リルドの冒険譚   作:1103

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今回はなかなか悩みました。少し変かもしれませんが、大目にみて下さると助かります。


第9話、救出開始

リルドは緊張していた。今日はミノリやトウヤ、それに悪質ギルドにさ捕まっている初心者冒険者を救出するだけでは無く、アキバを改善させる為の大会議が行われようとしていたからである。

 

「大丈夫かリルド?」

 

アカツキが緊張するリルドに対して、そう尋ねた。

 

「ちょっと緊張している」

 

「無理も無いか、今日はアキバが変わるかも知れない日だからな、多少は緊張するだろう」

 

「アカ姉は平気なのか?」

 

「主君の立てた作戦だ。何の心配も無いからな」

 

作戦とは、先ず集めた資金でギルド会館を買収、そして初心者を除くハーメルンメンバーをギルド会館の入室制限を掛け、初心者達だけを保護するものであった。

ハーメルンを潰し、初心者全員を助ける。えげつないが、一石二鳥の作戦である。

 

「さてと、そろそろ時間だ。行くぞ」

 

「ああ!」

 

こうして二人は、ギルド会館に入って行った。

救出作戦が開始された。

 

―――――――――――

 

救出作戦と言っても、彼らがやれる事はたかが知れている。相手のギルドホールに入れない以上、初心者達はここまで自力で逃げ込まなくてはならないのである。そこで班を二つに分ける。

一つはギルド会館内で待機、そこから逃げ込んだ初心者を保護するチーム。もう一つは、万が一ギルド内でPKされて、大神殿に送られた初心者を保護するチームである。

ギルド開館は三日月同盟とアカツキとリルド、大神殿はドレットパックと直継が担当していた。

 

 

(復活するからといって、正直あまりいい気はしないな・・・・・・二人とも、無事にこっちに来てくれよな)

 

そう願いながら、リルドは待ち続けた。

 

 

それから暫くして、次々と捕まっていた初心者達がギルド開館に駆け込んで来た。しかし、そこにトウヤとミノリの姿は見えなかった。

 

「なあ、トウヤとミノリは?」

 

初心者の一人にそう尋ねると――――。

 

「それが・・・・・・逃げようとした時に見つかってしまって・・・・・・それで二人が時間を稼ぎに―――」

 

「なんてこった・・・・・・」

 

リルドは歯痒いと感じた。今すぐ二人を助けに行きたいが、ハーメルンに所属していないリルドは、入室権限を持っていなかった。

 

(二人とも、無事でいてくれよ・・・・・・)

 

リルドが出来る事は、二人の無事を祈る事だけであった。

 

 

殆どの初心者達が三日月同盟に保護され、退会手続きをするためエントランスに行っていた。しかしリルドとアカツキは、最後の二人であるミノリとトウヤを待ち続けていた。

 

「リルド、少しは落ち着いたらどうだ?」

 

落ち着きの無いリルドに、アカツキは落ち着くようにたしなめる。

 

「でもアカ姉・・・・・・」

 

「私達が出来る事は信じて待つ事だ。大丈夫、二人は無事に出て来る」

 

そう言った次の瞬間、ボロボロになったトウヤとミノリがギルドホールに続くドアから現れた。

 

「トウヤ! ミノリ!」

 

「リルド!」

 

「リルドくん!」

 

二人の姿を見たリルドは、直ぐ様駆け、二人に抱きついた。

 

「うわぁ!?」

 

「キャア!?」

 

「良かった! 本当に無事で良かった!」

 

リルドは泣きながら、そう言った。それを見てトウヤとミノリは、リルドが自分達の身をどれ程案じていたのか、痛い程理解した。

 

「お取り込みの途中すまないが、早々にギルドの退会を済ませた方が良いのでは?」

 

「おっとそうだった!」

 

「えっと・・・・・・」

 

「私はアカツキ。主君であるシロエの忍だ」

 

「アカツキ・・・・・・シロエ兄ちゃんが言っていた。暗殺者?」

 

「ああ。主君の命で、二人を保護するように言われている。もう安心するが良い」

 

アカツキの言葉に、トウヤとミノリは安堵のため息を漏らす。

そしてアカツキとリルドと共に、エントランスに向かおうとしたその時、開かない筈のハーメルンの扉から男が出て来た。

 

「おまえら! 一体何をした!?」

 

風貌からして、召喚術師のようである。彼はミノリに掴みかかろうとする。その時リルドは――――。

 

「させるかよ!」

 

彼女の前に立ち、逆に召喚術師を殴りつけた。

 

「ぐわぁ!」

 

「てめぇ、よくも俺の友達に酷い目に合わせてくれたな? その分の借りをきっちり返させて貰うぜ」

 

「ま、待て! こんな所で戦闘行為をすれば、衛兵が出るぞ! 良いのかそれで?」

 

召喚術師は苦し紛れでそう言うが、リルドは鼻で笑った。

 

「ふん、忠告されなくてもそれぐらい分かっている。だからな、戦闘行為に見なされない程度に、てめぇをぶちのめす!」

 

そう言って、リルドは召喚術師を殴った。それも一回だけでは無く、これまでの鬱憤を晴らすかのように、今まで酷い仕打ちを受けた、初心者の代わりのように、召喚術師を殴り続けた。

 

「も、もう勘弁してくれ・・・・・・」

 

「悪いが、あと百発殴るつもりだ。 歯を食い縛りやがれ!」

 

「ひ、ひぃぃぃ!!」

 

召喚術師の悲鳴が響き渡るが、リルドは容赦無く殴り続けるのであった。

リルドの制裁が終わる頃には、召喚術師の顔は見るも無惨にボコボコになっていた。そして、アカツキがシロエに召喚術師の名前を念話で告げ、敢えなくブラックリストに乗せられ、ギルド会館から永久追放された。

こうしてハーメルンは完全崩壊し、囚われていた初心者達は全員解放されたのであった。

 

―――――――――――

 

救出作戦から数日後、アキバの街はガラリと変わった。

今まで悪い空気が嘘のように明るくなり、人々に笑顔が戻ったのである。

その理由は大きく二つ。一つは調理方の秘密の公開である。これにより、食の改善が一気に起こり、皆が美味しい食べ物にありつけるようになった。

二つ目が、《円卓会議》の設立である。円卓会議と言っても、自治体みたいな物である。11人の各ギルドのギルドマスターで構成され、これからの街の方針を決めて行くのである。

こうして革命的な改革が行われたアキバの街は、連日連夜お祭り騒ぎになっていた。

そんな御祭りに、リルドはトウヤとミノリを誘い、食べ歩きをしていた。

 

「うめぇ! うめぇなこれ!」

 

「もうトウヤ! 意地汚いわよ!」

 

「だってこんな美味しい物、久し振りに食べれるんだぜ。もっと食わないと損じゃん」

 

「だからって、少しは遠慮しなさい。会計は全部リルドくんがもっているのよ」

 

ハーメルンにずっと囚われていた二人は、所持金が殆ど持っていなかった。その為、食べ歩きの会計は全てリルドが払っていた。

ミノリはその事に負い目を感じていたが、逆にリルドの方はまったく気にしていなかった。

 

「金の事は心配すんなって、預金全部下ろしたから、どんな物でも頼んでも大丈夫だ」

 

「いや、そういう訳じゃなくて・・・・・・」

 

「あっ! あそこの屋台に焼きそばが売っている!」

 

「マジか!? よし食いに行こうぜ!」

 

二人は焼きそばに釣れられ、屋台に向かって走って行ってしまった。

 

「あっ、ちょっと待ってよ二人ともー!」

 

その後、ミノリは慌てて追うのであった。

それからしばらくすると、夜空に大きな花火がうち上がる。

 

「すっげぇー!」

 

「もう花火まで作れるようになったのか、流石は生産系ギルドだな」

 

「綺麗・・・・・・」

 

「なあ、もっと見晴らしのいい場所で見ないか?」

 

「なら、とっておきの場所があるぜ。案内してやるよ」

 

リルドがそう言って、二人をある場所へと案内した。

 

―――――――――――

 

そこはアキバの街を見渡せる廃ビルの屋上。三人はそこでうち上がる花火を見ていた。

 

「「た~ま~や~!」」

 

「た、たまやー!」

 

リルドとトウヤは楽しそうに、ミノリは少し恥ずかしそうにそう叫んだ。

しばらく眺めていると、リルドは二人に対して、あることを尋ねた。

 

「ところで、二人は所属するギルドを決めたのか?」

 

それはハーメルンに囚われた初心者の処遇を決める際、何処かのギルドに所属させようという話になった。

半数以上が三日月同盟に加入し、残り半数は希望のギルドに入った。ミノリとトウヤまだ、決めていなかった。

 

「まだ決めていないのなら、前に話した通り、シロ兄のギルドに来いよ」

 

そう誘うリルドだったが、二人は迷っていた。特にミノリは、あることを考えていた。

 

「・・・・・・私達に、そんな資格あるのかな?」

 

「え?」

 

「私達は、リルドくんやシロエさんに返せる物が何一つ無い。レベルは低いし、財産も無い。そんな私達が入ったら、余計に迷惑が―――――」

 

「てい」

 

「あいた!」

 

リルドはミノリにチョップをかまし、次にこんな言葉を言った。

 

「そんな事言うな。俺達は友達だろ?」

 

「友達・・・・・・」

 

「なあ、一つ聞くけどさ。もし立場が逆だったら、二人は俺を助けてくれないのか?」

 

リルドがそう尋ねると、二人は力一杯否定する。

 

「そ、そんな事無い!」

 

「もちろん助けに行くに決まっているだろ!あっ・・・・・・」

 

「それが答えさ。俺は損得勘定で二人を助けたんじゃない、二人が友達だから助けたんだ。理由があるとしたらそれだけだ」

 

「友達って・・・会って一週間しか経って無いのに?」

 

「友達に時間は関係無い。そいつを友達って思った瞬間から友達なんだよ」

 

リルドの言葉で、二人は心を縛っていた鎖がほどけていくように感じた。

 

「だからさ、そんなふうに思わないで、遠慮なく頼ってくれよ。俺も二人に頼る時もあるからさ」

 

「ああ・・・・・・どんと任せろ! なあミノリ?」

 

「う、うん・・・ありがとうリルドくん・・・・・・」

 

トウヤは嬉しそうに、ミノリは涙を流しながら、リルドに精一杯の感謝の言葉を伝えた。

 

―――――――――――

 

それから数日後。記録の地平線は引っ越し作業をしていた。

 

「よし、こんなものか」

 

リルド達がいるのは、アキバにある雑居ビルである。そこを改築して、記録の地平線の本拠地にしているのだ。

まだ出来上がったばかりのこの本拠地に、リルド達は朝から作業をしていた。

 

「なあ直継の兄ちゃん、ここは何処に置けば良いんだ?」

 

「それはこっちな」

 

「あの、これは何処に置けば良いでしょうか?」

 

「それはこっちで良いよ」

 

そんな中に、トウヤとミノリの姿があった。二人はリルドの誘いを受け、記録の地平線に入ったのである。

 

「それにしても、まだ7人か、まだまだ零細だなシロ兄?」

 

「出来たばかりだからね」

 

「ギルマスとしては、後何人くらい欲しい?」

 

「あまり多くても困るから、十数人程度が良いかな?」

 

「夢が無いなぁシロは。ここはドカッと1000人って、言えば良いのに」

 

「数が多ければ良いという物では無いぞ、バカ継」

 

「バカっていうなちみっこ!」

 

「ちみっこって言うなバカ継!」

 

直継とアカツキのいつものやり取りに、リルド達は微笑ましく思うのであった。

そんな所に、にゃん太が厨房から出て来た。

 

「相変わらず、二人は仲がよろしいですにゃ」

 

「「良くない!」」

 

「ははは・・・・・・ところでにゃん太先生。今日の献立は?」

 

「今日はカレーですにゃ」

 

「「「「「カ、カレーだってぇ!?」」」」」

 

にゃん太の言葉に、ミノリを除く全員が目を輝かせた。

 

「カレーだ! 一ヶ月振りのカレーだ!」

 

「もう食えないと思って諦めたカレーがまた食べれるなんて・・・・・・」

 

「今日はカレー祭りだ!」

 

「これ程の至福は無いぞ!」

 

「あの・・・そんなはしゃがなくても・・・・・・」

 

「残念だけどミノリ、それは出来ない話だ。何故なら――――」

 

「僕は―――」

「「「俺は―――」」」

「私は―――」

 

「「「「「カレーが大好きだからだ!」」」」」

 

5人は息ピッタリにそう言った。これにはミノリは少し困り、にゃん太はにこやかに笑うのであった。

こうして記録の地平線は、楽しい夕食を囲むのであった。

 

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