「あら流石捻くれた考えしか出来ない比企谷君ね、私としては両者の話をきちんと聞きたいと思っていたのよ、川崎さんからどう聞きだそうかと思っていた所に比企谷君が川崎さんを連れてきてくれたので手間が省けたわ」
流石と言っておきながら捻くれたというマイナス要素を付け加える事で自然に俺を貶めるのを止めてくれるかな・・・しかも笑顔で・・・
「一つ聞きたいことがあるどうしてお前は動揺しなかったんだ?」
「別に動揺しなかった訳ではないわ、比企谷君は昨日なんでお前は全て俺が嫌われてる事前提で考察してるんだよ・・・と言ったわよね」
「ああ・・・」
その後雪ノ下は冷たい目で大体分かったと言ってたな・・・
「対人・・・特に女性に関しては自分に対する全てを否定して裏を読んで考える捻くれた比企谷君らしくない言動だもの、なら川崎さんに裏も読めない程直接的な好意を向けられたと考えるしかないわ」
「最悪交際していることを考えに入れていたから表向きは動揺しないですんだのよ」
由比ヶ浜が感嘆の息を漏らす
「へぇ~流石ゆきのん!」
交際してるのが最悪ってどういことだよ・・・
それに自分に対して全て否定的って、いや俺もそこまでじゃ無いから・・・無いよね?否定出来ない自分が悲しい・・・
しかし冷たい目で大体分かったと言った時に本当に分かってたのかこいつ何ソレ怖い・・・
「あれ?でも表向きはってことはゆきのんも裏では動揺してたの?」
「えぇ、考えには一応入れてはいたのだけれど比企谷君と交際する人が実際にいるなんて言われた時には流石に私も驚いたわ」
雪ノ下を驚かせるなんて凄いな俺・・・なんでだろう涙が出てきた・・・
「まぁ正直に言って比企谷君からの告白とは思っていなかったのだけれど」
「そうそれ!ヒッキーが告白したって本当なの!?」
由比ヶ浜が興奮した顔で俺を見つめる
「由比ヶ浜ちょっと落ち着け昨日言った通り今から説明するから」
俺は由比ヶ浜を宥めて文化祭での出来事を含め何故こんな事態になっているのかを二人に説明した
「・・・と言うわけなんだが」
由比ヶ浜が?な顔になる・・・いや分かれよ・・・
雪ノ下がこめかみに指を当て溜息を吐いた後由比ヶ浜にも分かるように簡潔にまとめた
「文化祭での告白はただのお礼の言葉であり本当の意味での告白ではなかった、けれど川崎さんはそれを愛の告白だと受け取ってこの前それに応じたってことね」
「なるほどそーゆーこと!ゆきのんありがと!」
由比ヶ浜が雪ノ下に抱きついた・・・段々由比ヶ浜に説明するのが上手くなっていくなユキペディアさんは・・・
「ちょっと由比ヶ浜さん暑いのだけれど・・・」
雪ノ下は非難の声を上げるがもう諦めているのか引き剥がそうとしない・・・こっちもこっちで段々調教されてる気がする
「つまり比企谷君の自業自得と言う事ね・・・」
「そーだよヒッキーが悪い!」
「それを言われると弱いんだが・・・別に部に実害が出るとは思えないし放っておいてくれても大丈夫だとは思う」
害といえば俺が一人でいれる時間が減って多分休日も家で休めなくなるくらいだな・・・あれ?結構重大だなそれ・・・
「そう、このまま川崎さんと交際を続けるという事ね、あなた自身の事だから私は別にどうでも良いのだけれど」
「ゆきのん!?」
何か言いたそうな由比ヶ浜を雪ノ下が手で制する
「と言いたい所ではあるのだけど、あなたに受けた依頼に反する事なので放っては置けないわね」
由比ヶ浜の顔がパアッと明るくなり更に雪ノ下に密着する
百合百合しいなおい・・・ちょっとドキドキしすぎて目を向けられないから止めてもらえますかね
雪ノ下はもう暑いと言うのも諦めたようだ・・・調教完了だな
それにしても
「前も言ってたよな俺の依頼が終わってないとかなんとか、あの時の依頼ってクリスマスイベントの手伝いで終わったと思うんだが」
「別に比企谷君はわからなくても良いわ」
「そうそうヒッキーは知らなくてもいいの!」
俺の依頼なのに俺がわからないでいいとかどうなの?
すると雪ノ下が声のトーンを上げて部室のドアを見て言った
「それであなたはまたいつまで盗み聞きをするのかしら?」
俺と由比ヶ浜がドアを見るとドアが開き悪びれもせず一色が入って来た
「いいじゃないですか、ちゃんと部屋の外に居たんだし・・・少しならもう終りですよね?」
と言ってドアを閉め空いている椅子に座った
雪ノ下が溜息を吐き、由比ヶ浜が苦笑いをする
「お前なぁ・・・」
「・・・それに先輩の事が心配だったんですよ」
一色は上目遣いで俺に訴えるように小声で言った
「おぉぅ・・・すまん」
そのあざといのやめろドキッしちまったじゃねーか
「それでは」
雪ノ下が気を取り直し何か言おうとした所でいきなりまた部室のドアが開き平塚先生が入って来た
「おいお前ら、ちょっと面白いネタを仕入れたんだが」
「先生何度も言っていますがまずノックを」
「まぁそう堅いこと言うな雪ノ下、私とこの部の仲じゃないか」
「はぁ・・・それでどういったご用件ですか?」
「いやちょっとありえない噂を耳にしてな、なんとこれが笑える事に比企谷に彼女が出来たという噂なんだが」
「あはははは、なぁ傑作だろ?」
場がシーンと静まり返る
「ん?どうしたお前たち、本人がいるからって遠慮する事は無い笑って良いんだぞ?」
耳はえーな付き合ってまだ二日目だぞ、その噂の出所どこだよ・・・てか先生俺に彼女が出来るのは笑い話なんですか、一教師が本人がいる前で堂々と言うことじゃないと思うんですがねぇ
少し気になったので聞いてみた
「先生その噂って誰から聞いたんですか?」
「ああ、お前と同じクラスの海老名だが?」
由比ヶ浜が一瞬え?っとショックを受けたような顔になる
海老名さんあなた何者ですか?怖すぎですよ・・・まぁ二人乗りも見られたし川崎と(一方的に)仲が良かったから聞いてたとかなのか?
雪ノ下がこめかみに手を置き溜息を吐く
「先生、笑えないことにその笑い話は本当なんです。今丁度そのことについて話していた所です」
笑い話なのは否定しないのかよ・・・
「なん・・・だと・・・」
「比企谷・・・お前は、お前だけは裏切らないと思ったのに!」
平塚先生はドアを思いっきり閉め泣きながらまるで嵐の様に走り去って行ってしまった
いや、裏切った覚えは無いんですけど、なんなら仲間になった覚えまでもないんですが・・・ホントにもう誰か貰ってやれよ・・・
平塚先生が走り去った後間を置かずドアをノックする音と共に海老名が顔を出す
「こんにちは~、もしかして平塚先生こっちに来なかった?」
「ああ、さっきまで居たぞ」
と俺が言うと海老名はあちゃーという顔をしてドアを閉めようとした
「まって姫菜!」
閉めようとしたドアを由比ヶ浜が止め少し潤んだ目で口早に海老名を問い詰める
「ヒッキーと川崎さん付き合ったの知ってたの?なんで私には教えてくれなかったの?」
海老名は罰の悪そうな顔で微苦笑しながら言った
「いや~、私も本人から聞いたわけじゃないし、クラスでの様子を見てそうなんじゃないかな~?って先生に話しただけなんだけど」
「それなら私にも話してくれれば良かったじゃん!」
由比ヶ浜にしては珍しく海老名に突っかかりドアに手をかけていた海老名の腕を掴む
「うーん、この話題は結衣にはちょっと話づらいかなぁ~・・・って、ね」
海老名が微笑みながら言うと由比ヶ浜の手の上に軽く手を乗せた
その言葉と行動で由比ヶ浜が冷静になり掴んでいた腕を離した
「あ・・・うん・・・ごめん・・・」
海老名が優しく微笑む
「ううん、いいよ、こっちこそごめんね・・・」
「じゃーヒキタニ君後のフォローは任せたよ☆」
と言って海老名はドアを閉め小走りに去って行ってしまった
なんという無茶振り・・・小町を慰める時ってどーやったっけ・・・
「えーとなんだ・・・そんな落ち込むな、海老名だって別にお前に隠してたわけじゃないんだし、確証が無いから言わなかっただけだろ」
そう言って俺は俯いている由比ヶ浜の頭を撫でた
「隠してたヒッキーに言われたくない・・・」
「ぐっ・・・」
「それにそれは違うと思うんだけど・・・・・・ま、いっか・・・」
と自分の中で納得したのか由比ヶ浜は俺に撫でられるままにされていた
えっと・・・やったは良いけどこれいつまでしてればいいのかな・・・ちょっと良い匂いするし、ドキドキして来たんですが・・・やっぱり小町にやるのとは勝手が違うな・・・
「んんっ・・・」
雪ノ下が咳払いをして氷の表情で睨みつける
一色も机を指でトントントントンとしながらこちらを睨んでいた
それを合図に俺が由比ヶ浜の頭から手を離し、由比ヶ浜が俺から少し距離を置く
「たははは・・・」
由比ヶ浜が赤くなりながら乾いた笑いを浮かべる
「とりみだしちゃってごめん・・・」
「いいえ、もう大丈夫かしら由比ヶ浜さん」
「うん、大丈夫」
雪ノ下は由比ヶ浜に確認するとさっき言いかけた言葉を続けた
「それでは・・・本題に入りましょうか」