さあ、愛を演じよう   作:玉露入りお茶

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夢なき夢は夢じゃない

音乃木坂の中間試験が終わって次の日、早くも陸上の大会の日が来てしまった。

 

「ほら、行くぞ~お前ら」

 

学校の校門前、大会へ出場するため陸上部の部員達が集まる、休日の日なので他の生徒はあまりいない。

 

俺は桜の木を見ていた、つい最近まで咲いていた桜も今は散り、緑の葉を生やしている。

 

もうそんな時期なのか、俺の高校生活も後半分位か・・・

 

「おい!聞いてたか?」

 

「!、すいません先生」

 

「最近、ぼさっとしてんなお前、今日は大会なんだから気引き締めていけよ」

 

「はい・・・」

 

大会の開かれる場所に移動するため顧問の先生を筆頭に陸上の部員達が後に続く、俺も集団の後ろに付き歩く。

 

校門を出ようとした所で、不意に耳に入って来た音に気付き振り向く。

 

「この声は」

 

屋上から聞こえてくる、高坂の声だ。

 

練習をしているのか1、2、3とリズムをカウントする声が聞こえてくる。他にも様々な声が混じっているが高坂の声は確実にとらえる事が出来た。

 

結局、見に来てなんて言えなかったな。

 

高坂の家で勉強をした後、その後もこちらから言えずにいた。テスト期間中もテストの事意外を高坂に言うと赤点を取るんじゃないかと思い、出来るだけ避けていた。

 

何故誘えなかったかは、分からない。ならいっそ今誘いに行けばいいんじゃないかと思ったが、高坂は今練習してるし迷惑じゃないかと考えた。

 

そもそも、高坂を誘った所で何か意味があるのか?

 

結局、大会までに俺の記録は伸びなかったし、大会を見に来て貰った所で恥を見せるだけなんじゃないか?

 

・・・今更言ってももう遅いか。

 

俺はもう一度屋上を見た後、校門を抜けそのまま大会へと向かった。

 

 

 

 

長距離走、また違う名を中距離走。

 

短距離走より短く、マラソンより短い。オリンピック競技にもあるが、きっと短距離走よりかは目立たないないそんな陸上種目だ。

 

俺が何故、その競技を選んだかとすると、俺は短距離走ではずば抜けて早いわけではないし、マラソンのような超長距離を短時間で走れる体力もなかった。だから長距離走は

俺にとって都合が良かった。

 

ある程度早い足、そしてある程度持続的に続く体力、この二つがあれば長距離走は走れる。

 

俺の得意な種目・・・だった。

 

高校に入ってから全然記録が伸びなくなった、回りの選手は俺を抜いて行き俺は離されていく、何故かは分からなかった。回りの選手より、走る速度が遅いのか、俺の体力が無いのか、得意な競技だった筈なのに。

 

また、負ける?

 

俺は去年と変わらない場所に立っていた。

 

 

「・・・はっ!」

 

気がつけば陸上競技場のグラウンドにいた。

 

いつの間にか、ユニホームに着替え、自分がでる競技の時間になっていたようだ。

 

他の選手達が次々にスタートラインに立ち、始まるのを今か今かと待っている中、俺は行けずにいた。

 

この前と一緒、少しだけある高揚感と緊張感。

 

変わらなかった、この感覚を感じながらスタートラインへと足を運ぶ。

 

そんな時、聞き覚えた声が聞こえた。

 

急いで、観客席の方を見る、するとそこには。

 

「あ、いたいた!」

 

驚いた、それは間違えなく高坂だった。

 

「なんで、お前・・・」

 

来てくれるなんて、思ってもいなかった。

 

高坂は息を切らしながらも俺の顔を見て言った。

 

「ファイトだよ!」

 

突然の事に少し唖然としたが、俺は高坂が応援してくれている事が分かり迷わず言った。

 

「ああ!」

 

俺は直ぐ様、スタートラインに行き、クラウチングスタートを構える。

 

いつもとは変わった感覚。

 

俺を見ていてくれる人がいる、何故だろう。

 

負けられない、アイツの為に。

 

 

そして、スタートを告げる、乾いた銃声が鳴り響いた。

 

 

 

帰り道、競技場からバス停への道のりの途中、高坂を見つけた。部活のみんなには先に帰ると言い。高坂の元に駆け寄る。

 

「おめでとう!、君なら絶対に勝てるって信じてたよ」

 

「高坂・・・」

 

大会が終わった、結果は一位。自分でも驚いている。まさか自分があんなにも長く早く走れたなんて。

 

「なんで、大会の事わかったんだ?」

 

高坂には大会の事なんて話してない。それに、陸上部には俺以外に知り合いなんていない筈なのに。

 

「それは、凛ちゃんが言ってたからね、君が大会にでるって」

 

ああ、あのネコ子か。体験入部、先生が言ってた時、あの子も聞いてたからな、覚えていてくれたのか。

 

「そいつは、どうも。ありがとう来てくれて」

 

「どういたしまして、私の応援はキミに届いていたかな?」

 

「最初のファイトっての奴しか分からなかったよ」

 

「え!?、ヒドーイ、私あんなに叫んだのに!」

 

まあ、本当は走っている最中も聞こえた、頑張れ~!、という大きな声が。

 

心強かった。

 

しかし、少し、俺の中で疑問に思った事を高坂に聞いてみた。

 

「なぁ、なんで高坂は俺の事応援しに来てくれたんだ?」

 

「え?、それは、いつも君には応援して貰ってるし、ライブを見に来てもらっから・・・」

 

やっぱり、高坂らしいな、やってくれた事はちゃんと御返しをする、優しい奴だ。

 

「それに・・・」

 

ん、それに?

 

高坂は一度、咳こみ、呼吸を整えて言った。

 

「君の事が好きだから・・・」

 

この言葉に俺の思考は一度停止した、だが直ぐに復旧して目の前の高坂を見る。

 

「な、なんで俺なんだ?」

 

少し、いや、かなり動揺しているが頑張って聞き返す。

 

「走っている君が好きなんだ」

 

「走っている俺?」

 

「うん、一年生の頃から放課後に走っている君を見ていて、頑張ってるな~って思っちゃって、心の中でいつも応援してた。頑張れ~って、挫けないで~って。そしたらいつの間にか君の事を目で追うようになって、最近気づいたんだ」

 

高坂はもう一度確認するように俺に言う。

 

「君の事が好きなんだって」

 

顔が赤くなってきた、人に好きって言われるのってこんなに恥ずかしのか、いや、むしろ恥ずかしいのは高坂のはずだ、誰かに好きって言うのはどれくらい勇気が必用な事か。

 

なんと言うか、俺も伝えなければならない、そんな気がした。

 

「俺もお前の事が好きだ!」

 

うわ、恥ずかしい。高坂も凄く驚いてるし。

 

「お前が居なかったら、絶対に一位は取れなかった。それどころか、きっと何かを捨てていたかもしれない」

 

顔がお互いに赤くなっている、心臓の鼓動が聞こえる。俺は頭を下げて言う。

 

「お前が側にいて欲しい」

 

あれ?、なんかプロポーズ見たいになってしまった。どうしよう。

 

自分の失敗に悔やんでいると、高坂の笑い声が聞こえてきた。

 

「ふふふ、あはは!」

 

突然笑い出した高坂に茫然とするが、ひとしきり笑った高坂が、笑い涙か、嬉しい涙かを拭きながら言った。

 

「うん!、私もよろしくね!」

 

高坂が俺の手を取り、帰り道を進む。

 

「そう言えば、今回の大会ってどういう大会だったの?」

 

「おま、知らずに見に来てたのかよ・・・」

 

「あはは・・・ごめん、練習に夢中だったから全然調べてなかったんだ」

 

はぁ、実に高坂らしい。

 

「今回は、地域予選、これで一位になったから次は地区予選だな」

 

「地区予選?、じゃあもしかして」

 

「ああ、このまま上り積めていけばいずれ全国にだって行ける」

 

後は自分の頑張り次第、これから先はもっと強い相手がでてくる。少し前までの俺はきっとたどり着けなかったのかも知れないが今の俺ならきっと。

 

「ねぇ?、夢は、決まった?」

 

「夢?」

 

そう言えば、コイツの家ではちぐはぐのままにしてしまったか、確かに前までは小さな目標しか目指せなかったが今は。

 

「そうだな、全国・・・いや」

 

握られている手を優しく握り返し高坂に言う。

 

「世界一位にでもなってみるよ」

 

「立派な夢だね」

 

「だろ、いつになるかは分からないけどその時まで頼むよ、穂乃香」

 

始めて名前で呼んだ、穂乃香もそれに驚いているが直ぐ様笑顔で答えてくれた。

 

「うん!」

 

 

 

夢は大きい程、遠く険しい道のり、だけど本気だったらチャンスはくる、笑顔で背中を押してくれる人がいるなら何処へでも行けるだろう。

 

 

 

 

 




はい、ラブライバーな方なら知っていると思います。そうこれは曲の「夢なき夢は夢じゃない」をモチーフに書きました。この曲の歌詞にある「今日も君は走っていく」と言う所で主人公は陸上部という設定が決まりました。歌詞の二番目に「泥まみれボールを 拭いてあげたくなる」というのもあり、野球部じゃん!、と思ったのですが、音乃木坂に野球部ないだろ、あってもソフトボールだしなぁ、という判断で陸上部にする事にしました。(一様、凛ちゃんとも接点あったし)

一様高坂 穂乃香編はここで区切ります。次は海未編かことり編を書きたいです。

では。
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