で、

 

「・・・ごめんね」

 

と呟いた。

 

 

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これは、むかしむかし。幻想郷がまだ結界で隔離されていなかった頃のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・っはあ!・・・・はあ、はあ。」

 

「やっぱり駄目ね。私の力じゃどうこうできそうにないわ。」

 

倒れた魔理沙を見て、申し訳なさそうに言う夢美。

 

「いいの、私のワガママなんだから。ね、幽香。」

 

「でもどうにかしなくちゃいけないことでしょ?やっぱり幻月に頼んでみましょう。」

 

魔理沙が行っているのは、狂気の鎮静。

 

魔界心に打ち勝つほどの力。その人間ならざる力を持つためには、類まれなる才能と尋常ではない努力、そして”代償”が必要であった。

 

その代償こそが狂気である。普段は鳴りを潜めているが、ちょっとしたきっかけでそれは目覚める。

 

魔理沙はこの狂気を鎮静することを望んでいた。なぜなら、もうすぐ転生が控えているからだ。

 

魔理沙は自らが人間であるということに尋常ではない拘りを持っている。それは同じく人間ならざる力を持った博麗の巫女への対抗心なのかは分からないが、人間にはいつか寿命が訪れるものだ。

 

だから魔理沙は強制的に人間の身でありながら、悟りを開くことなく、輪廻の輪から外れることとした。自らの魂だけを直接次の依り代に移し、冥界の地を踏むことなく転生を果たす。

 

こうすれば記憶を失わずにすむのだが、依り代も作らなくてはいけないことを考えると、常識的にはあり得ない量の魔力が必要となる。だが、すでに術式は完成しており、魔力の注入も完了しているため、あとは発動させるだけ。そこまでできる魔理沙はやはり人の道をかなり外れていることがわかるだろう。

 

しかし魔理沙は狂気を次の依り代に持ち越すことを妙に拒絶した。狂気が力の源となっているのだから狂気を取り除いた場合、その分の力が失われることになってしまうのだが、魔理沙本人にとってはそれは承知の上のことだという。

 

そこで魔理沙の望みを叶えようと友人達は尽力しているのだが、狂気はもう一つの人格のようなもの。無理に破壊すれば魔理沙の人格まで失われかねないため、どうしようもなくなっていた。だからこそ、狂気の代名詞とも呼べる幻月の元に行くのが最適だと幽香は言っているのだ。

 

「・・・・・そうね、そうしましょう。」

 

「よし!なら行くわよ!夢幻世界へ!」

 

良い策のようだが、ただ一つ問題があるとすれば、幻月が悪魔だということだろうか。彼女は純粋に、そして無邪気に悪意を振りまく。聖人が意識しなくとも善意を振りまくというのなら、彼女はその逆。そして、それは彼女の中では善意なのである。

 

そして彼女の悪意は何の罪の無い、無関係な者にも理不尽に襲いかかる。

 

一抹の不安を覚えながら、魔理沙は幽香の後に続いて飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「狂気の鎮静?・・・・・そうねえ。」

 

可愛らしく小首を傾げる幻月。その姿は背中の羽も相まって、さながら天使のようであった。

 

「狂気を移せばいいわ。まだ自我のない幼子に。」

 

数秒ほどの間を置き、幻月は笑顔で答える。

 

「・・・・・・ごめんなさい。意味がわからないわ。」

 

「そう?なんて言えばいいのかな・・・・・?」

 

全く理解していない様子の魔理沙の質問を受け、彼女は咳払いを一つして話し出す。

 

「ごほん。・・・・えーっとね、魔理沙の狂気は膨大な力の副産物のようなものなのよ。便利なものだとか、そういうものはそれに見合うだけの代償を必要とする。それはその物を作るためにかかる手間だったり、短所であったり、周りに及ぼす影響であったり、害のある副産物であったりするわ。大体、そういう物っていうのは消せないのよね。覆い隠したり、限りなく薄くしたりはできるけど、完全には消せない。そうしないと釣りあわないからね。で、魔理沙のことをそれを踏まえて考えるけど、あなたの力は下手すると時空を歪め、神だって殺し得る。地球くらい・・・・・壊せるやつ沢山いるわね。まあいいわ、それほどの力を持っているのだから、代償も大きい。そして”消し得ない”のよ。狂気はいくら薄めったって再発するわ。だから、こればっかりは他の者に肩代わりしてもらうしか無いのよ。力ごとその者に移すのが一番確実。幼子なら自我が確立していないから、力や狂気を受け入れない、なんてことも無いしね。狂気だけ移してしまうと移した相手が死んだ時に自分に狂気が返ってくるのよね。転生には数百年ほどかかるのでしょう?人間の幼子になんて狂気が移ったら転生後にはまた狂気が戻って来て何の意味もなさないわ 。働き損になっちゃう。」

 

「えっと、つまり、何の罪もない子供に狂気を移すの?」

 

「そういうこと。」

 

幽香が幻月の長ったらしい話を簡単に言うと、幻月はその通りといった風に頷く。

 

「でも幻月。魔理沙は優しいわ。そんなこと・・・・・」

 

「いいわ。やる。」

 

できるはずがない、と続けようとした幽香の言葉は魔理沙本人の言葉によって遮られる。

 

「魔理沙・・・・?」

 

「そうすれば私は幸せなんだわ。狂わなくていいんだわあ!・・・・うふふふふ。」

 

幽香が心配になって魔理沙の顔を覗き込むと、辺りは明るいというのに瞳孔が光を取り込もうと黒目いっぱいに開き、笑いながらも目から一切の感情が消えていた。

 

「幻月!」

 

幻月が魔理沙の狂気を操ったのだと気付いた幽香は、幻月を強く睨む。

 

「え?何で怒るの?だって魔理沙って人のことばっか気にして素直になれてないんだもん。子供一人の人生なんか気にして、こんなチャンスを逃すなんて可愛そうじゃない。だから、狂わせてあげたの。狂えば自分の欲望に素直に、自分のことだけ考えていられるわ。」

 

しかし、幻月は全く悪びれた様子はなく・・・・・・いや、彼女の中では善いことをしているのだ。だからこそ、怒る幽香にどう対応したらいいのかが分からず、行ったことの理由を説明したにすぎない。

 

「・・・・・ッ!」

 

行き場のない怒りを奥歯を噛み締めることでなんとか抑える幽香。だが幻月はそれを気にすることなく呑気に話を進めていく。

 

「これをしたら力は殆ど使えなくなるといっても過言じゃないわ。今のうちに靈夢と決着をつけておいたほうがいいんじゃない?」

 

「そうね、そうね・・・・・うふふふふふふふふふっふっつ!あははははははははははは、楽しみだわあ!(はあと)」

 

 

 




作者が情緒不安定なので。
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