「やってらんない…あのバカ神今度見つけたら絶対確実に殺してやる…」
『完全にやさぐれているな』
澄み渡る青空が広がる中で私…永白リイナはグタリと公園のベンチに腰掛けながらこの堕天使だか悪魔だかがリアルに存在しているという別世界に身一つで飛ばしやがった自称次元を司る神ナラトルに毒を吐きまくっていた。
まあ当の本人はここに飛ばされる前の私に心臓を貫かれて一時的に消滅しているのだが…あいつのことだ。どうせすぐにでは無いだろうが復活するだろう。
…ってそんなこと今の私にはどうでもいい。
「駒王学園に来いとか紅い髪の女の人に言われたけど…それってどこにあるんだろうね?」
『俺が知るか。……最悪空から見て探すしかないだろうな』
「そだね~…」
相棒であるロンギヌスの槍の言葉に頷き、深くため息をはく。約束の時間は夕方。だが太陽はまだ上がり始めたばかりで、周辺には学校に登校するのだろう制服を着た学生やランドセルを背負った子供たちが歩いている。
「…とりあえず適当に散策してみますか。もしかしたらその駒王学園とやらも見つかるかもしれないし」
『懸命な判断だな』
ほっと勢いよくベンチから立ち上がると、自分の思うがままに歩を進め始める。さて、何があるのか楽しみだな。
―――――――
あの公園からどのくらい歩いただろうか。この街…『駒王町』という名前らしいが、ここは結構大きく先進的な町のようで、至るところに大きなお店や商店街などがありお金は無くても目でも楽しめるものがたくさんあった。
「これでお金があればなぁ…」
『仕方ないだろう…身一つで飛ばされたんだからな』
「ちくしょうあのクソ神やっぱり殺す」
『段々口が悪くなっているぞリイナ…』
ナラトルに向けての殺意をさらに募らせていると、不意に「はわぅっ!?」という悲鳴が聞こえた。その声はかなり近場で聞こえ、そちらの方を向いてみると、そこには白色のフードを被り小柄な体躯をした人がうつ伏せになって倒れていた。先程の声とフードから降ろされている長いブロンドの髪を見て把握するに恐らくあれは女の子だろう。
「あの…大丈夫?」
近づいて声を掛けてみると、女の子は額を抑えてすぐに起き上がり「はうぅ…何で転んでしまうのでしょう…」と呟いた。俯いていた顔を上げて、バッチリと私と目が合うと女の子は「ふわっ!?」と驚いたように背をのけ反らせる。
「す、すみません!自分のことに夢中になってしまって…」
立ち上がり深々と頭を下げる女の子に私は慌てて「気にしなくて良いから」と言うと、女の子は安心したように笑った。その朗らかな笑顔に色々と出来事が重なりすぎて荒んでいた私の心が少し癒され、気持ち的に落ち着くと改めてその女の子の容姿を見てみる。
ふちの部分に青色の線が入った白いフードを浅く被り、服は灰色がかったロングドレスのような物を着ている。そして胸元には十字架のネックレスが光っていた。顔の方は白く綺麗な肌にエメラルドグリーンの瞳がパッチリと開き、薄い唇に鼻筋もすっとしている。まあ要するに…ものすごく可愛い。
「あの…何か?」
「…あ、いやごめん。ものすごく可愛いな~と思って。つい見とれちゃった」
「あ、あう…可愛いだなんてそんな…」
(……やばい…犯罪的に可愛いぞこの子)
ふわりと頬を赤く染めて照れる女の子の初な反応に内心悶えさせられていると、その小さな手には似合わない大きな鞄が目に入った。
「旅行か何かなのかな?」
そう聞くと女の子は困ったように眉を下げて、首を横に振った。
「あぅ…その…私、この街の教会に赴任することになったのですが…全く新しい場所なので道に迷ってしまって…街の方に訪ねてみても私の言葉が通じなくて…」
「あー…なるほどね」
つまりこの子は迷子というわけだ。私が理解して頷くと、女の子はしゅんと落ち込んだ表情を浮かべた。…どうしよう。なんかさらに庇護欲が沸いてきた。
「…良かったら私と一緒に探す?教会」
「え?で、でも…」
「私も探している場所があるんだけどさ…貴方と同じでこの街に来たばかりで正直よく分からないんだよね……だから、1人より2人の方が見つけやすいかもって思ったんだけど…」
「どう?」と聞くと、女の子は少し考えるような仕草をしたが、やはり他に良い案が見つからなかったようで申し訳なさそうに頷いた。
「そう…ですね。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、暫しの間ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
「固いなあもう。私は永白リイナ。リイナで良いよ」
「私はアーシア・アルジェントと申します。よろしくお願いしますリイナさん!」
にっこりと笑った女の子…アーシアの可愛さに、私が我慢できずにその頭を撫でてしまったのは致し方がないと思う。だって可愛かったんだもん!!
「あ…あの鳥さん…」
少し嬉しそうに私に頭を撫でられていたアーシアが、はっとしたように地面を見た。そんな彼女の様子に疑問を感じてその視線を辿ると、そこには助けを乞うように小さく鳴いている雀がいた。よく見ると羽の部分にけがをしているようで血が滲んでいる。
(ありゃあ…でも治す手段がないからなぁ…私の魔法に治癒力はないし…)
困った。と傷ついた雀をしゃがんで見ていると、アーシアの手が横から延びて雀の傷口部分にかざした。そして彼女が祈るように目を閉じると、その指にはめられた指輪が淡い緑の光を放ち、傷口をみるみる塞いでいった。
「わ…すごい」
たちまち消えていった傷に思わず感嘆の声が出る。雀も元気になったのかお礼を言うように鳴きながらアーシアの周りを飛び回り、そのまま去っていた。雀の姿がなくなると光を放っていたアーシアの指輪に目を向ける。
「これ…魔法かなんか?」
「はい…主が下さったとても大切な力です…そう、とても大切な」
主…いわゆる神ね。うーん…なんか複雑な気持ちになるな。人の世を傷つけるやつらだけとはいえ私は神様殺してるんだし…。というかアーシアのあの力は何か裏がありそうだな…顔が少し暗くなった。
「へー…そうなんだ。なんていうか、アーシアにはぴったりな力じゃない?癒しの力なんてそうそう手に入らないし…普通にすごいと思う」
「すごい…ですか?私が…」
「うん。…さ、日があるうちに教会を探さなきゃね。行こっか!」
「リイナさん…はい!行きましょう!」
私の言葉にアーシアが先程の暗い表情を引っ込めて笑った。うんうん。やっぱりこの子には笑顔が一番似合ってるよ。…会ってまだ15分くらいしか経ってないけど。
アーシアのあの癒しの力はちょっと気になるけど…さっきまで見ず知らずだった私に聞く権利なんかないしね。それに…
「また、この子とは何処かで会いそうな気がするし…」
「?何か仰いましたか?」
「あ、ううん。なんでもない!」
今はとりあえず教会(あと出来れば駒王学園)を探すことを優先しよう。そう考え、私とアーシアは歩き出した。
―――――――
「…あ、ありました!良かった…本当にありがとうございます!リイナさんのお陰で助かりました!」
「あ、いや…適当に歩いてただけだったんだどね。見つかって良かったよ」
結果的に教会は案外早くに見つかった。そのかわり私の目的地である駒王学園は見つからなかったが……まあアーシアが喜んでいるのでよしとしよう。うん。
「あの…もしよろしければ教会の方でお礼をしたいのですが…」
おずおずとアーシアがお誘いをしてきた。なんとも魅力的な案だが、そろそろ夕方…紅い髪の女性との約束時間が迫ってきている。
「あー…ごめんねアーシア。私ちょっと今は急がなきゃだから…またの機会でいいかな?」
「そうですか…残念です…」
寂しそうな表情をしたアーシアに一気に罪悪感が溢れ出てくる。ああああこのまま一緒に教会まで行ってしまいたい!!だがここは我慢だ!!耐えるんだ私!!
「…私はあそこの教会にいますので、いつでもいらっしゃって下さいね!」
「…うん、必ず行くよ。アーシアに会いにね」
「はい!」
太陽のような笑みを浮かべるアーシアの頭を優しく撫でて私たちは再び会う約束をする。
「…それでは、また。リイナさん」
「うん、またね。アーシア」
ペコリと私に頭を下げると、アーシアはパタパタと教会に向かって走っていった。…また転ばなきゃ良いけど。
『…終わったか?』
「お、久々登場だね。ロン」
『ほっとけ。…それで、お前の目的地の駒王学園は見つかったのか?』
「………」
『………上いくぞ。バカ主』
「うぃっす」
辺りに人がいないことを確認して、跳躍用の魔方陣を展開した。
「それにしても可愛かったなあ…アーシア…」
まるで妹みたいだった。なんて考えながら陣の中心で腰を落とし、両脚部に力を込めてバンッと飛び上がった。
体が地面から離れ、一気に浮遊する。そのときに一瞬何かの前触れのようにツキンと背中が痛んだが、気にしないことにした。
(さて…駒王学園はどこかな?)
『……あそこじゃないか?1つだけバカみたいにでかい建物があるぞ』
(あ、ほんとだ。多分あそこだね。んじゃ、行こっか!)
『ああ』
お粗末様でした。辻褄合ってないとこが多々あると思いますが、徐々に修正していきます。次話で今度こそグレモリー眷族と会う…はずです。なのでのんびりとお待ちいただけたら嬉しいです。