「どういうことだよ‼ロイド‼答えろよ‼‼」
そういい、恭弥はロイドの胸ぐらを掴み、壁際に押し付ける。
「…」
ロイドは押し黙ったままだった。
「なんで…なんで俺に、サーシャの身に起きていることを教えてくれなかったんだよ‼」
「……遅かれ早かれこうなることは彼女自身分かっていたことです。私も、戦姫就任時に伺っていました」
ロイドは、小さい声で、だがはっきりとそう口にした。
「なんだそれ。ふざけんなよ‼‼」
事態は少し前へさかのぼる。
恭弥は兵士たちと訓練を終えた後、日課であるサーシャとの訓練に励んでいた。
「まったく、キミはボクと模擬戦をする度に速くなるね。ボクの戦姫としての自信を無くさせる気かい?」
不敵な笑みを浮かべながら、彼女は恭弥に問いかける。
「よく言うよ。戦姫の武具、バルグレンの炎まで出しちゃってさ。また俺がのされるだけだろッ‼」
恭弥は自身の剣を使い、サーシャの攻撃をいなし続けていた。
「ッふう。こんな攻撃、諦めてるように全然感じられないよっと」
ふたりの攻防は空を舞う、地形を有効利用するのはもちろん、その中でも相手の位置を把握しつつ、動いていた。
それはおおよそ一般の兵士からすれば、考えられないほど高度かつハイスピードなものだった。
「あー。参った降参だ。きゃーサーシャサマお強いです~」
その棒読みの言葉とは裏腹に、恭弥はサーシャに剣を振った。
しかし、読まれたかのようにそれをサーシャは、難なく躱していた。
「そう言ってボクに斬りかかるのは反則じゃないのかい?」
「そうは言うけどこれ、昨日してきたのはサーシャだからね。いつでも油断しちゃダメなんだよ、とかいって。エレン達が知ったらなんていうだろうな」
そういって、恭弥は肩を竦める動作をする。
「隙アリ!」
そこへサーシャは容赦なく切り込んだ。
「え、うわぁぁぁ‼」
そして、今日も訓練に決着がついたのだった。
「まだ、話している最中だったのに…」
恭弥はうなだれながら、サーシャに抗議した。若干その様は拗ねた子供のようではあったが。
「ハハハ、油断した方が…悪いんだよキョウヤ。ちゃんと構えて……なきゃね」
それをいつものようにサーシャは流そうとするが、いつものような歯切れの良さが今日は欠けていた。
「サーシャ?顔色悪いけど大丈夫?」
「ん?平気さ、ちょっと疲れてるだけで…」
そう言うサーシャは少しふらついていた。柱に掴まり、肩で息をしているような状態であった。
「おい、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だって。ほんとキョウヤは心配性なんだから………ゴフッ」
そう言い、恭弥を安心させようと微笑もうとしたサーシャは、かなりの量を吐血し、その場に崩れ落ちた。
「サーシャ‼どうしたんだ‼おい誰か、誰か、早く来てくれ‼」
そして恭弥は、急いで侍女たちや医務官を呼び出すのだった。
読了ありがとうございます。