金色のガッシュ!! Episode RISING   作:ホシボシ

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第2話 ザケルVSザケル

 

 

全身を包むビリビリとした衝撃、両者が放つ雷撃は均衡を保ち同時にはじけ跳んだ。

地面を擦りながら強制的に後退して行くガッシュとデモン、その終わりは互いのパートナーに背中を支えてもらい止められる形となる。

 

 

「今のガッシュの電撃と互角だと――ッ!?」

 

「ウヌ、気をつけろ清麿。あの者達相当強いぞ!」

 

 

章吾とデモン、二人は確かに笑っていた。

それを見た清麿は瞬間理解する。あの二人、この状況を、この戦いを楽しんでいる。

それを思ったとき、清麿の中にも不謹慎かもしれないが嬉しさがこみ上げてきた。

自分はガッシュと再び並び立ち、戦っている。その事実が彼の心に火をつけた。そうだ、ガッシュはココにいる。

自分の前に、立っているんだと!

 

 

「ザケルガ!」

 

「おっと!」

 

 

ガッシュから一直線に伸びる電撃が発射される。

しかし距離もあったと言う事でデモン達は体を回転させ左右に分かれて回避を。

確かにスピードはあるがザケルガはやや範囲が狭い、それを踏まえ章吾は威力は落ちれど範囲をカバーできるザケルを選択した。

 

 

(ただそれでもザケルガの太さが予想以上だ)

 

 

デモンは冷静に分析を行いながら雷撃を発射する。

あともう少し太ければ先ほどの回避も無駄だったかもしれない。

 

 

「ガーッシュ!」

 

 

飛んできた雷撃は確かに広範囲、しかし清麿の声にて反応したガッシュが己のマントを広げて自分たちを包み込む。

そこに命中するザケル、わずかに競り合ったが、ガッシュがマントを翻すとその衝撃で雷撃は散らされて消滅した。

 

 

「げーッ! なんだよアレ!」

 

「魔法のマントだ。使用者の意思で伸縮や強度を変えられる便利なアイテムさ。空も飛ぶ事だってできるんだぜ?」

 

「すごいな! あれ? ちょっと待って、だったらお前も持っとけよ!」

 

「アレ高いし貴重なんだよ! あと強いけど、その分使いこなすには訓練がいる」

 

「って事は……」

 

「ああ、それだけガッシュの努力があったって事だよ!」

 

 

成長したなガッシュ、デモンは嬉しそうに微笑んでガッシュを見た。

その様子、そして先ほどの言葉といい何やらデモンはガッシュと深い関わりがあるようだ。

 

 

「っ? 知り合いかガッシュ?」

 

「き、記憶には無いのう……」

 

 

汗を浮かべるガッシュ。

一方で再び赤紫の魔本が光った。どうやらゆっくりお話している時間は無いらしい。

このまま遠距離戦を続けるのは分が悪いと悟ったか、デモン達は距離を詰める事に。

 

 

「ガルウルク!」

 

 

翼を広げ高速回転しながらデモンはガッシュたちの下へと飛翔する。さらにココで章吾はザケルガを発動。

同じ呪文でも効果が違う物があるというのは清麿も知っているが、デモンのザケルガもガッシュのそれとは違う能力を持っている用だった。

と言うのも、ガッシュは口から一本の電撃を放つが、デモンは両腕から二本まで雷のレーザーを出せるらしい。

一方は正面、もう一方は横に手を構えることで、高速回転するデモンからは逃げようの無い雷撃が放たれる事になった。

 

 

「どうする清麿! 逃げ場はねぇぞ!」

 

「だったら、テオザケル!」

 

 

強力な雷撃は直接デモンを止めようと放たれた。

しかし甘いとデモン、今の彼はザケルガとガルウルクを重ねて発動している状態、その貫通力はすさまじく、テオザケルを蹴散らしながら何の事は無く突き進んでいく。

勢いが死なないデモン、ガッシュは歯を食いしばって清麿に次の指示を求めた。

 

 

「だったら直接防ぐまでよ! 第2の術、ラシルドォオッ!」

 

 

ガッシュの前にそびえ立つのは、巨大な長方形の盾。

当たった攻撃を反射する能力も持っており、ザケルガ程度ならば確実に防げると清麿は踏んでいた。

 

 

「よし! かかったな麿ちゃん!」

 

「なにっ!?」

 

 

デモンもまた雷の使い手、ラシルドの効果は既に把握していたらしい。

盾が現れた瞬間に章吾は呪文を解除、そして別の呪文を発動させる。

 

 

「第10の術、ガンランズ・ザケルガ!!」

 

「展開!」

 

「「!!」」

 

 

ガッシュと清麿の周りに次々と雷の槍が出現していく。

百八十度の視界にはどこを見ても槍が浮遊している状態。かと言って後ろにはラシルド、逃げ場所が無くなってしまった。

そう、これがデモンたちの狙い。ラシルドを誘発させ、逃げ場を相手自身に封じてもらう。

 

 

「発射!」

 

 

槍の一発目がガッシュ達に向けて放たれた。

どうする? ザケルやマントでは貫通力高いの槍は防げない筈。

かと言ってザケルガの連射力では槍の発射スピードには追いつけず、やがて防げない槍が出てくる。

勝った、章吾とデモンは勝利を確信するが――

 

 

「ラウザルク!」

 

「ッ!」

 

「ガッシュ! マントを伸ばせ!」

 

 

ガッシュの肉体を強化するラウザルク。

そして清麿の支持に従い、ガッシュはマントを伸ばして放たれた槍にぶつける。

マントは先端が硬質化されており、槍に競り勝ち、打ち弾く。そして清麿が次に指を向ける先にあった槍を、再びガッシュはマントで打ち弾いた。

 

 

「ま、まさかアイツ!」

 

 

ガンランズ・ザケルガは一勢に槍を飛ばすのではなく、現れた槍を順番通りに飛ばしていく呪文だ。

そしてまた打ち弾かれる槍、間違いない、清麿はあの一瞬の内にすべての槍の現れた順番を記憶していたのだ。

そして槍が放たれる一瞬のタイムラグを狙って槍を弾いている。

 

 

「ヌオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 

ガッシュの咆哮と共に次々と槍が宙に舞っていく。

 

 

「さすがは天才! 流石は王か!」

 

 

何よりも清麿の指示通り、完璧に動くガッシュの信頼と実力、伊達に魔界の王にはなっていないか。

だが疑問は残る。なぜ清麿はガンランズ・ザケルガの詳細を知っていたのだろう? 彼もまた同じ呪文を覚えている?

いや、もしくは――

 

 

(なるほど、答えを出すあの力か!)

 

 

だとすれば時間は掛けられない。

章吾は槍がすべて打ち弾かれた瞬間、新たな呪文を口にしていた。

とりあえず清麿が覚醒する前に攻めに攻め、大きな隙を作るのだ。大まかな作戦を章吾とデモンはアイコンタクトで交わすと、次なる攻めに転じる。

 

 

「ギガノ・ザケル!」

 

 

デモンが両腕を天にかざすと、そこに巨大な雷球が生まれる。

それを瞬時、振り下ろす様に発射。一方でラウザルクの効果が切れたガッシュ、清麿は選択を強いられる事になる。目の前から来る雷球をどうするのか? を、だ。

防ぐのか弾くのか、回避するのか。ココで清麿に一つの思いが浮かぶ。結果ではなく、過程の方を重要視してみないかと。

 

 

「ガッシュ、悪いがオレに付き合ってくれ」

 

「ヌ! どういう事なのだ?」

 

「お前は無限の可能性を秘めている。その幾つかを、今新たに形にしたい!」

 

「よく分からぬが、清麿が言うのなら私は構わぬぞ!」

 

「悪いな、助かるぜガッシュ!」

 

 

今新たに戦いが始まろうとしている事は漠然と分かった。

そして今目の前にあるデモンと言う新しい魔物。これからはガッシュもまた、更なる成長が必要だと清麿は感じた。

ゆえに、今持てる力で新たなる活路を見出す。

それが彼の、彼らの意思だ。

 

 

「ラシルド!」

 

 

清麿が選択したのは防御。ラシルドは雷球を受け止めると競り合いを開始する。

 

 

「ザグルゼム!」

 

 

第7の術ザグルゼム。雷の強化を施す球体はラシルドに命中すると、その形を変化させてより強靭な物へと変える。

そもそもギガノ級の術ならば強化を施していないラシルドでも防ぐことはできた、しかしより確実にと言う事なのだろうか?

ラシルドは雷球を跳ね返すと撃ったデモンへ返っていく。

 

 

「甘いなガッシュ! 清麿!」

 

 

だが既にデモンは地面を蹴っている所だった。

真下に通り過ぎる雷球を確認しながらデモンはニヤリと笑みを浮かべる。

ギガノザケルの最大の利点は、発射した直後に動ける事と別の呪文を出せる事だ。

彼はラシルドの上に移動し、真下にいるだろうガッシュ達を狙う寸法だった。ラシルドは透明ではない、清麿たちも盾を出せば前方の景色を確認する事はできないのだ。

 

 

「駄目だ! 逃げろデモン!」

 

「え?」

 

 

しかし、デモンがラシルドを通り抜けると、下にはガッシュ達の姿は既に無かった。

一方彼と対になる位置、つまりガッシュ達の背後を見ている章吾は声を荒げる。

コレは罠だ、清麿はわざとラシルドと言う壁を作った。そしてそれを見たデモンが上から攻めてくる事を誘ったのだ。

 

 

「ザグルゼム!」

 

「ぶほっ!」

 

 

デモンの体に命中するザグルゼム。

いや、別に上からでも右からでも左からでも、それはどちらでも良かったのかもしれない。

大切なのはラシルドで自分たちの姿を隠す事、ガッシュ達は既に盾にかくれながら大きく後退し、デモンと距離を離していたのだ。

 

 

「もう遅い! 連鎖のラインは整った! エクセレス・ザケルガ!!」

 

 

ガッシュの背後上空から文字通りXの形をした巨大な雷のレーザーが飛来してくる。

そしてその狙いはなんとデモンではなくラシルド。

一瞬狙いを外したのかとデモンは考えたが、レーザーがラシルドにぶつかった瞬間、激しい光と共に進行方向が変化し、上にいるデモンに向かって飛んでいった。

 

 

「ば、馬鹿なッ! 何だコレ!」

 

 

しかもXの文字に縦線が走り、レーザーがより大きく強くなっているじゃないか!

 

 

「よし! 成功だ!」

 

 

一方の清麿、彼の狙いはラシルドを連鎖の中継ポイントにする事だった。

ザグルゼムは連鎖誘導をその能力の一つに持っている。今までは岩や相手の術、相手そのものを連鎖のポイントにしていたが、ラシルドと言う固定装置にその役割を持たせられるのではないかと考えた。

ラシルドは出始めはガッシュが気絶しているためにほかの呪文を出す事ができないが、ある程度時間が経過すればガッシュの意識も元に戻る。そこを利用したと言う訳だ。ラシルドは防いだものを反射する力を持っているが、それはあくまでも前面だけ、自分たちがいる後面からの攻撃にたいしてはザグルゼムの効果を優先してくれた様だ。

ラシルドと言う中継ポイントを経過したエクセレス・ザケルガは次のポイントであるデモン本体に向かって飛んでいく。

 

 

「やっばい!」

 

 

すぐに翼を羽ばたかせ後ろに逃げるデモン。しかしレーザーが大きすぎて間に合わない。

しかも攻撃が近づくごとに、自分の体に蓄積されたザグルゼムの光が強くなっていくじゃないか。

デモンはザグルゼムを覚えてはいない、しかしその効果はなんとなく理解する事ができた。

このままアレを受ければ負ける! それはデモンだけでは無く、章吾も理解する所であった。

 

 

「章吾ーッッ!」

 

「ラージア・ザケルガ!!」

 

 

デモンから同じく巨大な雷のレーザーが放たれた。

二つの雷はぶつかり合うとお互いの動きを若干鈍らせる。

ザグルゼムで強化されたエクセレス・ザケルガを真正面から打ち破ろうなどとは流石にデモンも考えてはいない。

動きを鈍らせる事ができれば十分なのだ。彼はその翼を大きく動かすと一気にエクセレスザケルガから距離を離して回避を行った。

 

 

「どうだ麿ちゃん! 避けたぜおれは!」

 

「麿ちゃん言うな! だが甘いなデモン、これも計算の内だ!」

 

「うそだろ麿っち!」

 

「黙れ章吾! ガッシュ、セットだ!」

 

 

清麿が示したのは驚いている章吾その人だった。

現状、ガッシュと清麿はデモンと章吾に挟み込まれる形になっている。

その中でデモンはエクセレス・ザケルガを回避する為により距離を離した。つまり、よりパートナーの章吾から距離を離したと言う事だ。

そこを狙わぬ手は無い。清麿は悪いなと声を上げて、章吾に狙いを定める。

 

 

「ガンレイズ・ザケル」

 

 

雷神の太鼓をイメージした八つの砲台から電撃の弾丸が無数に放たれる。

この呪文は清麿がガッシュを抱える事で彼自身が照準を合わせる事ができる技。章吾が逃げようが清麿には当てる自信があった。

しかし狙われている筈の章吾に焦りは無い。むしろニヤリと笑って余裕すら感じられた。

 

 

「ラシルド!」

 

「!」

 

 

デモンの手が発光すると、遠くにいた章吾の前に雷の紋章が現れる。

そこに触れた弾丸たちは一瞬停止した後に向きをガッシュ達の方へと変更して飛んでいく。

どうやらデモンのラシルドはこういうタイプの物らしい。ガッシュの物よりも防御力が低いが、空中を含めてどこでも好きな場所に出現させる事ができると。

だからこそ二人は距離を大きく離して戦う事ができた。人間相手に清麿たちが上級呪文を撃ってくるとも思えない、つまりいかなる場合においてもラシルドでカバーできると踏んでいた訳だ。

 

 

「ガンズ・ザケル」

 

「ウラララララララ!!」

 

 

デモンが同じく無数の雷球をガッシュ達に向けて発射する。

背後からはガンレイズの弾丸、前方からはデモンの弾丸、さらに既にデモンは翼を広げ左の方へと大きく旋回していた。

さらに章吾の魔本がかなり大きな輝きを放つ、大技がくるのか? となれば逃げ道は一つ、上しかない。

 

 

「ガッシュ飛べ!」

 

「ウヌ! 分かったのだ」

 

 

マントを使って上空へ飛行するガッシュ。しかしココで章吾の目の色が変わった。

しまった、清麿は真上を確認する。するとそこには大きな雷雲が既に出現していたではないか。今度はコチラが誘導されたと言う訳か。

少し考えれば分かりそうなものだったが、章吾の本の輝きに急かされてしまった。

 

 

「もらった! ディオガ・テオザケル!!」

 

「バオウ・クロウ・ディスグルグ!」

 

 

デモンが指を鳴らすと巨大な落雷がガッシュの下へ降り注ぐ。

それを巨大な龍の手で受け止めるガッシュ。過去最大の衝撃と閃光が辺りを包み、周囲の存在を消し飛ばしていく。

振動する世界、その中で四人はその目に勝利を映して吼え叫ぶ。

 

 

「「「「ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」」」」

 

 

そして爆発。ガッシュのバオウクロウとデモンのディオガは相殺と言う結果に終わった。

激しく消費した心の力、章吾は思わず目の前が一瞬真っ暗になり、膝をついてしまう。だがまだだ、ココでさらに攻めなければ。

彼はすばやく立ち上がると、再び己の心のパワーを魔本へ注ぎ込む。

 

 

「ラージア・ザケルガ!」

 

 

そこそこの至近距離で放つ大技。

章吾は清麿の心の力を消費させる為にこの技を撃ったのだが、彼が返す呪文はまったく予想していない物であった。

ココが、ガッシュの力の幅を広げる場所と清麿は見ていたのだ。

 

 

「第3の術!」

 

 

ずっと考えていた。

術に対して術が有効ならば、その思いの先にあったのがザグルゼムの新たなる可能性だった。

であるならば、この呪文もまた。

 

 

「ジケルド!」

 

「「!?」」

 

 

巨大なレーザーの前に現れるのは鈍く動く雷球。

そして雷球が消えたかと思うと、レーザーが鈍く発光し、そのまま向きを大きく変えた。

 

 

「なッ、馬鹿な!」

 

「よし! 来た!」

 

 

そしてレーザーの先には工事に使っていた重機が。

ラージアザケルガはそこへ命中すると呪文の終わりを迎える。

 

 

「なんだ? おれはあんな所を狙ってなんて――!」

 

「ジケルドは命中した対象物を強力な磁石に変える技だ」

 

「なんだと? じゃあまさかラージア・ザケルガを磁石に!?」

 

 

どちらの重さが優先されるのかは分からなかった。

しかし結果はコレ、デモンの攻撃は鉄の方へと引き寄せられていった。

コレがガッシュの可能性、コレがガッシュの新たなる力なのである。

 

 

「だったら無数の弾丸だ! ガンズ・ザケル!」

 

 

連続して放たれていく無数の雷球。

ジケルドはその小ささから一つにしか当てられない。章吾もデモンもそう考えていた。

しかし清麿は違う、これもまた活路を切り開く試練だ。彼は再びジケルドを発射、ノロノロ動く球体を前にさらなる呪文を。

 

 

「ザグルゼム!」

 

 

ジケルドのスピードをザグルゼムが超え、二つが一つになった時、雷撃強化の能力が例外なく発揮された。

ザグルゼムの加護を得たジケルドは巨大化され、襲い掛かる雷球たちをみな磁石に変えていく。

すると雷球は再び起動を変えて鉄のある場所へと吸い込まれていった。こうして無効化されたデモンの呪文、章吾は苛立ったように地団太を踏むとならばと次の呪文を。

 

 

「きぃぃムカつく! デモン、接近戦で決める!」

 

「オーケー、了解だぜ章吾ッ!」

 

「ソルド・ザケルガ!」

 

 

デモンの手に電撃で作られた赤紫の西洋剣が握られる。

 

 

「疾風迅雷、電・光・石・火――ッ!」

 

「ウルボル・ザ・ブルク!!」

 

 

さらに赤紫の電流がデモンの体を駆け巡る。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオ!」

 

「「ッ!!」」

 

 

一瞬、まさに一瞬でデモンが清麿達の眼前に迫っていた。

反射的に清麿はデモンへザケルを発射、電撃は何の事は無くデモンに命中するが――

 

 

「残像だ!」

 

「なっ! うぁぁあ!」

 

 

電撃が捉えたのはデモンの幻。既に本体はガッシュの背後に回りこみ剣の振り払いを命中させているところだった。

よろけ、前に倒れるガッシュ。そこにはデモンの幻がまだ存在しており、彼に触れた瞬間スパークを放つ。

 

 

「うぁぁあ!」

 

 

衝撃が体を駆け巡り、ガッシュの動きが停止する。

さらにそこへデモンは剣の一閃を叩き込んでいる所だった。

 

 

「質量を持った残像か! なら、ザケル!」

 

 

下に向けてザケルを放ち拡散させる事で回りに存在していた残像を消し飛ばした。

しかしデモンには翼がある。本体は既に上空へと回避しており、急降下ざまにガッシュを切りつけている所だった。

きりもみ状に回転しながらよろけるガッシュ、清麿はすばやく目でデモンを追うが残像がハッキリしすぎていて本体がどこにいるのか全く分からなかった。

 

 

「ザケルガ!」

 

 

ガッシュを掴んでザケルガを放ちながら回転してみる。

だが無意味、上空も自由に駆け回れるデモンにとっては逃げ場などいくらでもあるのだから。

デモンのウルボル・ザ・ブルクは、ガッシュのラウザルクと同じく肉体変化の呪文である。

ラウザルクと違う点は防御力や攻撃力は変わらず、スピードのみが爆発的な上昇を遂げると言う事、さらに通った軌跡に残像を残す事もでき、相手を翻弄しながら戦う事ができる呪文なのだ。

おまけにこの残像、触れてしまうとしばらく衝撃でスタンしてしまう厄介なトラップ。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!」

 

「グゥウ! ヌゥゥウッ!」

 

 

ガッシュはマントで清麿と自身を隠し防御に徹する事に。

しかしこの状態でデモンはほかの術を使用する事ができる。中級呪文までではあるが、この高速移動と組み合わさればそれはすさまじい脅威となるのだ。

 

 

「ダアアアアアア!!」

 

「グハッ!」

 

「ガッシュ!!」

 

 

マントをこじ開けるようにしてデモンの拳がガッシュの胴へ打ち込まれた。

それを確認してザケルを発動させる章吾。

どうやらデモンは角以外からも発射位置を決められるらしく、こぶしから電撃が流れガッシュに追加ダメージを与える。

 

 

「くっ! ザケルガ!」

 

 

清麿はガッシュを守るためにデモンへザケルガを撃ち込んだ。

しかし残像、デモンは右に回りこんでおり、ガッシュへ蹴りを浴びせる。

 

 

「ザケルガ!」

 

 

デモンの靴の裏から電撃が放たれ、ガッシュを押し出していった。

地面に倒れ転がるガッシュ、清麿は再びザケルを放つが捉えたのは残像のみ。むなしく空を切るザケルと、ガッシュを掴んだデモン。

 

 

「ザケル!」

 

「ヌアアアァッ!」

 

 

デモンの全身から電撃が放たれ掴まれたガッシュにショックを浴びせていく。

そのまま空中に舞い上がるデモン、ガルウルクが発動されて彼は高速回転しながら真上に舞い上がった。

そして急降下、ガッシュの平衡感覚を狂わせながら彼を地面に叩きつける。

 

 

「グハァアッ!」

 

「ガーッシュ!」

 

 

パートナーの悲痛な声を聞いて清麿の心臓がドクンと大きな音を立てた。

一方再び雷の剣を構えて走り出すデモン、ガッシュに追撃を浴びせようとしているのだ。

が、しかしその時だった。清麿の『瞳』が変化を遂げたのは。

 

 

「ガッシュ、後ろだ!」

 

「ッ!?」

 

 

章吾は何を馬鹿なと。前方にデモンがいるのに後ろを向けなど意味が分からない。

しかしガッシュは清麿の指示を疑うことなく踵を返して背後を向いた。瞬時、彼の口が光り輝き。

 

 

「ザケルガ!!」

 

「グがああああああああああああッッ!!」

 

「なッ!?」

 

 

ガッシュのザケルガは確かに切りかかろうとしてきたデモンを捉えていた。

どうやら前方にいたのは残像だったらしい、本人は背後に回りこんでいた所だったのだ。

ガッシュのザケルガは、並みの魔物のギガノ級ならば打ち破れる威力を持っている。そのザケルガをザグルゼムを受けた体で浴びたのだから、デモンに与えられるダメージは大きい。

 

 

「くっ! 大丈夫かデモン!」

 

「あ、ああ。ちょっとルートが単純すぎただけだ!」

 

 

今度はめいいっぱい動いてルートを特定できないようにしてやる。

デモンはその意思と共に走り出して、文字通りガッシュの周りを縦横無尽に駆け巡った。

無数にできる残像、その中からデモンをピンポイントに狙うなど不可能かと思われたが?

 

 

「ガッシュ! 上だ!」

 

「ッ!」

 

 

本物のデモンとガッシュの視線がぶつかり合う。

まずい! 彼はすぐに攻撃を中断して別ルートからの奇襲に切り替えた。

だがしかし、そこには既にガッシュの顔が。

 

 

「右、斜め左、上、左、上、右上、後ろ、後ろ、右、左、右、上、右、上、左ーッ!」

 

「馬鹿なッ! 全てのルートが読まれてるだと!?」

 

 

いや、そうか! 章吾は確認する。清麿の瞳が渦を巻いた用に何重もの円が重なっているのを。

あの瞳、間違いない、章吾は理解する。清麿は覚醒を果たしたのだ。

 

 

「アンサー・トーカーかッ!」

 

 

どこをどうすればデモンに攻撃を当てる事ができるのか、その答えが清麿の脳には瞬時に浮かび上がるのだ。

封じ込めていた能力が開放され、まさに今あの二人は王となった時と同じスペックに。

 

 

「テオザケル!」

 

「ぐァアアアアアアアア!!」

 

 

雷撃がデモンの体に直撃し、彼は章吾の所まで吹き飛んでいった。

 

 

「大丈夫かデモン! くっそー! ずるいぜ清麿ーッ!」

 

「王を導いたと言われる答えを出す者の力か……ッ! おれの動きが読まれている!」

 

 

噂に聞いていただけだったが、まさかコレほどとは。

 

 

「未来予知じゃなく答えの提示さ。デモンに攻撃を当てる答えが、俺には視えたんだ」

 

「やっぱずりぃわ! なんなんだよそのデタラメな力は! ふざけるなーッ!!」

 

 

カッと、章吾の魔本が光る。

 

 

「「あ」」

 

 

ふざけるな、ふザケルな。

 

 

「いぎゃあああああああああああ!!」

 

「………」

 

 

デモンの手から放たれた雷撃が章吾にぶち当たり、彼は地面に倒れた。

なつかしいな、清麿もまた経験がある為彼の気持ちはよく分かってしまう。

感情が強い時に呪文の名前をうっかり言ってしまうとああなるのだ。

しかしだ、ここ、このタイミングではないか? 章吾が倒れデモンもあっけに取られているこの一瞬が何よりのチャンス!

 

 

「決めるぞガッシュ!」

 

「ウヌ!」

 

 

清麿の魔本が今までで最大の光を放つ。

 

 

「出やがれ第4の術ーッッ!!」

 

「や、やばい!」

 

 

ガッシュの前に門が出現し、そこから姿を見せるのは――

 

 

「バオウ・ザケルガ!!」

 

 

巨大な雷の龍、バオウ。

 

 

「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 

全てを破壊せんとする雷撃の竜王。その迫力に思わず章吾は膝をついて目を見開いた。

 

 

「う、うぉぉおお! アレがガッシュの最大呪文か!」

 

「バオウ! あの力は、やはりそうなのか!!」

 

 

身を乗り出すデモン。どうやら全てはこの時の為らしい。彼はバオウ・ザケルガを目に映すと何かを考えるような表情で喉を鳴らす。

 

 

「そうか、なるほど、やはりバオウがココまで……!」

 

「クッ! デモン、今はとりあえずアレを破壊するぞ!」

 

 

頷くデモン、彼は両腕をクロスさせて雷のパワーをチャージする。

 

 

「雷神の命において具現せよ龍撃、全てを穿つ閃光となりて、勝利の道を切り開け!」

 

「デルガ・ジン・ザケルガ!!」

 

 

解き放たれた閃光、デモンが召喚する雷撃もまたドラゴンの形をしていた。

 

 

「「「「「「デルガアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」」

 

 

重なり合う咆哮、デモンが召喚するのは六体の雷龍だ。

山羊の様な角を持った長い龍はそれぞれデモンの指先から発射され一勢にバオウへと向かっていった。

体はバオウよりも小さいが、武器はその数である。次々にバオウの体へと噛み付き、その長い体でがんじがらめにしていく。

 

 

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」

 

 

持てる力を解き放ち、清麿たちは雄たけびを上げる。

そしてどれだけ競り合いが続いただろうか、遂にその時が訪れる。

 

 

「いっけぇえええええええええええッッ!!」

 

「バオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

清麿の叫びに、ガッシュの勝利を求める心に反応してバオウの目が光り輝く。

そしてその牙で、その手で、その角で、身にまとう電撃で纏わりついていたデルガの龍たちを破壊して消し飛ばした。

 

 

「う、嘘だろ!? ありえないッ! デルガが……! "ジン"が負けただとッ!?」

 

「この力! バオウはそこまで――ッ! これがユリアスの意思なのか……ッ!」

 

「よし! そのまま一気に終わらせろ!」

 

 

清麿は勝利を確信して笑みを浮かべる。

しかし、それは章吾とデモンもまた同じだった。

二人は先ほど浮かべていた驚愕の表情を一瞬で沈め、余裕を含んだ笑みを浮かべている。

 

 

「なにっ! まだ何かあるのか!?」

 

「ふっ、清麿くん。ゲームは最後まで何が起こるか分からないから楽しいんだぜ? なあデモン」

 

「ああ。だな! 章吾!」

 

「クッ! まだあれ以上の呪文があるのか!」

 

 

強い! 清麿は覚悟を固める。

そして、ゆっくりと章吾は頷いた。

 

 

「いや、無いッ! 今のはただ何となく笑ってみただけだ!」

 

「おれも同じだ! まだ何か隠し持ってますよ的な雰囲気出してみただけです!」

 

「……へ?」

 

 

と、言う事は。

 

 

「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

「「おあああああああああああああああああああああッ!!」」

 

 

大爆発。激しい光の柱の中に章吾たちは消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、マジで残念だわ。今日ちょっと足痛かったからな。足痛く無かったら俺らが勝ってたわー!」

 

「おれ今日朝ごはん食べてないし。朝ごはん食べてたらこんな事にはならなかったのになー! いやホント残念、勘違いしたら駄目だよ清麿くん」

 

「ちゅーか俺あそこで一回術チョイスミスったからなー、あそこで普段のモチベがあったら勝ってたわ、うん」

 

「まあおれもハンデつけすぎたなってのはあるよ、うん。まあ次は別にハンデとか無しで? 無し目の方向でおれらが――」

 

「ザケル」

 

「「ンンンンンンンンンンンンンンン!」」

 

 

どうせ黒こげなんだ。

あと一発二発くらおうが関係ないだろ、清麿が撃ち込んだお叱りのザケルで章吾達は大人しくなった。

とにかく結果はガッシュと清麿の勝利だ。ただ二人もかなりの実力者である事は間違いない、ガッシュと同じ術形態である雷の力に加え、威力もそう大差無い様に感じた。

もしも前回の戦いで彼とぶつかる事があったのなら、結果はまた変わっていたのかもしれない。

 

 

「まあとにかく約束は果たしてもらうぞ、章吾」

 

「仕方ないな、分かったよ」

 

「それにしても驚いたよ、まさかお前が魔本を持っていたなんて」

 

「それも含めて説明するぜ」

 

 

気だるそうに立ち上がった章吾は、まず自分の魔本をガッシュの前に持っていく。

 

 

「百聞は一見にだ。ガッシュ、俺の本を燃やしてくれ」

 

「「!?」」

 

 

思わず耳を疑う二人。

いまさらルールを知らないわけが無い、だとすれば章吾は自分の言っている意味が分かっているのだろうか?

本を燃やせばデモンが魔界に帰ってしまうと言うのに。

 

 

「まあそうなるわな。でも頼む、その先にお前らが知らなければならない答えもあるのさ」

 

「ウヌぅ、しかしだの……!」

 

「いいんだぜガッシュ、お前が考えている事とは大きく違う結果が待っているだろうからな」

 

 

ポンポンとやさしくガッシュの頭をたたくデモン。

やはりその雰囲気からは普通のやさしさとは違う物が感じられた。

まさしくそれは、そう、親が子供を見ているときの目だ。

 

 

「デモンと言ったが、お主は一体私とどういう関係なのだ?」

 

「そういえば、ガッシュにザケルを教えたのは自分みたいな事を言っていたが……」

 

 

首を振るデモン。教えたとは語弊がある。

 

 

「教えたんじゃない、おれは『ベル』に授けたのさ」

 

「授けた……?」

 

 

その瞬間、清麿のアンサー・トーカーが発動され、デモンの正体が導き出された。

 

 

「で、デモン。お前まさか――」

 

「驚いたな。アンサートーカーってのは魔界の謎まで出せるのか」

 

「おそらく清麿自身の力が上がっているんだろう。魔界に関わり、一度は魔界そのものに足を踏み入れたほどだからな」

 

 

章吾の発言で成るほどとデモンは頷いた。そして彼は改めて自己紹介を。

 

 

「おれは雷神デモン、文字通り魔界の神だ」

 

「お、お主神様なのか!?」

 

 

正確には神は神でもランクの低い部類にいる神だと。

 

 

「神の世界にもいろいろあってな、おれ達は神子と呼ばれる位置にいるんだ」

 

「神子……?」

 

「ああ、そして雷神は長らく『ベル』の家系の守護神をやっていた」

 

 

さあもういいだろうとデモン、とにもかくにも起こっている事を見てもらった方が早い。

彼は自分の魔本を燃やしてくれとガッシュ達を急かした。

 

 

「ッ、信じていいんだな?」

 

「ああ。頼む」

 

 

ガッシュはまだ渋っていたが、本人がそうしてくれと言うのだから仕方ない。

清麿はザケルを発動して言われた通りデモンの魔本を燃やす。するとあの時と同じ、例外なく彼の体は消滅していく。

そしてあっという間に彼の本は燃え尽き、デモンの姿は完全に消え去った。息を呑むガッシュと清麿、しかし対して章吾の反応は薄い。

 

 

「帰るか」

 

「――ッ、いいのか?」

 

「ああ、今日はもうお前らも疲れたろ? 明日は学校だってあるんだ、それが終わってから話すよ」

 

 

章吾はポケットをもぞもぞと漁り、中から一枚の板ガムを取り出した。

そしてそれをガッシュに差し出すと、少し乱暴に頭を撫でて、何の事は無く清麿たちに別れを告げて歩いて行った。

 

 

「おお、清麿! 章吾はガムをくれたぞ! いい奴だな!」

 

「お前なぁ、食べ物くれたからって安直だぞ」

 

「しかし清麿の友人ではないか、いい者に決まっておろう!」

 

「まあ、悪い奴じゃないのは確かだけど」

 

 

何を知っているんだ? それは気になる所である。

しかしこのままココで立っていても仕方ない、諦めた清麿は自分たちもまた帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「うむぅ! やっふぁり母上殿のご飯は最高なのふぁ!」

 

「うふふ、いっぱい食べてねガッシュちゃん」

 

 

口いっぱいにご飯を詰め込んでいるガッシュを、清麿の母である高嶺華は温かな目で見ていた。

再会と言うものはドラマや映画で見るほど劇的なものではないが、懐かしさや多くの喜びを思い出させてくれるものだ。

またしばらく世話になるかもしれない、そんなガッシュの頼みを嫌な顔一つせずに受け入れてくれた華に、ガッシュもまた大きな感謝を覚えていた。

 

 

「それにしても清麿ってば、どうしちゃったのかしら? ご飯も食べないで」

 

「ウヌ、めぇるとやらが忙しいらしい。ご飯は後で私が上に持っていくのだ」

 

「あら、そうなの。誰とメールしてるのかしら? もしかして彼女とか?」

 

 

ニヤリと笑う華。

ガッシュは詰め込んだ物をゴクンと一気に飲み込むと、少し顔を青ざめてうつむいてみせる。

 

 

「母上殿、彼女とはそんなに良い物なのかのう?」

 

「え?」

 

「私には、怖い物にか思えぬのだーッ!」

 

 

そもそも彼女とは何なのか?

パティと言う少女を知っているガッシュとしては頭が痛くなる話ではある。

色々子供ながらに苦労しているのだろうか? 華はそう思って、とりあえず自論ではあるが彼女、もっと言えば恋人の定義を彼に説明する事に。

 

 

「やっぱり、それぞれ一番好きな異性の事を言うんじゃないかしら?」

 

 

やがて結婚して家族になりたいと思う相手の事だ。

男ならば一番好きな女性、女ならば一番好きな男性。

もっと言えば一緒にいてドキドキしたり、けれど心地良かったり、そういう落ち着けて素を出せる相手が一番いいのではないかと。

 

 

「ガッシュちゃんにはいるのかしら? ドキドキする様な娘とか。ふふふ」

 

「うーむ。難しい質問だの」

 

 

異性の友人は多くいる訳だが、優劣をつける様な事はできない。

 

 

「ティオちゃんとかは?」

 

「ティオか……」

 

 

目を閉じるガッシュ。

なんだか絞められているイメージしか湧いてこなかったので一度首を振って改めてイメージを。

確かに危ない所も助けてくれたし、彼女がいなければ自分は王になれなかったのだろうとも思う。

 

 

「まあでもガッシュちゃんはまだ子供だものね。分からなくても仕方ないわ」

 

「そういう物かのう?」

 

「ええ、きっとその内ガッシュちゃんにも現れるわよ」

 

 

手をつないだり抱きしめ合いたいと思う相手が。華はそう言ってガッシュが差し出したおかわりに応えるのだった。

一方自室の清麿は、携帯に送られてきた大量のメッセージに返信している所だった。

と言うのも自分がガッシュに会えたように、仲間達もまたかつてのパートナーに再会できている様だったのだ。

そこへ夕飯をおぼんに乗せてガッシュが入ってきた。

 

 

「おおガッシュ、みんなもやっぱりコッチに来てるらしい」

 

「本当か!? ウヌ! だったらまたみんなで遊べるのだ!」

 

 

するとちょうどそこへ電話が、魔物と再会できた事を報告する電話ならば先ほども何度か掛かって来たところだ。

画面に映る名前を見て一瞬動きを止める清麿、しかし彼はすぐに通話をタッチして会話を。

 

 

「もしもし?」

 

『清麿ーっ! お久しぶり!』

 

「おお! ティオか!」

 

 

防御の力を持ち、何度となくガッシュのピンチを救ってくれたティオ。

その元気な声が電話の向こうから聞こえてきた。再会を喜び合う二人、彼女と共に戦った記憶が清麿の脳裏にフラッシュバックしていく。

 

 

『変わってなさそうで安心したわ!』

 

「あはは、何言ってるんだまだ一年も経ってないじゃないか」

 

『そっか、そうだもんね。ふふ! ガッシュとも会えたんでしょ?』

 

「ああ、ちょっと代わるよ」

 

 

ガッシュに携帯を渡す清麿。二人の会話を聞くにどうやらティオも魔本を持って人間界に送られてきたらしい。

ティオもまた何故自分が人間界に送られてきたのかは知らないとか。どうやら今現在、その答えを掴んでいるのはデモンだけと言う事らしい。

現在彼の魔本は燃えた状態。だが彼には焦り等が見られなかった。むしろ自分の魔本を燃やしてくれと。その反応を見るに――。

 

 

「ティオ、恵にも代わってほしいのだ!」

 

「!」

 

 

ピクリと清麿の表情が変化する。

 

 

「おお! 恵ぃ! 久しぶりだのぉ!」

 

「が、ガッシュ! あまり失礼な事は言うなよ!」

 

「何を言っておる! 分かっているのだ!」

 

 

実を言うと清麿は恵とそこそこメールこそすれど、電話で会話すると言うのは中々ハードルが高くてできなかった。

自分から電話をすると言うのは色々考えてしまって難しく、例えばあつかましいと嫌われないだろうかとか、自分とは違って忙しいからだとか~。

 

 

(って何考えてるんだよオレ!)

 

 

なんだか最近ずいぶんと自分が女々しくなって来たような気がする。

自分はこんなんじゃ無い筈だ、もっと冷静になれ、すると脳内に冷静になる為の答えが浮かんできた。

掌に馬と書いて飲み込む方法だ。

 

 

(ってコレは緊張を解く方法だろ! はっ! オレもしかして緊張してる!?)

 

 

一人で何をやっているんだこの男は、と思われるかもしれないが彼にとっては大事な問題である。

そうしているとガッシュの楽しそうな笑い声が耳をついてきた。

 

 

「ヌハハハハ! そうなのだ、それでティオが――」

 

「が、ガッシュ。恵さんと何を話してるんだ?」

 

「楽しいお話なのだ」

 

 

再び笑い声。耳を澄ませば小さく恵の声も聞こえてくるような。

 

 

「お、おいガッシュ。恵さんも笑ってるのか?」

 

「おお、笑っておるぞ?」

 

 

さらに笑い声。

 

 

「ガッ……シュ。もしなんだったら、恵さんに最近の事とか――、あの、なんていうか」

 

「むぅ、清麿! 何なのださっきから」

 

「あ、いや! オレは、その」

 

「ヌ? どうした恵? ウヌ、――ウヌ! そうなのだ、さっきから清麿が恵の事ばかり聞いてくるのだ!」

 

「わああああああ! 何言ってんだお前ーッ!」

 

 

ガッシュの口を塞いでオロオロと清麿は汗を浮かべる。

対して呆れた表情のガッシュ、なんだかいつもの立場が逆転している様だ。

 

 

「そんなに気になるなら清麿が自分で話したらいいではないか、ほれ!」

 

「うおっ!?」

 

 

ガッシュが投げ渡した携帯を受け取ったはいいが、落としそうになってしまい清麿はバランスを崩して倒れてしまう。

ドシンと音がして衝撃に清麿は思わずうめき声を漏らす。だがそんな痛みや衝撃など電話の向こうから聞こえる声が全て吹き飛ばしていく。

 

 

『だ、大丈夫清麿くん?』

 

「あ、う、うん!」

 

 

見ちゃいないと言うのに清麿は背筋を伸ばしてしまう。

何より彼女の声を聞いただけで心臓が破裂しそうになった。

テレビやCDで何度も何度も聞いていると言うのに、それに今まで何度も会話しているというのに何故今になって――?

 

 

『あの……ね、清麿くん』

 

「な、なに!?」

 

『また、会えるよね?』

 

「ッ」

 

 

特にここ最近は、彼女からの誘いを理由をつけて断る様になっていた。

だってそうだろう? もしも二人きりで会っている所を誰かに見られでもしたら、彼女の夢を壊してしまうかもしれない。

それが怖くて、だ。

 

 

『ティオと、ガッシュくんと、まだみんなで……』

 

「あ、ああ」

 

 

だが、それが苦しくて。清麿自身どうしていいか分からなくなっていた。

 

 

『それでね、清麿くん。もしよかったら、明日……会えないかな』

 

 

ティオも清麿に会いたがっている。なにやら恵の方も会って話したい事があるらしい。

清麿としても章吾が話す事を一緒に聞いてもらえる仲間がいた方が良かったので断る理由は無かった。

いや、それより、何と言うべきなのか、もう一つ理由があった様に感じる。

 

 

「オレの方こそ、もし良ければ!」

 

『じゃあ、決まりで……いいよね?』

 

「ああ。じゃあまた駅に着いたら連絡してほしい」

 

『うん、分かった。じゃあまた明日』

 

「ああ、また明日」

 

 

そう言って電話を切る。しかし目の前にはムスッとしたガッシュが。

 

 

「もっと恵とティオとお話したかったのだ……」

 

「す、すまん! つい流れで切っちまった!」

 

 

しかし明日また会えると聞くと、ガッシュはそれ以上文句は言わなかった。だがそれよりも彼には気になった事があったみたいだ。

 

 

「清麿、何か様子がおかしいぞ」

 

「え?」

 

「恵と話す時、なんだかよそよそしいのだ」

 

「うっ!」

 

 

鋭い! 気づかれてきたか、清麿は思わず仰け反ってガッシュから距離を離す。

しかし逆を言えばガッシュにも気づかれる程表に出ていたと言う事なのだろうか?

そもそも彼とは長い間パートナーとして過ごしている訳で。清麿もガッシュが隠し事をしていたら割りとすぐに分かってしまうもの、やはり彼には隠し事はできないのかもしれない。

 

 

「はぁ、実はなガッシュ――」

 

 

観念したのか、清麿は端的に自身の内心を打ち明ける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、ティオ」

 

 

一方の恵。彼女はベッドの上に座って抱いた枕に顔を埋めている。

なんだかティオを"だし"にして彼と会う口実を作ったみたいで軽く自己嫌悪に陥っていた。

しかし当のティオは腕を組んでやれやれといった表情で彼女を見ている。

 

 

「気にしないで恵。会って話したい事があるのは事実じゃない」

 

「うー、でもぉ」

 

「だいたい恵は押しが弱いのよ! てっきりもう子供くらい作ってると思ったのに」

 

「そんな訳ないでしょ! どれだけスピード展開なのよ!」

 

 

その返しにティオはニッコリと笑みを。

どうやら恵を元気にする為の冗談だったらしい、その思いやりが嬉しくて恵もまた笑みを浮かべて彼女のお礼を言った。

やっぱりまだ自分(めぐみ)には彼女(ティオ)が必要だったみたいだ。離れてみて、つくづくそう思う。

そして余裕が出てきたのならば恵もまたからかってみたいと思う心が出てくる。

 

 

「ティオこそ、ガッシュくんとは何か進展あるの?」

 

「なっ! ななななななんで私とガッシュが!」

 

「ふふ、その反応だとソッチも何にも無いみたいね」

 

「もう! 今は私の事は関係ないでしょ!」

 

 

わーわー言い合う二人を、すぐ近くでサンディはニコニコしながら見つめている。

 

 

「うんうん、仲がよろしい事で」

 

 

恵も最近は色々と考える事が多かった。

その中で落ち込む事とか燻る事も多かったが、今の恵は本当に楽しそうだ。

やはりそれだけティオと言う存在が大きく、彼女にとって掛け替えの無い存在なのだろう。

見ているだけで微笑ましくなる。そして、それは彼女の隣にいる少女も同じ様だった。

 

 

「やっぱりユリアスの意思は間違ってないのよ」

 

 

ゴスロリファッションに身を包む金髪のツインテールの少女。

彼女はポッキーをかじりながらティオと恵を見て笑っている。

先ほどまではいなかった彼女、名前は『マリー』と言うのだが、サンディの前に淡い黄色の魔本がある事が彼女の正体を物語っているだろう。

 

所変わって清麿の家。

 

 

「最近、恵さんとうまく話せないんだ……」

 

「喧嘩をしてしまったのか?」

 

「いや、そんなんじゃない。ただ、なんと言うかザワザワすると言うか……ソワソワすると言うか」

 

「???」

 

 

訳が分からないと言った表情で清麿を見るガッシュ。

まあそうだろう、清麿自身意味が分かっていないのだから。

ただハッと表情を変えるガッシュ、そういえばと先ほどの会話が彼の脳に蘇る。

 

 

「もしかしてドキドキではないのか?」

 

「どっ! ドキドキってお前! そんな、オレが恵さんに! おまっ!」

 

 

顔を隠してゴロゴロ床を転がる清麿。

ガッシュは汗を浮かべてそんな彼を見ている。

 

 

「今日の清麿はなんだか変なのだ……」

 

 

しかし恋をすると人は変わるのだと、実は先ほど華から聞かされていた。

故にガッシュは手を叩いて成る程と納得を。

まさに今の清麿がそうではないか。

 

 

「つまり清麿は恵と恋人になりたいのだな!」

 

「こっ!? こここここ!? ここ! こここここーッ!?」

 

「に、鶏の真似かの?」

 

「いや! ち、違う! って言うか恋人ってお前どこでそんな!」

 

「母上殿が言っていたのだ。そろそろ清麿にもそういう者ができるのではないかと」

 

 

手を繋ぎたいと思ったり、抱きしめたいと思ったり。

ガッシュが説明しているのを聞いて、清麿は自然と頬を染めて妄想に入る。

恵と手を繋いだらどんな感覚なのだろう? 彼女はどんな表情をするんだろう? どんな感触なのだろう? ましてや抱きしめるなんて――

 

 

「ふ、ふふっ! ふふふ……」

 

(気持ち悪いのう……)

 

 

ガッシュでさえそう思ってしまうほど今の清麿はだらしなくニヤけてフニャフニャになっていた。

しかしアレだけ普段キリっとしている彼がここまでフヤけてしまうのだから、相当なのだろうと言う事はガッシュにも分かった。

思えば自分は清麿にずいぶんと世話になった。やさしい王様になれたのも、全ては清麿がいてくれたからだ。

何かずっと恩返しがしたいと思っていたところ、ガッシュはうんうんと頷いて立ち上がる。

 

 

「よし、任せておけ清麿! 私が恵との仲を取り持ってやろうぞ!」

 

「き、気持ちはありがたいが遠慮しておく! だいたいお前、恋とかした事ないだろ!」

 

「ぬぅ、だったら経験がある者ならば良いのか?」

 

「へ?」

 

「だったら、フォルゴレに聞けば良いのだ。キャンチョメが言っておったのだ、フォルゴレは『もてもて』なのであろう?」

 

 

た、確かに。

清麿は珍しくガッシュの言葉に打ちのめされた様な感覚を覚えた。

どこか一つ釈然としない話ではあるが(失礼)、フォルゴレは確かに世界的大スターであると同時に女性人気が非常に高い。

正直理解できないが(失礼)、おそらく世界中の多くでフォルゴレになら全てを捧げてもいいと思っている女性がいるのではないだろうか?

 

 

「うーむ」

 

 

改めて考えてみれば確かにフォルゴレはやるときはやる男だ。

人気があるのもまあ分かる様な。やはり女性はそういう所に弱いのだろうか?

そもそも確かにガッシュの言う通りフォルゴレならばそれなりに経験もあるだろうし。

 

 

「………」

 

 

無言で清麿はフォルゴレの携帯に電話を。

先程もメールでキャンチョメと再会できたと連絡が入っていたところだ。

そしてコールが二回程鳴った所で、電話コールが通話に切り替わる音が。

 

 

『もしかして清麿かい?』

 

「おお! キャンチョメか! 久しぶりだな!」

 

『うん! 久しぶりだね! 元気にしてたかい?』

 

 

清麿もいつもの調子に戻りキャンチョメとしばらく雑談を。

特に彼はキャンチョメの別れに立ち会えなかった分、少し泣きそうになりながら話をしていた。

だがすぐに思い出す本題、清麿は少し躊躇しながらもフォルゴレと話がしたいと告げる。

了解するキャンチョメ、そしてすぐにフォルゴレが電話の向こうに。

 

 

『やあ清麿。ガッシュと再会できたんだって? 少し話をさせてくれよ』

 

「あ、ああ。それは構わないんだが、その前にちょっと聞きたい事があるんだが……」

 

『うん? 何かな? 何でも聞いてくれよ』

 

「じ、実は……だな」

 

 

ごくりと喉を鳴らす清麿。

ええい、ここまで来たなら引くわけにもいくまい。彼は意を決してフォルゴレへSOSを求める事に。

 

 

「女心って奴を、少し……知りたくて」

 

『へぇ! 誰か気になる女性(バンビーナ)でもできたのかい?』

 

「い、いや! 断じてそういうのでは無くてだな!」

 

『恵かな?』

 

「ぶぅううううううう! な、何でそこで恵さんの名前が出てくるんだよッ!」

 

『ハハハハ! 適当に君の身近にいる女性の名を出してみただけさ。けど、そのリアクションじゃ図星の様だね』

 

「なっ! や、やっぱり分かりやすいかオレ!?」

 

 

そんなまさかと清麿は首を振る。

と言うか、やはりそこまで恵を意識してしまっているのか。

彼は思わず体が熱くなって辺りを意味も無くウロウロと歩き回っていた。

 

 

『まあ恵も君の事は気になっているだろうからね、丁度いいじゃないか』

 

「は!? 恵さんがオレを!? 本当か? いや、嘘か!? 嘘なら冗談が過ぎるぞフォルゴレーッ!」

 

「うぬぅ、やっぱり今日の清麿は変なのだ……!」

 

 

ガッシュの声が聞こえたのかフォルゴレはしばらく声を上げて笑っていた。

そしてその答えは恵本人に聞けばいいと曖昧にしてしまう。だがとりあえず事情は分かってくれたらしい。

要するに清麿は恵の気を引きたいと言うか、まあ簡単に言えば好感度をあげたいのだろう。

天才といわれた彼も、恋愛となると随分ヘタレになってしまうらしい。ましてやお得意のアンサー・トーカーもこういう問題には使用するのを躊躇う物だ。

 

 

『よし、じゃあとりあえず清麿が恵にする事は一つだな』

 

「な、なんだ?」

 

『簡単さ、それは――』

 

「あ、ああ!」

 

『乳を、"もぐ"のさッ!』

 

 

プチ――ッ! 電話を切った清麿は無言でパジャマに着替え始めた。

震えるガッシュ、なんだか彼の顔が変わっているような。と言うか角とか触手とか生え始めた様な。

 

 

「き、清麿? お電話は……?」

 

「時間を無駄にした」

 

「アドバイスは――?」

 

「テオザケルくらいなら撃ち込んでも死なないよな」

 

「清麿ーッ!」

 

 

ガッシュの悲痛な叫びも今の清麿には届かない。

しかし、その後食事を終え風呂に入り歯を磨いたところで清麿に大きな変化が訪れた。

と言うのもまさかとは思いつつ、一応さきほどのアドバイスにアンサー・トーカーの能力を使用してみた所、導き出された答えは『喜ぶ女性もいる』、との事だった。

広い世の中、まあそういう事なのだろうとは思うが、もしかして恵がその中の一人だったとすればどうなのだろうか?

仮にもフォルゴレは自分よりも女性にモテているし、人気だってある。だったらやっぱり彼の言う事は正しいのだろうか?

思えば今までまともに恋愛すらしてこなかった手前、一概に否定はできないのでは? そう、そうだ、人生経験だってフォルゴレの方がしているだろうし、もしかしたらもしかすると恵だってそういう野生的な部分を持っている男に惹かれるのかも――!

 

 

「んな訳ねぇだろ、狂ったか天才」

 

「そ、そうだよな! そうに決まってるよな! ありがとう章吾!!」

 

 

翌日、登校途中に章吾にその事を話すと、速攻で一蹴された。

 

 

「いいか? お前が言ってるのはこう言う事なんだぞ」

 

 

章吾は前から歩いてきた三人組の女子高生を呼び止めると、たった一言。

 

 

「すいませんお嬢さん方、お乳の方をもがせてもらってもよろしいでしょうか?」

 

 

十秒後、そこにはボコボコにされて地面に倒れている章吾が。

おっぱい触らせてもらってもいいですか? ためしにもう一度近くに通りかかったOLに聞いてみたが、やはり結果は章吾のリトルボーイを蹴られると言う結末に終わった。

 

 

「お前がやろうとしていたのは、こういう事だ、清麿――ッ」

 

「じ、実演感謝する」

 

 

フラフラになった章吾の肩を支えながら登校していく清麿。

そう言えばあまりにも普通にいつもの登校をしているが、昨日彼とは戦った訳で。

 

 

「デモンは結局どうなったんだ?」

 

「それは放課後教えるさ」

 

「そうか、その事なんだがオレの仲間が今日家に来るんだ」

 

「ああいいぜ、いずれ事情は全ての魔物に知ってもらいたいからな」

 

 

淡々と答える章吾。やはり彼に焦りの感情は見られなかった。

 

 

「ところで、デモンとはいつ知り合ったんだ?」

 

「まあ、言うて最近さ。帰り道にたまたまアイツが倒れてるのを見つけたんだ」

 

 

はじめはヤバイ事に巻き込まれるんじゃないかと思ってスルーしようとしたが、流石に倒れている子供を見捨ててとは後味が悪い。

そして結局話しかけたら、今に至る事になったらしい。

 

 

「じゃあ、お前は前回の戦いの時は?」

 

「ああ、知らなかった」

 

 

ただデモンが色々知っていたから説明を受けたのだと言う。

魔界の王を決める戦い、千年前の魔物達、魔導巨兵ファウード、魔界の民を無に還そうとしていたクリア・ノート。

そしてその末に勝利し、魔界の王となったガッシュ・ベル。

 

 

「しかしその時は死ぬほど驚いたもんだよ。まさかお前がガッシュのパートナーだったとは」

 

 

そこでふと章吾足を止めた。

 

 

「ん? どうした?」

 

「ああいや、あぶねぇあぶねぇ、思わずスルーする所だった」

 

「?」

 

「清麿、お前なんで俺にあんな事聞いたんだよ」

 

 

あんな事とは即ち先程の乳がどうのこうのと言う話である。

言葉を詰まらせる清麿と、その反応を見てニヤリと笑う章吾。

どうやらこういう事はすぐに察しのつく性格らしい。彼はニヤニヤと清麿を見つめ、ははーんと声を出す。

 

 

「そういう事か? いやいや、清麿くんも男だねぇ」

 

「や、やかましい! オレはやましい気持ちなんて無いからな!」

 

「やましさ満点の質問しといてよく言うぜ」

 

「うぐ……ッ!」

 

 

確かに。反論できずうろたえる清麿。

章吾は彼の珍しい姿を見てケラケラと笑うが、同時に一つ素敵なアドバイスがあると。

それは先程はボコボコにされた訳だが、中には例外もあるかもしれないと章吾は語る。

それは既に好感度が一定値以上あれば、それをきっかけにより深く仲良くなれるかもしれないと言う事だ。

つまり、清麿の意中の相手が、既に清麿に好意を持っていたならば或いはそれを皮切りにして一気に恋人へとランクアップできるのかもと。

ただもちろんコレはかなりリスキーな行為、相手がその行為をあくまでも冗談として受け入れてくれなければ逆にドン引きされて関係に終焉が齎される事であろう。

 

 

「どうだ? その人は受け入れてくれそうか?」

 

「そんな事分かるわけ――」(もし、オレが恵さんに……)

 

 

ふいに想像してしまう。

 

 

『きゃ! き、清麿くん!? どうしたのいきなり……!』

 

 

顔を真っ赤にして腕で胸を覆い隠すようにする彼女。

 

 

『わ、私のが触りたいの? 清麿くんだったら……いいよ?』

 

 

上目遣いで微笑む彼女。

 

 

『ひゃん! も、もっとやさしく触って……ほしいな。慌てなくても大丈夫だから。ね?』

 

 

………。

 

 

「!?」

 

 

ドサリ。そんな音がして清麿は地面に倒れる。

 

 

「清麿?」

 

 

章吾が彼を揺さ振ると、返事の代わりに地面に赤い絨毯が広がっていった。

 

 

「清麿? 清麿くん!? き、清麿ぉおぉおおおぉぉぉぉおッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!」

 

 

ガバっと布団を払いのけて起き上がる清麿。

どこだココは? 自分は一体どうなって? 辺りを見回すと、ココが高校の保健室だと言う事が分かった。

そして窓の外に見えた空はほのかにオレンジ色。時計を見れば既に放課後の時間である。

 

 

「あら、お目覚めですか?」

 

「章吾、オレは一体!?」

 

「鼻血の出し過ぎで貧血だって」

 

「う、うぉぉぉおぉ!」

 

 

なんと格好悪い事か。

清麿は恥ずかしさで顔を覆い隠して悶える事に。流石に彼を気遣ってか一応章吾はフォローを一つ。

 

 

「まあ、昨日の戦いの疲労もあったんだろうな。俺も正直今日は全部の授業寝てたし」

 

 

それよりも章吾は時間は大丈夫なのかと問いかける。

なにやら仲間が来るらしいが、既に放課後、もしかしたら何か不具合が起きているのではと。

対して確かにと清麿。この時間では駅に迎えに行けそうにも無い、彼女たちには悪いが、家に直接来てもらおうと清麿は連絡を入れておいた。

家にはガッシュもいるから、何とか対応はしてくれるだろう。

 

 

「じゃあ俺たちも行くか」

 

「ああ」

 

「……今日、俺たち何しに学校に来たんだろうな?」

 

「全くだ……」

 

 

大きなため息をついて清麿はベッドから立ち上がり、章吾は読んでいた漫画をカバンにしまって学校を後にするのだった。

それなりの時間ともあってか、早足に清麿の家を目指す二人。しかし家に到着する頃には、夕焼けと夜の境界線を空は示していた。

そしていざ家の扉を開こうとした時、章吾がおもむろに声を出す。

 

 

「なあ、清麿」

 

「ん? どうした?」

 

「人は、価値のある生き物だとは思うか? 生き残るべき存在だと思うか?」

 

「え? 何言ってるんだよ、当たり前だろ」

 

「そうか、すごいな」

 

 

彼は少し寂しげに笑う。

 

 

「俺は、即答できなかったよ」

 

「っ?」

 

 

その時だった。

二人の気配を感じたのだろう。清麿が開けるよりも早く玄関のドアが開いたのは。

中から出てきたのはガッシュとティオ、どうやら既に恵たちは到着していたらしい。

 

 

「ウヌ! おかえりなのだ二人とも!」

 

「おかえりなさい、清麿! 本当に久しぶりね!」

 

「ああ、ただいまガッシュ、ティオ」

 

 

そしてティオは章吾のほうへと。

 

 

「貴方が章吾ね。はじめまして、私はティオ」

 

「んん。よろしく、ティオちゃん。俺は荒川章吾」

 

「ティオでいいわ。ちょっと待ってね、今私のパートナーの恵がくるから!」

 

「恵? ああ、はいはいはい! そういう事か!」

 

 

ニヤつき、清麿を横目に見る章吾。

 

 

「な、何がだよ」

 

「いやおかしいと思ったんだよ。芸能エンタメに疎いお前がよりによって大海恵のファンだなんて随分とミーハー臭いと思ってたのよ」

 

 

しかし無理も無い、まさか清麿くんの気になる女の子と同じ名前だったなんて。

どうせティオのパートナーが気になって朝あんな事を聞いて来たに――

 

 

「はじめまして、私がティオのパートナー、大海恵です」

 

 

って本物かよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!

章吾はあまりの衝撃に目が飛び出たかと思った程だ。さらに驚きすぎて腰が抜けてしまった。

まさかこんな所で超人気アイドルに会えるとは、等と思っていた章吾にさらに追い討ちが。

 

 

「章吾ぉおおおおお! ひさしぶりぃいぃい!」

 

「ぶばぁああ!!」

 

 

玄関から何かが飛び出てきたかと思うと、それはまるでタックルの様に章吾へ抱きついていく。

思わず声を上げる清麿、現れたのはオレンジ色の髪をした少女だった。

そう、恵の友人であるサンディだ。彼女は章吾を抱きしめると頬ずりをしているではないか。

知り合いか? 清麿は彼女に声を掛けようとするが――

 

 

「はじめまして清麿、章吾」

 

「「!?」」

 

 

その時、さらに現れる金髪の少女マリー。

彼女は自分の魔本を持って一発で人間ではないと分かる自己紹介を。

 

 

「サンディはわたしのパートナー。そしてわたしはデモンと同じ存在、そう言ったら分かるかしら?」

 

 

ニコリとマリーは微笑んだ。少し妖艶さを交えた表情を浮かべて。

 

 

「わたし達は神子、魔物とは違うベクトルにいる存在なの」

 

 






これ書いてるときガッシュのラシルドってガッシュの前方にしか出せないと思ってたら後で見た101の映画で普通に離れた所に出してました……w
ただ空中は無理そうなんで、デモンは空中にも浮遊できる状態のラシルド出せるよって事でココは一つ。

あと映画の一番凄い所は個人的にコトハの声優さん。
まさか嵐を呼ぶ幼稚園児だったなんて、当時は思いもしなかったなぁ。

はい、まあという訳での次回は一応五月の初めか一週空けての12日辺りを予定しています。
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