「キョウヤ、悪いけどここの庭園で待っていてもらっても、いいかい?」
聞けば、王都を訪れれば、必ず王様に拝謁し、挨拶に伺わねばならないらしい。今回は、従者という立場の俺は特に御前へ出ることはないが、戦姫であるサーシャはこれを避けては通れないのだそうだ。
まあ彼女も、もう慣れたことだとは言っていたが、これが毎度のことならば何とも大変で面倒なことだなと思う。少なくとも、俺はしたくなかった。
そんな事情もあり、俺は大人しく庭園の大理石でできた椅子に座り、本を読むことに専念することにした。
「………………………………」
しばらくして、本を読み終えた俺は、ふと庭園の奥の方から喧騒があるのに気付いた。
やることもなくなっていた俺は好奇心に負け、様子を見に行くため、そちらに歩を進めることにしたのだった。
「発育不全‼」「品性下劣‼」
「なんだと‼」「なによ‼」
そこでは、サーシャとは違うタイプの美少女たちが互いに罵詈雑言を浴びせあっていた。前者は銀色の長い髪と紅い双眸を持ち、後者は蒼い髪を短く切りそろえショートにしていた。
彼女たちはそれぞれ不思議な装飾の剣と槍を構えていたが、その武具から発せられる雰囲気が、どことなくサーシャの双剣に似ているように恭弥には感じられていた。
それは、あながち間違いではない。
恭弥は知らないことだが、彼女たちは、れっきとしたジスタートが誇る戦姫である。
しかし、そう分析ばかりしていられる状況ではなくなってしまっていた。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼」」
その場には、王城の侍女らしき人たちや、彼女たちの従者がいるが、焦るばかりでとても止められそうには見えなかった。
「そこまでだ‼」
ふたりの間に割って入った、ただ一人、恭弥を除いては。
「そこまでだ‼」
そこに、いた者たちは一人残らず、驚きに包まれていた。特に、驚きが強かったのは他でもない、刃を止められた二人であった。
しかも本と靴で、である。淡い光を彼の本と靴は帯びていたが、日差しによってその場でそのことに気付いたものはいなかった。
この者が一体何者であるのか、その場にいたものが全員思っていたことを代弁したのはやはり、彼女たちであった。
「「おい(ねぇ)、貴様(貴方)何者だ(よ)‼」」
「真似するな(しないで)‼」
どこまで行ってもケンカ腰な彼女たちだった。
…ある意味、息ピッタリではあるのだが。
「何者って言われても、ただの通りすがりなんだが?」
何を今さら、という顔を恭弥は浮かべる。
もちろん聞いていることはそういうことではない。
彼女たちがそのことに、さらに怒りを露わにして詰め寄ろうとしたとき、
「キミタチ、こんなところで何をしているんだい?」
サーシャが現れたのだった。
「なるほど、そういうことか。」
サーシャは、話を聞き、納得をしていたようであった。
彼女たちは、サーシャには頭が上がらないのか大人しくしていた。肘で相手を突き合っていたが。
「で、二人とも。仲直りは?」
「「だってこいつが‼‼」」
彼女たちは互いを指さして責任をなすりつけ合っていた。
「…分かった。じゃあこうしよう。キミタチには彼と勝負してもらう。キミタチが勝ったらキミタチのいうことを今日一日なんでも聞くし、彼の正体も教えよう。負けたら仲直りしな。いいかい、キョウヤ」
サーシャはその様子に呆れたようにそういった。
「了解。じゃあ、俺、素手でいいよ。女の子を傷だらけにはしたくないからね。」
恭弥は、屈伸をしながらそう口にする。当然、その言葉をなめられたと感じた二人は面白くない。
そして、二人がアイコンタクトをして同時に恭弥にとびかかる。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼」」
しかし、彼女たちの攻撃は空振りに終わることとなった。
「「な‼」」
「怒りに任せて武器を振ってくれたおかげで、攻撃の軌道は読みやすかったからね。」
そう言って、彼女たちより後ろに立つ恭弥の手には、剣と槍が握られていた。
後半改稿するかもしれません。