パパのいうことを聞きなさい!――双子の弟は頑張ります――   作:四宮 (陽光)

5 / 12
第五話 よよよ?その3

 

 

「つまるところ勧誘ってことか」

 

仁村君のこの一言が今回の一連の出来事の原因たるものを表している。

 

路上のあの演技も、此処まで連れて来たのも、全てはこのサークル―――――『路上観察研究会』、通称ロ研に新入部員を引き入れる為の事だったらしい。

 

…正直目的地が此処だと聞かされた時から薄々そんなことだろうと思ってはいたけど。どうやら現在ロ研には三年生で部長の小太りの先輩―――佐古俊太郎先輩と、二年生のモデルのような美人―――織田莱香先輩だけしか部員が居ないらしい。確かにこんな何をするかも分からないアヤシイサークルに入ろうとする物好きはなかなか現れないだろうね。だから、今回のように強引に部室に連れ込んで入部させようとしているらしい。

そんな話を聞かされた後、僕達が返事をする間もなく佐古先輩は仁村君を引きずって何かを手伝わせている。残ったのは僕と織田先輩。

 

「それで織田先輩…でしたっけ?」

 

「…違う」

 

「え?でも…」

 

確かに織田と名のっていたはずなんだけど。僕の聞き間違いだろうか?

 

「…その呼ばれ方は好きじゃない」

 

「はぁ?」

 

「…莱香ちゃんと」

 

なんの拘りがあるのか知らないけど、特に困る申し出では無いから呼び方を改めようと思う。本人がそう呼んで欲しいならそう呼ぶべきだよね。ただ、先輩だからちょっと気後れはするけど。

 

「えっと…じゃあ、莱香ちゃん」

 

「…なに?」

 

無表情の中に少し嬉しそうな表情が混じった気がした。勿論気がしただけだけど。それにしてもなんか個性に溢れてる人だなぁ。口調も必ず間がある。

 

「僕と仁村君はどうすれば?」

 

「…好きにすればいい?」

 

「いや、疑問系で返されましても…」

 

どうやら莱香ちゃんはあんまり理解しないで佐古先輩の案に参加していたらしい。部員が欲しいとかあんまり思ってなさそうだし。

 

どうしようかなぁ?別に入りたいと思っているサークルも無いんだけど、果たして家事に支障が出ないかとかそもそもどんな活動をするのかとか分からないことが多過ぎる。

 

とりあえず仁村君にでも相談しようかと思って室内を見渡す。

 

「…何やってるんですか?」

 

なんか今日は疑問を投げかけることが多い気がする。決して気のせいではないと思うけど。

 

いつの間にか兄さんが部屋の真ん中に設置されていて、その近くには頭にスタンドライトを乗せた仁村君と手にもう一つのスタンドライトを持った佐古先輩。

 

「ああ、瀬川弟くん。キミの分だ」

 

近寄ってきて渡されるスタンドライト。僕にもやれと?というか何をやるんですか。質問に答えてもらってないんですけど。

 

文句を言いたいんだけど佐古先輩はすでに莱香ちゃんのところに行って、また打ち合わせをしている。断片的に聞こえてくる内容からどうやら今度は兄さんを標的に据えたようだ。

 

そして兄さんの側で泣き崩れたような姿勢になる莱香ちゃんと、その近くで仁王立ちする佐古先輩。どうやら打ち合わせは終了したらしい。

 

「なに突っ立っているんだ、弟クン!キミも早く仁村君と共にライトを当てるんだ」

 

……もう考えるのは疲れたよ。後は兄さんが起きたら考えよう。

 

そう思い渋々仁村君の隣に行き、自分の兄にスタンドライトを向けるのだった。

 

僕……なにやってんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 

 

そして現在に至る、と。

 

こうやって意識を思考の海に飛ばしてるうちに兄さんたちの会話は一段落しそうになっている。

 

どうやら兄さんが莱香ちゃんの演技に気付いたらしい。気付かないほうがオカシイけど。『よよよ…』は流石にないと思うんだ。

 

まぁとにもかくにも、そろそろ兄さんに声を掛けてみようかな。

 

向けていたスタンドライトの電源を落として近寄る。

 

「おはよう、兄さん」

 

「ん、翔か?一体どういうことだ?」

 

「僕にも分からないんだけど…」

 

「まぁ、お互い災難だったってことだよな」

 

仁村君もライトの電源を落として話に入ってきた。兄さんは仁村君の顔を思い出していないようでヘンな顔になっているけど。

 

「あれ?俺何してたんだっけ…コンパでビールを飲んだ後の記憶が無いな…」

 

なにやらブツブツ言い出す兄さん。必死に今日のことを思い出そうとしているみたい。そんな兄さんの様子を見て俺と仁村君は顔を見合わせて苦笑する。

 

そしてそんな兄さんの前に立って語りだす佐古先輩。

 

内容は下品なモノだったんで聞き流していたんだけど、途中で莱香ちゃんがハリセンで叩いて止めてくれた。

 

佐古先輩は気持ち悪い声を出しながらもだえているけど、とりあえずグッジョブ莱香ちゃん。感謝の印としてとりあえず莱香ちゃんに向けて親指を立てておいた。

 

そしてそんな僕に親指を立て返してくれた莱香ちゃん。

 

「…ここは私に任せて」

 

「助かります、莱香ちゃん」

 

「…莱香ちゃん?」

 

「とりあえずお言葉に甘えて帰ろうぜ?」

 

疑問符を浮かべる兄さんを仁村君と共に引っ張りながら部室を後にする僕らだった。

 

 

 

 

 

 

……結局、入部とかどうするんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。