では、5話目をどうぞ。
高坂達のファーストライブが終わってからしばらくして、俺は今、穂むら屋に来ている。
「いらっしゃ・・・あ、君!」
店に入ってさっそく、割烹着を着た高坂が向かえてくれた。
「よう高坂、来たぞ」
「待ってたよ!、じゃ、私の部屋上がってちょっと待っててくれる?」
「部屋にか!?」
いきなり難易度高い事言ってくるな高坂は。
高坂はまだ店の手伝いがある為残らなければいけない、俺は高坂に言われた通り、階段を上がる。
っと、言っても。
「どこの部屋だ?」
ドアは全部で三つ程、高坂に部屋の場所を聞きそびれた。
「まあ、手前から確認してけばいいか・・・」
この時俺が、間違えた事は三つ。一つ、高坂には妹、つまり雪穂ちゃんがいる事をすっかり忘れていた。二つ、どんなドアでも叩いてから入ろう。三つ、下に聞きに行けばよかったじゃん。
「ふっん~!、後、もうチョイ・・・」グググ
ドアを開けて待っていたのは、キツメなズボンを後もうちょっとで履けそうな雪穂ちゃんだった。
「・・・」
そっ閉じ。俺は何も見てない。
もうちょっと見ていたかった気もするが、人にはプライバシーというものもあるし、なにより見るに絶えなかったわけで。
とりあえず、次の部屋に移ろうとした、だが。
バン!
「お兄さん・・・見ました・・・?」
ドアが勢いよく開かれると同時に、顔を下に向けている雪穂ちゃんが出て来た。
「あ、いや、そんな事は・・・」
「・・・」
ドアの向こう側っていうのはどうなっているか分からない。だから石橋を叩くように、しっかりと確認してからドアは開けよう。
☆
「あれ、どうしたのその頬?」
「いや、完全に俺のせいだから気にするな」
「?」
雪穂ちゃんにひっぱたかれた後部屋に案内してもらい、今ようやくこの部屋の主が来た所だ。
「じゃ、とりあえず。はい、ほむ饅」
「お、ありがとう」
ふむ、始めて食べるがこれがほむ饅か、ん~、なかなか美味しいなこれ、買って帰ろう・・・いや、じゃなくて!
「おい、高坂!今日は勉強だろ。俺はお茶会しにきた訳じゃないんだ」
「あ、そう言えばそうだったね!」
「忘れてたのかよ!」
そう、今日は高坂に勉強を教えに来たんだ。別に雪穂ちゃんにひっぱたかれに来たり、ほむ饅を買いに来た訳じゃない。
学校で必ずある生徒達への試練、それは中間試験、つまりテスト。
高坂達、スクールアイドルも毎日が忙しい中勿論テストを受ける。しかし、今回は少し違う。
なんと理事長から今回のテストで赤点をとった者はしばらくの間、部活動を禁止すると言われたのだ。
アイドルであっても生徒には変わり無い。学校にいる生徒なのだから学業を最優先にする。ごもっともだ。
いや、普通にしてればまず赤点なんてとらないだろうし、なんの問題も無いように感じるのだが、高坂は違う。
「ほら、早速始めるぞ、数学だよな?」
「うん、全然わかんなくて」
「さっそくだが、微分と積分って分かるか?」
「ん~、分かんない!」
即答、ダメだこりゃ。
「授業毎回寝ていればわかるわけないか、と言うか今日、園田さんは?」
「海未ちゃんは、今日は先輩の家行くって言っていた」
っく、俺より頭いい人がいないのか、完全に園田さんだよりだってんだけどな。後、分からない所教えて貰いたかったのに。
「それと、ことりちゃんも今日は家に人が来るって言っててこれないって」
南さんもいないか、辛いな1人で教えるって。
「まあ、無い物ねだりか、とりあえず簡単に教えていくぞ」
「は~い」
そのあとは隣で教科書を見せながら、説明していった。時々、高坂の髪の毛からくる香りや見えないからと言いグイグイとこちらに体を寄せてきたりして、ドギマギしながら教えた。途中で自分が何言ってるか分からなくなったわ。
☆
「はい、できたよ」
「ん、見てみる」
あらかた教えた後、教科書に乗っていた問題を使い高坂にテストをしている。本来、この問題達は授業でやっている為わかるはずだが、ちょっと前に言った通り高坂は寝ていた為、知らない。
俺が採点している間、高坂は暇な為休憩を取ってもらっている。グタ~と体を伸ばして無防備に寝っころがっている、腹が見えてるぞ。
「・・・」
「・・・」
俺が赤ペンを走らせる音しか、この部屋に響かない・・・。何か話す事・・・そう言えば、最近のコイツらの活動を聞いていないな、こちらは試合があるからほとんど陸上部いってたし。
「なあ、高坂。スクールアイドルはどんなに調子だ?」
「スッゴク楽しよ!」
うお!?、飛び上がって言ってきた!?
「ファーストライブの後にね、一年生が三人入ったの、真姫ちゃんと、花陽ちゃんと、凛ちゃんって子がね、みんな凄く可愛いんだよ!」
凛ちゃんって・・・時々語尾にニャって付ける子か、凄く運動神経よかったから陸上部で噂だったな。というか、その子と追いかけっこみたいな事したっけ。最初は百メートル走だったのに・・・、そうか、今はアイドルやってんのか。
「後は三年生のニコ先輩が入って今は七人だよ!PVとかも撮ってどんどん人気にならなきゃ!」
毎回、高坂は楽しそうに色々と話してくるな。少し羨ましく見える。
「そうか、頑張れよ」
「うん!・・・そう言えば君は?」
「え?」
「最近の陸上部どう?」
「え、まあ、普通だよ普通に頑張ってるよ」
俺の事聞いてくるか、まあ普通だろうけど考えてなかった。練習はしてるけど全然記録は伸びないし、なんだか気分も晴れないから、たまたま気分転換に高坂の勉強を教えに来た感じだ。後は、来週当たりにやる陸上の大会に見に来て欲しいとか言うつもりだった、ファーストライブ見に行ったし理由を言って。
「記録は伸びた?」
「いや、全然」
あれから練習を続けているが記録は伸びない。走りかたや、呼吸の仕方、腕の振り方を変えても伸びる気配はない。
「そう言えば、どうして君は陸上部に入ろうとしたの?」
「どうしてって・・・」
どうしてだっけ?、確か最初は中学の時だっけ、友達と一緒に入って、普通に毎日練習して、三年生になって、みんな受験だからって部活に来なくなって、俺も最後は居なかったけど、音乃木坂に入って元陸上部だからって、入って・・・。今に至る。
「オリンピック選手とかになった金メダルとりたいとか、夢とかある?」
「夢・・・、まあ、そんなデカくは無いけど。大会で優勝できたらいいな位は・・・まあ、今の実力だと無理だな」
夢、陸上部に入ってそんな事考えたこなかった。只、毎日が過ぎて行くなか部活に行って、練習して、大会に出て、参加する事に意味があるみたいな・・・そんな感じだった。
「ねぇ、夢ならもっと大きく持とうよ!、そうじゃないとやりがいが無いよ!」
「簡単な事言うなよ、夢があっても、そこまでに自分の実力が伸びなきゃたどり着けないだろ?」
「だから練習とかするんだよ!」
「いくら練習しても無理な事があるんだよ!」
「諦めずに努力すればいつかは」
「いつっていつだよ!」
つい、怒鳴ってしまった。理解してくれると思っていたから。だけど、高坂はそれでも。
「でも、夢なき夢は夢じゃないんだよ」
なんで、こんな必死なんだよお前は・・・。いつの間にか握っていた拳を開き、少し冷静になる。
高坂がこう言うのは今一番の体現者だからだ。高坂は今実際にスクールアイドルというもの0からスタートし、学校を廃校の危機から救うという夢まで持ち、日々努力し練習に励んでいる。そして結果としてそれを残しつつある。
俺が何か反論出来る事はない。
「悪りぃ、なんかカッとなったりして」
「あ、私も、ごめん・・・」
ついさっきまで考えていた事を振り払い、再び高坂が書いた答案用紙に目を向ける。
「なぁ、高坂・・・」
「何?」
「・・・いや、やっぱりいいや」
そう言えば、俺は、陸上部の大会があるから見に来てくれって高坂に言おうと思ってたんだっけ・・・。
○より×が多いい問題達を見てペンが止まる。
結局、俺は誘えずに、その日は終わった。高坂は微分と積分を理解してくれたと思うが。俺の心は晴れずに終わった。
高校時代に部活をしていた方はどんな気持ちで試合や大会に望みました?
私は参加することに意味がある派でした、確かにそこにも得られるものがありましたが、もし本気で、優勝、一位、金賞を狙いに行ったらそこには何が見えたのでしょうか?
感想、指摘よろしくお願いいたします。