インフィニット・ストラトス いちか君と一夏のIS学園生活 作:迷い人
「ただいま」
セシリアとの戦いを終えてピットに帰ってきた一夏。
「あ、ああ…おかえり一夏。その、何だ…」
「ん?」
「残念だったな」
「いや、そうでもないよ」
「だろうな。わざと負けたのだからな」
千冬と山田先生がピットに訪れた。
「やっぱ、千冬姉にはばれてたか」
「・・・・・・・・」
千冬は無言で一夏に近づくと。
パアンッ!
「でっ!」
千冬の出席簿の一撃が一夏の頭に炸裂した。
「いちかに、話したはずだ。学園では織斑先生と呼ぶようにと」
「…はい、織斑先生」
頭を擦りながら返事をする一夏。
「い、一夏。先っきの…」
「ん?箒も千冬姉の事を千冬姉って…」
パアンッ!
「織斑先生だ」
「…はい、織斑先生」
再び千冬の出席簿の一撃が一夏の頭に炸裂した。
「あ、ああ…一夏。先っきのわざと負けたというのは本当か?」
「セシリアとの対戦か?ああわざと負けたが…」
「み、見損なったぞ一夏!そんな事をするなんて!」
一夏に詰め寄る箒。
「い、いや、あ、あのな。理由があるんだ」
「何だそれは?」
ジト目で一夏を睨む箒。
「クラス代表なんてやりたくない!」
満面の笑顔で胸を張って言う一夏。背景にはドーンという擬音が見えそうだ。
「・・・・・それだけか?」
「ま、まだあるぞ!」
「何だ、それは?」
「俺のISを使っての実戦経験もISの知識に関しても殆どないからな。体にも問題がある。だから俺なんかよりイギリス代表候補生のセシリアにクラス代表を任せた方がいいだろう」
「いや、だが…」
「俺の力はまだまだ。こんな力量じゃ、みんなが認めてくれても自分が納得できないんだ。まあ、わざと負けたことをは良くなかったけどな…」
「そうか…反省しているならいい」
一夏の考えを聞きわざと負けたことを反省しているようなので引きさがる箒。
「しかし織斑。思ったよりはISを操縦が出来ていたな」
「おお!珍しいな。織斑先生が褒めてくれるなんて」
ゴンッ!
「ガッ!」
今度は千冬の拳骨が一夏の頭に炸裂した。
「バカな事を言うな(ああ…本当は褒めてやりたい!それはもう!)」
若干、赤くなりながら言う千冬。後ろで山田先生がクスクスと笑っているように見える。
「白式の事は知らない筈なのに、何て言えばいいのかな?解るんだよな。武器の特性とか…どう動けるかとか…白式の全てが解るわけじゃあないけどな。でも、何でだろうな?」
「そうか…とにかく、明日からは訓練に励め。暇があればISを起動しろ。いいな(そうすれば、いちかと一夏、二人に会える!)」
「はい」
頷く一夏。
「えっと、ISは今待機状態になってますけど、織斑くんが…あっ、小さい織斑くんの方ですね。小さい織斑くんが呼び出せばすぐに展開できます。ただし、規則があるのでちゃんと読んでおいてくださいね。はい、これ」
ISについての規則が書かれた本を渡される一夏。
「今日はこれでおしまいだ。帰って休め」
千冬の言葉により、帰る二人だった。そして、寮への帰り道。いちか君と箒は手を繋いで歩いていた。
「箒お姉ちゃん」
「何だ、いちか」
「明日からも訓練をお願いしたいんだけど…」
「わ、私にか?」
「うん」
訓練を頼まれるとは思ってなかったのか驚く箒。
「わ、私ではなく千冬さんに教えてもらったほうがいいのではないか?」
「ん~千冬お姉ちゃんは嫌がると思うよ。えこひいきと思われちゃうから」
いちか君が頼めば千冬は迷うことなく了承すると思う。反対する者がいたら…どうなるでしょう。
「そ、それなら先輩達に教えて…(だ、だめだ!そんな事をすれば、い、いちかが先輩達の毒牙に!)」
変な妄想をする箒。というか毒牙は箒さん。君の方が…
「箒お姉ちゃんが嫌だったら…」
「い、嫌とは言ってない!」
「!」
びっくりするいちか君。
「そ、その、い、いちかは私に教えて欲しいのだな…」
「うん!」
笑顔で頷くいちか君。
急に嬉しそうにする箒。よほど嬉しいのかしきりに髪をいじっている。長いポニーテールの一部を指先で絡めてはほどくを繰り返している。
「よし、ではこの私が教えてやろう。特別にな」
「うん。ありがとう箒お姉ちゃん」
「では、明日から必ず放課後は空けておくのだぞ。いいな?」
「はい!」
手を上げて返事をするいちか君。
「(放課後もいちかと一緒にいられる。それにISを起動させられるから一夏とも話せる。一度に二度も嬉しい!…ハッ!イカン、私は何を考えて…でも、久しぶりに会った一夏。かっこよくなっていたな。可愛いいちかとかっこよくなった一夏。イイ…)」
箒の脳内では箒を真中にいちか君と一夏とで手を繋いでお花畑をスキップしていた。また逝っちゃたようである。あっ、涎が出ている。そんな箒を見ていちか君は…
「この時の、箒お姉ちゃん怖い…」
箒の逝っちゃっているモード?を理解できず、というか理解できるはずはないか…とにかく何時もどおり怯えるいちか君であった。
サアアアアアアア…
シャワーノズルから熱めのお湯が噴き出す。水滴は肌に当たっては弾け、またボディラインをなぞるように流れていく。白人にしては珍しく均整の取れた体と、そこから生まれる流線美はシャワーを浴びているセシリアのちょっことした自慢だった。シャワーを浴びながら、セシリアは物想いに耽っていた。
「(今日の試合…)」
いつだって勝利への確信と向上への欲求を抱き続けたセシリアにとって、この困惑はひどく落ち着かないものだった。
「(わたくしが勝ったのに…けれど、腑に落ちない。なんだかすっきりしない)」
だろうね、一夏はわざと負けたから…
「(織斑、一夏…)」
あの男子の事を思い出す。あの、強い意志の宿った瞳を。他者に媚びる事のない眼差し。それは、不意にセシリアの父親を逆連想させた。
「(父は、母の顔色ばかりうかがう人だった…)」
名家に婿入りしたの父。母に多くの引け目を感じていた。幼少の頃からそんな親を見て『将来は情けない男とは結婚しない』という思いを幼いながらに抱かずにはいられなかった。母は強い人だった。厳しい人だった。けれど憧れの人だった。でも両親はもういない。三年前の事故で他界した。どうしてその日に限って一緒にいたかは未だにわからない。色んな陰謀説もささやかれたが両親は帰らぬ人になった。手元には莫大な遺産が残った。それを金の亡者から守るためにあらゆる勉強をした。その一環で受けたIS適正テストでA+が出た。そして第三世代装備ブルー・ティアーズの第一次運用試験者に選抜された。稼動データと戦闘経験値を得るために日本にやってきた。そして出会ってしまった…
織斑一夏と。理想の、強い瞳をした男と…
「織斑、一夏…」
その名前を口にしてみる。不思議と、胸が熱くなるのが自分でもわかった。どうしようもなくドキドキする。熱いのに甘く、切ないのに嬉しい。なんだろうこの気持ちは。意識すると途端に胸をいっぱいににする、この感情の奔流は。
知りたい…その向こう側にあるものを。知りたい。一夏のことを…そして小さい彼のことを…
最初は何とも思わなかった。今は母性本能を擽るというか、あの柔肌に触れてみたいというか…
「(わたくし色に染めてみたいですわね…)」
何だろう?じゅるり…という音が聞こえてきそうな感じがする。頬は緩み目は…箒と同様に逝っちゃているようだ。
「(明日からが楽しみですわね…)」
キラン!とセシリアの目が光った。その目は狩人のようだ。
ゾク!いちか君は身震いをした。
「ど、どうした、いちか?」
いちか君の様子が変なので心配する箒。
「よくはわからないけど、凄く怖い感じがした…」
「?」
いちか君はニュータイプに覚醒しつつあるようだ。
次回は鈴の登場です。鈴も逝っちゃいます。次回こそおバカな話をたくさん書くぞ~
では次回もよろしくお願いします!