パパのいうことを聞きなさい!――双子の弟は頑張ります――   作:四宮 (陽光)

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日刊ランキング(加点式)で三十六位にこの作品が載ってて、思わずこの間行ったばかりの眼科を再受診しようとした作者です。
いや、ホントありがとうございます。
ということで調子に乗って三日連続投稿です。
それでは、どうぞ。


第十一話 恋は盲目

「ストップ、兄さん!」

 

「待ってよ、祐太ちゃん!」

 

堂々の初恋宣言のあと、なにを思ったか兄さんはいきなり部屋を飛び出した。

進行方向から考えて行き先はサークル棟らしくそのあとを僕と仁村君が話しかけながら追っているんだけど、坂を登っているのにもかかわらず兄さんの歩くスピードが全く落ちない。こちらを気にせずにズンズンと進む兄さんは疲れを感じていないのだろうか。僕も仁村君も既に息が切れているっていうのに、これが恋の力ってヤツなのかな。

 

「あぁ、もう兄さん!待ってて!」

 

「……なんだよ」

 

ようやく反応してくた兄さんは立ち止まってこっちを振り向く。

良かったぁ。もうこっちは肩で息をしている状態なんだよね。そんな僕たちの様子を見た兄さんは渋々といった表情で近くの自販機とベンチに近寄っていく。どうやらこれ以上無視する気はないらしく話を聞いてくれる気にはなったみたい。そんな兄さんを追って汗だくの僕と仁村君は自販機で飲み物を買って喉を潤し、息を整える。ふぅ、やっと落ち着ける。

 

「で、俺の恋路を邪魔した理由を聞かせてもらおうか」

 

こちらの息が整ったタイミングで憮然とした態度を見せる。あぁ、やっぱりだけど來香ちゃんに会いにいくんだね。スポーツドリンクを飲み干した仁村君と顔を見合わせ、先に話してもらうことにする。

 

「祐太ちゃん……あの人は止めとけ」

 

「断る。翔はなんだ?」

 

「だぁぁああ!!?もう少し俺の話を聞け!」

 

即答の兄さんに狼狽する仁村君。兄さんの意志は硬いみたい。初恋で一目惚れ、そしてベタ惚れといったところだろうか。そんな兄さんは仕方なくといった様子でもう一度仁村君に向き直る。

 

「ぶっちゃけ祐太ちゃんにはあの人は荷が重いと思うわけよ」

 

「そんなのわからないだろう」

 

「根拠も情報もあるから、落ち着いて聞け」

 

再び歩きだそうとする兄さんを止め、仁村君は胸ポケットから手帳を取り出して何かを探しているらしくパラパラとページをめくり始める。

やがて該当ページを見つけたのかそのページを読み上げていく。

 

「えーと。織田來香。歳は二十で所属は人文学科の二年生。入試はトップの成績で、運動も出来るらしく体育の授業で現役テニス部相手に一ポイントも取らせなかったらしい」

 

「うわぁ……」

 

「へぇ……」

 

 

思わず感嘆の声が出てしまう。まさに完璧な人といった感じだ。兄さんは想像通りだったのか自慢げに頷いている。いや、すごいのは兄さんじゃなくて來香ちゃんだからね。

うん。ソレは別にいいんだよ。ソレは。問題はなんでそんな情報を仁村君が持っているかだよ。おそらく女の子から聞いた情報だとは思うけど、まさかその手帳、全部女の子の情報じゃないよね?

そんな僕の懐疑の視線を知ってか知らずか、仁村君はパタンッ、と手帳を閉じ、兄さんを真っ直ぐ見つめる。

 

「それにあの容姿だ。祐太ちゃんも想像していたと思うが入学当初、彼女を引き込もうと熱心に勧誘するサークルも多かったし、それ以上に言いよる男も山ほどいた」

 

「來香さんなら当然だろう」

 

「なのにだ!」

 

突然仁村君の声が大きくなる。

 

「今現在、彼女に近づこうとする男はほとんどいない!さらに友達らしき人物すら確認されてない!この現実を知って祐太ちゃんはどう考えるよ!」

 

「わかった。來香さんはシャイなんだろう?」

 

「よーし、わかった!翔太ちゃん、お前の兄貴の目はどうにかしてるぞ!」

 

「いや、むしろ脳みそでしょ?僕が近くについていながら情けない限りです」

 

「おい、お前ら。俺は間違ったことなんて言ってないぞ」

 

別に間違えてなんかいないだろうけど清々しいまでに当たってないよ。明後日の方向だよ。恋は盲目って言うけど、その言葉は正しかったみたいだ。全く見えてないよ。

 

「要するに……かなりの変人なんだよ、織田來香って人は」

 

「変人……?」

 

「でなきゃ、路上観察会なんて、妙なサークルに入らないだろう」

 

「……よし、わかった。路上観察会に入れば來香さんと一緒にいられるんだな」

 

「「 全然わかってない!? 」」

 

ここまで盲目だと周りに迷惑だよ。もう知ったこっちゃないと言わんばかりにベンチで頭を抱える仁村君。それをチラッと見た後、兄さんはこちらに向く。

 

「で、翔は何が言いたいんだ。俺は一刻も早く入会届けをもらいに行きたいんだが」

 

「うん、別に僕は來香ちゃんを止めとけっていうわけじゃないよ」

 

「そうなのか」

 

「うん。記念すべき兄さんの初恋なんだしむしろ全力で応援するよ。だけど……」

 

「だけど?」

 

「もう少し落ち着いて行動してね。急いては事を仕損じる、だよ。今だって仁村君に教えてもらわなかったら來香さんのことほとんど何も知らなかったでしょ?」

 

「……まぁ、確かにそうだな」

 

「それに会いに行きたい気持ちはわかるけど、会ってどんな話をするの?何も考えずにただ会っても、会話が盛り上げられなかったら、マイナスなイメージしか持ってもらえないよ」

 

「ぐっ……」

 

「だからしっかり気持ちをコントロールして、頑張って成就させてよね。協力するから」

 

「……おう!任せとけ!來香さん、今行きますっ!!」

 

言うやいなや、急な坂をものともせず駆け上がって行く兄さん。言ったこと、ホントにわかってるかな?

だんだん遠くなっていく兄さんの背中を見て思わず苦笑いがこぼれてしまう。

まぁ、シスコンな所為ですっかり女っ気がなかった兄さんの初恋なんだししっかりサポートしますか。

 

 

 

……あ、そういえば新歓コンパの入部の件、自然に片付いたなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AFTER

 

 

 

「ところで翔太ちゃんは入会するわけ」

 

「まぁ協力するって言っちゃったしねぇ」

 

「そっか、じゃあ俺も入るか」

 

「えッ、なんで?」

 

「なんでって俺も勧誘されてたし……祐太ちゃん達といると面白いしね!」

 

「後半がやけに強調されてたのは気のせいかな?」

 

「気のせい、気のせい。ところでさっきは見事に諭したな。兄貴と違って経験あるんだな」

 

「え?僕は恋したことないよ?」

 

「え゛ぇ?」

 

「ただ、兄さんのことを考えたら自然と口が動いたっていうか」

 

「……」

 

「あれ?仁村君、どうかした?なんか知らないけどその変なモノを見る目はやめてほしいんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ウチの翔太は兄のためには結構なんでもできちゃう子です。

批評・感想・評価などなどして頂ければ嬉しいです。

甘んじて受け入れる覚悟は出来ています(`・ω・´)キリッ
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