時間のない中、やっと書き上げる事が出来ました。
製作日数、約5ヶ月…………。
何とかしたいものですね。
それではどうぞ!
深夜、IS学園では一人の女生徒が忍び込んでいた。勿論、理由は学校に在籍している代表候補生のISのデータを奪う為ではない。単純に教科書を教室に忘れただけなのだ。
「夜になるとどの学校でも雰囲気ってあるものよね……あったあった、これで小テストの勉強が出来るわ」
静かに入った女性とは誰にも気付かれずに目的の物を確保できた事で笑みをこぼす。とにかくこれ以上の長居は不要だ。
さっさと寮に帰って、勉強をしよう。
女生徒は教室を出て、廊下をゆっくり歩き始めた。
「え? 誰かそこにいるの?」
かすかに声が聞こえたような気がした女生徒は後ろを振り返る。だが、後ろには何もいない。気のせいかと思い。再び、女生徒は歩き始めるのだが……。
『……う……うっう……』
今度ははっきりと聞こえた。女性がすすり泣くような声、ひたひたとこちらに近付いて来るような足音。女生徒は前と後ろ交互に向き直るが、その姿すら見えない。
「えっ、えぇ……? な、なに」
その音は間違いなくこちらに近付いて来ているのだ。未知なる体験で女生徒はみるみる顔色が青くなる。あまりに恐怖に体は硬直していき、だんだん身動きが出来なくなる。徐々に音が大きくなり、間違いなくすぐそこにいる事を確信させた。
そして、突然音がなくなった。恐怖を覚えながらも必死に勇気を振り絞って女生徒は大きく深呼吸をして、硬直した体をほぐすように周りを見た。
――――何もいない。
ほっと胸をなでおろす。
どうやら不思議現象はここまでのようね。
そう思った女生徒は1歩踏み出した。
トントン
「え?」
肩を叩かれ、女生徒は反射的に振り返った。そこに立っていたのは血に塗れた包帯を全身に巻きつけている女。
「きゃぁぁぁああああああああああああ!!」
そこから女生徒は閉まっていた3階の校舎の窓から突き破って飛び降りた。1分でも早く、この怪奇現象から逃げたしたかったのだろう。とにかくパニック状態だった。
見事に着地を成功した女生徒はそのまま寮へ直行するのだった。
「…………とまぁ、こんな感じね」
「うそぉ、そんじゃあ、あの割れてたのってあなたが?」
「うん、飛び降りた……だって怖かったんだもん」
「はぁ……よくあの高さから降りて、怪我しなかったもんねぇ。話盛ってない?」
「盛ってない!!」
いつものように会話を続ける女子生徒たちだからだろうか、壊れた窓ガラスの前を通過したとき、何者かが窓の外で聞き耳を立てていたことに気付かなかったのだ。
「ふっ……いい事を聞いたな。ならば本日作戦を決行する」
聞いていた人物の特徴は無駄に垂れ流す威圧感、ピッチピチのタンクトップに短パン、そして、筋肉隆々の大男、そう超人類であった。
「――――と言うわけだ。今から肝試し大大会を開始を宣言するッ!!」
「ちょっと待て超人類! 授業を午前中に中止して何をやり始めるかと思ったら…………どう言う事か説明しろッ!!」
「何を言っている千冬よ。勿論、肝試しの方が重要じゃないか! こんな怪奇現象俺が見逃さないはずがない」
「何ぃぃぃいいいいい?! そんな事必要ない! すぐに中止しろッ!!」
もう太陽は海に沈み、辺りは満月が怪しく暗闇を照らしていた場所で千冬の声が木霊する。そう、IS学園はもう夜だった。
「残念ながら全学年、朝の授業を終了させてまで用意させたんだ。今さら中止するわけにもいかない。それにこれはバーチャル・リアリティー・システムのモニタリングでもある。一介の教師では中止する権限はないぞ。ちなみに協力者は海馬コーポレーションだ。では海馬社長、スピーチをお願いする」
超人類は隣に立っていた男にマイクを渡した。
「本日はわが社の開発したバーチャル・リアリティー・システムモニタリング協力を感謝する。俺は海馬コーポレーション社長の海馬だ。超人類とは旧知の中でな、以前会社で働いていたのだがポリの激しい職質の為、退職。その後はここの生徒が知る通りだ。今回来たのも、現在建設中の海馬ランドに実装予定のバーチャル・リアリティー・システムを利用した肝試しをしたい話を聞き、ここに参上したまでだ。ざっと見ている感じ諸君らは、この肝試しを舐めているように見えるがはっきり言ってその概念は捨てた方がいいと忠告をしておこう。そして、ここに宣言する! これまでにない恐怖を提供する事を約束しよう。ふはははははははは!!」
「海馬社長ありがとうございました。これより、肝試し大大会を開始します。なお織斑一夏のみ、海馬ランドの最大の目玉『DEATH-T』に挑戦してもらう」
「はぁ!? 俺だけ別かよッ!? いやだ!! 嫌な予感が物凄くするッ!!」
「織斑一夏よ、だからお前は真の男にならんのだ! つべこべ言わず、さっさと行け!!」
「やめろぉぉぉおおお!! 放せ放せ、放せぇぇぇえええ!!」
織斑一夏はいつの間にか周りにいた黒服の男に連行され特設会場に連れて行かれたのだった。
「さて、行ったか」
連れ去られた織斑一夏を見送った超人類はごちる。一方、織斑千冬は静かに頭を抱えていた。
「超人類……毎度毎度、この学園をかき回して何が楽しいんだ? ……まぁいい、今日は寮に戻ってゆっくり休ませて貰う」
「何を言っている千冬よ。今から俺とおばけ退治をしに行くに決まっているだろう」
「…………はぁ?」
超人類からでてきた言葉に理解できずに間抜けた声を出す織斑千冬、一体どう言う流れでそれが決まったのか、意味不明であった。
「超人類、何を言って――――」
「俺の知り合いにはおばけを研究している科学者がいてな。先日、サンプルとなるものを探して来て欲しいと言われたのだが、このご時世おばけなんて見つかるはずがないと思っていた。……先日まではな」
「まさか、今回のレクレーションは…………」
「この際、おばけでもゾンビでも関係ねぇ。俺はこのIS学園に巣食う奴を確保しなければならん。行くぞ千冬!!」
「まっ……待て超人類!!」
抵抗しようとする織斑千冬であったが、それも空しく超人類に引きずられるのであった。
その頃、織斑一夏は……。
「ぎゃぁぁぁああああああああ!!!?? くるなぁあああああ!!???」
「チョッピー、織斑一夏、切り刻むまで、逃がさない」
「おっおおおおおおおおお斧を投げるなぁぁあアア!!! 生身の人間にぃぃぃぃ!!??
何で俺を狙うんだぁああああ!?」
DEATH-Tのアトラクションにある人物が紛れ込んでいた。脱獄者、
「織斑一夏……ハーレム、許さないぃぃぃいいい!!」
「お前もかぁぁぁぁあああああああ!!!!!」
織斑一夏は
「……でこの掃除機は何だ?」
織斑千冬は超人類から渡された掃除機を背負って後を追う。勿論、超人類も背負っている。
「ん? 掃除機といったらお化けを退治するものと相場で決まっているだろう」
「……もう疲れた。帰ってもいいか?」
「駄目に決まっているだろう。生徒を守るのが教師の務めだ。それを投げ出すと言うのなら酒が飲めないくらいに減給にするぞ」
「なっ!? 私の楽しみを奪うつもりなのか!! 私から酒を取ったら何が残ると言うのだぁぁぁ!!」
「それが嫌ならばしっかりと働け」
「くっ……酒の為なら致し様ない」
(まさかアル中じゃないよな。一度職員の検診を行うか)
超人類はそんな事を考えながらどんどんと進んでいく、あれこれ校舎内を1時間近く歩き回っているが、これといった異常はなかった。
「超人類、これ以上おばけ探しをしても無駄だ。早く――――」
「…………千冬気付かないのか? 廊下に置いてあった消火器のメーカーが変わっている」
「消火器のメーカーが変わっているだと、何故そんな事がわかる。いつも教室の隅に置いてある消火器に違いないじゃないか」
「甘いぞ、千冬よ。明らかに何者かがいじっている。そこの黄色いピンの部分を見てみろ。精密に作られた盗聴器だ」
「何だとッ!?」
織斑千冬はそのピンをすぐに調べる。すると明らかに質量が違い、盗聴器と見破る事ができた。
「こんなものが……情報が漏洩しているのか」
「心配するな。学校全体に放射されている超人類・デス・超音波で、どんな盗聴器も即無力。それは鉄くずにしか過ぎん」
「…………人体にも悪そうな電波だな。しかし、誰がこんなものを」
「千冬よ。そんな事は少し考えればわかる。おばけに決まっているだろう」
「おばけから離れろ!! 明らかに人の手で付けられたものだろ!!」
「それがわからんとは……だからお前は未だに副学年主任止まりなのだ」
「それは関係ないだろッ!! それにお前を部下などにしたくはない」
「酷い言われようだな…………む? お喋りはここまでのようだ。ついに捉えたぞ」
「何? …………アレは何だ」
超人類に言われ織斑千冬は振り返る。するとどうだろうか、真っ暗で先が見えない廊下からひたひたと歩く足音が聞こえ、何者かが近付いて来る気配がするのであった。
「まさか…………本当におばけなのか!?」
「ついに、この掃除機の真価を発揮する時が来たようだな。まずこの懐中電灯でその姿を拝んでやる!!」
超人類は手に持っていた懐中電灯の光を勢いよく当てた。
「ちぃぃぃいいいちゃぁぁぁああああああん!!」
「!? 何なんだコイツは!」
一瞬だが、織斑千冬は目の前にいた何者かを見ていた。全身には血の付いた包帯、それは顔まで覆い隠し表情が全くわからない。しかし、頭に刺さっている折れた矢のようなものが赤く染まり生々しかった。その風貌でありながら何より印象に残ったのは、全身を覆っている包帯の隙間から見えた御伽噺の女主人公が着ているような服。見たのは一瞬だったのに強烈にインパクトに残った。そして、それが何より…………。
(何処かで見たことある格好のような――――)
「ふふふ、ここであったが三年目ッ! 俺に会った事を後悔しろゾンビ!! バキュゥゥゥウウム!!」
「え? ちょっと待って!? 私まだ一言も! ちぃーーーーちゃ――――」
ゾンビの抵抗は空しく、あっと言う間に超人類の掃除機へと吸い込まれたゾンビ。任務を完了させた超人類はいい笑顔で汗を拭った。
「これで博士の研究がはかどるものだ」
「超人類、今ゾンビ喋ってなかったか?」
「気のせいだろう。さぁ、さっさと戻るぞ千冬。そろそろ肝試しも終わりだろう」
「…………ああ、そうだな」
用事を終えた超人類と織斑千冬はこの場を離れていく。ちなみにゾンビを吸った掃除機はおばけを研究している科学者へ輸送されたのであった。
その頃、織斑一夏は……。
「はぁはぁはぁ、…………見つけた出口だ」
チョップマンからの攻撃を華麗なステップで避け続け、やっとの事で出口を見つけた織斑一夏は一息をつく、長い戦いだったのだ。何故かISは起動できないし、暗闇の中、何処からともなくチェーンソーや手斧が投げられ、どれだけ寿命を縮められたことだろうか。
「でもこれでやっと助かる――――」
出口の扉に手をかけた瞬間、とんでもない事が起きる。
「確保ォォォオオオオッ!!」
「!? ぐぇぇえええええ!???」
扉は急に開かれ、何十人もの男が雪崩れ込んできたのだ。流石に扉にサンドされる事はなかったが、十人ほどが、織斑一夏にのしかかり身動きを封じたのだった。
その男達の正体は脱獄した
ちなみに、あわよくばジェイソンを捕まえるつもりでいた。
「貴様だな?
「え!? え!? ち、違います。俺は何にも!?」
あらぬ疑いを駆けられる織斑一夏、パニックになりながらも身の潔白を証明しようとするが思うように言葉が出ない。そうこうしている内に一人のポリが織斑一夏の顔を見て、頭を抱え始めた。
「んんっ? お前何処かで見たことあるな、確か…………」
「そっそうです。俺は世界初の男性――――」
「ジェイソンの弟子だな」
「へ?」
その瞬間、辺りの空気が変わった。きっとポリの目は求めていた獲物がかかったと無言でわからせた。
「課長!
「そうか! よくやった。それでは署に連行するぞ。まさか、ジェイソンの弟子が裏で手を引いていたとはな」
「え? え? え!?」
「まったく、世も末だぜ…………。さぁ大人しくついて来い。クソ不味いラーメン食わせてやるからよぉ」
「ちょっと待てっ!? 俺はぁ、俺はッ! 全体的に被害者だァァァァアアアア!!」
こうして、織斑一夏は署に連行されたのだった。
ちなみに織斑一夏の取調べは一週間かけられ、釈放されたのはその三日後だった。