俺の妹が榛名になった件   作:薬丸

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一ヶ月に一度更新……遅くなって申し訳ありません。


4.提督になったんだけど質問ある?

 俺達は横須賀海軍基地の門前まで来ていた。

 卒業式の翌日に、今日この日に赤紙を持って来いと通達が届いたのだ。

 俺と水夏はど緊張しながら守衛の人に赤紙を見せる。

 すると知らせが来ていたらしく、すぐに門を通された。

 門をくぐってしばらく進んだ先、ここで待機しててくれと守衛さんに言われ、そわそわしながら待つ事に。

 

 そして10分程待っているとジープがやってきて、俺達の前で止まった。

 白い軍服を着た20代後半の青年さんと白い手袋をした美少女がジープから降りてくる。

 

「すまない、少し待たせてしまったね。私は鎮守府所属の宮守涼という者だ」

 

「私は横須賀鎮守府所属陽炎型二番艦、不知火と申します。宮守提督の秘書艦を担当しています」

 

 男性の柔らかい声と、美少女の落ち着いた声に緊張が少しだけ解れる。

 

「さて、安達あきよし君とみなつ君の兄妹で良かったかな?」

 

 俺はテンパりながらも、一歩前に出て答える。

 

「あ、俺、いえ自分は秋に良いと書きましてあきらと読みます。妹は水に夏と書いてみずかと読みます。あと、これ赤紙、じゃない、召集令状です」

 

「すまない、失礼したね。きちんと資料には目を通したんだが……。

 うん、うん、令状にも間違いはない。

 ようこそ、横須賀鎮守府へ」

 

「あ、はい、これからのご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します」

 

「緊張するのは仕方ないが、そこまで畏まる必要もない。

 鎮守府では階級も先輩後輩も関係なく、皆等しく仲間であるというスタンスだからね。

 タメ口でも構わないぐらいさ」

 

「いえ、タメ口はさすがに!」

 

「タメ口はさすがに冗談、でもないんだ。敬意を持った上でのタメ口なら構わない。

 口調程度で気分を害する人間はここにはいないと断言しよう」

 

「えっと、軍所属なのに口調とか適当でも良いんですか?」

 

「確かに海軍の所属ではあるが、基地内の半分が鎮守府、半分が通常の海軍基地とはっきりと別けられている。

 指揮系統もこれまた別けられていて、鎮守府の上に総督府があり、総督府の長は天皇陛下となっている。つまり私達は天皇陛下直下の部隊というかなり特殊な立ち位置にある。

 と、ここで説明しても時間の浪費になってしまうな、とりあえずジープに乗ってくれ。

 気になる事があるなら運転しながらでも答えよう」

 

 そして俺達はジープに乗り込んだ。俺と水夏とセーラー服の美少女は後部座席に、宮守さんは運転席に。

 シートベルトをしっかりと付けて、ジープはゆっくりと動き出す。

 

「……あの、運転手って別にいらっしゃらないんですか?宮守さんの階級って大佐ですよね?」

 

「ん?階級章を読めるのかい?まあさっきも言った通り、鎮守府において階級は飾りなんだよ。

 鎮守府に所属する人員は極力少なくあるべしってのが全鎮守府の掟でね。後輩はいても部下はいない、だから自分でやれることは自分でやらなきゃいけない。

 そんな実情があるのに階級を振りかざしてふんぞり返るなんて滑稽だろ?

 そういう訳で、車の運転も新人の教育も手の空いてる人間が率先してやらなきゃならんさ」

 

「そんなに人員がいないんですか?」

 

「艦娘という存在は公にされていて、しかもアイドル扱いされているから勘違いされやすいが、とても扱いに困る存在でもあるんだ。詳しい説明は鎮守府についてから行うが、ともかく関わる人間は少なければ少ないほど良い。

 彼女達は少し寂しいみたいだけど、俺達の為にも、彼女達の為にも、問題が起こらない事こそが一番だ。

 まあそういう事情があって、鎮守府への立ち入り及び艦娘の接触には横須賀海軍基地所属の者でも厳格な審査を通らなければいけない」

 

「はぁ、そうなんですね、しかし改めて不思議です。そんな少数精鋭?的な所に自分みたいな高校中退の奴が入れたなぁって」

 

「鎮守府所属には中卒という人間もいるからね、学歴は関係ないさ。

 そうだな、君と妹さんが何故ここにいるか、改めて説明しよう」

 

「あっ、それすごく助かります。なんかまだ宙を浮いてるというか、夢見心地というか、浮足立ったままなんですよね」

 

「鎮守府に入るには審査を通る必要があるんだが、実はその審査項目というのは非常に偏っているんだ。

 女性の場合は艦娘になる為の適正があるか、品行方正であるか。この二点を合格すれば良いだけだ。と言っても適正がある女性は千人に一人いるかいないかぐらいの割合ではあるがね」

 

「へぇ、案外緩い条件なんですね」

 

「まあ艦娘の秘密を知れば、何故これだけ緩いかが分かるさ。……ああ、それ自体は危険な事ではないから安心してくれ」

 

 緊張と不安でずっと目を回していた水夏が、秘密という言葉にびくっとして更にあうあー状態になってしまった。

 それを見た宮守さんが慌ててフォローする。

 

「こほん、その秘密は艦娘になる前にちゃんと事前説明がある。それが受け入れられないようなら、機密を守ると書類にサインをして、ある一定期間を我々の監視下に置かせてもらえれば、晴れて元の生活に帰れるから」

 

 その言葉に水夏はほっとした様子。

 

「あの、それで、俺が審査を通った理由って」

 

「ああ、話がずれてしまったね。

 男性が提督職につく条件はね、たった一つ、良い人であるか否かだ」

 

「……はい?たったそれだけですか?」

 

「まあ大まかに言うとだがね。

 審査項目自体はとにかく多い。

 危険思想の有無、深海棲艦への憎しみの強さ、常識的な感覚、高い向上心、素早い決断力、強い責任感といった能力、他者への思いやり、精神的な強さ、痛みを知る人間であるかという人格。

 これらを一年かけて調べ尽くすのさ」

 

「えっ、一年かけてって……いつの間に?!」

 

「私が応募したのって一年前の最終進路希望調査の時だから、その時からになるのかな?」

 

「多分そうだろう。書類審査に通り、徹底した身辺調査が終われば半年間の監視調査に入り、合格すれば赤紙が届けられ、その時の反応と以後の生活態度の変化を見て、そこでも合格ならば最終通知が届く手筈になっている。

 まあそういう訳で、自分を入れるのは気恥ずかしいが、鎮守府には人格的に良い人間しかいないという事になっているのさ。一応聞くが、君は年下に親交を感じるタメ口を使われて怒るタイプの人間かい?」

 

「いえ、憎めない奴なら仕方ないなーと思って何もしませんね。締める時は締めさせますけど」

 

「うんうん、だろうね。だから鎮守府での提督同士の付き合いで何かある時は、自分がどう感じるかを判断基準にすればいい。勿論鎮守府外では気をつけないといけないが」

 

「そうなんですね、少し緊張が解けました」

 

「お兄ちゃん級の良い人しかいないなら、大安心です!」

 

 ついでに妹の不安も大分消えてくれたようだ。しかし俺級の良い人ってなんだよ。

 

「と、着いたね。それじゃあジープから降りてくれ」

 

 その言葉を受けて車を降りると、とても立派な建物が前に。

 その入口と思しき所から二人の女の子が出てきた。

 

「ようこそ横須賀鎮守府へ!私は工作艦明石と言います!早速で悪いのですが、ここへはジープの回収の為に来たので、お目通りはまた今度です!」

 

 そう言って美少女の一人はさっさとジープに乗り込み、走りだしてしまった。

 

「ようこそ横須賀鎮守府へ。私は大淀型一番艦の大淀と申します。ここ横須賀鎮守府で総指揮補佐をやっています。

 明石については申し訳ありません、ジープは他所ですぐに必要だったので、許してあげて下さい」

 

「あっはい。あの、自分は安達秋良と言います」

 

「私は安達水夏と言います」

 

「ええ、伺っていますよ。期待の新人さんですね。それでは早速案内しますので、水夏さんはこちらへ」

 

「あっ、あの、お兄ちゃんともう別れちゃうんですか?」

 

 不安そうに俺と大淀さんの間で視線が彷徨う水夏に、

 

「はい、ここからは私が水夏さんを案内します。艦娘についての詳しい説明は、女の子の秘密について一杯話さなくてはいけませんので、男女別室にて説明します。説明が終わればすぐに合流しますから、安心して下さい」

 

 にっこりと人好きのする笑顔で言う大淀さん。

 それで不安が和らいだのか、水夏はゆっくりと頷いた。

 

「それじゃあお兄ちゃん、行ってくるね」

 

「おう、何かあったら叫べ。すぐに助けに行ってやるから」

 

「危ない事なんて何もないですが、ふふ、良いお兄さんですね」

 

「ええ、自慢の兄です」

 

 そう言って二人は和やかに中に入っていった。

 

「それじゃあ私達も行こうか」

 

「はい」

 

 俺はその言葉に頷き、二人の後ろに付いて行くのだった。

 

 

 

 

 通された部屋は随分と凝った内装が施された一室だった。

 どうやらここは宮守さんの執務室らしい。

 

「さて、ここで色々な事を説明するんだが……まずそうだな、こんな言葉をまず送っておこう。

 鎮守府の門をくぐる者は一切の常識を捨てよ」

 

「はぁ、地獄の門のもじりですか?」

 

「ああ、誰が言ったかわからないが、中々的を射ている。まあくぐるのは地獄の門ではなく、幻想の門だけどもね。

 とりあえず私がここで一番驚いた事を先に経験してもらおう。

 驚くだろうけど、冷静になって目の前の現実を受け入れてくれると助かる。

 妖精さん妖精さん、ちょっと部屋の模様替えをしたいんだけど、良いかい?」

 

「は?あの宮守さん、急にどうしたんですか?執務机の上には何もないですよね?」

 

 俺が訝しがっていると、宮守さんは苦笑しながら、

 

「まあまあ、ちょっとだけ待ってくれ。おお、今日はやけに早いな」

 

 その言葉が終わると同時、執務机の上に仄かな光点が生まれた。

 そして次の瞬間、光が弾け、親指大の小人が机の上に立っていた。

 俺が言葉もなく驚愕していると、

 

「おや、今日は親方が来てくれたのか。良い仕事が期待できそうだ。ん?ああ、新人の様子を見に来たのかい?彼がそうだよ」

 

 宮守さんには驚いた様子もなく普通に対応している。

 ……恐らくこれがここの常識なんだろう。けど、これは、

 俺が煩悶していると、親方と呼ばれた、ステテコに腹巻き、ハッピを羽織った妖精がこちらにやってきた。

 それを目で追っていると、

 

「ああ、君にはもう妖精さんが見えるのか。これは将来有望だな」

 

 と和やかな声で宮守さんが言ってきた。どうやら、危険はないようだが……

 俺は間近に迫った妖精さんを固唾を呑んで見ていると、妖精さんがこちらを見た事で視線が交わった。

 一秒、二秒、三秒と見つめ合い、妖精さんがにやりと笑った。

 そして顎で窓の方を見てろ、という風に示したので、俺は素直に窓を見た。

 窓の傍に光点が現れ、親方妖精さんが出てきた。

 今度は彼女?の身の丈をこす木槌を持っている。

 彼女はそいつを振り上げ、窓に向かって振り下ろした。

 するとどうだ、極普通のシンプルな窓枠がカウンターバーになった。

 シンプルな窓枠が、カウンターバーになった。

 何を言っているかわからねぇと思うが……

 

「宮守さん!あれなんですか?!妖精さんとか、瞬間移動とか、カウンターバーとかもう色々起こりすぎて訳分かんないんですけど?!!」

 

「まあ、驚くわな。私も最初は随分驚いたよ。親方、相変わらず良い仕事です。あっ、これ、外行った時のお土産の赤福です。みんなと食べてください」

 

 なんとも和むやりとりだ。

 妖精さんからしたら大分大きな赤福の箱だが、彼女は難なくそれを受け取る。そして赤福は光となってどこかへ消えた。

 もう、何がなんだか……。

 上を向いて消化できない現実をどうしようか悩んでいたら、下に気配。

 妖精さんが執務机の端、俺に一番近い所に移動して、こちらを見上げていた。

 なぜだか、どうだったよ、俺様の仕事は?と言っているように見えたので、

 

「すごかったです。さすが親方ですね」

 

 と言ってみたら、親方は、へへっ、そうだろ?と言った表情をしながら鼻下を指で撫ぜた。

 その様がとても可愛らしかったので、なんかもう全てがどうでも良くなった。

 そして親方妖精さんは俺と宮守さんに手を振り、光となって消えた。

 

「いやはや有望だな。妖精さんが見え、言っている事がわかるとは」

 

「いえ、何となく気配でそう言ってるのかな?と推測していただけで」

 

「私もそうさ。彼女達は私達の言葉を理解し、意思疎通も可能だ。だが彼女達は喋ってくれないからね、表情や雰囲気で察するしかない。

 なんにしろ、この鎮守府という場所がどれだけ君の知る現実と隔絶していのるか、わかってくれたかな?」

 

「ええ、まだ受け止めきれていませんが、なんとなく理解しました」

 

「ああ、まだなんとなくで構わないさ。大丈夫、気になったことがあればちゃんと説明はする」

 

「はい、お願いします」

 

「まずそうだな、君の仕事について話そう。艦娘についても知りたいだろうが、そちらはまだ話せないので後回しだ。

 では我々提督と呼ばれる人間が何をするのかを説明する。

 それは艦娘のマネージメント、これに尽きる。

 なんだそれは?という顔をしているな。まあ当然か、提督と言われて真っ先にイメージするのは指揮官としてのポジションだろうしな」

 

「ええ、彼女達と一緒に戦線に立って指揮をするものだとばかり思っていました」

 

「まず彼女達と一緒に戦線に立てる訳がないんだ。彼女達からしてみれば通常の戦艦ですら足手まといになのだから。

 だから私達が出来る事は、全部陸で収まるものだ。

 

 一つ、人類の切り札である彼女達が気持ちよく戦う為に最善をつくす。

 必要物資の確保に奔走し、彼女達の状態を常に把握し、施設の使用許可をもぎ取り、艦娘同士の相性に気を付けながら誰をどう組ませるかに頭を悩ませる。

 まさにマネージャーのような仕事だ。

 

 二つ、最強の兵器である彼女達に最終許可を出す。

 彼女達は人間だが、思考する兵器でもある。

 だから作戦立案も作戦実行も戦闘自体も全て彼女達が行う。そこに俺達の介入する部分は少ない、作戦を一緒に考えるぐらいか。とはいえ艦娘の戦闘は私達には想像もつかない代物だから、ほとんど意味は無いがね。

 だが私達にしか出来ないことがあるように提督にしか出来ないこともある。

 それが先ほど行った許可出しだ。

 彼女達は俺達の許可無しに力を振るうことが出来ないんだ」

 

「なんか色々とイメージと違う……。

 しかし許可出しって、必要なんですか?」

 

「彼女達が言うには、自分達は兵器だから、人が扱っているという証が無ければ存分に力を振るう事が出来ないという話だったな。

 でなければ、彼女達はもっと厳重な監視下に置かれていただろう」

 

「そうなんですか?」

 

「基地から出ることは相当許可されにくいが、基地内であればかなり自由奔放に活動が許されている。

 兵器ではあるが、彼女達は人間で、年若い少女達だ。ストレスを溜めないようにという配慮だよ。

 それと注意なのだが、力が存分に発揮されないからといって、調子に乗ってはいけない」

 

「はあ、調子にですか?妹もいるので早々調子に乗るなんてしないと思いますけど……」

 

「まあ結構大事な忠告だから聞け。

 例えば私の隣にいる不知火。駆逐艦という速度はあるが火力は低いという艦種なのだがね」

 

 そういって宮守さんは執務机の引き出しから銃を取り出し、不知火さんの肩を持って部屋の中央に行き、彼女の背後に立った。

 

「ごめん不知火、ちょっと証明実験に付き合ってもらう。銃を狙って本気でやってくれよ」

 

「ええ、構いません、いつでもどうぞ」

 

「は?あの?ちょっと、宮守さん?」

 

「秋良くん、危ないからちょっと下がってて」

 

 俺は混乱しながらも、言われた通りに部屋の隅っこに移動する。

 何かの意図があるんだ、大丈夫だと念じながら、事の次第を見守る。

 

「では行くぞ」

 

 宮守さんは不知火さんの心臓に銃口を定め、一声かけた直後に引き金を引いた。

 あれが実は玩具の銃だと少しだけ期待していたのだが、勿論そんな事あるはずもなく、破裂音と共に弾丸は撃ち出された。

 後ろを向いた不知火さんはそれに反応する事もせず、銃弾を受けた。

 受けた筈なのに、彼女は素早く宮守さんの方へ振り向き、拳銃の先端を裏拳の要領で殴りつけた。

 すると再びの破裂音、なにが起こったのかイマイチわからず、キョロキョロと注意して周囲を見ると、銃の先端がかなり短くなっていたり、不知火さんの足元に拉げた銃弾が落ちていたり、裏拳の振りぬいた先の壁に穴がぽつぽつと出来ている事に気づいた。

 

「気付いたかい?彼女達は拳銃程度の攻撃では傷一つつけることが出来ず、その攻撃力は鉄すら容易く砕く」

 

「とはいえ、通常時は防御も攻撃も意識を集中してやっと一時的な解放がなされるだけです。ですから怖がらなくても大丈夫ですよ」

 

 怖いとか言う前に、さっきから驚愕しか出来てない。

 冷静に考えて、日常生活であんな事態が起こると知れば艦娘という存在に恐怖の一つも湧くんだろうけど、俺は逆に安心していた。

 

「怖くはありません」

 

「そうですか?それにしてはかなり険しい表情をされていますよ?」

 

「それは単に今ある事実を受け止めきれていないというか、俺の中の常識が幻想的な衝撃と暴力的な衝撃で悲鳴を上げてまして、それが少し辛いだけです。けれどそれもすぐに受け入れられる自信があります」

 

 頑固な水夏はどんな条件を付けられようが、どれほど厳しく覚悟を試されようが、きっと艦娘になるだろう。

 ならば親方妖精さんが見せたファンタジーも、先ほどの艦娘が持つ力の発露も、妹が敵地に赴く不安を軽減してくれる頼もしさに映る。

 

「……どうやら、本心らしいな。優しさと軟弱さは似て見える、だからこれを見せると半数近くは及び腰になって辞退するんだ。君は是非とも欲しい逸材だ」

 

 そう言って宮守さんと不知火さんは柔らかい笑みを浮かべた。

 

「それでは提督の概要については説明できた。詳しい仕事内容は後々で構わないだろう。

 次は艦娘の説明なんだが……これは極秘事項に類する。水夏君が入隊の決意を決めるからになるな」

 

「妖精とかって結構重要そうな情報ですけど、極秘じゃないんですか?」

 

「まあ提督業の実態なんて調べられてもどうでも良い事だし、妖精の話なんて見なきゃ信じれる話でもない」

 

「確かに、そうですね。

 少し気になったんですが、俺は現段階で大した情報を持っていないから、鎮守府の入隊を辞退できるってのは分かるんですが、艦娘の説明ってもう水夏にしてる訳じゃないですか。それなのに辞退って出来るんですか?」

 

「出来る、というよりもせざるを得ないという感じだな。まあそれについても説明するよ」

 

 しばらく宮守さんと他愛無い会話をしていると、黒電話がなった。

 不知火さんが対応し、何度か頷いた後、俺の方に受話器を向けた。

 

「妹さんからです。意思決定をされたそうなので、貴方に聞いて欲しいとの事です」

 

 俺は受話器を受け取り、耳に当てた。

 

「変わったぞ」

 

「うん。あのねお兄ちゃん、私、艦娘になりたい」

 

 いつかと同じセリフだったが、覚悟が違うように感じた。

 だから俺も覚悟を決めて受け入れる。

 

「分かった、俺も提督業を頑張ろう」

 

「ありがとう、私も頑張るね。それじゃあもう切って良いみたいだから、切るね」

 

 がちゃりと受話器を戻し、振り返る。

 すると執務机の上には契約書が用意されていた。

 

「色々と決めたようだね、ならこれを熟読し、サインしてくれ」

 

 書かれていた内容を良く読むが、他言無用であるとか、責任の有無とか、一定期間は勤め上げるようとか、就職時の契約書とあまり変わらない極々普通のことが書かれていた。

 俺はサインをして、宮守さんに渡す。

 

「君の覚悟、受け取った。ようこそ横須賀鎮守府へ。私達は君達を歓迎する」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 こうして俺は提督となったのである。

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