パパのいうことを聞きなさい!――双子の弟は頑張ります――   作:四宮 (陽光)

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さあさあ!未だに夏休みの宿題が終わらない自分ですが頑張って更新してみました!

それにしてもパパ聞きは話の区切りが難しいです。

それじゃあ、どうぞ


第七話 姉さん

 

 

仁村君と出会ってからしばらく経った頃。一本の電話が掛かってきた。

 

 

プルルルルル

 

 

「電話かぁ」

 

「兄さん、僕が取るから大丈夫だよ」

 

立ち上がりかけた兄さんを手で軽く制し、受話器に手をかける。

 

「もしもし」

 

『あ、翔太?元気にしてた?』

 

「姉さん!?」

 

思わず大きな声を出してしまう。

最後に会ったのが入学式だから、大体一ヶ月ぶりぐらいに話すことになる。

 

「姉さんからか?」

 

僕の興奮した声で兄さんは相手を理解したらしい。とりあえず電話中なので横目でみて頷いておく。

 

「うん。元気だよ!姉さんはどう?」

 

『元気よ。可愛い娘たちもいるし、幸せいっぱいよ』

 

「そっか~、良かった」

 

今の発言通り、僕たちの姉さんは既に結婚している。子供もいて娘ちゃんは三人。もう結婚して四年になるのかな。相手は普通のサラリーマンだ。でも、たしか株で資金運営をしていたり都心の近くに土地をいくらか持っていたりと割と裕福だった気がする。どこで知り合ったかは知らないけど、相手の猛アタックを受けて結婚にまで至った。正直、僕も兄さんも最初は猛反対だったんだよね。姉さんより十も上の歳は良いとしても、二度も離婚を経験してて前の奥さんたちとの子供を一人ずつ連れていたり悪いイメージしかなかったんだ。世間的に見ても決して良い相手とは言い難いし。まぁ、実際会ってみればすごく良い人だったし、何より姉さんが選んだ人だったから僕は割とすぐ納得したんだけどね。兄さんが大変だった。兄さんは僕にも増してシスコンだから今でもあまり良い思いじゃないんだ。姉さんは身内の贔屓目抜きで美人だったから学生時代はよく告白されたりして、そのことを知った兄さんが機嫌を悪くしたりして。間にいる僕はすごく疲れたなぁ。まぁ、そんなわけで兄さんは姉さんとの間に少し距離を作ってしまっているわけなんだけど。まあ、後で電話を変わればいいかな。

 

「ひなちゃんは喋れるようになった?」

 

『ええ。この間なんか『ぱーぱ。おつかれさま?』なんていったのよ!!』

 

「そっかぁ。ひなちゃんももう二歳だもんね」

 

『もう三歳になるんだから』

 

ひなちゃんとは一番下の娘ちゃんで姉さんとその相手の子供なんだ。最後にあったのは一歳の誕生日だからもう随分会ってないんだよね。バイトとかで時間があんまり無いのもあるんだけど、兄さんがあまり会いたがらないのも大きいだよね。僕は会いたいんだけど、かといって兄さんを置いていくのも気が引けるから長い間会えてないんだ。姉さんの家庭を見れば兄さんもわかってくれると思うんだけど会いに行きたがらないんじゃ仕方ないし。

 

『ところで翔太は彼女の一人でもできたの?』

 

「残念ながら全くアテがないよ」

 

姉さんは電話の度に毎回こんなことを聞いてくる。図らずとも姉さんと距離ができてしまった僕たちを心配してのことだと思う。特に兄さんの方にはいろいろと言っているらしい。この間もそんな愚痴を兄さんから聞いた。確かに男二人じゃ心配なのだろう。

 

『まあ、翔太は積極的になればすぐに出来そうだから心配ないわね。問題は祐太ね…』

 

「まあそれは姉さんから直接言ってあげてよ」

 

『そうね。じゃあ代わってくれるかしら?』

 

「りょうか~い」

 

受話器から耳を離し隣で様子を伺っていた兄さんに渡す。そして部屋の真ん中にある机に向かう。レポートを書いている途中だったんだ。兄さんと姉さんの会話を聞くのもいいんだけど、長くなりそうだしね。もう夜の九時半過ぎだから早めに終わらせておかないと。明日は一限目から授業が入っていたはずだし。それからはしばらく僕がレポートの上にシャーペンを踊らす音と兄さんの話し声だけが部屋に響いた。仁村君の話だったりひなちゃんの話だったり、彼女作りなさいみたいな話だったり僕の予想通り長い話になっている。時折、姉さんに怒られてるみたいな会話もあったけど。

そして僕のレポートが終わるのと同じくらいに電話も終わった。

 

「姉さん、なんて言ってた?」

 

「いつもどおり早く彼女作って結婚しろとか、娘のノロケ話とかだったよ」

 

「ハハハ。僕も似たような話だったよ」

 

「それと……たまには顔見せに来い、だと」

 

複雑な表情の兄さん。やはりあまり乗り気じゃないみたい。

 

「まあ、落ち着いたら行こうね」

 

「ああ…。好きな人、ね…」

 

今回の電話でいろいろ考えることがあったらしく、兄さんは立ったまま考え込んでしまった。そんな兄さんを尻目に机のレポートを片付ける。

 

ピンポーン!

 

固まった兄さんを起動させるようにインターホンが鳴る。そんな思惑があったわけではないと思うけど、兄さんは待機状態から回復した。そしてそのまま玄関へと向かう。

 

「空いてるぞ~」

 

そしてそんなことを言うと、扉がすぐに開いて見知った声が聞こえる。

 

「祐太ちゃん、翔太ちゃん~。今晩泊めて~」

 

そして二人分の足音が聞こえると姿を現したのは兄さんと、案の定仁村君だった。余談だけど、呼び方は苗字だとややこしいので名前呼びに変えてもらった。ちゃん付けなのは僕の意図するところじゃないので、あしからず。

 

「また来たの」

 

「そう呆れた顔しないでよ~。アイスも買ってきたからさ」

 

そんな会話をしながらも我が家のようにくつろぎ始める仁村君。

確かにその右手にはコンビニの袋があった。

 

「まったく。今週なんてほぼ毎日じゃないか?」

 

「硬いこと言わないでよ。オレたちのなかじゃない」

 

そんなに深い仲だったのかは疑問だけど。それでも毎回お土産持参だったり、片付けを手伝ってくれたりとモテる理由はなんとなくわかる気がするなぁ。

 

「んじゃ、俺はハーゲンダッツな」

 

「あ、ちょっと、それはオレと翔太ちゃんのだって!祐太ちゃんにはガリガリ君あるから!」

 

「兄弟差別なのッ!?」

 

「翔太ちゃんは可愛いからいいのッ!」

 

「ますます許せん」

 

そういうとハーゲンダッツの蓋を開け表面をべロリと舐める兄さん。それは行儀悪いよ。隣では打ちひしがれる仁村君。恨めしそうに兄さんを見ていて、兄さんはご満悦そうに一個三百円のアイスを頬張る。

 

「ふっふ~ん」

 

「うぅ~」

 

「仁村君。じゃあ僕はガリガリ君もらうね」

 

「いや、オレがそっちで…」

 

「いや、僕、ガリガリ君も好きだからいいよ。持ってきたのは仁村君だしね」

 

「そうか。ありがとう翔太ちゃん!」

 

目に輝きを取り戻した仁村君があずき色のアイスの蓋を開ける。そんな仁村君を横目に見ながらソーダ味のガリガリ君をかじる。

 

うん。なかなか美味しい。

 

 

 

 





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