リルド達がススキノに向かっている間、ドレットパックのスマッシュ達は今日も黒いハチミツ集めをしていた。
「よーし! 今日はこのくらいにして帰ろうぜ」
スマッシュ達は今日の狩りを終え、アキバの街に帰ろうとする。
「それにしても、最近はあまり売上げが良くないね」
「それは仕方ない、皆こぞって真似をしているのだから」
そう、彼等が行っていたハチミツの販売は、瞬く間に真似をされ、今では幾つものライバル店が現れたのである。規模が小さいドレットパックの売上げはも、徐々に落ちて行った。
「うーん・・・やっぱり簡単に真似をされない物を売るしかないか・・・・・・」
「真似をされない物って?」
「それは・・・ストロカノブが考えてくれるさ」
「え!? 僕なの!?」
「当たり前だろ、考えるのはお前の仕事だからな」
「それって丸投げって言うんじゃないのかい? はあ・・・・・・」
ストロカノブは深いため息をついた。
しばらく歩いていると、目の前から武士風の少年が飛び出して来た。
「うわぁ!? 危ねぇじゃねぇか!」
「す、すみま――――あっ! お前は!」
「ん? どっかで見たような・・・・・・」
「あっ・・・・・・あっ・・・・・・」
「どうしたストロカノブ?」
「この子・・・以前PKをした子だよ」
ストロカノブの言葉に、3人は固まってしまった。
「くそっ! こんな時に!」
少年は刀を抜いて、スマッシュ達に向ける。するとスマッシュ達は武器を抜かず、その場で土下座をした。
「「「すみませんでしたー!」」」
「・・・・・・え?」
四人は少年に対して、何度も何度も頭を下げた。流石にこれには、少年は戸惑うばかりであった。
「虫のいい話だと思うが、PKした事に関しては、今では本当に申し訳ないと思っている!」
「え、え~と・・・・・・」
「そうだ! 巻き上げたアイテムと金を返そう! それでも気が収まらないなら、俺をPKしても構わねぇ!」
「い、いや! そんな事はしな――――」
その時、森の奥から人食い草が3体現れた。
「くそっ、もう追いついて来たのか!」
「人食い草じゃあねぇか、お前追われていたのか?」
「全滅しそうになったから、俺が囮になって引き付けたんだ・・・・・・」
人食い草のレベルは、どう見ても少年が太刀打ち出来ない位のレベルであった。それを見たスマッシュの行動は、既に決まっていた。
「なるほどな。なら、ここは俺達に任せな」
「え?」
そう言ってスマッシュ達は、少年を守るように前に立った。
「こんなんで罪滅ぼしになるとは思っていないが、見殺しには出来ねぇよ」
「あんた・・・・・・」
「リコピン! カツオ丸! ストロカノブ! 行くぞ!」
「「「おう!」」」
スマッシュ達は、少年を守るべく人食い草に攻撃を仕掛けた。
戦闘はスマッシュ達の圧勝で終わった。スマッシュ達はその後、少年を治療していた。
「あ、ありがとう」
「礼には及ばないって。俺はスマッシュ、こっちはリコピン、カツオ丸、ストロカノブだ」
「俺はトウヤだ。改めて、助けてくれてありがとう、スマッシュの兄ちゃん」
「だから礼はいいって。それよりも、仲間と合流した方が良い。きっと心配しているだろうし」
「それは――――」
「トウヤー!」
すると向こうから、3人の冒険者がやって来た。どうやらトウヤの仲間のようである。その内の2人は、トウヤの事を心配していたが、一人だけ彼を罵倒した。
「てめぇ! よくも一人で逃げやがったな! おかげでこっちは大変だったんだぞ!」
「べ、別に逃げた訳じゃ――――」
「うるせぇ! 口答えするんじゃねぇ!」
そう言って、召喚術師の男は、トウヤを殴ろうとする。それを止めたのがスマッシュであった。
「ちょっと待てよ! あんた勘違いしているぜ!」
「あん? なんだてめぇは!?」
「トウヤは逃げたんじゃない、囮になって敵を惹き付けたんだ。だからあんたらは無事だった。違うか?」
「ぐっ」
「そもそも熟練者だろ? なら、こいつのせいにするより、あんたがもっとしっかりするべきなんじゃないか?」
「うるせぇ! お前には関係ねぇ! 行くぞお前ら!」
「あ、おい! 話はまだ――――」
話を途中で、召喚術師は他の冒険者を連れて去って行った。トウヤもまた、彼等の後について行こうとした。
「おい待てよトウヤ! そんな奴について行く必要なんて――――」
スマッシュはそう呼び止めようとしたが、彼は申し訳無さそうな顔をして頭を下げ、召喚術師の後をついて行ってしまった。
スマッシュ達は、ただそれを見送る事しか出来なかった。
―――――――――――
それから数日後、スマッシュ達はトウヤが所属しているギルドについて調べていた。
「戻ったよ」
「おうおかえり。それでどうだった?」
「一言いって、最悪ね。あいつらレベル30以下の初心者を集めて、彼等からEXPポット取り上げて、それを売り捌いているのよ」
「何だって!?」
EXPポット。それは初心者救済アイテムの一つで、レベル30以下の冒険者に1日一本、支給されるのである。
「許せねぇ・・・なんてギルドだ!」
「どうするんだスマッシュ?」
「もちろんぶっ潰す!」
「それは無理だと思うね」
「何でだよストロカノブ!?」
「理由は色々あるけど、1番の理由は、彼等のバックには大手のギルドがついているんだ。僕達のような弱小ギルドじゃ、どうあがいても勝てないよ」
「なら! こっちも他の弱小や中小と組めば――――」
「残念だけど、同じような話は以前からあった。けど結果は話がまとまらず、失敗に終わってる」
それは少し前に行われた中小ギルド連絡会の事である。ストロカノブはスマッシュの代わりに出席したが、内容は散々であった。
「つまりそれって、打つ手が無いって訳?」
「現状はね」
ストロカノブの言葉に、誰もが俯いてしまった。
「どうして、こんな事になったんだろうね・・・・・・昔は、いろんな冒険して楽しかったのに」
「皆、色々とテンパッているんだよ。PKをしていた頃の僕達のようにね・・・・・・」
ストロガノブの言葉は、ある意味真理であった。人は日常から離れてしまうと、冷静な判断を失ってしまうのが殆どである。かというスマッシュ達も、この非日常から目を背けたくて、PKを行っていたのだ。
「・・・・・・だからこそ、取り戻さなきゃならねぇ、あの頃のアキバをな」
「スマッシュ?」
「確かにおかしな事に巻き込まれたが、だからってこのままって訳にもいかないだろ? 正直いって、俺は今のアキバが好きになれねぇ。お前らもそう思うだろ?」
「そりゃそうだけど・・・・・・」
「何か方法はあるの?」
「それはまだわからねぇ。だが、やるしか無いんだ!」
スマッシュの無謀とも言えるその言葉に、他の三人は笑みをこぼす。
「やれやれ、うちのリーダーは熱血だねぇ」
「だが、嫌いではないぞ」
「僕の方も、協力してくれるギルドが無いか、当たってみるよ」
「おう! 頼りにしているぜ皆!」
こうしてドレットパックは、アキバ改善の為に奔走するのであった。