パパのいうことを聞きなさい!――双子の弟は頑張ります―― 作:四宮 (陽光)
ヤふー!
二日連続で更新です。挨拶は検索エンジンじゃないよ。
それでは、どうぞ
菅谷さんと話していただけだった講義は終わり、折角だからと連絡先を交換したあと、僕は追い出されていた兄さんを探していた。兄さんは放っておくとサボりそうだからね。
それにしても大学生活が始まってからそう経たないうちに友達ができるとはなかなか幸先の良いスタートを切ることが出来た気がする。うん。今日は夕飯に兄さんの好きなモノでも作ってあげよう。
それにしても見当たらないなぁ。今日の授業の予定は兄さんと一緒だったはずだから、あと二限分講義残っているはずなんだけど。校舎に沿って練り歩きながら周りに視線を送る。
う~ん。食堂は…一限目の途中から行くことはないだろうし、お金の余裕もあんまりないし。
だとしたらあそこだろうか。桜並木と校舎の間にあるベンチ。そこは休み時間などに主に一年生がたむろっていたはず。ちょうどさっきの教室からも近いし行ってみるべきかな。
そう思い立つと僕は踵を返し進路を定める。とりあえず行動は迅速に、だね。
鮮やかなピンクからみずみずしい濃緑に色を変えた桜並木を歩き目的地に向かい歩を進める。ずんずんと歩み続けていたが、前方にふと、見覚えのある姿を目に留まる。小走りに駆け寄り声をかける。
「おーい、來香ちゃん。さっきぶりです」
「あ、翔太」
僕の普通な視力が捕捉した人物は來香ちゃんだった。あいも変わらず無表情な彼女なら兄さんの居場所を知っているかも。でもその前に謝っておかなくちゃいけない。
「さっきはうちの兄さんが迷惑かけちゃってゴメンなさい。一緒に教室追い出されちゃってたけど…」
「別に気にしなくていい。思ったほど面白い講義ではなかったし、祐太と話すことが出来た」
「そう?ならいいんですけど…。ところでその兄さんがどこに居るか知ってます?」
「さっきまであそこで喋っていたから近くにいるはず」
そういう來香ちゃんの指の先には予想通りベンチがあった。まだ近くにいるなら早く探さないと。
「ありがとうございます。じゃあ、また」
「うん。また」
そういうと來香ちゃんは僕が歩いてきた方向に行ってしまった。おそらく次の講義に向かうんだと思う。その後ろ姿を少し見てから僕もベンチの方へ歩きだしたのだった。
兄さん何してるんだろう?
結果をいうと兄さんはすぐに見つけられた。だけど、そこは大学の外だった。
フラフラと歩く兄さんに追いつき声をかける。
「兄さん。どこ行こうとしてるの?次の講義が始まっちゃうよ?」
「うん……」
「……兄さん?」
変だ。今の兄さんの様子を表すならその一言。返事は返してくれたんだけど、止まってくれないし目の焦点もあってない。質問をして様子を見よう。
「なにかあったの?」
「うん……」
「具体的には?」
「うん……」
「……兄さんは筋金入りのシスコンだ」
「うん……」
うん、重症だ。どうしよう。今までにない状況なために焦ってしまう。こんな様子の兄さんは今まで一緒にいて初めてだ。なにかがあったのはたしかだけど、この短時間で一体なにが……?僕がいない時間で起きたことといえば來香ちゃんと話したことぐらいだし。
「うん……。うん……」
「あッ、ちょっと!?待ってよ兄さん!」
少し立ち止まって考えてるうちに兄さんと大分距離が開いていた。……いつの間に。とりあえず今の兄さんに話が通じないことがわかった。
今の兄さんを一人にしておくわけにいかないか。
そう、結論付け兄さんを追うため走り出す。
……あ~あ、講義サボっちゃった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ズッー、ほれで、ズルーーッ、ふぉんなじょうたひなはけ、ズズズッー、か」
「仁村君、食べるか喋るかどっちかにして」
無言で昼食のラーメンを啜り始める仁村君。一瞬イラっときたけど、ガマンガマン。
あ、仁村君のセリフは『それで、そんな状態なワケか』っていってました。
兄さんになんとか追いつき着いた先は寮の自室だった。どうやら無意識に帰ってきたらしい。そしてキッチンで我が物顔でラーメンを作っている仁村君を発見し、ここまでの経緯を説明し今に至る。
因みに僕と兄さんは先にラーメンを食べていて、兄さんはさっきからちゃぶ台の上に肘をおいて虚空を見つめ静止している。
「ふ~、旨かった。事情は大体わかったけど」
「えっ、ホントに?」
「ああ、多分」
ラーメンを食べ終わった仁村君が自信ありげな顔でコッチを見る。流石イケメン、絵になる。
「ズバリッ!祐太ちゃんは織田先輩に恋しちゃったんだ!」
ババーーン!
そんな効果音を出す勢いで兄さんを指差す仁村君。人を指差すのは良くないよ。指を下ろさせて僕は仁村君を優しい眼差しで見つめる。
「そうなのかなぁ?確かに來香ちゃんは美人だけど、みんながみんな仁村君みたいな人じゃないんだよ?」
「今俺をそこはかとなく馬鹿にしなかった翔太ちゃん?」
「いや、してないよ」
「いいや、絶対したッ!」
「というか兄さんが恋なんて……「そうか…!?」……兄さん?」
唐突に言葉を発した兄さんに僕と仁村君は会話を止め怪訝な視線を向ける。
なにか閃いた様子の兄さんがちゃぶ台を大きく叩くと勢いよく立ち上がり叫んだ。
「これが恋ってやつなのかッ!!!」
ええっーーーーッッ!!!
そう遠くない姉さんへ。
兄さんがどうやら初恋に目覚めたらしいです。