独擅場アンチテーゼ   作:ベリアル

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比企谷八幡の能力がいまいち絞れません。





第1話

 

 

 

部活とは自主的参加してこそ意味があるのだ。やりたくもないのに強制的に入部させても、幽霊部員となり結局は帰宅部と何も変わらなくなってしまう。それならば、最初から入部しないで帰宅部にさせておけばいいのだ。ましてや、このミカグラ学園ではポイント制やらがある所為で社畜育成所になっている。先輩や同級生に迷惑をかけたくない私にとって、この現状を打破するには帰宅部の入部を……ああ!!!

 

俺がせっかく書いたアンケート用紙はビリビリに破かれて、ゴミ箱へ捨てられてしまった。

 

「………ふざけているのかしら?」

 

目の前には黒い髪を腰まで伸ばした美少女が、足を組んで生ゴミを見る目で視線を向けてくる。

 

「ミカグラ学園部活動の改善アンケートにこんな長文を書いたのは、よっぽどやる気があるようね」

 

「あ、あのでひゅね。部活に入っていない俺にとっては難しいというかでしゅて」

 

「………はぁ」

 

絶世の美女は頭を抱えて溜め息を吐く。

 

御神楽星鎖。帰宅部にしてミカグラ学園理事長の孫だという2年生。何故、一生徒である彼女が俺のアンケートを読んでいるのかと問われれば、帰宅部は彼女しかいないのだ。

 

本来ならひと月以内にどこかの部活に入らなければならないのだが、諸事情によりミカグラ学園に来れなくなったのだ。

 

そして、今日登校すると既にそれぞれのグループが作られ部活に入っている状態だった。入っていないのは俺を除いたら、変な生物を連れている1人だけである。

 

「あなたの事情はおおむね把握しているわ。けど、私はあなたを部活に入れる気はないの。だって私も目が腐りそうなんですもの」

 

「………………」

 

帰宅部に入部もくそもあるのは全国を見渡しても、ミカグラ学園だけであろう。ここは色々特殊だからと言われれば、それまでだが。というか、俺の目が腐っているのは関係ない。

 

ポイント制とかなんだよ。確かに養われたいが、施しは受けたくないのが信条な俺にとっては苦痛以外何物でもない。

 

「はぁ、分かりました」

 

今度は俺が溜め息を吐いて、部屋から出ていく。どちらにしろ、施しを受けるくらいなら自分で部活を選んだ方がマシだ。

 

ポイント制を知った時はこの学園に入ったことを激しく後悔した。小町は性根が清浄されると喜んでいたが。

 

 

 

「どこから回るか……」」

 

演劇部。美術部。天文部。華道部。漫画研究部。書道部。放送部。etc……

 

うわぁ、なんだよこれ。どんだけ部活あるんだ。いくらなんでも多すぎだろ。

 

思い足取りで地図を頼りに近かった美術部に足を運ぶ。扉をノックしようとした瞬間、扉が開き1人の男が立っていた。

 

「あ?なんだお前?」

 

少し顔を上げれば顔や制服に絵の具が付着したDQNが立っていた。

 

「あ……あ……」

 

恐怖の余り竦み上がってしまい、腰が抜けてしまいそうだ。実際、足は震え涙目になってることが分かる。

 

ぼっちはDQNに弱いのだ。

 

「ちっ!なんだって聞いただけだろうが、どいつもこいつも…………!」

 

DQNは俺を押しのけて去っていく。よよよよよよよよし、美術部!美術部だけは絶対無理だ!

 

早足でその場から離れ次の部活動へ移動する。

 

「はぁはぁ」

 

地図を見ると、俺の現在地は書道部の前にいた。俺自身、書道の経験はないが、下手ではない………と思う。

 

「はい。どちら様でしょうか」

 

ノックに成功すると出てきたのは、着物を着た可愛らしい女の子だった。

 

「あ、えと、け見学にきまひた」

 

かみまひた。ふええ、いたいよお。

 

「え?」

 

彼女は俺を不審そうに見て、距離を置いた。やめて、そういうの割と傷つくから

 

 

「花袋ちゃーん!どうしたのー?」

 

畳を駆ける小さな足音が聞こえてくると、花袋と呼ばれる少女の背後から小さな女の子がひょっこり顔を出した。

 

うちの小町の方が可愛いがな。

 

ここ高校だよな?

 

「ひ、ひみ先輩!来ちゃ駄目です!」

 

先輩なの、この子?

 

「え?」

 

「………………」

 

女の子と目が合い、沈黙が僅かに流れた。しかし、年上とは呼べないであろう先輩は目に涙を浮かべていく。

 

「うえええええええええええ!お化けええええええええええええええええ!」

 

「ひみ先輩!な、泣いちゃ駄目ですよ!」

 

……いや、ね。目が合って泣かれた経験という名のトラウマは幾度かあるし、耐性も付いてるから大丈夫だよ?その度に俺が泣きたくなるんだが。

 

とりあえず、扉を閉めて書道部を後にする。

 

「……お化け…」

 

小町、お兄ちゃんの目が腐って初めて泣いたのはお前だったな………。

 

「しゃーねえな。次行くか……」

 

一応御神楽先輩にはオススメを聞いている。

 

演劇部。華道部。天文部。漫画研究部。書道部。美術部。

 

って、最後の2つが駄目じゃねえか。いきなり2つ消えちゃったよ!当てにならない!

 

とはいえ、部活に入る事自体が乗り気ではないのだ。文句は言えない立場だし、回っていく他ない。

 

次は……漫画研究部か。

 

 

漫画研究部はオタクで暗そうだし、所謂俺のようなボッチが集まるような場所だろう。最初からここに来ればよかったな。

 

ノックは面倒だが、やっておかなければ。

 

さて、どれだけのボッチがいるんだろうな。

 

「はーい!誰かなぁ!」

 

「…………」

 

場所を間違えたのだろうか?俺のイメージしていたものとは真逆であろうイケメンが明るい笑顔で向かえる。

 

「あれ……君は……」

 

「あああの、見学したいんですけど」

 

可能な限り噛まないようにして、しっかりと目線を逸らし自分の意志を伝えた。

 

「へえ!あぁ、どうぞどうぞ見てってよ!」

 

一瞬、訝しげな表情をされたが、再び明るい笑顔を取り戻して部室に入れられると驚きを隠せなかった。

 

何故ならこの先輩だけに止まらず、俺の予想を覆されたのだから。

 

せいぜい数人だと思っていた部員は余裕で数十人に達して、女子の割合が多い。

 

隣にいる先輩に羨望の視線を向けている者、俺を睨んでいる者、普通に絵を描いている者。

 

最後は片手で数えるほどしかいないが、大半が前の二つだ。

 

 

 

「比企谷君が来るとは思わなかったよ。あ、僕は二宮シグレって言うんだけど、愛しのエルナちゃんの従兄さ!」

 

「はぁ……」

 

エルナ………。

 

…………ああ、一宮エルナか。やたらうるさいクラスメイトで変な生物を連れているあの女か。

 

確か、ミカグラ学園の醍醐味ともいえる勝負で先輩に勝ったとかで有名だって耳に入る。もちろん、誰かが話しているのをだけどね。

 

しかし、最近この学園に訪れて彼女どころかクラスメイトの誰1人と会話してない俺だ。

 

「俺名前言いましたっけ……」

 

二宮先輩が俺の名前を知っているのはおかしい。

 

「あれー……。エルナちゃんだよ?エルナちゃんから何も聞いてない?」

 

「一宮から?」

 

俺の疑問に二宮先輩が疑問を持ってしまった。一体なんだというのだ。

 

「いやー、あの子何も言ってないんだね………」

 

口に手を添えてブツブツ呟く二宮先輩は様になっている。その姿に女子はうっとりしているが、俺がやったら気持ち悪がられるか、笑われるかのどちらかだろう。

 

まさに格差社会。

 

「僕が口を出すようなことじゃないね!よし、漫画研究部の説明をしておくね」

 

「考えときます。失礼しました」

 

「あれ!?」

 

頭を下げて廊下に出ると、二宮先輩に止められてしまう。

 

「考えときますって絶対入部しないパターンでしょ!」

 

「いや、だって……」

 

絶対リア充の巣窟だし、あんな所にいたら3日で行かなくなるわ。つうか、この先輩自体苦手だもん。

 

頼りにしちゃいそうだし。

 

頼りにし過ぎれば嫌われてしまう。そうならないためには関わらないそれが必勝法である。

 

「部活の雰囲気は分かったんで」

 

大半が二宮先輩目当てだということがな。

 

「あーそう?なら端末貸してくれない」

 

「……いいですけど」

 

ミカグラ学園1人1人に配付される端末。まだ使ってないから、個人情報もヘッタクレもない。

 

二宮先輩に渡すと慣れた手付きで操作していく。

 

「はい。僕の連絡先入れておいたから、困ったら相談してね」

 

来る者拒まず、去る者引き止める。間違いなくトップカーストだよ。いいの?本当に連絡しちゃうよ?

 

 

 

リストの部活は3つなくなり、残りは演劇部、華道部、天文部。丁度半分といったところだろう。そこに天文部に×印を加える。

 

せっかく1人になれる時間だというのに、夜になってウェイウェイやりそうな部活に入るのはごめんである。

 

後に天使とも呼べる射水アスヒの存在を知って天文部に入らなかったことを酷く後悔したのをこの時知る由もなかった。

 

残り二つ。

 

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