IS もう一つの翼   作:緋星

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EP4 学園という場所

目の前に、景色が広がっている。

 

その光景は決して美しいものではなく、全てを吹き飛ばしてしまう様な砂塵の嵐。

 

鼓膜が震える。

 

その音は決して心休まるものではなく、全てをかき消す様な発砲音。

 

手に感触を覚える。

 

その手触りは決して気分のいいものではなく、重厚で冷たい鋼鉄。

 

これはなんだ。否、問う必要などない。

 

俺はこれを知っている。忘れるはずもない。全て・・・全て知っている。

 

吹き抜ける砂塵も、飛び交う銃弾も、俺を覆う装甲も・・・

 

幾度となく駆け抜けた。安息だと夢想した。そして愚かにも再び舞い戻る。

 

流れる血の赤、むき出した骨の白、焦げてしまった肉の黒。

 

ああ、いらない。あれはもういらない。

 

残骸へと変わった兵器のメタルも

 

全身にこびりついた硝煙の匂いも

 

全てが合致し、視界を赤く染める。まるでここは世界の終り。そんな場所で俺は膝をつく。

 

そして抱き上げる、そっと、壊れるのを恐れる様に

 

だがそれは灰燼となって、衝撃と爆炎によって吹き飛ばされる。

 

残った首飾りの青は紅く塗りつぶされ、それを握りしめて、俺は叫んだ。

 

そしてその瞬間、全てが終わった。

 

 

 

「はっ・・・・!!」

 

弾けるように瞳を開けると無機質な白い天井が見えた。ここは何処だ?俺は一体・・・・

 

「ここは・・・保健室?」

 

窓から差し込む夕暮れの光に目を細め、軽い痛みを感じながら身体を起こして周囲を見渡すと外界からの仕切りとして使われるカーテンに見覚えがあり、ここが何処であるかを一発で特定する事が出来た。だがしかし・・・何故に保健室?

 

「気が付いたようだな、この馬鹿弟子」

 

カーテンが引かれる。俺を馬鹿弟子って呼ぶとすると、千冬さんか。しかしなんか久しぶりだな、その呼ばれ方。もうしばらくその呼び方をされていなかったから、反応が遅れてしまった。

 

「千冬さん、俺は一体・・・どうして保健室なんかに?」

 

「・・・話で聞いた通り、ある程度記憶が混濁するようだな」

 

記憶が混濁・・・・という事は・・・

 

「千冬さん、もしかして――」

 

「ああ、お前はISに乗って・・・症状が出た」

 

症状、千冬さんのその言葉を聞いた瞬間、俺はベッドから身を乗り出し、彼女に掴みかかっていた。

 

「だ、誰が!! 誰が巻き込まれたんです!! 無事なんですか!?」

 

「落ち着け。対戦者のオルコットも無事だ・・・少し前に部屋に戻したよ」

 

トンッと胸部を押され、力無く俺はベッドへと座り直した。よかった・・・誰も・・・誰も犠牲にならなくて・・・本当に・・・

 

「だがここまで酷いモノとは聞いていなかったぞ・・・お前の精神疾患は」

 

咎める様な千冬さんに答えることなく俺は黙っていた。精神疾患。言葉の通り、俺はとある精神病を患っている。病名は覚えていない。だが、その症状はいたって簡単だった。

 

―ISに搭乗すると、精神に異常を来す―

 

「頭痛や吐き気、嘔吐などの症状が見受けられるのは聞いていた・・・だが、まさか発狂してISを強制解除した相手に銃を向けるとはな」

 

千冬さんの言う通り、この精神疾患はISに搭乗して一定時間経つと激しい頭痛や吐き気、そして視覚や聴覚などの感覚の麻痺などが見受けられる。だがもっと酷い時には・・・発狂し、目の前のものを敵と認識して、破壊しようとするのだ。

 

「これも・・・あの事の所為か?」

 

千冬さんの問いかけに、俺は応えなかった。否、応える余裕がなかった。両手で自分の顔を覆う。俺は壊そうとした。目の前にいたセシリア・オルコットを敵とみなして壊そうとした。その事実がゆっくりと俺の脳内で思い出され、現実味を帯びてきた。

 

「俺は・・・俺は・・・あの娘を・・・」

 

思い出してきた。俺はオルコットの頭を掴んで、空中で振り回し、壁に叩きつけて、『Dalia』で・・・俺は・・・引き金に指を・・・・

 

「・・・くそっ!!」

 

もっと俺が自分を制御できれば、あんなことにはならなかった。その悔しさのあまり、ベッドを叩く。

 

「嘆いても仕方ない、もはや過ぎた事だ」

 

「ですけど・・・俺は」

 

「・・・お前は過去に囚われ過ぎる・・・昔も、そして今も」

 

何か言おうとする俺を一瞥してから、千冬さんは身を翻す。

 

「過去ではなく、今に目を向けろ・・・だからお前は馬鹿なのだよ」

 

そう言い残して保健室から出て行った。過去に囚われ過ぎる・・・過去ではなく、今に目を向けろ・・・か。でもね、千冬さん・・・・

 

「逃れられない過去だって・・・あるんですよ」

 

おそらくこの学園に来て初めて、俺は織斑千冬に反論した。

 

 

結局、昨日は保健室で眠ってしまい、起きた時にはもうすでに朝だった。保健の先生曰く――

 

「あまりにも良い寝顔だったから・・・起こすのも可哀想かなって思って」

 

いや、そこは起こしてくださいよ。俺だって部屋のフカフカのベッドで寝たいし、それに何より学校の備品を一晩中借りていた事に対しての変な申し訳なさを感じてしまうじゃないですか。

 

「変えの制服が合って、シャワー貸してもらっただけマシか」

 

起きてすぐにシャワーを浴びて、着替えの制服に着替えて登校する時にはもうすでに時間がギリギリだった。昨日の一件でクラスに入り辛いというところもあり、休んでしまおうかと思ったが、絶対に千冬さんはそんな理由で休みをくれるほど甘くはない。なもんだから、只今、全力疾走中である。

 

「これで廊下走ってたから罰与えるとかそんなオチは止めてくれよ・・・」

 

そうこうしている間に1年1組の扉が見えてきた。部屋の中ではSHRが始まっている様だったが、あの鬼教官の気配はない。よかった、とりあえず出席簿チョップは免れそうだ。

 

「スー・・・・ハァ・・・」

 

俺は扉に前で急停止すると、深呼吸をひとつした。クラスに入った瞬間、どんな視線にさらされるかはイメージトレーニングしてきた。覚悟はもう完了している。覚悟完了。

 

「失礼しますっ!!」

 

勢いで乗り切る。その覚悟を言葉に乗せて表わす様に扉を開けると共に声を上げながら、頭を下げた。すると―――

 

「「「黒瀬さん、おめでとうございますっ!!」」」

 

想像していたものとは全くの別物が俺を出迎えた。教室に入って向けられた視線は非難でも忌避でも畏怖でもない。ただ歓迎、そして祝福の一言に尽きる拍手の雨だった。

 

「・・・・は?」

 

あまりにも予想外だった為にすぐさま反応できず、間の抜けた声を出してしまった。おかしい、俺はこんなイメージトレーニングをした覚えはない。

 

「凄いですね!! まさかセシリアに勝っちゃうなんて!!」

 

「男の人でも凄い人はいるんですね!! 私、見直しちゃいました!!」

 

「初動とか本当に初心者なの、って疑うほどでした!! あれ、どうやったんですか!?」

 

「というか惚れました!! 付き合ってください!!」

 

なんか今物凄い発言が飛んだりしたけど・・・いや、マジでこれはどういう事なの?あれだけ酷い試合をしておいて、この歓迎は・・・まさかこれって夢?ドリーム?

 

「おい、零司・・・」

 

「お、おう・・・一夏」

 

戸惑う俺に見かねたのか、ちょいちょいと手招きをされて、女子達の波を越えると一夏の元へと駆け寄ると周りに聞こえない様にひそひそと話しかける。

 

「こりゃあ、どういうことだ」

 

「ああ、なんでも途中からアリーナのシールドにステージを見えなくする・・・なんか視覚遮断みたいなもの入れたらしくてな。みんなはお前の・・・あの戦いは見てないらしい」

 

・・・あの戦い、それはおそらく俺が発狂した辺りからだろう。

 

「それで、お前が勝ったって事だけ話しに出て来たんだ」

 

「そんな、見てもいないのに誰がそんなの信じるんだよ」

 

むしろ「八百長なんじゃないのか」とか騒がれそうな気がするんだが、この部屋の空気は本当に祝福する空気になっている。一体どうして・・・

 

「そりゃ、本人がそう言ったんだ」

 

「本人?」

 

聞き返すと、一夏は親指で後ろを指した。その指した向こう側には額に包帯を巻いたオルコットの姿があった。

 

「・・・オルコットが?」

 

「ああ、「私は負けて、黒瀬零司が勝った」ってな」

 

再びオルコットを見る。今度はこちらが見ている事に気が付いたのか、目線を逸らしてそっぽを向いてしまった。

 

「でも・・・あんな勝ち方――」

 

「まぁ、ちょっと問題あったけどな。勝った事には変わりないだろ?」

 

「・・・お前はいいのかよ」

 

一夏に問う。あんな勝ち方、俺はなんだか気に入らない。だが、一夏はどう思っているのか。当事者として、判断をゆだねてみる事にした。

 

「・・・・・正直な」

 

腕を組んで考えた後、一夏は口を開いた。

 

「素人目から見ても、あの戦い。あのまま続いていたら、どっちにしろお前が勝っていたと俺は思ってる」

 

そう言う一夏の眼は真剣そのもので、俺が途中で否定しようとする事を自ら拒んでしまうほどだった。それは俺がその瞳に少なからず千冬さんの面影を感じ取っていたからかもしれない。

 

「それにな。俺、お前の正気の時の動き、あれ見て少し感動したんだぜ?」

 

「感動?」

 

「ああ、こんな力が俺の手にあるんだって・・・今度は俺が護る力を得られたんだって、な」

 

「・・・一夏」

 

「それなのに、俺を感動させた相手がこんなんでどうすんだよ。勝ったんだから、胸張れよ、零司」

 

「さすがに最後のはあれだけどな」と付け足して一夏は笑い、俺は言葉を失ってしまっていた。不覚にも、俺は胸に込み上がる様な思いを感じていたのだ。

 

・・・まったく、感動させるのはどっちだ。この天然人タラシが。

 

「あ、あの~・・・」

 

「え?」「あ・・・」「「「・・・・あ、山田先生」」」

 

「そろそろSHRを・・・始めてもいいでしょうか・・・」

 

感激しているところで声をかけられ、振り向くとそこには涙目でこちらを見ている山田先生の姿が・・・

 

「ご、ごめん山田先生っ!!気付かなくて・・・」

 

「き、気付かない・・・うう、私ってそんなに影薄いんでしょうか・・」

 

「ああっ違う!!そうじゃないんです!!・・・・ああ、泣かないでください。ね、山田先生」

 

クラスメイト全員の視線に晒されながら、今にも目元に溜まった涙が流れてきそうな山田先生をなだめる。ああ、もう本当にごめんなさい山田先生。無視するつもりは毛頭ないんですが・・・でも相方の冷血鬼教官とかと比べるとやっぱり若干キャラが薄いといいますか・・・

 

「教師をキャラ付けするとは、いい度胸だ」

 

「はっ、殺気っ!!」

 

背後からの声に反応して横に飛ぶ。よし、これで冷血鬼教官からの出席簿チョップは効かな――

 

「甘いわ」

 

グキッ!!

 

「ぐおっ!?」

 

――くはなかった。千冬さんは出席簿を縦ではなく横に、しかも俺の跳んだ方向に対してカウンターの如く首へと打ち込んだ。

 

「私の一撃をかわそうなど十年早いぞ。早く席に戻れ」

 

「くっ、首がっ・・・首がグキッて」

 

首を押さえながら、自分の席へと戻って行く。しかしよく躾けられた教室だな。千冬さんが出てきたら即座にどよめきが止まったぞ。

 

「さて、SHRを再会する・・・といっても、あとは代表者の発表をするだけだがな」

 

『代表者』という言葉が出た瞬間にクラスの女子達の視線が俺へと集束した。どうやら皆が皆、俺が『クラス代表者』に選ばれると確信しているのだろう。一夏までもがこちらを見ている。

 

だが、やはり俺は納得いかない。俺がクラス代表者になるのは、何か間違ってる気がする。

 

「ちふ・・・・織斑先生」

 

「学習したようだな、これで私の苦労も減る・・・で、なんだ?」

 

「クラス代表者を・・・一夏にしてやれないでしょうか?」

 

そう言うと、驚きでクラスに先とは違うどよめきが起こった。

 

「静かにっ!!・・・・いいのか、黒瀬」

 

「はい、俺よりも一夏の方がこういうの向いていると思います。こいつには・・・・護りたいという意志がありますから」

 

一夏を見る。驚いて唖然とした顔をしているこの男は俺が一度失ってしまったモノを持っている。千冬さんが『雪片』を託したように、俺も一夏に色々と託してみたいと思ったんだ。

 

そんな俺の言葉を聞いて、千冬さんは眼を閉じると一人の生徒に声をかけた。

 

「・・・セシリア、お前は何かあるか?」

 

「そ、そうですわね、一夏さんで構いませんわ。彼は数少ない男性IS操縦者、色々特殊な経験が必要ですわね。それにIS操縦には実戦こそが何よりも大きな糧。クラス代表ともなれば、それに事欠きませんものね」

 

オルコットもどうやら了承してくれるようだ――――あれ?オルコットの奴、今“一夏”って呼んだな。いつの間に名前で呼ぶようになったんだ?

 

「で、ですが、無様に敗北ばかりされてもクラスの顔に泥を塗る事になりますわ。ですから代表候補生であるこの私が、一夏さんにIS操縦のなんたるかを教えて差し上げま――」

 

バンッとオルコットの言葉を遮るように机を叩く音が響き、篠ノ之箒が立ち上がる。

 

「生憎と一夏の教官は足りている。私が、直接頼まれたからな」

 

『私が』を強調した喋りをして、異様な殺気のこもった瞳でオルコットを睨みつける。というか、篠ノ之も“一夏”って呼ぶようになったんだな。仲直りでもしたのか?

 

「あら?ISランクCの篠ノ之さん。Aの私に何かご用かしら?」

 

「ラ、ランクは関係ない!!頼まれたのは私だ!!い、一夏がどうしてもと懇願するからだ」

 

「え、箒ってCランクなのか?」

 

「ランクは関係ないと言っている!!」

 

「座れ、馬鹿共」

 

ため息一つした後に千冬さんはスタスタと歩いて行くとオルコット、篠ノ之の順に出席簿チョップを打ち込む。うぁ、女の子にそれは打ち込むもんじゃないぜ、千冬さん。

 

「私は男女平等なんだよ」

 

ほほぉ、このご時世で、それはそれは珍しい事で。

 

「お前達のランクなどゴミだ。私からすれば皆、平等に価値が無い。私が価値に値すると思うまで、優劣を付けるなど考えるな」

 

さすがにオルコットと篠ノ之は反論の余地無しといった感じで黙り込んだ。

 

「せめてお前らもコイツくらい動けるようになってからにしろ。話はそこからだ」

 

ビシッと俺を指差す。千冬さん、人を指差すのは礼儀正しくないんだぜ。知ってたかい? というか、勝手に人のハードル上げんでください。

 

「ず、ずいぶんと黒瀬さんの事をかってるんですね」

 

「少なくとも、ここにいる全員よりは強い。私は事実を簡潔に話しただけだ・・・さて」

 

青嶋の言葉にそう答え、再び俺を取り巻く喧騒が大きく鳴り始めるが千冬さんは何食わぬまま黒板にチョークで一夏の名前を描き始める。それを焦った様に一夏が止めに入る。

 

「ちょっ、ちょっと待った!!俺の意見は!?」

 

「ない」

 

ばっさりと千冬さんに言葉という刃で叩き切られた。これが言葉の暴力というものだ・・・ちょっと違うか。そしてそう肩を落とすな、一夏。千冬さんの暴挙なんて今の始まった事じゃないだろ。

 

「ではクラス代表者は織斑一夏。異存はないな」

 

クラス中から元気なハーイ、という声が上がった。そんな中でため息を吐く一夏を見ながら、オルコットへとプライベートチャンネルを開く。

 

『オルコット、昼休みちょっといいか?』

 

『・・・あなた、何処で私のチャンネルを?』

 

『色々伝手があるんだ・・・それはそうと、返事は?』

 

『一体なんですの、急に?』

 

『いや、ちょっとだけな』

 

『・・・・わかりましたわ』

 

訝しげなオルコットの承諾を得て、騒ぎ立てるクラスの喧騒の中で俺は内心ほっとしながら、プライベートチャンネルを切った。

 

 

 

 

「で、一体何用ですの?」

 

「大丈夫だ、手間は取らせないよ」

 

屋上に呼び出されたオルコットは少し不満げに胸の前で腕を組んでいた。俺はそんな彼女から少し離れた距離から礼儀正しく、気を付けした後に頭を下げる。

 

「すまなかった、オルコット」

 

「・・・・・」

 

「あんな酷い事をして、頭一つ下げて許されるなんて虫の良い話かもしれないが、俺に出来る謝罪の方法はこれしか思いつかない」

 

頭を下げながら、心に思った事を口走った。一度は怪我どころではすまないくらい、危険な目にあわせそうになった。そのクセにこんなことしかできない自分が悔しい。だが、言ったように自分にできるのは頭を下げることしかできない。

 

「男同士なら殴ってくれとでも言っているくらいだ。それくらい、すまないと思っている」

 

「・・・顔を上げてくださらない」

 

俺はオルコットに言われた通りに、ゆっくりと顔を上げる。するといつの間にかこちらに歩いて来たオルコットが目の前におり、そして――

 

パンッ

 

「・・・・・」

 

―――頬に痛みが走った。

 

「ふぅ・・・少しすっきりしましたわ」

 

平手打ちをしたオルコットは満足そうに言うと、いつもの様に腰に手を当てて、そして俺を見た。

 

「あなた、何か勘違いしていますわね」

 

「な、何がだ?」

 

不意打ち気味に叩かれるという予期せぬ事態もあり、少し困惑しながら聞き返すと、オルコットは自身の胸に手をやった。

 

「別に私はあなたに怒ってもいなければ、恨んでもいません。あの時の敗北は、単に私が弱かった。ただそれだけですわ」

 

「・・・・」

 

その言葉に俺は素直に驚いた。あのオルコットが、自分が弱かったと言った事に対してだ。代表候補生である事にプライドを持っていた、あのオルコットが、だ。

 

「私は少し調子に乗っていました・・・自分はISの代表候補生である事で高慢な心を持ち合わせてしまっていたようです」

 

「・・・・オルコット」

 

「ですから、自分を磨き直す事にしましたの。このIS学園で」

 

オルコットは今までに見せた事のない、笑顔を向けてきた。俺はそんな彼女の笑顔を綺麗だと、素直な気持ちで思っていた。

 

「さて、あなたにも言っているのですけれど?」

 

「えっ・・・俺?」

 

「ええ・・・そうですわ、すまないと思っているのでしたら、一つ約束をしてくれませんこと?」

 

呆気に取られながら頷くと笑顔から真剣な表情へと一変させ、俺の胸に人差指を突き立てて、言う。

 

「今後、私からの対戦を断らない事・・・・いいですわね?」

 

その問いかけに、我に返ると同時にフッと無意識に笑みが浮かんできた。ああ、なんでだろうな。この学園・・・・いや、俺の周りにいる奴らはどうしてこう・・・

 

「・・・・ああ、いくらでも相手してやるよ」

 

「でもあのような事はごめんですわよ?」

 

「そりゃ違いない」

 

オルコットと共に小さく笑い合う。それと同時に、屋上の扉の方からガタッと物音が聞こえた。そちらを見ると、数人の女子が扉から倒れるようにして出ていた。

 

「あ・・・・」

 

「あなた達・・・何をしていますの?」

 

「「「いや、あはははは」」」

 

オルコットに睨まれて、乾いた笑いを浮かべるクラスメイト達。どうやら一緒に屋上に来た噂を聞きつけて、俺達を折って来たのだろう。まったく仕方ないな、年頃の女子は。

 

「でさ、セシリアは黒瀬さんと何話してたの?」

 

「別にあなた達の聞きたい様な話はありませんわ」

 

「そうだぞ、別に特別な話なんて何もないさ」

 

「ええ~、怪しいなぁ」

 

「本当に何でもないさ・・・ほら、それよりも早く食堂行かないと昼休みの時間無くなるぞ」

 

「あ、ご一緒してもいいですか?」

 

「いいぜ、一夏と一緒に食べる予定だったし、飯は大勢で食べたほうが美味いしな・・・オルコットもいいだろ?」

 

「一夏さん・・・ま、まあどうしてもというのでしたら・・・」

 

「決まりだな」

 

オルコットと数人の女子の背中を押す。オルコットを傷付けた事に対する罪悪感が完全に消えたわけではない。だが、それでも俺はまるで上空に広がる蒼天の如く、晴れやかな気持ちを得ていた。

 

EP4 End

 

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