煌炎の朧姫
「やるねキミ。僕とここまで打ち合える者なんて、ジスタートや他の国を見たってなかなかいない…よッと。」
「ッ……あぶね。そりゃ、どうも。褒めても何もでないぜッ。」
今、俺は名も知らない彼女と戦っていた。
「全く、つくづく賊にしておくのは惜しいね。」
「…だから、違うっつーのに。」
どうして、こうなったんだ‼
うう、ちょっと気持ち悪い。ここどこだ。確か、俺は公衆電話の受話器を取って…
う、ま眩しい、光が。
「う、どこだよ…ここ。」
気が付くと、俺は、何処かの建物の中にいるようだった。
白磁のような、どこか気品を漂わせた塀に囲まれ、ここの中央であろう部分には城というのが相応しい建物がそびえていた。その光景に俺は中世ヨーロッパの建造物を連想していた。
そして俺のいる場所はどうやらその建物の調練場のようだった。ただ、今は昼でそこに人がいないわけがなく…
「誰だ貴様、どこからここに侵入した‼」
「黒服で怪しいヤツめ。」
いや、これはただの学生服なんですが!?
「まさか、戦姫様の暗殺を企んでいるのか。」
「いや、俺は……」
「黙れ問答無用だ、今こそ日頃の成果を発揮する時だ。よし全員でこいつをひっ捕らえろ‼」
そういうと彼らは容赦なく俺に向かってくる。
俺は、まだ混乱してるっていうのに。
というか、捕らえると言っておきながら真剣とか槍とか、どこの江戸時代だ、ここは。
俺だって、急に襲われたからには手加減しないよ‼
「…う、嘘だ。なぜ我らが、レグニーツァの精鋭がなぜ、あんな棒切れであしらわれるんだ……」
そこには既にいた兵士たちが、全員打ち据えられていた。しかも、橘が使っているのは立てかけてあった棒術用の棒である。余談であるが橘は息すら切らしていなかった。それが、さらに彼らに悔恨を刻んでいた。
「はい終わり。はあ、これでやっと話を聞いてくれるッ……誰だ!」
「全く、ボクが王都から久しぶりに、気持ちよく戻ってみれば、なんだいこのありさまは。」
橘は少々不意を突かれた形になったが何とか刃を上へさばき、斬りかかられた人物から距離を置く。
「…申し訳ありません、戦姫様。我々が公宮にいながら、この醜態。」
「まあ、いいさ。キミたちが頑張っているのは、わかっているしね。今回ばかりは相手が悪いみたいだし、ボクが出よう。」
そこにいたのは、双剣を携えた女性だった。それもショートで黒髪の美少女である。
橘は闘気をぶつけられているにも関わらず、少し目を背けてしまう。
それは美少女の蒼い瞳に(理由はともすれ)見つめられているということもあったが、何よりも、その戦闘服の露出が多い。肩やへそが出ているのはもちろんなのだが、スカートがもうその役目を果たしていないのである。
それはもう、殆んどのことに動じない(ようにみえる)橘に平静を失わせるほどに。
しかも、その恰好が彼女を彩り、そして彼女が二つの剣を構えることでどんな芸術品よりも艶やかに映えさせるのである。もう反則としか言いようがなかった。
「じゃあ、いくよ。」
その声に、我にかえった橘は棒で刃を受ける。
その棒は淡い光を帯びていた。
「へえ。これを止めちゃうのか。じゃあこれならどうかなッ。」
止められたことが面白いのか微笑みを浮かべながら、戦姫と呼ばれた彼女はさらに刃の速度を早め斬りかかる。
それを橘はまた、防ぐ。
「やるねキミ。僕とここまで打ち合える者なんて、ジスタートや他の国を見たってなかなかいない…よッと。」
「ッ……あぶね。そりゃ、どうも。褒めても何もでないけどねッ。」
防いでばかりでは埒があかないと思ったのか橘も反撃を仕掛ける。が、さながら舞を舞うかのように避けられてしまう。
「全く、つくづく賊にしておくのは惜しいね。」
「…だから、違うっつーのに。」
「え!」
戦闘途中であるが、名も知らない戦姫がかわいく首をかしげる。
「えって言われても…。」
美少女は何をしても似合うんだな。などと場にそぐわないことを考えながら橘はいきさつを話し始める。
これが橘 恭弥と
閲覧ありがとうございます。