一か月更新は守れませんでした…申し訳ない。どうも時間が無くていかんですな、時間を有効活用できてない証拠です…精進が足りん。
でもそんなこんなで一応書き上げました。おそらく今回は文量少な目となっております。
それでは、どうぞ
「逃げ切れたか…あー、しんど」
後ろに振り返り、人影のない事を確認してから足を止める。食堂から離脱した俺とシャルロットは狂暴化した三人娘の追撃の不安を抱えながらもどうにか校舎内まで逃げ切ることに成功した。
「食後すぐに走り回ることになるとは…なんか今日は動いてばっかりだな、俺」
今日半日の行動を鑑みて、身体を休める為の休日なのにどうしてここまで動き回って、疲労を貯めなければならないのかとため息を吐く。いや、皆と会うこと自体が疲労というわけでもないのだが…あそこまで振り回されるとこちらも困るのだ。
「ご、ごめんね…零司」
「まったくだ」
先ほどの一件に関することで謝るシャルロットは俺の言葉でさらに肩を落とす。シャルロットが気を落とす姿を見るのはあまり好ましくはないが、こればっかりは身から出た錆なのではっきりと言わせてもらった。
「火事っていうものは、近場に建物があると風向きによっては飛び火するもんだ…今後はあのような発言は控えるように」
「…だって、零司ってば…ラウラや他の皆ばっかり…」
「何だ?」
「…なんでもないよ」
拗ねたように顔を伏せてしまうシャルロットに俺は再びため息一つ。シャルロットが言うことは、まあ、ほとんどが真実であるから俺が責めるっていうのも少々筋違いな感じもしなくもない。だがそれでも、やっぱり俺としても秘密にしておきたいことがある。ラウラがベッドインした一件もそれの一つだ。それを言われるのはちょっとこちらとしても問題がある。それはある程度の知識のある学生ならばわかないことではないはずだ。
「…ま、それはそうと…」
そう、それはもういい。いや、実際はよくはないが騒ぎの鎮静化は時間でしか望めないので、諦めることにするだけだが…まあ、それはどうしようもないので…
「呼び出し、か。なんかやったのかね、俺ら」
「さ、さあ…僕もあまり身に覚えがないけど」
俺の言葉にシャルロットはビクッと肩を震わせて、怯えたような声を返す。この反応は身に覚えがあるっていうよりかは、単純に千冬さんと顔を合わせるのが怖いからだろう。初対面の時から、シャルロットは酷い目にあったからな・・・
「そんなに怖がることないだろう、あの人だって必要もなしに呼び出したりしないさ」
「…わかってはいるんだけどね」
言いながらシャルロットは乾いた笑いを浮かべる。単純に問題の多い俺や一夏やラウラ、一夏のことになると目の色が変わる篠ノ之やオルコットや凰。その面子に比べればシャルロットは基本的に真面目で進んで問題を起こさないから、むしろ好感持たれているくらいなのではないだろうか。
「大丈夫だって、そんな怯えなくても」
「うん…」
大丈夫、というがシャルロットの表情は晴れない。そしてそうこうしているうちに職員室のドアが見えて来た。
「うわぁ…」
「…ここまで来たんだ、もう覚悟を決めろ」
隣から聞こえた情けない声にそう返すと、返事を聞く前に三回ノックの後にドアを開く。
「失礼します、呼び出しを受けた黒瀬です」
職員室に足を踏み入れた瞬間、視線がこちらに集まり、教員の皆さんから挨拶が飛んでくる。
「ああ黒瀬君、こんにちは」
「どうも」
「今日はどんな問題を起こしたのかな?」
「起こした覚えはないんですけどねぇ」
そんなフレンドリーの接してくる先生達に対して、笑顔で返事を返しながら、先ほどの放送の声の主へと足を運ぶ。その席は無論、いつも通りに積み立てられた書類の山によって建てられた堤防によって囲われた、我らが担任教員の席。
「随分と慣れ親しんだものだな、ここに」
「普通なら慣れ親しむべき場所じゃないんですけどね、生徒としては」
書類の山をさばきながら、やってきた俺に対して千冬さんは嫌味交じりな言葉を口にした。
「まったくもってその通りだ、よくわかっているじゃないか・・・ふぅ」
「お疲れみたいですね」
俺の言葉に返しながら、千冬さんはため息を吐いて目元を抑える。机の上には遠目からでもわかるような書類の塔の数々とコーヒーの入った教員に割り当てられたカップ、そして少し厚めのノートPC。
「目疲れの原因はこれですか?」
「覗くなよ。これにはお前たちの成績に大きく関係する情報が入っている」
そう言って少し覗き込もうとした俺の顔をグイっと押しやる。成績に大きく関係するもの、ね。授業の工程表とかだろうか。
「あ、あの織斑先生、私たちはどうして呼び出されたんですか?」
「ああ、そうだな…まずデュノアに渡す物がある」
緊張で痺れを切らしたのか、俺の後ろで黙っていたシャルロットが千冬さんにそう聞くと千冬さんは机に取り付けられたサイドテーブルの引き出しを開き、何やらゴソゴソと探し始める。
「確かこの辺に…」
「普段から片づけておかないからぽいっと出せないんですよ」
「場所は分かっているんだ、別にかまわないだろう」
それ、「その場所に置いておいたはず」って言いながら物をなくす人の典型みたいな言い分だな…
「うおー、熱いー…」
と、そんなことを考えていると職員室のドアが開くとともになんとも訊き慣れた、気の抜けた声が耳に届いた。そちらに目を向けると、ビニール袋を片手に白スーツの教員が一人。
「イリア先生、こんにちは」
「ああ、黒瀬君か…君は元気そうだなぁ」
「別に元気ってわけでもないですけど、今のイリア先生と比べたら…まあ」
だらりと項垂れ、表情からも明らかに覇気を感じられない、いつものテンション高めのイリア先生とは真逆ともいえる状況に俺は苦笑を浮かべるしかなかった。
「どうして日本の夏はこんなに過酷なんだ。ただ熱いだけならまだしも、ムシムシとうっとおしい…」
「毎年温度は上がる一方ですからね」
「こんな気候なのに外で遊べる日本の子供達は末恐ろしいものだよ…そう思わないか、デュノア君」
「えっ!? そ、そうですね…確かに日本の夏は辛いところもありますね」
まさかこちらに話を振られるとは思わなかったのか、シャルロットは驚きに声を上げ、困ったように笑いながら、イリア先生の言葉に概ね同意しているようだった。
「やっぱり辛いものなのか?」
「うん、フランスとは全然気候が違うからね。それに気温も日本ほど上がらないから」
「あー、なんか聞いたことあるな。なんでも家庭が冷房常備じゃないんだっけ?」
「うん、平均でも20℃くらいしか上がらないからね。だから34℃ってテレビで見た時はびっくりしちゃったよ」
「私はびっくりする前に言葉を失ったがね」
言葉を交わす俺とシャルロット、そして座るなり机に突っ伏すイリア先生。確かに平均気温20℃で過ごしていた人間が体験する気温としては数段段階をすっ飛ばしている。ましてやこの湿度の高い気候も外国にはないものだろうし…
「もしかして、今日は付き合わせないほうがよかったか?」
今日、アリーナにシャルロットにいてもらったのには、少しばかり理由があった。それは俺のタイムリミットの件だ。あのアリーナにいたのは俺とシャルロット、それにオルコットと凰の四人。オルコットもそれについては理解している。だがその中で凰だけがそれを知らない。あの試合には制限時間を架してやっているという言い分で通していたが、俺の異変は目に見えて明らかなものだ。なので、それに対する即座なフォローが必要と思い、シャルロットにいてもらったわけだが…
そんな気候の中で、アリーナに約半日ほど拘束してしまったのは相当きつかったのではなかろうか。そんな後の祭りなことを思い、口に出した。
「そんなことないよ!」
だが、それに返ってきたのは力強い否定だった。
「零司が一緒なら、こんな暑さなんてなんてことない。それよりも零司は病み上がりなんだから、一人で演習やっていたなんて後から言われる方が心配だよ」
「それはそうかもしれないが…でも、よかったのか?」
「全然大丈夫、むしろ僕を頼ってくれたなんて嬉しいくらいだよ」
「そ、そうか?」
食って掛かりそうな勢いに少しばかり驚いたが、シャルロットの言葉を聞いて、やっぱり真面目でいい娘なんだなと改めて思った。まったく、これじゃあどっちが支えているのかわかったもんじゃないな。
「今日はありがとうな、シャルロット」
「そんな・・・それにさっきは僕が問題起こしちゃったわけだし、お礼を言われるようなことじゃ」
礼を言われて嬉しいのか、はにかむシャルロット。そんな表情につい頭を撫でたい衝動に駆られるも、我慢して、上がりだした右手を引っ込める。いかんいかん、前にもやって変な空気になったじゃないか。
「・・・? どうしたの、零司?」
「あ、いや・・・」
「仲がいいなぁ、君たちぃ」
自分のしようとしていた事を悟られまいと、目線をシャルロットから逸らすと突っ伏していたはずのイリア先生がこちらを軽く睨んでいるのが見えた。というより、目があった。
「何ですか、その目は」
「いやなに、君はいつも通りだなと、ね」
…なんか棘のある言葉だ。表情もただ暑いってだけでそんな顔をするとも思えないし…俺がいったい何をしたのかというのか。
「…言いたいことあるなら言ってくださいよ」
「言っていいのか?」
「どんなことを言われるのかは、予測不能ですけど、わけのわからない状態でそんな顔をされるよりかはマシです」
今日一日でこんなにも睨まれるような状況にあるのは、精神的によろしくない。せめて理由くらいは聞いて、納得しないとやってられん。
しかし、俺はその選択をこの後、軽く後悔することになる
「まあ、その右手が上がった後には、今度はデュノア君を抱きしめるのかと思っただけだよ」
「…ッ!?」
「抱きっ!?」
いきなり飛び出たイリア先生の発言に俺とシャルロット、そしてこの職員室内の空気が固まった。しかも、問題は抱きしめる発言もそうだが、もう一つ問題がある。
「…今度は?」
職員室のどこからか、そんな声が聞こえる。今度は、つまりそれは俺が抱きしめた瞬間を見た前例があるということを指しており、イリア先生が目撃した前例というならば、その光景は、少なくと俺は一つくらいしか思い浮かばない。
「……」
皆に気づかれないようにスッと視線を横に移動させる。そこにいるのは、先ほどから書類を探している我らが担任教員だ。どうやら一段目に書類がなかったことがわかったのか、次の段に手をかけ、開いた瞬間だったらしいが…
「……~~!?」
引き出しを開けたところで、完全に行動を停止している。しかも、前髪で表情こそ見えないものの、遠目から見てもはっきりとわかるくらいに顔が朱色に染まっている。これはいけない。さっき食堂で大火傷したばかりなのに、ここでまで焼死したくはない。
「な、何を言っているんですか、イリア先生。俺と誰が抱き合っていたというんですか」
「ん~? 言ってほしいのかい?」
「言わないでくださいお願いします」
先ほどまでの目は消えて、今度はニヤニヤといつも通りの笑いを浮かべ始めるイリア先生にできるなら土下座をしたい気分になって来る。唯一の救いは周囲の視線が俺とイリア先生に集中しているから、千冬さんの様子を気にしている教員は誰もいないってことだけだ。
「イリア先生、そのこと、詳しく教えてください」
「シャルロット、人には明かされたくない秘密があるってさっき言ったばかりだろうに…」
ズイッと前に出るシャルロットの腕を掴んで諌める。こうして言われると俺って其処らへんに爆弾を置きっぱなしにして、放置している気がしてきた。まあ、だからといって、その爆弾をどう回収すればいいのか、考えるだけでも頭が痛いのだが。
とりあえず、目の前の出来事をどうにかしよう。
「それにシャルロット、お前はその時、その場にいただろう」
「僕が?」
俺の言葉にシャルロットは首を傾げ、話の起爆点であるイリア先生は興味ありげに「ほう」と小さく声を上げた。
「ほら、タッグマッチ戦の時に、ラウラをさ」
「…ああ」
シャルロット含め、その時の現状を知っている先生方は納得の声を上げて、頷いた。それは『VTシステム』からラウラを助け出すときに、流れ的に抱きしめた時のことだ。原因が原因だけに、俺がラウラを抱きしめたことは「そういえばそんなことあったな」程度の出来事かもしれない。だが訝しむシャルロットや興味を持った先生方を納得させるには十分な内容のはずだ。
「そういえば黒瀬君はボーデヴィッヒさんとキスまでしてるんだものね」
「抱きしめ合うくらいは当然か」
…決して、そんなことはない。だがここで納得する先生方の言葉を否定すれば、これまた面倒なことになるのは火を見るよりも明らかである為に、そちらはスルーして、シャルロットを見る。
「もしかして、それも許してもらえないことか?」
「それは…そんなことはないけど、さ」
納得できているかできていないかが6:4くらいの割合、そんな感じの複雑な表情をしながら、困った風に頬を掻くシャルロット。六割でも、半分以上は納得しているならそれでいい。イリア先生の指し示す「状況」が知られてしまったら、この程度では絶対にすまないのだから。
「ふぅん…そう持ってくか」
「イリア先生…」
「ああ、やめてくれ。冗談だ、ちゃっめけだ。だからそんな怖い顔はよしてくれよ、黒瀬君」
さすがに悪ふざけが過ぎる。そう思って、声色を強くして睨むとイリア先生は小さく両手を上げて、降参のポーズをとる。本当にまったく、どうしてこんなことを…
「単に目の前でイチャイチャされたから、少々妬いてしまっただけじゃないか」
「そういう冗談もやめてください。そんな話を俺の回りですると、興味津々で噛み付いて来る連中はいくらでもいるんですから」
「冗談…ね」
「なんですか・・・」
「いや、君の近くにいる娘たちは本当に大変だと思っただけだよ」
そうつぶやいて、イリア先生は苦笑に近い微笑を浮かべながら、やや深めのため息を吐くとビニール袋から購買部で買ってきたのであろう、額に貼る冷却シートを取り出す。それ使うほどに熱いのか。さすがはロシアの人。
「…あったぞ」
そんなことを考えていると、イリア先生の爆弾発言から回復したのか、千冬さんが大き目の封筒を手に顔を上げた。見た感じ、まだ若干顔が赤い気もするが、注意してみなければ気付かない程度だから大丈夫だろう。
「受け取れ」
「はい…見ても?」
「ああ、かまわん」
差し出された封筒を手に取ると、シャルロットはそれの上部を少し開けて、中の書類を少しだけ摘み上げる。
「これって…」
そこで、一気に表情を強張らせた。
「織斑先生、これは」
「私ではそこまでが限界だ。どうしたいかは、自分で決めろ」
何か訊こうとしたシャルロットを千冬さんはそう言って、遮った。中身の書類がどんなものかはわからないが、どうもシャルロットにとって重要なものなのだろう。そしてそれがどんなものなのか、薄らとだが理解できた気がした。
だが、わざわざそれに自分から首を突っ込むことはしない。関わるときは、シャルロットが自分から話す時だろう。その時まで、踏み込むようなマネは、むしろシャルロットにとっても不都合だ。
「で、俺は何のために呼ばれたんですか?」
それよりも、今は目の前の問題だ。この書類を渡すためだけなら、俺を呼ぶ必要などない。つまり、千冬さんが俺に何かしら用事があるわけだ。
「ああ、実はちょっとした頼みがあってな…」
そこまで言って、千冬さんは言いよどむと職員室に来た時のように目元を抑える。だが今度は目が疲れたというよりも、頭が痛いといった風だった。
「これは黒瀬だけでなく、デュノアにも頼みたい」
「僕…私も、ですか?」
一人称を「私」にしつつ、シャルロットも現状の俺と同じように少し眉をひそめる。俺達に頼みたいこととは、珍しい事もあるものだ。
「お前たち、来週末に何があるかは知っているな?」
その言葉を聞いて、俺は…おそらくシャルロットもだろう、一つの行事を思い出した。それは夏休みという、学園生活において至福ともいえるであろう時間、それに進むための終業式の前に行われる、学生としては学園生活の最大の難関の一つであろう行事。
「それって…」
「ああ――」
千冬さんが手を離し、俺とシャルロットを見た。おそらく俺達は非常に複雑な顔をしていたのだろう。呆れ顔でため息交じりの一言を千冬さんは溢すように言った。
「――期末テストだ」
End 47
はい、EP47終了です。いかがだったでしょうか?
文章量の低下が最近目につくようになってきました。いつもはワードで15~20くらいのページで書いていたのですが、今回のは12ページとなっています。というか、オリジナルになってから極端に量が減っています。もし読み応えの薄いものになってしまっていたら申し訳ありませんm(_ _)m。
一か月更新の約束も守れない私ですが、読者様の大きな慈悲の心で、どうかお許しを…(ーωー;)
今後も頑張っていきたいので、どうか応援お願いいたしますm(_ _;)m。
それでは、また(ーωー)ノシ