「誰もお前のことなんか理解してなかったんだ」
「全く見ず知らずの俺がお前を先に見つけたくらいだ。みんなお前のことは探す気もなかったんだよ」
「お前は俺と同じ最底辺の人間だ」
ちょうどあれは文化祭最終日のことだった。委員長である相模の姿が見つからないと言う事で由比ヶ浜と雪ノ下に探してきてくれと頼まれ、俺は探しに行き、そして屋上で彼女を見つけた。
そして俺はいつもの様に他の奴らが言う自己犠牲というやつを行い、解決ではなく解消した。
別にどうでもよかった。この先もまた以前の様にボッチになり、由比ヶ浜と喋り、奉仕部に行く……俺は正直、そんな毎日を大好きだったのかもしれない。あの2人に頼られたことで自分が認められたような気がして嬉しかったのかもしれない。だから俺はいつものようにやった……後先のことも考えずに。
傷つくことは慣れてる……そんなこと嘘だった。
文化祭が終わってから俺の立ち位置は最下層まで落ち、主に女子たちから痛烈なバッシングという名の苛めを受けている。それだけではなく、傷ついた女子を護る俺かっけぇ的な考えをしている男子にも同じようなことをされている。
教室に俺の居場所は無くなった……いや、元々なかったんだ。なかったんだが奉仕部に入ることで由比ヶ浜に出会い、戸塚に出会ったことで俺は居場所を作ってしまった。
いつものベストプレイスで昼飯を食べてもどこか視線を感じるようになり、食事が喉を通らなくなってしまったから特別棟の便所をベストプレイスに変え、そこで食事をとってみた。いわゆる便所飯ってやつだ。
驚くことに食事が喉を通るようになった。視線がなくなったからな。
それ以来、俺は便所で飯を食べるようになった。
日常が変わればそれ以外も変わる。
放課後はいつも奉仕部に向かっていた足が今はただ単に自宅へ向かうようになった。
文化祭後も俺は足繁く奉仕部に通っていた訳だが文化祭が終わってから2週間もすると周りの視線が過剰なまでに気になってしまい、常に周囲を見るようになった。
その結果、由比ヶ浜が実は鬱陶しく思ってるんじゃないか、雪ノ下にあらぬ迷惑をかけているのではないか、などという考えが俺の頭の中に出てくるようになった。
奉仕部に相談に来るやつらも実は俺に対して黒いものを抱いているのではないか、全生徒から疎まれている俺が奉仕部にいることで2人から鬱陶しく思われているのではないか。
そんな考えが寝ていても出てくるようになった。
おかしいな……ボッチであるはずの俺は他人にどう思われていようがどうでもよかったはず……なのに何故俺は他人の視線ばかり気にしているんだ。
おかしい……傷つくことは慣れているはずなのになんで俺の教科書が机の上から落ちても誰にも拾ってもらえず、踏まれた後だらけになった状態で机の上に置かれていたのを見て便所で吐いているんだ。
おかしい……おかしい…………おかしいおかしい……おかしいおかしいおかしい。
こんなはずじゃないんだ……由比ヶ浜はただ単に三浦たちと一緒にいてそして俺にもちゃんと接してくれているのになんでこんなにも疑ってしまうんだろうか。
もしかしてこいつは三浦たちと一緒に俺がいないところで面白おかしくネタにして笑っているんじゃないか、雪ノ下と一緒に笑っているんじゃないか。
そんなことはあり得ないと分かっているはずなのになぜか考えてしまう。そして疑ってしまう。
あの時、由比ヶ浜の優しさは理由がある故の物ではなく、彼女自身が最初から持ち合わせているものだと気付いたはずなのになぜ疑ってしまうんだろうか、何故彼女の優しさには裏があると疑ってしまうんだろうか。
最近の俺は少しおかしい。
周りの視線を気にし、前の方から同じ制服を着た奴が向ってくるのを見ただけで冷や汗が出てきて視線をそらすようになったのはいつごろからだったか。
いつから上履きを靴箱に入れずにカバンの中にしまって持って変えるようになったんだ?
いつから俺は学校に教科書を置かなくなった。
一体いつから体操着を毎日持って変えるようになった。
一体いつから学校に財布をもっていかなくなった。
一体いつから奉仕部に行かなくなった。
一体いつから他人の笑い声を聞くだけで胸が苦しくなった。
一体いつから俺は誰かと話をしなくなった。
一体いつから俺は誰とも視線を合わさなくなった。
一体いつから俺は昔のことを思い出すようになった。
一体いつから俺は部屋からでなくなった。
一体いつから小町の顔を見なくなった。
あぁ、そうか。
今までボッチだと思っていた俺は実はボッチじゃなかったんだ。
喋る相手がいて、俺を気にしてくれる人がいる時点で気づくべきだった。
俺はボッチなんかじゃない。
俺は傷つくことに慣れているわけじゃなくてただ単に今まで傷ついたうちに入っていない程度だったんだ。
ここからが本当の俺のボッチライフが始まるんだ。
一体いつ、どこで、俺の青春というやつは間違ったんだろうか。