最後に隣の道具屋で、二人で残りのコルを出し合って回復ポーションと解毒ポーションを買えるだけ買うと、わいたちは村の奥にある一軒の民家に向かった。
ノックをして中に入ると、いかにも《村のおかみさん》といった感じのNPCがこちらに振り返る。
そして少し会話を交わすと、NPCの頭上に金色のクエスチョンマークが点灯した。クエスト発生の証だ。
「何かお困りですか?」
これは幾つかある、NPCクエストの受諾フレーズの一つだ。おかみさんの頭上で《?》マークが点滅し、彼女が口を開いて話を始める。
クエストの内容は、重病にかかった娘を治療するには、とある捕食植物の胚珠から取れる薬を飲ませるしかないが、その植物がとても危険なうえに花を咲かせている個体が滅多に出現しないので、自分にはとても手に入れられないから代わりにわいたちに取ってきてほしいとのことだった。
迷わずクエストを受ける。
なぜならこのクエストの報酬こそが、一層最強の片手剣である《アニールブレード》(キリトから聞いた)だからだ。
わいたちは二人分のクエストを受けると、民家を後にした。
「で…捕食植物型モンスターって言ってるけど何を狩ればええんや?」
まあ、《リトルペネントの胚珠》とあるから、そのリトルペネントを狩ればいいと思っているが一応聞いておく。
「うん、リトルペネントっていうMobを倒せばいいんだけど…」
やっぱりか。
だけど何か含みがある言い方だ。
キリトは「でも…」と続ける。
「胚珠をドロップする花付きのポップ率が1%…ううん、正式版になってからはもっと低いかも…」
…マジか。1%って単純に考えたら百匹に一匹やないか。そんなんめんどくさすぎるわ。
それが表情に出ていたのか、キリトが言いづらそうに続けた。
「で、でも普通のリトルペネントを倒せば出現率があがるよ!」
その言葉で少しだけモチベーションを立て直す。
まあ、デスゲームとなった今の状況で自分の強化を怠るなんて選択肢はないな。
「はあ……正直めんどくさいが、リトルペネントを狩りまくればいいんやな?」
「でも、一つだけ注意しないことがあるの」
「注意しないといけんこと?」
「その注意ってのは、花つきと同じくらいの確率で丸い実をつけているネペントが出てくんだ、そいつは言わば《罠》でね……実を攻撃してしまうと巨大な音とともに破裂して、嫌な匂いのする煙を撒き散らすの」
「……読めたわ。その煙が仲間を呼び寄せるやろ?」
「大正解だよ」鈴のような可愛い声で言い、ニコニコと微笑む。
ごっつ、かわええわ。
…………いいこと聞いたな。これはごっつうありがたいは、実さえ壊せばリトルペネントが大量につぶせる。
初期武器たちの片手剣、曲刀が二つ。大剣、槍、短剣1つずつ。合計7本か。めいいっぱい暴れられるな。
わいは心をウキウキして、リトルペネントを狩り始めた。
「なかなかでぇへんな」
そうぼやきながらわいはリトルペネントを片手直剣スキル《ソニック・リープ》で倒すと、リトルペネントは断末魔を叫びながらポリゴンになった。
「なんで、こんなでえへんのやろ?」
そう、わい逹はリトルペネントを百体以上倒しているが、花付きは出ていない。
お陰様で俺はレベル4、キリトは俺とクラインにレクチャーしていたからか3になっている。
「あはは……でもやっぱり確率が下方修正されているのかもね」
花付きが出現するまで一体あと何匹狩ればいいと思うは。
「こんなことなら二手に別れた方が効率的なんじゃないか?」
ほんの冗談のつもりだったが
「そうだね……充分対処できてるし、二手に別れる?」
俺もムチのようなつると、たまに来る溶解液を避けて弱点の蔦を攻撃するという繰り返しに、知らずイライラしていたのか了承してしまう。
「ああ、わかった。三時間後にホルンカでいいか?胚珠を手に入れたら、先に戻っててくれ」
「うん、わかった」
「なかなかいい準備うんどーになったわい」
そうぼやきながらわいはリトルペネントを片手直剣スキル《ホリゾンタル》で倒すと、リトルペネントは断末魔を叫びながらポリゴンになった。
「花付きが3体と実付きが2体か、中々よかな」
かれこれ2時間半と時間が過ぎた。その間にリトルぺネントを倒した数は、約400体。
もう武器が片手剣と短剣が1つずつしかないわ。20匹ぐらい倒した時に実付きが現れて、わざと実を割り、一気にリトルぺネントが押し寄せてきたのがありがたかったな。花付きもおって、ごっつありがたかったわ。
しかもレベルは6に上がり、追加されたスキルスロットに散々悩んだ挙句《隠密》を選んだ。索敵を選ぼうとしたがいらんしな。
・・・・・・・・・
なんせ、風ですべてが見えるやからな。
しかし、わいの頭脳は天才や。ここまでわいの考えた作戦がうまくいくとわ、わいの頭脳はよすぎるわ!
作戦名 実が爆発してリトルぺネント人口爆発
そのあとは狩るだけ簡単なことです。
評価 バカと狂人
ん。何か評価された気がする。
てか時間見たら後待ち合わせまで30分しかねぇ!ホルンカの村に急がなくては。
この時ニケは嫌な予感を感じた。ニケは生まれながらの天災、嫌な予感が外れたことがなかった。
そして直感も
嫌な予感を感じたその時、
パァァァァァン!
と、何度か聞く音なのに妙に危機感を増大させる音が聞こえた。
キリトside
(どうしてこんなことに…)
私はいま大量のリトルペネントに囲まれていた。
数時間前にエイトと別れてから一時間半後に《コペル》というプレイヤーから一緒に《森の秘薬》クエストをやろうと言われ、承諾した。
一時間で百五十匹以上狩ったのに、まだ花付きがでないと思っていた矢先だった。
花付きが出たのだ、それも、2体。
ただし、実付きも一緒に。
実付きの実を割ってしまうとたちまちリトルペネントが集まってきて、囲まれてしまうのだ。
コペルが実付きの担当、私が花付きを速攻で倒すことにした。
だけど、私が花付きを倒してコペルのところに行った瞬間-------------
コペルは実を爆発させた。
「え…?」
何で?何で実を爆発させたの?
しかし、考える間もなく、リトルペネントの大群が押し寄せて来た。
コペルは隠蔽スキルで逃げようとしたのだろう。
だけど、隠蔽スキルは視覚がないリトルペネントには効果がない。
五匹程倒したらコペルを見失った。生きているか、やられたのかも分からない。
あれから三十分。
ニケはもうホルンカに帰ってしまっただろうか。
武器も限界が近い。
そして次にペネントを倒した時、遂に武器が限界を迎えて砕け散り、青いポリゴン片の雨を降らせる。
目の前には大量のペネント。そして、武器はない。防具ももう穴だらけで限界だろう。
待つのは------死。
「嫌ああぁぁぁぁ!」
そして、リトルぺネントが一体近づいて触手を振り下ろそうとする。
しかし、それが体を切り裂くことはなかった。何が面白いのか巻きついて離れない。ダメージ量はごくわずかである。しかし、緑色の触手が巻き付き体に触れる嫌悪感が耐え難い恐怖に変わった。
記憶がフラシュバックする。
家族が妹の直葉が、そして知り合ったばかりのクライン、そして漆黒の髪の青年の姿が。
叫べば、彼は助けに来てくれるだろうか。一縷の望みを託し、口を覆う触手を噛みちぎる。そして自由になった口から大きく息を吸い、あらん限りの全力で私は叫んだ。
「助けて-----ニケ!!」
「-----その言葉、ご都合すぎやないかいな」
彼の姿がそこにあった。口元に浮かんだ不敵な笑みが、とても心強く思えた。
side out
「ぁぁぁぁぁ…」
悲鳴が聞こえた。
あれからわいは嫌な予感がし、目を瞑り風の流れと音の聞こえた方向を脳内MAPをつくり、キリトを捜していた。
(いたで……!)
距離100メートル。
およそ三十近くの敵に囲まれている。最短距離を算出する。
ニケは自分の脳内MAPに従い移動した。
邪魔な物を発見。リトルぺネントが数体がプレイヤーを囲んでいる。
「道の邪魔してんじゃねぇよ雑魚どもがあああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
口癖の関西弁がどこかにいった。しかし、そんなの関係ない。
片手直剣をアイテムストレージに戻し、装備変更で短剣を選択する。同時にスキルのモーションを起こすとわいの体を見えない手が強く押した。
「どけええええええええぇぇぇぇっ!!」
叫ぶと同時にソードスキルを放つ。短剣ソードスキル《ファッド・エッジ》が発動され、神速の連撃がリトルぺネントを切り裂いた。
「気いつけな」
ポリゴンの残滓を唖然として見上げる男性プレイヤーの足元に先程もで使っていた短剣を投げる。何か言いたそうな顔の少年だったが、素直に頷き帰りだした。
「(すまへんな、いまかわええ子が泣いとるんやごっつごめんな)」
そのまま他のより少し高い木に乗り、そのまま風を感じ空中に飛んだ。
空に向かって飛ぶ、誰よりも高く!下を見て人影を探す。風で感じた場所に人影もみつけた。
あれはキリトやな、いま向かうで。
SAOにも重力がある。重力を感じたまま勢いをまして落下していく。
キリトの声が聞こえた。
「-----助けて、ニケ!」
くくく、ほんまに
「------その言葉、ご都合すぎやないかいな」
そして、リトルぺネントに向かってえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
「ライダーァァァァァァキイイイィィィィィィクウウウゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーー」
リトルぺネントが吹き飛び他のリトルぺネントを巻沿いにしてその体を四散させる。
キリトは泣いていたが、わいにはいま泣き止ませる手段がない思いつかない。
そこで、わいは己の本能に従いキリトの頭を撫でた。
「助けにきたで、キリト」
くさい台詞を言った。
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さて、キリトが泣き止んだとはいえ、事態は好転していない。
取り敢えず、わいが使っていた初期武器をキリトに渡す。
「流石にこの数は一人じゃキツイし、くさい台詞を言ってなんやけど、しんどいんや。さっさと倒して眠りたいんや、手伝ってくれへん」
キリトはくすりと笑って、
「わかった、ニケもよろしくね?」
「お前の背中は俺が守る。てか」
「それはくさすぎる台詞だよ。「任せろ」でも大丈夫なところじゃない?」
「アホか、キリト、それ言うと何か死亡フラグっぽいやないか」
「ねぇ、なんで武器を取り出さないの」
「時間を稼ぐためヘイトを稼ぐ必要があるんや、そのために素手のほうが早いんや」
「でも、危険だよ」
「ならはよ助けにこんか」
とそこまで言ったところで敵も痺れを切らしたのか襲い掛かってくる。
それを両断しつつ、わいは言う、
「実付きを倒してきてくれ。また実を割ったりしたらいたちごっこや」
とキリトから聞いた知識が混じったことを言う。
「わかった……でも大丈夫?」
「なるべく早くしてくれ。こんな奴らに多数の視線に晒されるのはかなりキツイわい」
「ふふふ……ていうかリトルペネントには目ないけどね……それじゃ、頑張って」
言った瞬間キリトは駆け出した。
さて、わいは意外にスゴイってところ、見せてやりますか。
まず俺は、極振りにしている敏捷度にものをいわせて、全てのペネントに攻撃を当て、ヘイトを集める。
……さて、ここからがキツイ。
無数にあるかのようなツルの攻撃を回避し、いなし、カウンター。
キリト×触手……
さっきキリトを助けに入った時の惨状(?)が脳裏にフラッシュバックする。
その時、わいは本気で思った。もしリアルなら確実に鼻血の出血多量で死んでいた。
………これ、なんてシュチュエーション。てか、SAOて全年齢対象だよな?
なんて、アホなことを考えている間にも攻撃はくる。
だが全身が風を感じ、紙一重でよける。ヒットポイントが1つも減らない。
格闘技の一部、ボクサシングの動きにを中心に戦いを組み立てる。
当たらず連続にカンターを決め、ジャブ、ストレートを叩きつける。無論スキルがないのでダメージ量は少ないが、塵も積もればなんとやらである。
「こんなもんか、全力でかかってきいや!!」
わいの挑発的なセリフに対し、リトルペネントは耳障りな咆哮を上げる。
そして、調子に乗りすぎたせいかすべての敵がわいをターゲットにした。
うん。ごめんなさい。
と言いたかったが、カッコつけといてそのセリフを吐くわけにはいかない。
その時声が聞こえた。どこか楽しんでいるような可愛い声だ。
「せやあああああああッ!!」
キリトの持つ剣に水色のライトエフェクトが発生する。そして、真横に薙ぎ払われる。
気持ちいいほどに命中し、わいの目の前でペネントがのけぞる。しかし、キリトのソードスキルはまだ終わっていなかった。
薙ぎ払われた剣が煌き、手首を返して逆方向へ再び水平に払う二連撃。確か、《ホリゾンタル・アーク》というソードスキルである。
目の前で再び体を切り裂かれたペネントが硬直し、爆散する。
「グッジョブ、キリトちゃん」
「………え?」
キリトが硬直した。あれ、もしかして状態異常か何かか? そしてわいの目の前でキリトの顔がかああ、と真っ赤になった。
「…き、キリトちゃん!?」
「ん? なんか文句あるんか?」
その時、最後の一匹となったリトルペネントがキリトに襲いかかった。わいはとっさにキリトの前に飛び込み、渾身の回し蹴りを打ち込む。
「ニケ、スイッチいくよ!」
という声が聞こえて、わいは半ば反射的に相手していたリトルペネントを殴打し、全力で後ろに下がる。
光るライトエフェクトを纏わせた片手剣を持つキリトは《バーチカル・アーク》で最後の敵を倒した。
「死ぬかと思った……」
キリトはそう言ってポーションをがぶ飲みする。
「大丈夫かいな」
「うん……ありがとう」
そう言って、キリトが初めて見せた心からの笑顔は、黒い髪と夜の暗さと月の光が合わさって、どこか幻想的で……
―――やっぱり美少女の笑顔は可愛い。
「キリトの笑顔が見れるだけでご褒美やで。気にしなくてええって」ニコッ
キリトは顔を赤らめてふふふ、と笑って、
「ニケってホントにおかしいね」
「それがわいや」
――そんな会話をしながら、わい逹は帰途についた。
クエスト達成報告の時、キリトは泣いていた。宿で寝ながらわいは考えた。
改めて現実が、家族が恋しくなったのだろう。
眠りながら恋しさを感じ
----ああ、ほんまに、今日は、
窓の外を見ながら
「…………ホンモンちゃうけど……月が…キレイやな……」
そう言ってわいは、人知れず……家族を恋しく思った。
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