元双蛇党手記   作:you_ki_jin

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枯れたココロ

レアヌは思い出す、自分が思い出せる記憶の限界を―――

 

時刻は深夜、エオルゼア大陸の黒衣森と呼ばれる森林地帯の中心地にある街グリダニアは、その時炎に包まれていた。

燃え盛る街の家々と木々、唯一火が無い石と土で出来た道を走るのは、黒い甲冑を着た数人の帝国兵士達とそれに追われるレアヌ。

「生き残りだ!生かして返すな!!」

剣を構えながら追ってくる兵士、彼らの目的は街にいる人間の全滅、レアヌは捕まるわけにはいかなかった、他の街へ応援を呼ぶ為に。

彼女が息を切らしながら街の出入り口に差し掛かったところで、追う兵士と逃げる彼女の間に一人の長耳の男性が槍を構えながら割って入った。

「行け!カトリィ中牙左!!」

焦りにまみれた怒声がレアヌの耳へと入ってくる、カトリィ中牙佐、それはレアヌのセカンドネームと仕事上の階級、それを呼ぶ声の主を彼女は知っている、その彼の名前はボルセル大牙佐、レアヌが尊敬する上官。

「大牙佐も一緒にッ!!」

レアヌは今叶えうる最後の願いを精一杯の声で叫んだ、しかしボルセルは槍を構えたまま首を横に降る、彼女の懇願を否定をする。

程なくしてボルセルと甲冑兵士は戦闘を開始した、しかし今のレアヌには悠長に彼の勝利、いや敗北を見ている暇はない。

「くっ!何で、何でッッ!!!」

ボルセルに背を向けてレアヌは森の中へと走り去る、逃げる彼女の顔は涙とすすと悔しさの表情で汚れきっていた。

そして最後に聞こえたのはボルセルの悲痛の叫び―――

 

 

 

「――て事があったのは覚えてる、その先は……ごめんなさい、おぼえてない。」

えらく落ち着いた様子で知っている過去を語り終えたレアヌ。

医務室にいるのはレアヌとべりーとアンフェル、レアヌは意識を取り戻したものの体はまだ包帯まみれのぼろぼろで、べりーはアンフェルを医務室に連れてきて二人で件についての事情を聞いていた。

「べりー、彼女は嘘をついてると思う?」

アンフェルは最悪をイメージさせる苦い顔でべりーに問いかける、彼女はそれに対して悲しい表情を浮かべながら嘘はついていないとだけアンフェルに答えてくれた。

実際アンフェルもレアヌが嘘をついていない事は分かっている、しかし彼女がついべりーへ聞いてしまったのには理由があった。

レアヌの話した内容には大きな問題がある、それはアンフェルとべりーがレアヌを見つけた森は黒衣森なんて名前ではないという事だった。

そもそも黒衣森なんて森の名前も、グリダニアなんて街の名前も、黒甲冑の兵士によって街が燃やし尽くされた事実も、全て二人は聞いたことがない。

それが意味するのは、普通じゃないレベルでの記憶操作を受けたか、あるいは彼女が……

「別の世界から……」

べりーはつい自分の考えを口に出してしまう、それに対してアンフェルは慌てて彼女の口をふさいだ。

別世界という可能性を今のレアヌには聞かせるわけにはいかない、もしそれを知ってしまったら怪我をおったまま飛び出してしまう可能性があったからだ。

その場合、元の世界に帰ろうと森をさ迷う分にはもう一度捕まえれば良い、けれども最悪の可能性は事実に絶望して彼女がこの世を去るということ。

「べつ……せかい……?」

幸いにもレアヌは別世界という言葉が何を意味したのか思考が上手く回らなかったようだった、アンフェルは彼女に何でもないと伝えて言葉を続ける。

「……辛いことを話させてしまったわね、カトリィさん」

「気にしてない、去った人は帰ってこないから。」

レアヌの返答は別の意味で最悪だった、逃げださないだけで結局は最悪だった。

彼女は感傷も感情もあらわにせず、ただ無表情で事実しか言わなかったのだ。

アンフェルは苦虫を噛み潰す様な表情を浮かべ、レアヌに何を返せば良いのか分からなくなる、どう接するのか最善か分からなくなる。

「ね、れあ?少し外に行かない?」

アンフェルの代わりに口を出したのはべりー、彼女のとっさのフォローにアンフェルはごめんなさい、あとはお願い、とジェスチャーした。

 

レアヌは松葉杖を使い、べりーと二人で病室から廊下を通って外に出た、空は夕焼けで赤く染まっており、日没が近い時刻なのだと分かる。

その時レアヌはとあることに気がついて立ち止まった、これはべりーとアンフェルにとって誤算だった。

(エーテル、気の流れが違う……グリダニア以外の場所?エオルゼア大陸以外の場所……?)

「れ~あ!どうしたの?」

「何でもない。少し、見馴れない場所だったから。」

レアヌのその言葉にべりーは彼女が何か勘づいてしまったのではないかと不安な表情を浮かべた、レアヌもべりーのその表情見て自分が何か傷つける失礼な行為をしたのではと不安な気持ちになる。

「杖あれば歩けるから、このまま帰った方がいい……?」

「えっ?何言ってるの!そんな体で……!第一、帰る所なんてどこにも……あっ!」

レアヌはべりーの言葉を危機逃しはしなかった、帰る場所はどこにもない、彼女の言ったその言葉でレアヌは確信をもった。

ここはエオルゼアじゃない別の大陸、もしかしたら別の世界なのかもしれない。

「そう……別の大陸なのね……?グリダニアの危機を皆に伝える手段も、ボルセル大牙佐の仇をうつ機会も、もう、無いのね。」

「……ごめん、私には言えない」

言えないというのは否定できないということ、その時レアヌは街の仇をうつ機会を永遠に失われた。

 

 

……それでも彼女は涙を流せなかった、まるで心が壊れてしまったかのように―――

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