リルドの冒険譚   作:1103

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自分的に、ログ・ホライズン一巻目がプロローグで、二巻目から本当の物語が始まる。そんな感じの印象があったので、このタイトルにしてみました。


第7話、プロローグを経て

アキバに帰還したリルド達。彼らを迎えたのは三日月同盟であった。

 

「みんなお帰り! セララも本当、無事でよかったわ」

 

「マリエールさん・・・・・・」

 

マリエールの顔を見て安心したのか、セララは急に泣き出した。にゃん太が居たとはいえ、あんな環境にいたのだから無理の無い話であると、リルドは思った。

 

「立ち話もなんだし、うちのギルドに来ひん? 宴の用意をしとるんや」

 

「おお! 帰還パーティーか! それは楽しみだぜ!」

 

「バカ直継、はしゃぎ過ぎだ」

 

「いいじゃないかそれぐらい。ちみっこだって、本当は内心ワクワクしているんだろ?」

 

「ちみっこ言うな!」

 

直継とアカツキのいつものやり取りが、周囲に笑いを呼んだ。そんな時リルドは、ある少年と目が合う。

 

(ん? あれってもしかして―――――)

 

それは、エルダーテイルがゲームだった頃、面倒を見ていた初心者のトウヤであった。リルドはトウヤに声を掛けようする。

 

「おーい! トウ――――」

 

するとトウヤは何故か、その場を走り去って行ってしまった。

 

「どうしたん?」

 

「あ、いや、知り合いが居たんだけど、走って行っちゃったんだ」

 

「きっと急ぎの用があったのよ。落ち着いたら、話せばええんや」

 

「うん・・・そうだな」

 

「さあみんな行くで、今日は思いっきり楽しんでくれや」

 

そう言って、マリエールは皆を先導して行った。リルドはもう一度、トウヤが走り去った場所を見てから、後について行った。

 

―――――――――――

 

宴は大いに盛り上がった。事前に聞かされた、料理の秘訣によって、出される数々の料理は美味しく仕上がっていた。

 

「うめぇ! これうめぇよ!」

 

リルドは夢中になって食べていると、ある一人の女性が寄って来る。

 

「楽しんでいる? リルドくん」

 

その女性は三日月同盟のナンバー2のヘンリエッタである。リルドは直ぐ様間合いを取る。

 

「そ、そんなに距離を取らなくても・・・・・・」

 

「人を女装させようとしたんだから、警戒されても仕方ないだろ」

 

「だってぇ、素材が良すぎるですもの。可愛らしい服を着たら、もっと可愛くなるのに・・・・・・」

 

「俺は男だ! そういうのはアカ姉に頼めよ!」

 

「似合うと思うのに・・・・・・仕方ない。アカツキちゃんで我慢しましょう」

 

諦めたヘンリエッタは、標的をアカツキに移行する。彼女の身を案じながら、リルドは食事を再開した。

 

 

 

「おーい、リルドー」

 

しばらく食べていると、直継に呼ばれた。来てみると、三日月同盟のメンバーである小竜という少年もいた。

 

「どうした直兄?」

 

「いやな、こいつに色々とレクチャーしてる最中なんだ。せっかくだから、お前も何か教えてやれよ」

 

「俺に教えられる事なんてあるのか?」

 

「あるさ。お前は既に、レベルの先にある物を見据えているからな」

 

「レベルの先にある物?」

 

リルドがそう言うと、直継は体をガクッと落とした。

 

「お前もしかして、無自覚でやっていたのか!?」

 

「え? 一体何を?」

 

「いいか。レベルに頼った戦いじゃ、いつか勝てなくなる。レベルには上限があるからな。だからレベル以外に工夫を施さなければならない。どのスキルを使うか、どんな立ち回りをするか、それだけでも差が出るんだよ。

うちのシロなんかは、その事に関しては凄いぜ」

 

そう直継は自慢気に演説をしたが、リルドはきょとんとした表情で言った。

 

「戦いで創意工夫するなんて、当たり前だろ」

 

「当たり前って・・・・・・」

 

「自分より高いレベルの奴等と対等に戦うとしたら、工夫しないと先ず勝てないだろ? だから俺はスピード特化にして、相手の攻撃を当たりにくくしているんだ。これなら、どんなに攻撃力を持った相手でも、それなりに戦えるだろ?」

 

「まあ確かに・・・でも、攻撃はどうするんだ? そんなスピード特化にしているなら、攻撃力不足になるんじゃ―――――」

 

小竜がそう訪ねると、リルドはニヤリと笑う。

 

「ふっふっふっ、実は秘訣があるんだ。俺のサブである“復讐者”には、一定条件で発動する特殊スキルが存在するんだぜ」

 

 

そう言ってリルドは、サブ職業である復讐者について説明をし始めた。

復讐者とは、相手に対する怨みの力を持って報復する能力を持つ。それはHPを半分以下になった時、“リベンジャー”というスキルが発動。全てのステータスが大幅に上昇するのである。

 

「そんなサブがあるなんて・・・・・何であまり知られてないんだ?」

 

「ソロならともかく、パーティーを組んでいる時はあまり活用出来ないスキルなんだ。しかもデメリットもあるし」

 

「デメリット?」

 

「復讐者から別のサブ職業に変える時、ペナルティが発生するんだ。確か、レベルが幾つか下がるんだっけ?」

 

「うわあ・・・・・・そりゃ誰も取らないな」

 

「確かに、普通の人ならまずやらない職業だな」

 

「そういう事。まっ、それだけリベンジャーっていうスキルは強力なんだ。いつか機会があったら、見せてやるよ」

 

リルドは自慢気にそう言うのであった。

 

―――――――――――

 

深夜。リルドは不意に目を覚ました。

 

「・・・・・・ん、あれ? 俺寝てた?」

 

どうやら、自分はいつの間にか寝てしまっていたらしい。

辺りを見回すと、騒ぎ疲れた三日月同盟のメンバー達と直継が寝ている姿が見えた。

 

「・・・・・・ちょっと、トイレに行こ」

 

リルドは周囲を起こさないように、ホールを抜け出した。

 

 

トイレを済ませ、ホールに戻ろうとしたその時、ある一室からシロエとマリエールの声が聞こえた。

 

(一体何の話をしているんだ?)

 

興味を持ったリルドは、立ち聞きをしてしまう。二人が話していた内容は、おもしろいものではなかった。

リルド達がアキバを離れてから、PKは鳴りを潜めたが、その代わりギルド間の強い縄張り意識が発生し、強いギルドが狩り場を独占している内容であった。

 

(何だか、段々と歪んでいってしまっているな・・・・・・)

 

ゲームだった頃は、誰もが楽しめるようにと、守られていた筈のルールがあった。しかしそれらは、大災害が起きた瞬間に崩れてしまい、今では、自分の事しか考えない冒険者ばかりになっていた。

 

(みんな必死なのは分かる。だけど、それを蔑ろにし続けてしまったら、いつか取り返しのつかない事態になるんじゃ――――)

 

そう思った瞬間、マリエールからとんでもない言葉が出た。

 

「初心者救済を謳ってたハーメルンがな、EXPポットを売り捌いとるんよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、リルドは部屋に入り込んだ。突然の訪問者に、マリエールもシロエも驚愕した。

 

「リルド・・・・・・!」

 

「い、今の話し、聞いてたんか?」

 

「ああ、聞いていた! 今の話本当か!?」

 

声を荒げながら、リルドはマリエールに訪ねると、彼女は小さく頷いた。

 

「くそっ!」

 

「待てリルド!」

 

飛び出そうとしたリルドの腕を、シロエが掴んで彼を止めようとした。

 

「離してくれシロ兄!」

 

「何処に行くつもりなんだ!?」

 

「決まってる! 初心者を食い物にしているくそったれギルドの所だ!」

 

「行ってどうするつもりなんだ?」

 

「それは――――」

 

「確かに、EXPポットを売り捌いている関しては、僕だって嫌な気持ちだ。だけど無闇に行動したって、何の解決にもならない」

 

「じゃあどうするんだよ!? このまま黙って見ていろってか!? あそこにはミノリとトウヤがいるんだぞ!」

 

その言葉に、シロエはギョっとした。恐らくシロエも、薄々感じていたのだろう。二人が今、どんな境遇に陥っているのか。

 

「今もこうして辛い目にあっているかも知れない。なら助けにいかないと!」

 

「・・・・・・どうやって助けるつもりなんだい?」

 

「それは・・・・・・」

 

「話を聞く限り、EXPポットは大手のギルドにも売っているらしい。下手すればそれらを敵に回す可能性だってある。もうこの事態は、一個人じゃあどうにもならないんだよ」

 

「だからって・・・・・・だからって見捨てるなんて俺には出来ない! シロ兄がやらないのなら、俺一人でやる!」

 

「リルド!」

「リルドくん!」

 

シロエとマリエールの呼ぶ声を無視し。リルドは一人、夜のアキバ街を駆け抜けて行った。

 

―――――――――――

 

三日月同盟のギルドホールを出ていったリルドであったが、肝心なミノリとトウヤを救出する手立てが思いつかなかった。

 

(一体どうすれば・・・・・・何か、何か方法は――――)

 

考えて歩いていると、一人の少年と出会い頭にぶつかってしまう。

 

「あっ、すみません」

 

つい素が出てしまったリルド。少年は、こちらがぶつかってしまったにも関わらず、気を使ってくれた。

 

「いえ、大丈夫です。それよりもどうしたんですか?」

 

「え?」

 

何の事がわからないリルドに、少年はハンカチを差し出す。

 

「これで涙を拭いてください」

 

そこでリルドはようやく気づいた。自分が泣いている事に。それは歪み行くこの世界に対する嘆きか、何も出来ない不甲斐ない自分に対する物か、リルドはどちらかは分からなかったが、まだ10年しか生きていない彼にとって、今の状況は耐えられなかった。

 

「あれ? 何で、俺・・・・・・泣いて・・・・・・ううっ・・・・・・」

 

リルドは堪えきれず、その場で泣き崩れてしまった。

 

それからしばらくして、リルドはようやく落ち着きを取り戻した。

 

「何だか、みっとも無い所を見せてしまいましたね・・・・・・」

 

「気にしないでいいですよ。それよりも、もう大丈夫?」

 

「はい、おかげさまで・・・・・・俺、リルドっていいます」

 

「僕はソウジロウ・セタ。よろしくねリルド」

 

そう言ってソウジロウはリルドと握手を交わす。

 

「ところでリルド、さっき君は泣いていたみたいだけど、何かあったの?」

 

「・・・・・・実は―――」

 

リルドはソウジロウに、友人が悪質なギルドに所属している事を話した。

 

「その話は知ってるよ。そっか、君の友人が・・・・・・」

 

「もっと早く合流していれば、こんな事にならなかった筈なんだ」

 

「過ぎた事を考えても仕方ないよ。それよりも、友達を助ける方法を考えなくちゃ」

 

「それはわかってはいるんですけど、その方法がわからないんです。ずっと考えているけど・・・・・・」

 

「なら、僕達“西風の旅団”も力を貸そう。僕も、今の現状を放置するのは良くないと思うから」

 

ソウジロウその言葉に、リルドの表情は明るくなったが、また直ぐに沈んでしまった。

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり迷惑を掛けられない」

 

「どうして?」

 

「EXPポットは、レベル30以下の冒険者に支給される。つまりあいつらにとって初心者はEXPポット製造機みたいな物だ。そんな金づるを簡単に手放すとは思わない。それに、話を聞くところ、大手のギルドもEXPポットの取り引きをしている。下手すれば、奴等も敵に回すかも知れないんです」

 

マリエールの話を聞く限り、シルバーソードと黒剣騎士団の大手ギルドは、EXPポットの取り引きをしている。もしこの二つが敵に回ってしまえば、如何なるギルドも太刀打ち出来ないであろうと、リルドは思っていた。しかし――――。

 

「そうやって、自分一人背負い込むのは良くないと思う」

 

「え?」

 

「人間、一人でやれる事はたかが知れている。だからこそ、仲間の力を借りるんだ。そうすれば、どんな困難だって乗り越えられる」

 

「仲間・・・・・・」

 

「君だっているだろ? 共に歩む仲間が」

 

ソウジロウの言葉で、リルドの脳裏にシロエ達の姿が過った。

 

「そうだよな・・・なに一人で考えていたんだろう・・・・・・」

 

そう呟いた瞬間、シロエから念話が来た。リルドは驚きながらも、直ぐに繋いだ。

 

『リルド?』

 

「シロ兄・・・・・・」

 

『その・・・・・・さっきはごめん』

 

「え?」

 

『僕は諦めかけていた、でも考えてみれば、まだ何もしてないのに、諦めるなんてかっこ悪いよね』

 

「それじゃあ――――」

 

『うん。諦めるのは、やれる事をやってからにしようと思う』

 

その言葉を聞いて、リルドはとても安堵した。シロエがいるなら、きっとなんとかなる。リルドはそう思えた。

 

『でも、僕一人じゃ無理だと思う。力を貸してくれないか?』

 

「ああ! もちろん!」

 

リルドは普段通りの元気良い返事をした。

念話を終えると、リルドは改めて、ソウジロウに礼を言った。

 

「ありがとなソウジロウ。おかげで何とかなりそうだ」

 

「そうみたいだね。あとこれ」

 

そう言ってソウジロウは、リルドとフレンド登録をする。

 

「力になれる事があったら、いつでも呼んで」

 

「ああ! ありがとうソウジロウ!」

 

リルドはそう言うと、勢いよく走り出した。そして彼の背には、夜明けの光が射した。

 

 

―――――――――――

 

ギルド開館に到着する頃には、夜が明けていた。そしてそこには、アカツキ、直継、にゃん太、そしてシロエが待っていた。

 

「何処に行っていたんだよリルド」

 

「勝手いなくなるから、心配したんだぞ」

 

「ともかく、無事で良かったにゃん」

 

「えっとその・・・・・・みんなごめん」

 

リルドが素直に謝ると、四人は優しく微笑んだ。そしてシロエは、リルドにある事を言う。

 

「いきなりなんだけどリルド。僕のギルドに入らないか?」

 

「え!? シロ兄・・・・・・」

 

「僕一人じゃ無理かも知れないけど、みんなが一緒なら、このアキバを元の心地好い場所に戻せるかも知れない。その為のギルドを作ったんだ。リルドも来てくれると助かる」

 

シロエのその言葉に、リルドは迷わず答えた。

 

「もっちろんだよシロ兄! 寧ろ、誘ってくれて嬉しいぜ!」

 

リルドはとても嬉しそうに笑い、それを見たシロエもまた、嬉しそうに微笑んだ。

 

「ところで、何て名前にしたんだ?」

 

そう尋ねると、シロエは少し得意気に言った。

 

「パルムの深き場所で見たあの地平線を見て思いついたんだ。《記録の地平線―――ログ・ホライズン》」

 

その名前を聞いた瞬間、リルドは予感した。これまでがプロローグで、これからが本当の物語が始まるのだと。

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