仮面ライダー 〜0番目の疾風〜   作:Δデルタ

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やっと書き上げることが出来ました。いつもいつも遅れてすいません!それでは、あまりグダクダと前書きを書くのもアレなので、どうぞ!


第2話

リベンジショッカー基地

 

異様な空気が一面に満ちているこの基地の中で、一際広々としている空間。そこは中央にはレッドカーペットが敷かれており、それが続く先には豪華な装飾がなされた大きな椅子が設置されている。壁は全て黒と赤で塗られており、その中の一箇所だけ、大きな椅子が設置されている真上に十字架を背にした鷲の装飾がなされたエンブレムがはまっていた。その部屋に存在しているのはサイス、ドクター、大柄の筋肉隆々のサングラスの男性、大きな椅子に座っている白と黒の模様の仮面に黒のマントをつけた人物、そして酷くボロボロで明らかに重傷という言葉だけでは表現できない様子のスパイダーであった。

 

ドクター「まさか、微調整と身体への慣れのために外に出した筈なのに…」

?「軟弱、としか言いようがないな」

サイス「まあまあ、ドクターもフィストも落ち着いてください」

 

額を抑えて嘆くドクターと呆れかえっているフィストと呼ばれた男性をサイスは宥める。それにフィストは腕を組みながら言葉を返す。

 

フィスト「だが、こいつは手酷くやられてきた挙句におめおめと逃げ帰ってきた。それを軟弱と言わずなんという」

サイス「それも仕方ないことでしょう?だって…」

 

言葉の節々に苛立ちのような感情を見せながら言い放つフィストに、サイスは途中で言葉を切り、眼鏡を治す。

 

サイス「彼は仮面ライダーとの戦闘を考慮された個体ではないのですから」

 

サイスが仮面ライダー、という言葉を口にした瞬間どこか緩んでいた空気が凍りつく。その言葉にフィストは目を細める。

 

フィスト「その報告は事前に聞いているが、本当に仮面ライダーなのか?」

サイス「それはスパイダーの証言に基づくものなので、なんとも。だから、今ここに連れてきているのですよ」

 

サイスはそう言いながらスパイダーのほうを見る。スパイダーはボロボロの体でうつむいてばかりだった。それに構わず、サイスはスパイダーに話しかける。

 

サイス「どうなんです?本当に仮面ライダーなんでしたか?」

スパイダー「俺にインプットされた記憶にはないライダーだが…あの姿にあのベルト!間違いない、奴は仮面ライダーだ‼︎」

 

サイスの問いにスパイダーは声を大にして叫ぶ。その脳裏には、自分を圧倒し暗闇に悠然と立つライダーの姿が思い浮かぶ。その様子にサイスは、ふむ、といいながら考え込む。だが、やがて顔を上げ、ドクターに提案を持ちかける。

 

サイス「ドクター、先日に言っていたアレを試してみては如何ですか?」

ドクター「前にも言ったけどアレはまだ実戦に使用出来得るものかは分からないわ。それをいきなり…」

サイス「とは言うものの、何時までも使わないのはあまりに勿体無い。いつかは実用テストをする必要があります。それが少し早まるだけでしょう?」

 

サイスはスパイダーの方を見ながらドクターにそう言う。それを見て、何が言いたいのかを察したドクターはため息をつく。

 

ドクター「…あなたって私たちの中で一番えげつないこと考えるわよね?死にかけで帰ってきた奴をまだ完成していない技術で強化改造しようなんて」

サイス「人聞きの悪いことを言わないでくださいよ〜。ただ、私はこのままではスパイダーの気が収まらないということで彼にチャンスをあげようとしてるだけです。謂わば、恩情です」

 

何が恩情だ。この技術を一刻も早く完成させたいだけのくせに、と思いながらドクターは強化改造のプランを練る。それを見て満足したサイスはフィストの方を向く。

 

フィスト「サイス、俺が見てきてやろうか?その仮面ライダー」

サイス「見てきてやろうか、じゃないでしょう。そのライダーと戦いたいだけでしょうに」

フィスト「それのどこがいけない?」

サイス「大問題です。別に勝てる勝てないというのではなく、いま幹部であるあなたが出て行ってライダーにその存在を知られると後々厄介なことになります。確実に始末できる保証もないでしょう?」

 

フィストはサイスになお反論しようとしたが、そこで初めて白い仮面の人物が口を開いた。その声はボイスチェンジャーを通したような声だった。

 

?「そこまでだ。何時までも此処で話していても仕方がない」

フィスト「悪魔大使。だが…」

悪魔大使「サイスの言うとおりだ。いま幹部である我々が動くのは得策ではない。まだ姿は現すな」

フィスト「…仕方ないな。だが、何時までも偉そうにできると思うなよ?その席はいずれ俺がいただく!」

サイス「フィスト!」

 

フィストの言葉にサイスは声を荒げる。だが、悪魔大使は視線でサイスを静止させると愉快そうな口調になる。

 

悪魔大使「我は一向に構わんぞ。奪えるものなら奪ってみるがよい!我がリベンジショッカーの幹部なのだ。それくらいの気概がなければなぁ」

フィスト「ちっ!相変わらずやりづらい奴だ」

 

ハッハッハッ!と笑う悪魔大使に不気味さを感じながら、フィストは舌打ちをすると踵を返して出口に向かっていく。それを見届けると悪魔大使は残った2人に指示を下す。

 

悪魔大使「では、ドクターはスパイダーの治療と強化手術。サイスはライダーの情報の収集だ。分かってると思うがライダーに存在を…」

サイス「感づかれるな、ですよね?分かってますよ。では」

 

そう言うとサイスとドクターはスパイダーを引きずりながら去っていく。悪魔大使はその姿が見えなくなるまでじっと見つめていた。そして、2人が消えたあと、突然あたりの空気が震えそうな声が部屋全体に響いた。

 

?「手筈はどうだ?悪魔大使」

悪魔大使「大首領」

 

その声は壁に掛けてある鷲のエンブレムから発せられていた。

 

悪魔大使「実はそれについて問題が」

大首領「何?」

悪魔大使「新たな仮面ライダーが現れました」

大首領「…そうか」

 

大首領は悪魔大使の言葉に少し間を空けて返答をする。その予想と異なった反応の大首領に軽く疑問を抱く悪魔大使だったが、次の大首領の声を聞いた瞬間その疑問は吹き飛んだ。

 

大首領「悪魔大使。お前が今するべきことは何か…分かっているな?」

悪魔大使「…仮面ライダーの抹殺、ですね?」

大首領「そうだ。これまで散々我の邪魔をしてくれたライダーども。それと同じ者が現れた以上放っておけん。絶対に始末するのだ‼︎」

悪魔大使「はい、必ずや!」

 

大首領の怨嗟と憎しみに満ちた声を聞きながら、悪魔大使は、大首領のライダーに対する負の感情が増幅していると実感した。悪魔大使の頼もしい声を聞いた大首領は聞くだけで心の底から震え上がるような恐怖を持った笑い声をあげていた。

 

 

翔也宅

 

翔也「う、うん…?」

 

翔也は部屋に鳴り響く目覚まし時計の音で目を覚ます。まだ少しぼーっとしている状態で何とか目覚まし時計を止めると完全に目が覚める。そして、昨夜の事を全て思い出す。

 

翔也「っ!そ、そうだ!昨日は確か…。でも、なんで僕は家で寝てるんだ?」

 

1人でパニックになりかけながら昨夜のことを考える。翔也が覚えているのは怪物が逃げだした所までで、その後に気絶してしまった筈。じゃあ、どうして自分は家のベッドで寝ているのか?そこまで考えたところで1つの可能性を見つけた。

 

翔也「もしかして…源くん?」

 

可能性としてはそれが一番高いと思ったが、それと同時に昨夜の零士の姿について思い出した。暗闇の中で見えにくかったものの、あの仮面にマフラー、ベルトに加えて怪人が叫んだ言葉。

 

翔也「仮面ライダー…本当にいたんだ」

 

翔也は仮面ライダーという言葉で幼い頃の両親との思い出が蘇る。その時に聞かせてもらった話を思い出しながらベッドから出て支度を始めた。

 

 

やがて、支度を終えた翔也はリビングに行き、扉を開ける。そこには既に朝食の準備を完了している宏哉がいた。宏哉は翔也の姿を見ると笑顔で挨拶する。翔也も挨拶を返す。

 

宏哉「おはよう」

翔也「おはよう。なんか今日は準備が早いね」

宏哉「うん。これからまた仕事に戻らなくちゃいけなくてね」

翔也「また?ここ最近、そればっかじゃない?」

 

宏哉の言葉に翔也は驚きながら、そう言う。事実、宏哉はここのところ仕事漬けで家にいることの方が少ないくらいだった。それを心配した翔也が大丈夫なのか、と言っても宏哉は大丈夫だよ、と笑いながら返すので翔也も引き下がるしかなかった。

 

翔也「でも、宏哉叔父さんの仕事って確か学者だったよね?何の分野の研究してるの?」

宏哉「色々だよ。脳科学やら生化学やらね。数えた事はないからどれだけの分野をやってるのかは自分でも分からないんだけど。まあでも、ここまで色々なのに手を出してる人は中々居ないんだけどね」

翔也「でも、そんなに沢山の分野を一片にやってるって事は、やっぱり宏哉叔父さんって凄いなぁ!」

宏哉「ははっ、そんなこと無いさ。ただ、僕が変わってるってだけだよ」

 

そう軽い調子で言うが、翔也からしたら凄いことには変わりなかった。両親からも昔から宏哉はすごい学者なのだと聞かされていた翔也にとっては、宏哉は憧れであり、尊敬している人である。そんな話をしていると宏哉が時計を見て、少し急ぎだす。

 

宏哉「おっと、もうこんな時間か。そろそろ急がなくちゃ」

翔也「あっ、僕もだ」

 

2人は急いで朝食をとり、身支度を整えると家を出る。その時に翔也は一つ疑問に思っていたことを宏哉に尋ねる。

 

翔也「ねえ。宏哉叔父さんが昨日帰ってきたとき、僕ってどうしてた?」

宏哉「ん?いや、もう自分の部屋で寝てたけど…どうして?」

翔也「いや、なんでもないよ。じゃ、行ってきます!」

 

宏哉はその質問に疑問に思いながらも答える。それを聞いた翔也は宏哉に背を向けて走り出す。その背中を見つめる宏哉。その瞳はどこか悲しげなものがあった。

 

宏哉「…どうして、あの子が…!」

 

宏哉は翔也とは逆の方を向き、目的地に向かって歩き出す。そして、その手は何かに対しての憤りを堪えるかのように強く握られていた。

 

 

学校

 

将司「あいつ、すげぇよな〜」

翔也「あいつって…ああ、源くんか」

 

授業が終わり、放課時間中に唐突に将司が言った言葉に、翔也は最初は訳がわからなかったが、将司が顔を向けている方向を見て理解した。そこには2、3人の女子生徒と会話している零士がいた。

 

翔也「転校してまだ2日目だってのに、すごい人気だよね」

将司「主に女子からな。やっぱ、イケメンは違うわ〜」

翔也「でも、それだけじゃないみたいだよ。何か聞いた話によると源くんの雰囲気も理由の一つらしいよ」

将司「あ〜、成る程。確かに、何かミステリアスな雰囲気が漂ってて、どこか大人っぽい感じもするしな。本当に俺らと同年代なのな疑うレベルだわ」

 

そんな調子で話していると教室のドアが開かれ、担任教師が現れる。その顔を見てみると何やら怒り気味の表情だった。何に怒ってるのか考えながら隣の将司の方を見ると、引きつった表情で冷や汗がダラダラと流れていた。それを見て翔也は将司が原因であろうことを察した。

 

翔也「一体何したのさ」

将司「い、いや〜。ちょっと…昨日の補習サボっただけだ、うん」

翔也「いや、うんじゃないよ。なんでそんな馬鹿なことしたんだよ」

 

翔也が思わず呆れ顔になる。ただでさえ補習で居残りをくらっていたのに、何故それをサボるという愚行に走ったのか。翔也の表情からはそういったものが読み取れた。それに対し、将司は必死になりながら言い訳をする。

 

将司「だってよ、昨日の補習中に唐突にスイーツのアイデアが浮かんでよ。こうしちゃいられないと思って、先生の隙をついて急いで帰ったわけだ」

翔也「全面的に将司が悪いじゃないか。怒られてきなよ」

 

将司の言い訳にもなっていない言い訳にさらに呆れる翔也。フォローの余地もなかったので思わずつきはなす。将司はそれでも翔也に言い訳を言おうとするも、その前に担任教師の声が響く。

 

担任教師「後藤、わざわざ言わんと分からないか?」

将司「はい、ただいま行かせていただきます‼︎」

 

担任教師の怒気を含んだ声と威圧感にコンマ数秒で反応するとダッシュで向かう将司。そして、そのまま連行されていった。

 

零士「何故、あいつは先生に連れて行かれたんだ?」

翔也「へっ?…って、うわぁっ!み、源君⁉︎」

 

翔也が気がつくとすぐ隣に零士がいて、自分に向かって話しかけていた。さっきまで向こうに居たはずの零士が急に現れたことについ少々オーバーな反応を返してしまう。だが、零士がそれを気にする様子はなかったので翔也はほっとする。

 

零士「あいつは何故先生に連れて行かれたんだ?」

翔也「将司のこと?昨日、居残りの補習を途中で抜け出して帰ったんだ。それで、さっき呼ばれたわけ」

零士「成る程」

 

翔也は、目の前の納得するように頷く零士を見ながら昨夜のことを思い出す。今朝からあまりにも平和で何事もなく時間が過ぎていたので、つい夢か何かかと思ってしまうが、昨夜のは間違いなく現実だ。そして、目の前の零士はそんな非日常の存在なのだろうか。だが、いくら考えても何も分からない。流石に将司や宏哉にも相談できるような事でもないので、結局はどうしようもなかった。そんな翔也の様子に疑問を持ったのか、零士が尋ねてくる。

 

零士「どうかしたのか?」

翔也「え?どうかしたって…?」

零士「なにか深く考え事をしているようだったから気になった」

翔也「そう…」

 

翔也はそこで思う。昨夜のこと、零士なら何か知ってるのではないか。あの蜘蛛の怪物と戦っていたのだ、何か関係性があるのかと。そう考えた翔也は零士に1つの提案をする。

 

翔也「ねぇ、源くん。今日さ、学校終わった後に時間ある?」

零士「時間ならあるが、どうしてだ?」

翔也「昨日のことを聞きたいんだ」

 

翔也がそう言うと、零士の雰囲気が変わった。今までの何処か掴みきれない不思議な雰囲気とは一転して、まるで研ぎ澄まされた日本刀のような鋭い雰囲気を放つ。その変化と迫力に呑まれてしまう翔也だったが、零士は再び元の雰囲気に戻り、口を開く。

 

零士「分かった。学校が終わった後だな?」

翔也「あ…う、うん」

 

先程の事から抜け出せきれてない翔也が辛うじて返事をすると、ちょうど放課時間の終わりのチャイムが鳴る。それを聞いた零士は翔也の目の前から自らの席に座る。何とか落ち着くことができた翔也は少しホッとしながら隣の零士を見る。零士は次の授業の用意を済ませて、前を向いていた。その姿を見ながら再び今朝の疑問が湧き上がってきた。源零士とは一体何者なのかと…。

 

 

放課後

 

授業が終わり、皆が部活動などに向かおうとする中、翔也は零士に声をかける。

 

翔也「源くん。準備できてる?」

零士「ああ、出来ている」

翔也「じゃあ、行こうか」

零士「分かった。だが、今日は後藤はいいのか?」

翔也「将司は今日も補習だから」

 

将司は授業が始まってから少し経った後に真っ白に燃え尽きた様な状態で帰ってきた。その燃え尽き具合は翔也も含めて誰一人として話しかけることすら憚られる程だった。そして、今日1日はその状態で授業が終わった後もフラフラとした足取りで補習に向かった。それを見たクラスメートは担任教師に言葉では言い尽くせない恐怖を抱くのだった。

 

零士「そうか。ところで、どこで話すんだ?」

翔也「外だとこんなこと話し辛いし、僕の家に行こうよ」

零士「分かった」

 

そう言うと零士はカバンを持って立ち上がる。それを見た翔也も自分のカバンを持つと立ち上がって、歩き出す。勿論、零士と一緒にいるということでクラスや廊下などで翔也も注目されたのは言うまでもない。

 

翔也「…」

零士「…」

 

共に校門をでた2人だったが、話が続かずに非常に気まずい空気となっていた。零士は口数は多い方ではなく、むしろ少ない方だろう。翔也は決してそう言う訳ではないが、相手が零士なだけに何を話して良いか分からず、結果としてお互いにだんまりという状態になっていた。だが、流石にいつまでもこんな風ではまずいと思った翔也は何とか会話を繋げようと試みる。

 

翔也「えっと…源くんってさ、普段は家で何してるの?」

零士「本を読んでいるくらいだ」

翔也「どんな本なの?小説とか?」

零士「いや、そう言うものではない。例えば…」

 

零士の口から出た本の名前は翔也からしてみれば全く聞いたことがないものだったが、タイトルだけで明らかに普通の高校生が読めるような本ではないことは分かった。

 

翔也「(やっぱり、源くんって分からないな…)」

 

翔也はそんなことを思いながら自分の家へと歩みを進めた。

 

 

翔也の家

 

翔也「さ、源くん。入って」

零士「ああ」

 

自分の家に到着した翔也は零士を家の中に招き入れ、リビングの椅子へと座ってもらう。翔也は冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップへと注ぐ。そして、それを2つ持ってテーブルへ行き、自身も椅子に座る。しかし、零士は麦茶に一切手を出さず、いきなり本題を切り出す。

 

零士「それで、聞きたいこととは何だ?」

翔也「えっと…」

 

零士があまりに急に話を始めてきたので、少し動揺してしまう。だが、すぐに落ち着きを取り戻すと、零士を正面から見据える。そして、本題の話をきりだす。

 

翔也「源くんって、何者なの?」

零士「…」

 

翔也の問いに黙り込む零士。あたりが緊迫して、大して暑くもない筈なのに翔也の顔には汗が浮かぶ。それから暫く口を開かなかった零士だったが、唐突に口を開いた。その言葉は翔也を驚かせるには十分だった。

 

零士「…分からない」

翔也「えっ…分から、ない?」

零士「ああ、そうだ」

翔也「それって、どういうこと…?」

零士「言葉通りの意味だ。俺には過去の記憶が一切ない」

 

翔也のさらなる問いかけに、零士は自分に記憶がないことを話す。それを聞いた翔也は重ねて質問する。

 

翔也「じゃ、じゃあ!昨日の奴の事も…」

零士「ああ、何も分からない」

翔也「そう、なんだ…」

 

零士の話を聞いた翔也は内心、肩を落とす。何か分かるかもという淡い期待が一瞬で砕かれてしまっては無理もなかった。そこで、今度は昨夜の零士のあの姿(・・・)について尋ねることにした。

 

翔也「じゃあさ!昨日の夜のあの姿…源くんって仮面ライダーなの?」

零士「仮面ライダー?」

 

翔也の言葉に零士は仮面ライダーという単語を反復しながら首を傾げる。そして、今度は零士から翔也に対して質問する。

 

零士「仮面ライダー、とは何だ?」

翔也「え、知らないの?」

零士「ああ」

翔也「で、でも!昨日のあの姿…」

零士「あれは偶然なっただけだ。どうやってなったのか、どうしてなれるのかも全く分からない」

 

零士の答えに思わず呆然となる翔也だったが、零士はそれに構うことなく話を続ける。

 

零士「それで、仮面ライダーとは何だ?昨日のあいつもそんなことを言っていたが」

翔也「え、えっと…僕のお父さんとお母さんが昔、聞かせてくれた話なんだけど。いつかはわからないけど、ずっと昔に悪の秘密結社と、それと戦ってた人がいたんだって。その秘密結社には沢山の怪人がいて、その人も元は沢山の怪人の中の1人だったんだ」

零士「と言うことは、その組織を裏切ったのか?」

翔也「うん。その人は体は怪人でも正義の心を持ってたんだ。そして、その組織から人間の自由と平和を守るために悪の組織の怪人から正義の戦士に変身(・・)して、戦ったんだ」

零士「変身…か」

 

翔也の話を聞いた零士は小さく呟いた。一方、翔也はかつて両親が自分にこの話をしてくれた時のことを思い出し、懐かしんでいた。だが、我にかけると何か考えているような零士に話しかける。

 

翔也「だから、その時に聞いた姿に源くんのあの姿が似てて。それで、そうなんじゃないかなって思ってさ」

零士「…悪いが、俺はそんな立派な存在ではない。何も記憶がない、ただの空っぽな存在だ」

 

そう言う零士の姿はどこか哀しげだった。そして、自分よりも大きいはずのその身体が酷く小さく、寂しげに見えた。まるで、膝を抱えた小さな子供のような。顔は変わらず無表情なのに、そんな印象を受けた。そこまで思って翔也は気付いた。

 

翔也「(もしかして…記憶がないから、自分が誰なのかわからないから、自信がもてないのか。自分に自信がもてなくて…)」

 

そこまで考えた翔也は零士を改めて見る。その姿は自分よりも強いというのに、見ていられないほど弱々しかった。それを見た翔也は、零士を放ってはおけなくなった。

 

翔也「…そんな事ないよ」

零士「なに?」

翔也「源くんは空っぽなんかじゃないよ」

 

それを聞いた零士はどこか驚いたような様子だった。それは翔也が初めて見た零士の人間らしい仕草だった。そんな零士をよそに翔也は続ける。

 

零士「だが、俺には何も分からない。自分のことも、何も…。そんな俺に何がある?」

翔也「…心」

零士「何?」

 

翔也の言葉に零士は不思議そうにそう言った。零士自身、目の前の翔也が何を言っているのか分からなかった。

 

翔也「源くんは優しい心をもってるよ」

零士「俺にそんなものは…」

翔也「じゃあ、何で昨日僕を助けてくれたの?わざわざ危険を冒してまで」

 

その言葉にすぐに返すことは零士には出来なかった。なんで助けたのか、それは零士自身にも分かっていなかった。必死に言葉を探す零士の脳裏にある一言が浮かんだ。

 

零士「分からないが、ただ…気が付いたら、そうしていた」

翔也「そうなんだ」

 

この一言を聞いた瞬間、翔也は零士の人間性を垣間見た。きっと、本当の零士は優しい…否、優しすぎるのだろう。記憶を失っても、本当の自分を喪失しても尚、無意識に人を助けようとしてしまう。翔也はそう思った。その時、零士が徐に席を立った。

 

零士「そろそろ帰る」

翔也「そう。玄関まで送るよ」

 

零士と翔也はリビングを出て玄関に向かう。そして、翔也はあることを思い出した。

 

翔也「ああ、ちょっと待って!」

零士「何だ?」

 

今にも玄関を出ようとしていた零士を引き止める。そして、振り返った零士にあることを言う。

 

翔也「言い忘れてたけど…昨日はありがとう。助けてくれて」

零士「…ああ」

 

零士は短くそう言うと、扉を開けて外に出て行った。なんだか分からないものを胸の中に感じながら。

 

 

リベンジショッカー基地

 

ドクター「ふぅ〜、ざっとこんなものかしらね。後は、実戦だけかしら」

 

基地内のある一室、ドクターの研究室兼改造手術室ではドクターが椅子にもたれかかりながら疲労した様子を見せていた。そこに、ドアを開けてサイスが入ってくる。

 

サイス「どうやら、完成したみたいですね。どうです?出来の方は」

ドクター「そうね。現段階でやれるだけやったわ。ま、あくまで試験的なものだからどこまでのものかははっきりとは言えないわ」

サイス「今はそれで十分です。それで、スパイダーは?」

ドクター「悪魔大使の許可を得て、もう行ったわ。戦闘員を何人か引き連れて」

 

サイスはドクターの言葉を聞くと、自分も現場に向かおうと部屋を出て行こうとする。が、何か思い出したのか踵を返して再びドクターに話しかける。

 

サイス「そう言えば、ドクターは行かないのですか?」

ドクター「勿論、行くわよ。何せ新技術を使った初の怪人なんだから。それに…」

 

サイスの言葉を受けたドクターは椅子から立ち上がる。そして、その顔には美しくも、冷酷な笑みがあった。

 

ドクター「噂の仮面ライダーを見に行かなくちゃね」

 

そう言うとサイスとドクターは部屋を出ると外へと向かって、消えていった。

 

 

 

次の朝、翔也と宏哉は早朝にも拘らず家を出た。その理由というのは…

 

翔也「まさか、朝ごはんを作る材料がないなんて…。仕方ないか…材料は昼前に買ってくるとして、朝ごはんだけでもコンビニで何か買ってこよう」

宏哉「今日が学校休みの日でよかったね」

翔也「宏哉おじさんもね。それにしても宏哉おじさんの休みなんて久しぶりじゃない?」

宏哉「確かに、そうだね。最近、忙しかったからな〜」

 

そんな風に談笑していると、目的地のコンビニが目の前に見えてきた。だが、翔也は暫くするとおかしな違和感を覚え始めた。

 

翔也「ねぇ、宏哉おじさん。なんだか変じゃない?あのコンビニ」

宏哉「そうかな?何時も通りだと思うけど、なんでだい?」

 

宏哉は翔也の言葉に疑問を覚えながらも、逆に問い返す。翔也はそれに困ったような様子を見せながら、答えていく。

 

翔也「なんでって聞かれると困るんだけど…本当になんとなくそんな気がするというか…」

宏哉「う〜ん、わからないな。じゃあ、さっさと買って、さっさと帰ろうか」

 

宏哉がそう言うと2人はコンビの中へと入っていく。周りに客は誰一人としていなかったが、時間が時間なのでそんなもんだろうと考えると、そこからは考えなかった。2人はさっさと弁当を2つ買い物カゴの中に入れると、レジに向かう。しかし、レジには誰も居ない。不思議に思いながらも、宏哉は店員を呼ぶ。

 

宏哉「すいません!会計をお願いしたいんですけど!」

 

宏哉が大声でそう言うと、奥から1人の男性が出てくる。だが、その様子は明らかにおかしかった。猫背で手はだらんと力ない様子で、帽子を深くかぶり顔を俯かせていて表情は何も分からない。更に、歩き方も何やらフラフラとおぼつかなく、まるで操り人形のようだった。

 

宏哉「あの、会計…」

店員「…」

 

その店員は宏哉がいくら声を掛けても全く反応せず、そこから微動だにしない。これに2人は不気味なものを感じて早く離れたかったが、金を払わずに去るわけにもいかない。意を決して更に宏哉が声をかけようとした時、その店員が急に後ろに倒れた。それを見た2人は慌てて寄ろうとしたが、その顔を見た瞬間に驚愕のあまり固まってしまった。

 

翔也「こ、これ…」

宏哉「そんな…死ん、でる…!」

 

驚きに固まった2人だったが、これはただごとではない事を感じてすぐに警察と救急車を呼ぼうと携帯に手をかけたところで、何者かの笑い声のようなものが聞こえてくる。声は聞こえるが姿は見えない。その異常な事態に宏哉は翔也を連れて逃げようとする。

 

宏哉「ここは危険だ!逃げよう!」

翔也「う、うん!」

会社員風の男「まあまあ、そんなに慌てなくても」

宏哉、翔也「⁉︎」

 

逃げようとする2人の背後から、声をかけられた。それに反射的に振り向くと、そこには天井から蜘蛛糸で逆さにぶら下がるスパイダーの人間態である会社員風の男の姿があった。それに2人は、特に翔也は目を見開く。

 

翔也「お前は‼︎」

会社員風の男「昨日ぶりだな」

翔也「何で、こんな所に…」

 

翔也のその問いにその男は不気味に笑うと、殺気と狂気を2人にぶつける。その様に思わず2人は一歩後ろに下がる。それを見ると男は口を開く。

 

会社員風の男「なに。昨日の雪辱をはらすために奴を殺しに来たんだが、まずは目撃者である貴様を殺しておこうと思っただけだ」

宏哉「翔也くん、走って!」

 

その言葉とともに翔也と宏哉はコンビニを飛び出して、少しでも遠ざかろうと走っていく。それを追おうともせず、その男は変わらずそのままだった。

 

会社員風の男「気の済むまで足掻けばいいさ。足掻いたところで、我々からは逃げられん」

 

男から逃げるために走っていた宏哉はあることを思い出して、携帯を取り出す。そして、電話帳から目当ての名前を探し出すと、すぐにかける。その間も翔也も宏哉も足は止めない。少しすると、その人物が電話に出たようで、途端に宏哉は話し出す。

 

宏哉「もしもし!僕だ!実は今、君が昨日言ってた奴に追われていて…助けてくれ!場所は…」

 

宏哉が自分たちの現在地を教えていると、突然2人の前に何か黒い影が現れる。それは目と鼻と口だけを露出した黒タイツで前面に骨の模様が入っており、腰には十字架を背負った鷲のエンブレムをつけた戦闘員だった。その手にはククリ刀やナイフ、サーベルや手斧をもっており、2人の周りを取り囲む。

 

戦闘員達「イーッ!」

会社員風の男「残念だったな、鬼ごっこは終わりだ」

 

戦闘員達の後ろから男が来る。男は2人を見下すように笑うと、戦闘員の1人に命令を出す。それを受けた戦闘員は手にしたナイフを振り下ろす。

 

翔也「うわっ⁉︎」

宏哉「くうっ⁉︎」

 

2人はそれを何とか間一髪で躱すが、躱したところを別の戦闘員に蹴られる。それによって2人は戦闘員達の輪の中から離れた所に吹き飛ぶ。すでに2人にそこから逃げ出すだけの気力も体力も残っていなかった。男は倒れている翔也の首を掴むと、その手に力を込めていく。

 

翔也「がはっ!くっ、うぅ…」

宏哉「翔、也く、ん…」

会社員風の男「終わりだ」

 

もう駄目だと思われたその時、男と翔也の間に何者かが飛び出し、男を殴って無理やりその手を離させた。そして、男の手が離れたことで落下していく翔也を受け止めた。翔也は何とか顔を上げて、その人物を見る。

 

翔也「みな、もとくん…」

零士「間に合ったか」

宏哉「よかった、来てくれて…!」

 

翔也と宏哉がまだ生きていることを確認した零士はそう言うと、翔也を静かに下ろす。そこへ少し体を引きずりながらも宏哉が近づいて来る。

 

宏哉「翔也くん、大丈夫かい!」

翔也「宏哉おじさん…」

零士「大丈夫だ、息はある。意識も残っているから、何とか大丈夫だ」

宏哉「よかった…本当によかった…!」

 

零士が宏哉に翔也の無事を伝えると、宏哉は泣きながら無事を喜ぶ。それを見た零士は後ろを向く。そこには先ほど殴られた男が何事もなかったように立ち上がっていた。前回よりも効いていない様子の男に少し警戒度を上げる。

 

会社員風の男「まさか、そっちから出てきてくれるとは。探す手間が省けた」

零士「俺を探してたのか?」

会社員風の男「当然だ!昨日の屈辱を晴らすために、俺は生まれ変わったのだ!」

 

零士が聞くと男は、その殺気を隠そうともせず、零士にぶつける。だが、零士はそれを受けても何の反応も起こさない。それを見た男は突然、殺気を抑えて零士に語りかけた。

 

会社員風の男「貴様は強い。それは俺でも十分に理解している。だが、俺はもう今までの俺とは訳が違う。いくら貴様でも嬲り殺されるのがオチだ。そこでだ」

 

男はそこで一旦区切ると、再び口を開く。

 

会社員風の男「貴様、我らの一員になる気はないか?」

零士「何?」

 

男の急な提案に零士は疑問に思う。その疑問を知ってか知らずか男は言葉を続ける。

 

会社員風の男「元より俺が貴様と戦う理由は俺の個人的な復讐心しかない。そこでだ、貴様が我らの一員となるならば、俺は貴様を寛大な心で許そう。その力、我らのために捧げないか?」

零士「…」

翔也「源くん!」

宏哉「駄目だ!その言葉を聞いては…!」

会社員風の男「貴様らは黙っていろ‼︎」

 

男の言葉に黙ってしまう零士。それを見た2人は零士に声をかけようとするが、男に遮られてしまう。男は零士が迷っていると思い、更に続ける。

 

会社員風の男「それに貴様だって改造人間だ。そんな身体で普通に生きられるとでも思っているのか?無理だ!人間は自分たちと違うものは徹底的に排除する。そういう生き物だ。そんな中に貴様の居場所はない。どうだ?」

零士「俺には…記憶がない。だから、自分が何者かも、存在意義も、わからない」

 

男の言葉を受けた零士はぽつり、ぽつりと話し始める。それは昨日、翔也に言ったことと同じだった。

 

会社員風の男「ならば、ともに来い。貴様の居場所も存在意義も全て我らが与えるぞ」

零士「…」

会社員風の男「さあ!」

 

男は零士に向かって手を伸ばす。零士は何も言わないが、ゆっくりと男に近づいていく。それを見て翔也は不安に駆られる。だが、何も出来ない。それを見ていることしか出来なかった。そして、零士は男のすぐ傍まで来ると、手を差し出す。それを見た男はニヤリと笑いながら零士の手を握ろうとする。しかし、次の瞬間あたりにぱしんっ、という音が響く。

 

会社員風の男「…何の真似だ?」

零士「これが俺の答えだ」

会社員風の男「貴様、自分が今何をしたかわかっているのか?」

 

男は零士によって弾かれた右手の痛みに構うこともなく、零士を睨みつける。零士は、その視線にたじろぐことも無く、真正面から受け止める。

 

零士「ああ、分かってる」

会社員風の男「貴様、今俺と敵対するということは、これからも我々と敵対し続けるということになるぞ。それでもか!」

零士「ああ。それに、俺には記憶はないが…それでも、俺は空っぽではないと言ってくれた人もいる。だから、俺は今の俺であり続ける」

 

あと…、と言葉を切る零士。そして、今までは男の視線を受けるだけだった零士が、キッ!と男に睨み返す。それに思わずたじろぎ、男は一歩下がってしまう。それを見た零士は無表情に、だがその声には明確な意思を含ませ言い放つ。

 

零士「さっき、俺と貴様の戦う理由は貴様の復讐心だけだと言ったが…俺は違う。俺は、この2人を守る。そのために戦う。理由ならそれで十分だ」

 

それを聞いた翔也は、なんだか無性に嬉しくなった。最初こそ、まるで機械のようだと思っていたが、今は明らかに明確な意思を持っていた。それに、さっきの言葉に自分たちと男の間に立つ零士の頼もしい背中。その姿はまさしく…

 

翔也「仮面ライダー…」

男「ちっ!ならば、もういい。ここで死ねぇ‼︎」

 

そう言うと男の内側から真の姿であるスパイダーが現れる。しかし、その姿は以前とは変化していた。人型の蜘蛛のような姿は変わらないが、ところどころ機械のような装甲がみられ、チューブのようなもので肉体部分と繋がれている。更に、左手首から先は一本の鋭い爪状になっている。そして、最も大きな特徴は背中に生える巨大な6本の蜘蛛足だった。その先にも左手同様、鋭い爪状になっている。その以前とは違う姿となったスパイダー、メガ・スパイダー(以後、Mスパイダー)は空に向かって吼える。それを見た翔也が驚きの声を上げる。

 

翔也「前と姿が違う⁉︎」

Mスパイダー「言っただろう!俺は生まれ変わったと。さあ、ここで貴様らを皆殺しにしてくれるッ‼︎」

 

 

何処かのビルの屋上

 

零士たちがいる場所とはかなり離れているビルの屋上にいるドクターとサイスは、普通ならば見える筈のない件の現場の方向を見ている。その様子から、どうやらここから見えているようだった。真の姿を晒したMスパイダーを見たサイスはドクターに話しかける。

 

サイス「あれが、ドクターの考案した新世代型改造人間ですか?」

ドクター「ええ。と言っても、まだあれで完成というわけではないけど。それでも、以前までとは段違いよ」

 

サイスの問いに、ドクターはあくまで零士たちの方を見たまま答える。サイスも一度、そちらに顔を向けるが、すぐにドクターの方に戻す。

 

サイス「参考にしたのは、BADANの完全機械化の技術。パーフェクトサイボーグの技術だと聞いていたのですが、本当ですか?」

ドクター「確かに、これはパーフェクトサイボーグの技術を使ってるわよ。ただ、少し応用はしているけど」

サイス「応用ですか」

 

ええ、とドクターが答えると、サイスに説明を始める。

 

ドクター「パーフェクトサイボーグの技術は凄いわ。ただ全身を機械に置き換えるだけでなく、その上で高い性能を出せるように更に調整をしてる。これのおかげで全身改造にも拘らず定期的にメンテナンスする必要もない。これを考え出した科学者は天才ね。でも、それにも欠点が1つある」

サイス「欠点?」

ドクター「ええ、欠点よ。ほぼ唯一と言ってもいい。それはコストよ」

 

ドクターの言った言葉に、納得といった表情をするサイス。その様子を何となく察したドクターは言葉を続ける。

 

ドクター「全身改造なんて今の私達の技術でも、そう簡単に出来ることじゃない。それくらい馬鹿にならない費用がかかる。でも、パーフェクトサイボーグの戦闘能力は魅力的だった。だから、私はそれを応用して使う必要があった」

サイス「なるほど。で、その応用とは?」

ドクター「一部分のパーフェクトサイボーグ技術を使った改造に、それよる一部の能力の超特化」

 

サイスはそれを聞いた思わず首をかしげる。全身機械の身体とすることで元の性能を極限まで上げるのがパーフェクトサイボーグ。それなのに一部分だけでは普通の怪人と変わらないのでは、と。それを見たドクターは更に説明をする。

 

ドクター「さっきも言ったけど、パーフェクトサイボーグってのはただ単に身体を機械にしてるだけじゃないの。各部分から全体までのバランスを考えて、絶妙な改造を施す。それは他の改造技術とは一線を画すものであるのは間違いない。だから、その高等改造とも言える技術を一部に施すことで、それぞれの持つ特徴的な能力を更に特化させる。そうすることでコストを抑え、ある程度の量産性を確保する。元の性能ではパーフェクトサイボーグには劣るものの、それを越える量産性により数をそろえる。そうすれば結果的に戦力としてはパーフェクトサイボーグ以上のものとなる。これが私の考える新世代型改造人間」

ドクター「なるほど、流石ドクターです。ですが、よくもそんな高等改造なんて出来ましたね。今までの話から相当高い技術だと思いますが」

 

サイスがそう言うとドクターは笑みを浮かべて、自信満々に言う。

 

ドクター「私を誰だと思ってるのよ?」

サイス「確かに、そうでしたね」

ドクター「だけど、これの欠点としては怪人単体での基本性能はそこまで上がってる訳ではないことね。それでも、一部分の能力を超特化させてる分どうにもならない訳ではない。能力を使って、巧く戦い方を工夫すればの話だけど」

サイス「ほうほう、ん?…どうやらお互いに動き出すようですよ」

 

サイスがそう言うが、ドクターはさっきまで一度も視線を外してないので不必要な注意だった。それを見たサイスは少し呆れながら顔を向ける。

 

 

 

Mスパイダー「シャアァ!」

零士「!」

 

Mスパイダーは口から蜘蛛糸を放つ。零士はそれを避けると、後ろに跳んで一旦距離を取る。Mスパイダーも、それ以上の追撃はせずに様子を伺う。

 

Mスパイダー「貴様も変わったらどうだ?あの姿に!」

零士「…」

 

Mスパイダーの言葉に零士は悩む。戦うとはいったものの、今のままでは勝つことは難しいだろう。だが、あの姿に変わる方法が全く分からない。そのまま沈黙を保っていると、しびれを切らしたMスパイダーが叫ぶ。

 

Mスパイダー「どうした!変わらないのか‼︎」

零士「くっ…」

 

いつでも動けるように警戒しながら、しかし頭はどうすればいいかということを必死に考える。そして、とうとう思いつかず、このまま戦おうとする。だが、その時うしろから翔也と宏哉の声が聞こえてくる。その声に2人の方を向く。

 

翔也「大丈夫だよ。零士くんは仮面ライダーだから、自分を信じるんだ!」

宏哉「そうだ。恐らく君はもうその答えを持ってる筈さ。後は、今の君次第だよ!」

零士「俺、次第…」

 

その言葉に零士は自分の両手を見つめる。そして、両の手を握りこむと、今度は目を瞑る。その行為にMスパイダーは訝しむが、それに構わず続ける。それを続けると、その場に一陣の風が吹く。そして、零士はゆっくりと目を開く。風でたなびく上着から見える、腰に巻かれたソレを見てMスパイダーは声を上げる。

 

Mスパイダー「貴様、そのベルトは…!」

零士「…行くぞ」

 

腰にベルト、タイフーン・ゼロを巻いた零士は短くそう言うと、遂に動き出す。右手を左腰の辺りに、左手を右斜め上に真っ直ぐ伸ばす。そして、左手を左斜め上に向かって大きく回しながら右手を右腰のあたりに持ってくる。そして、昨日翔也から聞いた話の中で特に印象に残った、ある言葉(・・・・)を口にする。

 

零士「変、身」

 

そう言うと左手は左腰に、そして右手を勢いよく左斜め上に伸ばす。すると、腰のタイフーン・ゼロの風車が回転を始める。その回転はどんどん勢いを増し、風車ではなく真っ赤な円のように見えてくる。次の瞬間、零士は空高くに跳び上がった。その際に発生する風圧をタイフーン・ゼロは吸収し、エネルギーに変換する。零士はその中で自分の身体が鋼の肉体へと変わるのを確かに感じながら、その頭が髑髏のような、バッタのような仮面に覆われる。そして、空中で一回転して着地する。その場が静寂に包まれる。零士は右手を左腰に、左手を右斜め上に伸ばした構えを取る。

 

翔也「仮面ライダー‼︎」

宏哉「やった‼︎」

 

翔也と宏哉は零士否、仮面ライダーの姿に歓声を上げる。一方、Mスパイダーはライダーを睨みつけながら戦闘員たちに命令を下す。

 

Mスパイダー「やっと変わったなライダー。行けぇ、戦闘員共!」

戦闘員たち「イーッ!」

 

戦闘員たちは各々の武器を構えながら、一斉に向かってくる。だが、ライダーはゆっくり、ゆっくりと歩きながら近づいていく。そして、1人の戦闘員とライダーが接触し、戦闘員が攻撃しようとナイフを振り上げた瞬間…

 

ライダー「ハッ!」

戦闘員「イーッ⁉︎」

 

次の瞬間、戦闘員はライダーの拳によって空中へと舞い上がっていた。そして、無防備に地面に落下して、そのまま動かなくなった。それでも尚、戦闘員は向かってくる。ライダーはそれらの攻撃を右に左に躱しながら、拳や蹴りを的確に戦闘員たちに叩き込んでいく。だが、それでもまだかなりの数が残っているのを見たライダーは近くにいた戦闘員を倒し、その手に持っていた武器である六尺ほどの銀色の棒を奪い取ると、それを構える。

 

ライダー「フンッ!」

戦闘員「イーッ‼︎」

 

正面から近づいてきた奴に突きを繰り出し、吹き飛ばす。そして、そのまま自身を取り囲んでいる敵を薙ぎはらう。だが、その後の一瞬の硬直をついて前後から戦闘員が飛びかかってくる。すると、ライダーは素早く棒を手放すと前の敵の足下を攻撃し、バランスを崩させそのまま落下させる。後ろの敵には回し蹴りを当てて吹き飛ばす。その後、まだ地面に落下していない棒を手に取ると、前で落下した戦闘員に棒を突き立て止めをさす。

 

Mスパイダー「シャアアアッ‼︎」

ライダー「!」

 

戦闘員が全て倒されたのを見たMスパイダーはライダーに向かって、その手と背中の蜘蛛足の計8本の手足を振り上げながら向かってくる。

 

Mスパイダー「喰らえっ!」

ライダー「フッ!」

 

Mスパイダーの左手の爪を棒で弾く。だが、まだ背中の6本の足で攻めてくる。6本それぞれが別の動きをして、変幻自在な攻撃を繰り出してくるMスパイダー。それをライダーは巧みな棒捌きで全て攻撃を受け流していく。そして、一瞬の隙を見つけたライダーは容赦なく、その身体に打ち込む。

 

Mスパイダー「グオォ⁉︎ク…貴様あぁぁ‼︎」

 

Mスパイダーは、その威力と衝撃に身体をくの字に曲げる。だが、その直後凄まじい怒気を放ちながら、左手の爪を振り回す。

 

ライダー「何⁉︎」

Mスパイダー「シャアァッ!」

ライダー「ぐぁっ!」

 

振り回される爪を棒で受け止めようとしたライダーだったが、Mスパイダーはその棒を真っ二つに切断した。そして、驚くライダーに連続で攻撃を与えていく。このままではまずいと感じたライダーは、Mスパイダーの身体を蹴りつけて、その勢いでバク宙しながら距離を取る。ライダーは自分の持っている棒の鏡のような切断面を見る。それを見るだけであの爪の威力は伺い知ることができる。ライダーは棒の残骸を投げ捨てると拳を構える。

 

Mスパイダー「次は貴様を真っ二つにしてやるわっ‼︎」

ライダー「…出来るかな」

Mスパイダー「いちいち癪にさわる奴め。これならどうだ!」

 

すると、Mスパイダーは口からの蜘蛛糸をライダーに飛ばす。だが、既にそれを見切っているライダーは軽く動くだけで躱してみせる。その糸はライダーの後ろの壁に付着する。だが、Mスパイダーの真の目的は別のことだった。Mスパイダーはそのまま糸を巻き取りながら加速していき、ライダーへと突貫する。驚くライダーだったが、何とか真正面からそれを受け止め切る。そして、その顔面に鉄拳を振り下ろそうとする。だが、何もしないMスパイダーではなかった。

 

Mスパイダー「かかったな、ライダー!」

ライダー「⁉︎」

 

何とMスパイダーは背中の蜘蛛足からも糸を放ってきた。それを躱せなかったライダーはその右手を糸で縛られ、更に糸で地面と繋げて固定される。Mスパイダーはライダーから離れる。

 

ライダー「くっ、外せない」

Mスパイダー「無駄だ。その糸は前回とは強度、長さ、あらゆる面において段違いだ。お前にそれは外せん!」

 

そう言うとMスパイダーは自身の後ろに糸を張り巡らせて、自分はその真ん中に陣取る。そして、張った6本の糸を後ろへと引いていく。それは、さながらパチンコのようだった。

 

Mスパイダー「これで跳んで勢いをつけた状態で、この爪を喰らえば幾ら貴様とて無事では済むまい。さあ、どうする‼︎」

ライダー「何とか、これを…」

 

Mスパイダーの行動を理解したライダーは何とか右手の糸を外そうとすると、一向に外れる気配はない。こんな状態では、勢いのついたMスパイダーの攻撃は避けきれないだろう。どうするべきか考えていると、また少しだが風が吹いた。それにより、首のマフラーがたなびく。すると、タイフーン・ゼロが回転を始め、風を取り込んでいく。すると、右手に力がみなぎるのをライダーは感じた。

 

ライダー「(これなら…)」

Mスパイダー「終わりだ、ライダーァァァ‼︎」

 

ライダーが何かを確信した瞬間、Mスパイダーは糸によってパチンコに弾き出される玉のように飛び出す。だが、その速度と威力はもはや弾丸だ。更に、Mスパイダーは左手の爪を突き出し、その周りに背中の蜘蛛足の爪も突き出す。その様はまるで槍のごとく。勢いそのままでライダーの方へ向かっていく。だが、ライダーも力の篭った右手を引っ張る。すると…

 

Mスパイダー「な、なんだとぉッ⁉︎」

ライダー「ライダー、パンチ」

 

ブチブチと音を立てながら引き千切られる糸を見て驚愕を隠せないMスパイダー。そんなMスパイダーに向けてライダーは糸を引きちぎったままの勢いで拳を突き出す。そして、その拳はMスパイダーの爪と衝突する。すると、ライダーの拳がMスパイダーの爪を全て砕いてみせた。

 

Mスパイダー「ギ、ギャァァァ⁉︎」

ライダー「今だ」

 

爪を粉砕されて、悶え苦しむMスパイダー。それを隙とみたライダーは、その脚力を利用して天高く跳び上がる。どんどん高度を上げていくライダーを見て、Mスパイダーも何とか立ち上がる。

 

Mスパイダー「ぐ、くぅ…!お、おのれぇぇぇ!」

ライダー「トドメだ」

 

自身の跳べる最高高度まで来たライダーは、右足を突き出した飛び蹴りの体勢となる。そして、今度はそのまま落下していく。その勢いはどんどん増していき、既に今のMスパイダーに回避できるものではなかった。

 

ライダー「ライダー…キック」

 

ついに、ライダーの途轍もない威力を持った飛び蹴りがMスパイダーに衝突する。その威力にMスパイダーは声を上げる間もなく遥か後方へと吹っ飛ばされる。そして、地面とぶつかり、その地面に大きなクレーターと無数の罅を残すと、次の瞬間に大爆発を起こす。

 

ライダー「…」

 

着地したライダーは、その爆発を見つめながら立ち止まる。すると、やがて後ろを向き、歩き出す。そして、その姿が一瞬ぶれると、そこには零士の姿があった。零士が気付くと、前から翔也と宏哉が駆け寄ってくるのが見えた。

 

翔也「大丈夫⁉︎源くん」

零士「何ともないようだ」

 

零士がそう答えると、よかった〜と言ってホッと胸をなでおろす翔也。すると、今度は宏哉が話し掛けてくる。

 

宏哉「本当に何ともないのかい?」

零士「そのようだ。だから、大丈夫だ」

宏哉「それなら良かったよ。あと、済まないね。こんな時間に呼び出してしまって」

零士「それなら問題ない。こんな状況じゃ仕方ないだろう」

宏哉「そう言ってもらえると助かるよ」

 

心配する宏哉に、本当に大丈夫だと言うことを伝える。すると、今度は謝罪をしてきたので、それにも気にしなくてもいいと言う意図の言葉を返す。そうしていると翔也が不思議そうに2人を見ていた。

 

翔也「ねぇ、宏哉おじさんと源くんって知り合いなの?」

宏哉「う〜ん、知り合いと言ったらそうなんだけど…これには少し事情があってね」

翔也「事情?」

宏哉「まあ、こんな事になっちゃったし。そこら辺のこととか、これから説明しようかな。零士くんも来てくれないかな?」

零士「分かった」

 

そう言うと3人は翔也と宏哉の家に向かって歩き出す。が、途中で前を歩いていた翔也と宏哉が足を止めて零士の方へ振り返る。その行動に零士は内心、不思議に思いながら2人へ問う。

 

零士「どうかしたのか?」

翔也「いや、言い忘れてたことがあって」

宏哉「うん。本当なら1番に言わなければいけないのにね。いやはや、恥ずかしい」

 

2人の言葉を聞いても、まだ分からない零士は思わず首をかしげる。そんな零士を見て苦笑した2人は、零士の方へ向き直る。そして、その言葉をしっかりと口にする。

 

翔也「ありがとう、源くん!」

宏哉「おかで、助かったよ!」

 

そう笑顔で告げられた零士は、昨日のように何だか分からない気持ちになる。だが、前回とは違い、1つ分かったことがある。胸に手を当てながら零士は思わず呟く。

 

零士「あたたかい…」

翔也「どうかしたの?源くん」

零士「いや、なんでもない。…あと、零士でいい」

 

その呟きは聞こえなかったのか、翔也が聞いてくる。だが、零士はなんでもないと言う風に誤魔化す。そして、その最後に名前呼びでいいと言う。その言葉は聞こえたのか一瞬驚いた翔也だったが、再び笑顔になる。

 

翔也「なら、僕も翔也でいいよ」

零士「そうか。分かった」

翔也「これから、よろしくね。零士」

零士「ああ、翔也」

 

2人はお互いに名前で呼び合うと、翔也は右手を差し出す。そして、零士も同じく右手を差し出すと、かたい握手を交わす。それを宏哉は微笑ましそうに眺めているのだった。

 

 

何処かのビルの屋上

 

ライダーとMスパイダーの戦闘を見終わったサイスとドクターはお互いに黙っていた。だが、そんな時サイスが口を開く。

 

サイス「奴は敗れましたね」

ドクター「そうね。けど、奴にはそこまで期待してた訳じゃないし、ライダーも見れたんだし問題ないわね」

 

ドクターはそう言うと背中を向けて歩き出す。そして、サイスも同じく歩き出す。

 

ドクター「ライダーに関しては予想よりも厄介そうではあるけど、今のライダーなら私たちには届かないわね」

サイス「今は、ですけどね。ライダーは闘いの中で進化する。油断はしないように」

ドクター「分かってるわよ」

 

それに、と心の中で言葉を続ける。ドクターの脳裏に浮かぶのは蜘蛛糸を力ずくで引きちぎったライダーの姿。恐らく、あの時に吹いた風を吸収して、エネルギーへと変えたのだろう。

 

ドクター「(けど、たったあれだけの風でMスパイダーの糸を引きちぎる程までパワーを上げた?あの上昇率は、過去のライダーのものと比べても異様だわ)」

 

ドクターはそんな事を考えているとサイスはビルから飛び降りて、消える。その後を追いながらも、これからのことを考え、浮かぶ笑顔を隠せなかった。まるで新しい玩具を与えられた子供のように…しかし、妖艶な雰囲気を醸し出すドクター。

 

ドクター「ふふっ、面白くなってきたじゃない。これからが楽しみだわ」

 

そう言うと、ドクターもビルから飛び降り、そして消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




怪人file

メガ・スパイダー

0号に敗れたスパイダーを、リベンジショッカーがBADANの高等改造技術を駆使して再改造された怪人。外見は身体の所々に機械の装甲があり、チューブで肉体と繋がれていて、左手の先が1本の爪になっている。そして、背中には先端が鋭利な爪である6本の巨大な蜘蛛足があり、その先からも糸を発射できるようになっている。糸に関しても、射程、強度、自由さ、全てにおいて上回る。反面、身体性能自体は上がってはいるが、そこまで高くはない。リベンジショッカーが考案した新世代型改造人間の試作型。

〜〜〜〜

何とか初の変身シーンや戦闘と言った、重要な回を書き上げることが出来ました。BADANのパーフェクトサイボーグの技術やら高等改造やらの設定は独自解釈を交えたオリジナルの設定です。なので、多少どころではない無理矢理感がある可能性も…。他にも変身ポーズやなんちゃってシリアスなどなど。作者的には、これが限界です。勘弁してください(土下座)。それでは、今回はこの辺で。読んでいただき誠にありがとうございます!また、次回も読んでくれると嬉しいです!
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