リルドの冒険譚   作:1103

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ドレックパックはアニメ版の方を出します。あの4人は人間臭くて、かなり好きです。



第3話、対人戦闘

エルダー・テイルとよく似た異世界に飛ばされて一週間。その一週間で、幾つか分かった事がある。

従来なら使える筈のミニマップが使用できない事、そのおかげで道に迷いやすくなり、不意討ちの危険性が高まったのである。

次に、この世界で死ぬことは無い、という事である。死ねば従来通り、大神殿で復活する事がわかった。それはつまり、死の解放も無い事を指していた。

更にこれによって、PKが横行するようになってしまった。これは恐らく、“例え殺しても大神殿で復活するから大丈夫“という思考の元から出た行動なのだろう。この一週間で、PKの数は大幅に増え、そしてそれは治安の悪化を指していた。

徐々に悪化の一途を辿っているこの世界で、リルド達は今日もモンスターと戦闘を行っていた。

 

「アンカーハウル!」

 

直継のアンカーハウルで、周囲のモンスターのヘイトを集める。その隙をリルドとアカツキが突く。

 

「クイックアサルト!」

 

「アクセルファング!」

 

二人の高速の斬撃が、周囲の雑魚モンスターをなぎはらう。

モンスターを全滅させると、このエリアのボスが現れる。

 

「出やがったな!」

 

エリアボスは巨大な猪タイプであった。ボスモンスターは、直継目掛けて突進を仕掛ける。

 

「フォートレススタンス!」

 

直継はスキルを発動させ、相手の攻撃を受け止める。スキル効果のおかげで、直継は自分より倍以上のモンスターの突進を吹き飛ばされずに押し止めた。

 

「シロ!」

 

「アストラルバインド!」

 

シロエの拘束魔法がエリアボスの動きを拘束する。

そこに、リルドとアカツキの連携攻撃が炸裂する。

 

「ダンスマカブル!」

 

「アサシネイト!」

 

二人の斬撃と共に、色違いのエフェクトが発生し、エリアボスは倒れた。

 

「よし! やったぜアカ姉!」

 

「ああ、今のは良かったぞリルド」

 

リルドとアカツキは、同じ武器攻撃職の為か、連携がしやすく、先程のような連携攻撃が上手くのであった。

 

「二人ともお疲れ様、見事な連携だったよ」

 

「アカ姉が上手く合わせてくれたからな」

 

「リルドがこちらの動きを理解してくれているから、合わせやすい。もちろん、主君の魔法のおかげでもある」

 

「おいおい、俺の活躍を忘れるなよ」

 

「・・・・・・活躍してたか?」

 

「してたよ! 頑張ってヘイト集めて、お前らが狙われないようにやってたんだよ!」

 

「・・・・・・ああ、囮としては役に立っていたな」

 

「もうちょっと言い方は無いのかよ!」

 

「なら壁役だ」

 

「せめて盾役と言ってくれ!」

 

直継とアカツキのいつもの漫才みたいなやり取りを見て、自然と頬を緩めるリルドとシロエだった。

 

 

それから四人は、休憩がてら昼食にする事にした。

普段なら心踊る昼食である筈だが、味気ない食事では、テンションは逆に下がるだけであった。

 

「あーあ、せめてこの塩気の無い煎餅味が何とかなればなぁ・・・・・・」

 

「直継と同意見は癪だが、確かにこの食事は何度食べても辛い・・・・・・」

 

「仕方無いよ。どんなに頑張っても、こういった物しか作れないんだから」

 

この一週間。食事改善の為に様々な試みを行った。

ショップの料理が駄目なら、自分達で作ろうと、食材を集めてコマンドで合成して作ったが、見事に失敗。次に、コマンドに頼らず自分達の手で調理しようとしたが、食材は得たいの知れない物体に変貌した。最後の望みに賭け、サブが料理人の冒険者に料理を作って貰うが、逆に絶望に叩き落とされたのである。

 

「大好きだったカレーがあんな味になったのは、ショックだったなぁ・・・・・・」

 

「ショックでしばらく立ち直れなかった・・・・・・」

 

「右に同じ・・・・・・」

 

「もしかしたら、この世界の食材は、調理をしたら味が無くなるかも知れない」

 

「それが本当なら、カレーはもう食えないって事か?」

 

「・・・・・・そうなるね」

 

「「「「はあ~・・・・・・」」」」

 

四人は堪らず、深いため息をついた。

 

「このままじゃ、精神が持たないぜ・・・・・・何とかならないのか?」

 

「うーん・・・・・・あっ、そうだ」

 

「どうしたリルド?」

 

「さっきの戦闘で、アサシンビーから黒いハチミツをドロップしたんだ。これ使えないか?」

 

そう言ってリルドが出したのは、真っ黒いハチミツであった。端から見ればコールタールのようなハチミツであった。

 

「それって換金アイテムだろ? それにこの見た目・・・・・・」

 

「やってみなきゃわからないだろ直兄。それじゃ――――いただきます!」

 

リルドはパンに黒いハチミツを塗り、それを口にした。

 

「・・・・・・」

 

「ど、どうだリルド?」

 

「不味かったら吐いた方が良いよ」

 

「状態異常になったら、この万能薬をすぐ飲むんだぞ」

 

三人はそんな心配をしながら、リルドの方を見ていた。すると彼は――――。

 

「う、」

 

「「「う?」」」

 

「うま~~~い!」

 

リルドはとても幸せそうに叫んだ。

 

「みんな! これはハチミツだ! 見た目はあれだけど、ハチミツなんだ! 」

「マ、マジか!?」

 

半信半疑で、直継もハチミツを舐める。すると―――。

 

「マジだよシロ! 本当にハチミツだ!」

 

「何だって!?」

 

「そんな馬鹿な・・・・・・」

 

シロエとアカツキも、黒いハチミツを舐めてみる。

 

「本当だ・・・・・・」

 

「確かにハチミツの味だ。しかしこれは換金アイテムでは・・・・・・」

 

「細かい話は後だ! それよりも、久々の味だ! 食おうぜ皆!」

 

「直継に賛同するのは癪だが、これは喜ばしい事だ!」

 

「そうだね、これで少しは改善出来るかも」

 

「よーし! 今日はハチミツ祭りだ!」

 

こうして四人は、この世界に来て初めてまともな食べ物にありつけたのだった。

 

―――――――――――

 

昼食が終わった後、四人は黒いハチミツを集める為に、アサシンビーを狩り続けた。狩りが一段落した頃には、日はすっかりと沈んでしまった。

 

「今日はこのくらいで、街に帰ろう」

 

「だな。ハチミツも大量に手に入ったし、しばらくは困らないだろう」

 

「主君」

 

「あのアカツキさん、その主君ってのはやめない?」

 

「なら、私の事をアカツキって呼んで」

 

そう言って、アカツキはシロエを見つめる。美少女のアカツキに見つめられ、シロエはタジタジになっていた。

 

「青春真っ盛り祭りだな♪」

 

「はぁ!? 何だよそれ!」

 

「二人ともその辺で、アカ姉が何か言いたげそうだぜ」

 

「別に大した事では無いのだが、練習がてら先行偵察をしようと思う」

 

「練習?」

 

「私はサブ職業は《追跡者》を取ってある。暗殺者のスキルを併用すれば、誰にも見つからない。それにこの森なら、練習にうってつけだ」

 

「なるほど・・・それじゃあ合流は南の付近のゲートで」

 

「了解した」

 

そう言って、アカツキは闇に溶けて行った。

 

「へぇ、アカツキって追跡者持ちなのか」

 

「草木が揺れる音も立てなかったね」

 

「それじゃ、こっちもボチボチ行こうぜ」

 

三人は、シロエが出したマジックライトの明かりを頼りに、森の中を進み始めた。

 

「そういや、リルドのサブって何だ?」

 

「俺の? ああそう言えば、まだ直兄には言っていなかったな。俺のサブは《復讐者》だよ」

 

復讐者とは、他のサブ職業に比べて、異色を放つ職業の一つである。

基本的にサブ職業は、戦闘に絡まないものなのだが、中には戦闘に関するスキルを持つ職業も存在する。追跡者もそれに近しい職業である。

 

「どんな職業なんだ?」

 

「うーん・・・簡潔に言うと、ピンチになるとメチャクチャ強くなる職業」

 

「HPが低くなると、ステータスが大幅に上がるんだ。かなりリスキーだけど、強い職業だよ」

 

リルドの説明に、補足をいれるシロエ。そのおかげで直継は、復讐者の大体の特性を理解した。

 

「つまり逆境に強い職業なんだな。何でそれを取ったんだ?」

 

「カッコイイから」

 

「・・・・・・へ? それだけ?」

 

「うん、それだけ。まあでも、取るのに苦労したなぁ・・・・・・」

 

昔の事を染々と思い出すリルド。そんな事をしている内に、アカツキと合流を果たす。

 

「コブ、襲って来なかったな」

 

「私は骨を被っている奴が好きだ。滑稽で可愛い」

 

「マジか・・・・・・」

 

直継とアカツキがそんな他愛の無い話をしているなか、リルドだけが険しい表情をしていた。

 

「どうしたのリルド?」

 

「トイレか?」

 

「・・・・・・待ち伏せている奴等がいる」

 

リルドのその言葉で、三人の目付きが変わる。

 

「・・・・・・間違いない?」

 

「狼牙族の特性か、鼻が妙に効くんだよ。これは、こっちを襲う気満々の匂いだ」

 

「例のPKをしている奴等か、どうする参謀?」

 

直継の言葉に、シロエは眼鏡を上げる。

 

「敵の数はわかるかい?」

 

「多分5、6人」

 

「アカツキさん――――」

 

「アカツキだ」

 

「ア、アカツキは、スニークを使って、敵―――またはの伏兵を排除して欲しい」

 

「了解した」

 

「直継とリルドは僕と一緒に来てくれ、敵を正面から迎え撃つ」

 

「おう!」

 

「了解!」

 

「それじゃ、フォーメーションは―――――」

 

シロエはこれから起こるであろう戦闘に備え、三人に作戦を伝えた。

 

 

書庫搭の林を抜け、ロカの診療院に入った三人。しばらくすると、リルドと直継は拘束魔法を掛けられる。

 

「しまっ――――」

 

「ディスペルマジック!」

 

直ぐ様シロエがそれを解除、リルドと直継は武器を構える。

 

「相変わらずの反応支援だな。さぁ参謀、どうする?」

 

「打ち合わせ通りで行くよ二人とも」

 

「おう!」

「了解!」

 

「先ずは位置を確定する。マインドボルト!」

 

シロエが放った魔法によって、相手の姿が見えた。容姿と装備からして、狼牙族の盗剣士が一人、エルフの盗剣士が一人、ヒューマンの武士が一人、最後にローブを被っていて種族までは分からないが、恐らく施療神官が一人。計四人が現れた。

 

(四人・・・後二人は伏兵か。まっ、アカ姉に任せておけば大丈夫か)

 

そう思ったリルドは、目の前の敵に集中した。

 

「荷物を置いていけば、命まで取らねぇぜ」

 

リーダー核の盗剣士が、何ともお約束の台詞を言い放つ。

 

「漫画の読みすぎじゃないかなその台詞・・・・・・」

 

「襲って来るって事は、返り討ちにされても文句はねぇな!」

 

「やってやるぜ!」

 

こうしてこの世界に来て、初めて対人戦が始まった。

直継が武士の男の相手をし、リルドの相手はリーダーの盗剣士―――名前はスマッシュである。レベルはリルドより10も上の冒険者であった。

殆どのステータスはスマッシュの方が上だが、一つだけリルドが勝っているステータスがあった。

 

「シャア!」

 

「この!」

 

リルドの素早い動きと斬撃が、スマッシュを翻弄していた。リルドのステータスはスピードに特化しており、そのステータスはレベル80代のスマッシュを上回っていた。

 

「スマッシュ!」

 

「俺の事はいい! 魔術師をやれ!」

 

「わかった!」

 

スマッシュの指示を受け、女性の盗剣士はシロエの方に向かった。

 

「アストラルバインド」

 

向かって来る女性の盗剣士に、シロエは移動制限魔法を掛ける。一定範囲しか動けない彼女は、どう頑張ってもシロエの元に辿り着けなかった。

 

「くそっ! リコピン! お前はこのガキをやれ! 俺が魔術師をやる!」

 

「わかった!」

 

「おっと! 行かせるかよ!」

 

シロエの方に行こうとするスマッシュに、リルドは素早い攻撃で足どめをする。そして背後から、リコピンと呼ばれた女盗剣士が襲い掛かる。

 

「お前の相手は私だよ!」

 

持っていた武器で、リルドに攻撃を仕掛けようとしたその瞬間――――。

 

「アンカーハウル!」

 

直継のでアンカーハウルが発動。これで三人は、直継を無視する事が出来なくなった。

 

「ちぃ、ならお前から先に始末してやるよ!」

 

スマッシュら三人は、直継に対して集中攻撃を行う。その無防備な背中を、リルドが襲う。

 

「ブラッディピアッシング!」

 

リルドの二つの武器が、スマッシュ達の脚を切り裂き、動きを鈍らせる。

 

「このぉ―――」

 

「待て! そのガキは後だ! 先に守護騎士をやらねぇと!」

 

「だけど――――」

 

「確かに厄介だが、そいつから受けるダメージは少ない。無視しても大丈夫だ!」

 

(あっちゃ~、バレちまったか)

 

スピードに特化したが故の欠点。リルドの攻撃力は、他の盗剣士に比べて低かった。それ故無視しても大丈夫だと、スマッシュは判断した。

 

「一気に畳むぞ!」

 

「エレクトリカルファズ!」

 

するとシロエからの援護攻撃が放たれる。しかし付与術師の攻撃は弱く、相手に大したダメージを与えられなかった。

 

「へっ、この程度の攻撃、痛くも痒くも無いぜ」

 

「エレクトリカルファズ!」

 

余裕ぶっているスマッシュの言葉を無視して、シロエはエレクトリカル・ファズを放ち続け、スマッシュ達の回りに雷球を漂わせる。そして、直継のHPが半分に達した所で、行動に移った。

 

「ソーンバインドホステージ!」

 

シロエが放った魔法の茨が、武士の一人を拘束する。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「リルド!」

 

「オーケー!」

 

シロエの言葉に従い、リルドは武士に攻撃を仕掛ける。

 

「デュアルベット!」

 

「ぬああああ!!」

 

目にも止まらぬ連撃と、それによって破壊される棘、この二つのダメージが武士を襲った。

 

「カツオ丸! おいストロガノブ! カツオ丸を回復させろ!」

 

後方の暗がりにいる施療神官に、指示を出すスマッシュ。

集団戦において、施療神官の有無は大きく関わり、下手をすればこの戦況を覆される可能性があった。しかし――――。

 

「エンドオブアクト!」

 

「がああああ!!!」

 

カツオ丸と呼ばれた武士は回復される事も無く、リルドに止めを刺された。

 

「なっ!? 何をやっているんだストロガノブ!」

 

そう叫ぶスマッシュだったが、暗がりの向こうにいる彼から返事はなかった。それに対してシロエは、ニヤリと笑った。

 

「いくら呼んでも無駄だよ。そちらの施療神官には、僕の魔法で眠っているからね」

 

「なぁ!? いつの間に!?」

 

「戦闘開始からずっとだよ。もう少し、仲間の状況を把握していた方が良かったんじゃないかな? もっとも、目の前がこうも照らされていたら、暗がりなんて見えないけどね」

 

その言葉でスマッシュ理解した。先程の攻撃は、自分達の回りを明るくし、ストロガノブが眠っている事を悟らせない為である事に。

 

「このやろう!」

 

「待てリコピン! まだ―――」

 

「まだアンカー・ハウルの効果は残っているぜ!」

 

「しまっ――――ああああ!!」

 

無謀にも、シロエに攻撃を仕掛けようとしたリコピンは、直継のアンカーハウルの餌食となった。劣勢に陥ったスマッシュは、最後の切り札を出した。

 

「くそっ、こうなったら総力戦だ! お前ら出てこい!」

 

伏兵を呼ぶスマッシュだったが、代わりに出てきたのはアカツキだった。

 

「なあ!?」

 

「残念だが、ここに潜んでいたお前の仲間は始末した。後はお前だけだ」

 

アカツキの言葉に、スマッシュは自らの敗北を悟った。

 

―――――――――――

 

「さあ! 煮るなり焼くなり好きにしろ!」

 

敗北を悟ったスマッシュは武器を棄てて座り込んだ。潔いと言えば聞こえは良いが、むしろ自棄になっているようにも見えた。

 

「・・・・・・どうするシロ?」

 

「う、うーん・・・・・・」

 

こうも潔いと、返ってやりづらいシロエ達であったが、無罪放免で逃がす程甘くはなかった。シロエはアカツキに、スマッシュに止めを刺すように指示を出そうとしたその時――――。

 

「ちょっと待ったシロ兄」

 

「リルド?」

 

「少し話をさせてくんない?」

 

リルドの予想外の言葉に戸惑うシロエだったが、相手から戦意が無いので、それを許可する事にした。

 

「まあ、少しくらいなら」

 

「あんがとシロ兄」

 

シロエに礼を言ってから、リルドはスマッシュの前に座った。

 

「な、なんだよ? やるなら早くやれよ」

 

「兄ちゃん名前は?」

 

「・・・・・・スマッシュだ」

 

「俺はリルド、よろしくなスマッシュの兄ちゃん」

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

先程襲って来た相手に対して、普通に接するリルドに戸惑うスマッシュ。そんな彼に、リルドは尋ねた。

 

「なあスマッシュの兄ちゃん、何でPKをやろうと思ったんだ?」

 

「何でって、それは――――」

 

そこでスマッシュは言葉が出なかった。何故なら、PKを行った理由が思い出せなかったからである。

 

「え~と・・・ほら! 自分で稼ぐより楽で儲かるからだ!」

 

「儲かってるのか?」

 

「・・・・・・あんまり儲かって無い」

 

「おいおい、それじゃあ何でPKなんかやっているんだよ?」

 

直継の言葉に、スマッシュ答えられなかった。

フィールドでミニマップが使えない今、確かにPKの成功率は上がった。しかしだからと言って、儲かるかどうかは別の話である。殆どの冒険者は行くとしてもアキバ周辺のみであり、レアアイテムをドロップしていると思えない。金目当てだとしても、スマッシュ程のプレイヤーなら、お金に困っているとは思えなかった。

 

「・・・・・・他にやる事が無いからじゃない?」

 

シロエの言葉に、スマッシュは核心を突かれたような感じがした。

 

「他にやる事が無いからと言って、PKをやるなどと・・・・・・」

 

「・・・・・・仕方ねぇじゃねぇか」

 

アカツキの責めの言葉に、スマッシュは今まで貯まっていたものが一気に吹き出した。

 

「仕方ねぇじゃねぇか! こんな訳のわからない事になって! 普段通りなんか出来ねぇだろう!」

 

「だからPKをやったのか?」

 

「ああそうだ! それの何が悪い!? どうせこれはゲームなんだろ? なら別にやっても構わないだろ――――」

 

スマッシュの言葉を遮るように、リルドが彼を殴った。

 

「いっつ・・・・・・てめぇ何を――――」

 

「現実より痛くは無いけど、多少は痛いだろ? これでも現実じゃない、ゲームと言い張るのかあんたは?」

 

「・・・・・・」

 

「この世界が現実かゲームなのかは俺にはまだ分からない。でも、ゲームであってもやって良い事と悪い事があった筈じゃないのか? あんただってこの事態に巻き込まれる前は、普通に冒険を楽しんでいたんじゃないのか?」

 

リルドのその言葉を聞いて、スマッシュは思い出す。あの頃は四人で商売をやったり、釣りをしたり、レアアイテムを求めてダンジョンに挑んだり、そして全滅をして落ち込んだりしたりしたが、心からエルダー・テイルを楽しんでいた。PKをやろうとなんて、微塵も思っていなかったのである。

 

「俺は・・・・・・」

 

「ほら」

 

そう言ってスマッシュに差し出したのは、黒いハチミツが塗られたパンであった。

 

「腹が減って、むしゃくしゃしてやってしまったんだろ? だったらこれを食べて、機嫌直しな」

 

「・・・・・・これ、食えるのか?」

 

「見た目はあれだが、食べれるぜ」

 

そう言って、屈託の無い笑顔を見せるリルド。スマッシュはそれを受け取り、恐る恐る口にした。

 

「どうだ? 美味いだろ?」

 

「あ、ああ! うめぇ、うめぇよ! こんなうめぇパンを食べたのは生まれて初めてだ!」

 

スマッシュは泣きながら、パン食べ続けた。

 

―――――――――――

 

その後リルド達は、和解したスマッシュ達と共にアキバに戻って来た。

 

「スマッシュの兄ちゃんはこれからどうするんだ?」

 

「大神殿に向かう。あいつらを迎えに行かないとな」

 

「そんでもって、またPKしに行くんじゃないだろうな?」

 

冗談混じりで訪ねる直継の言葉に、スマッシュとストロガノブは首を横に振った。

 

「いや、もうPKはこりごりだ。この世界で俺達に出来る事は無いか、模索していくつもりだ」

 

「そっか、それなら応援してるぜ。あとこれ」

 

そう言うと、直継はスマッシュとフレンド登録をした。

 

「お前・・・・・・」

 

「今日の敵は明日の友って言うだろ? 何かあったら、遠慮なく呼んでくれ。俺達が力を貸すぜ」

 

「おい待て、何を勝手に決め――――」

 

「そう言う事なら、俺のも登録をしよ。スマッシュの兄ちゃん」

 

「リルドまで! 主君からも言ってやってくれ!」

 

「・・・・・・いや、フレンド登録は良いと思う。少しでもコネが増えれば、それだけでも情報が入りやすくなるからね」

 

「それはそうだが・・・・・・」

 

「アカツキさんの言いたい事は分かるけど、彼らはもう大丈夫だと思うよ」

 

「・・・・・・主君がそう言うなら」

 

アカツキは少しむくれている様子であった。一方シロエは、スマッシュが言った言葉に思うところがあった。

 

「“この世界で出来る事”か・・・・・・」

 

果たして自分は、この世界で一体何が出来るのだろう。シロエこの日から、その事で真剣に考え始めるのであった。

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